あまりありふれていない役者で世界逆行   作:田吾作Bが現れた

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四月馬鹿その3です。
なお伸びたので分割する羽目に遭いました(白目)

それとAitoyukiさん、拙作を再評価してくださりありがとうございます。

今回はかなり短め(約7400字程)となります。ではどうぞ。


四月馬鹿なお話その3(六十四話If)

「かお、り……? 香織! 香織!!」

 

 いきなり地面に現れた光の膜に香織が吞み込まれ、しかもそれは一瞬で消えてしまう。唐突な事態に雫は気が狂いそうになった。

 

 ベヒモスは南雲と一緒に落下している。もう戦闘は終わったものの、まだこの場にいた全員の脳は戦場の興奮から覚め切っていない。それもあって雫は親友が消失したことに思わず狂乱し、地面に穴をあけようと必死になって手で掘り進めている。

 

「香織! どこだ! どこにいるんだ! 返事をしてくれ!!」

 

「どこいった! なぁどこだよ香織!!」

 

 狂乱したのは彼女だけではない。光輝と龍太郎もまたそうであった。幼馴染の唐突な消失。そのことに心を乱されないほど彼らの関係は浅くなく、短い付き合いではなかった。

 

「落ち着け! 落ち着くんだお前達!!」

 

「だって、だって香織が!!」

 

「落ち着いてなんていられますか! 香織が、香織がいなくなったんですよ!!」

 

「馬鹿言ってんじゃねぇよメルドさん!! 俺達の幼馴染がいなくなったんだぞ!!」

 

 南雲を追って先程崖に飛び降りそうになった香織に当て身をしようとしていたメルドであったが、その当人がいなくなり、代わりに発狂しそうになっている三人相手にそんなことをしようという気はなかった。香織の天職は治癒師であり、直接的に戦闘には関与しないものであったからだ。

 

 勇者、剣士、格闘家の天職を持つ三人を気絶させてしまえば相当な戦力ダウンになるのは間違いなく、かといってどうすればいいか方法が無い。悪いことが重なってしまったことに心底頭を抱えたくなり、途方に暮れそうになっていた。

 

「お、落ち着いてよシズシズ! 天之河君に坂上君も!」

 

「お、落ち着いて雫ちゃん、光輝君、龍太郎君も! こ、こんなところで言い争いしても、何にもならないよぉ」

 

 そこへやって来たのは谷口鈴と中村恵里であった。普段はムードメーカーな鈴と大人しい恵里も荒れに荒れている彼らをどうにかなだめないと地上に戻れないとわかっていた。だからこそ、普段ならばやりそうにないことも進んでやるしかなかった。

 

(アハッ、何が起きたかわかんないけどラッキー。それといなくなってくれてありがと、香織。あーでも檜山がご執心の香織がいないとなると新しく用意してあげないとかなぁ。雫かな? それか適当な女を殺して操ろっか)

 

 ――尤も、恵里の心の内は突然のハプニングに狂喜していたが。光輝といつも行動を共にしている白崎香織(お邪魔虫)がいなくなったのだ。原因は不明ではあったが、都合のいい事態が起きたことには変わりない。計画を修正して進めれば愛しの光輝を自分のものに出来る。仄暗い感情を内に燃やしながら算盤を弾いた――その時であった。

 

「あ、オルクス大迷宮!」

 

「えっ!?」

 

 再度あの膜が現れたのだ。しかもそこから恵里に瓜二つの少女の顔がニョキっと生え、突然のことにその場にいた誰もが思いっきりビックリしてしまった。なおこちらの世界の恵里は思いっきり噴き出し、近くにいた光輝の顔をびちゃびちゃにしてしまった。

 

「香織! 早く!」

 

「え、恵里の顔が生えた!?」

 

「ど、どうなってんだおい!? な、なんで恵里の奴が!?」

 

「な、なんで恵里の顔が出てきたの!? え、恵里そこにいたよね!?」

 

「いたよ!! 何がどうなってるのさ一体!?」

 

 出てきたのはたった一瞬ではあったものの、突然のことに光輝も龍太郎も鈴も恵里もパニックになり、他のクラスメイト達や騎士団の皆も訳の分からん事態にもう茫然として立ち尽くしてしまっている。そんな時、今度はその膜から香織が現れたのだ。

 

「ただいま、皆!!」

 

「か、おり……?」

 

 先程から立て続けに起きる事態にもう誰も頭が追いつかなくなった。いきなり現れた膜のせいで香織が消え、今度はあまり時間が経過しない内にそこから香織が現れる。本気で意味がわからなかった。しかも消えたはずの当人は何かを決意した表情で現れたものだから余計にである。

 

「うん! 雫ちゃん、心配かけてごめんね……」

 

「かおり……よかった、よかったよぉ……」

 

 その香織は手で穴を掘ってた雫を抱きしめ、彼女の辛さを少しでも解そうとわびる。途端、感極まった雫は彼女を弱々しく抱きしめ、そのまま涙を流して泣きじゃくった。

 

「香織……良かった。無事だったんだな」

 

「うん」

 

「正直焦ったよ。いきなりいなくなったから……でももう大丈夫だ。今度は俺が守るから。大迷宮の罠だろうが魔物だろうが絶対に俺が香織を守ってみせるよ」

 

「……うん」

 

 次は光輝が話しかけてきたものの、自分の知っている彼と()()()()で香織は軽く落胆する。ほんの数十分相対してただけとはいえ、違う世界の彼はこんな無責任に断言するような人となりとは言い難いというのは香織も理解していた。そのせいで自分の幼馴染である光輝の言葉が一層軽く感じられたせいである。

 

「ったく、焦ったぜ香織。まぁ無事で良かったけどな」

 

「…………うん」

 

 その後かけられた龍太郎の言葉を聞いて香織の心が一層乾く。異世界の自分が惚れこんでいた彼と比較すると本気で心配しているのだろうかと思えたからだ。

 

 だが仮に自分に惚れていたとしてもこんな具合であったなら香織としてはお断りである。いくら幼馴染だからってこの程度の扱いで済ませるような相手に惚れられても困るからだ。自分にはハジメがいるのだからと思い直すと、ずっと気にかかっていた彼女の声が届いた。

 

「か、香織……ちゃん。無事で、良かった……」

 

 恵里だ。違う世界の彼女が語ってくれた前世の様子と目の前の少女はあまりにもよく似ている。図書委員、鈴の親友、控え目な性格と振舞いと全てが自分の親友の一人とあまりにもピッタリと当てはまり過ぎていた。それ故に疑いたくなくても疑ってしまいそうになる。だからこそ香織はそれを晴らすべく『行動』に移った。

 

「――ぁっ」

 

「驚いたよカオリン……とにかく無事でよか――あれっ?」

 

「ごめん雫ちゃん、鈴ちゃん!――恵里ちゃん、ごめんね。心配かけて」

 

「ううん、いいよ。私達親友でしょ? でもすっごく心配したんだからね」

 

「うん。ごめん――っ!」

 

 心苦しいながらも自分に抱き着く雫の手を優しく解き、自分にハグしようとしてきた鈴を押しのけながら香織は恵里に抱き着く。そして彼女を労わりながらも宝物庫からある六角柱型のアーティファクトを取り出し、左手で掴んだまま彼女と言葉をかわす――その瞬間、香織の脳裏におぞましい言葉が響き渡った。

 

 ――チッ。消えてくれたと思ったのに。まぁいっか。予定通り檜山にあてがわせればいいさ。

 

「え、恵里ちゃん……」

 

「? どうしたの香織ちゃん?」

 

「う、ううん……心配かけて、ごめんね?」

 

「うん。でも、ちゃんと反省してるみたいだし、私は許すよ」

 

 ――どのタイミングで殺そうかなぁ~。なるべく不自然じゃない時を狙いたいところだけど……ここを突破した辺りかなぁ。祝勝会の時に料理に毒を混ぜて、動けなくなった隙に殺してお人形さんにするのが……うん? 香織の様子がおかしい?

 

 親友だと思っていた相手の心の声だ。向こうの世界の恵里が向こうのハジメと共に作ってくれたアーティファクト“エクスポニオン”は接触した相手の心の声を聞くことが出来る。その効果は向こうの世界にいる間に香織も使って試していたため、ちゃんと機能しているということがわかった。それ故に怖かった。親友だと思っていた少女は前世を語ってくれた恵里と全く同じで、光輝を手に入れるためには手段を選ばない人間であったということがわかったからである。

 

「どうかしたの、香織ちゃん?」

 

 ――まさか僕の演技に気づいた? いや、ボロは……あー、出したか。ま、いいか。もしそうだったらさっさと檜山の餌にでもなってもらおっか。

 

「う、ううん……なんでも、ないから。それと――はいっ!」

 

 エクスポニオンをすぐに宝物庫にしまい込み、最後に聞こえた恵里の心の声に香織は覚悟を決める。すぐに宝物庫からネックレス型のアーティファクトを取り出し、それをすぐに恵里の首に着けさせると同時に魔力を流し込んだ。

 

「っ!?……か、香織ちゃん。どうしたの? いきなりネックレスなんか身に着けさせちゃって?」

 

「あ、うん。実はこの大迷宮に来る前に買ってたんだ。その、私を心配してくれてたから、お礼にって思って」

 

「そうなの?……まぁ、()()()()()けど」

 

 いきなりの行動に驚き、軽く唇をとがらせた様子で収まっている恵里を見て香織は心の中で成功したと確信した。

 

 ――ネックレス型アーティファクト“デモンイェーガー”。ドイツ語で『悪魔を退治する者』という意味を持つこのアーティファクトは向こうの世界の恵里とハジメの合作である。効果は『身に着けた相手の心を変容させる』という名前にそぐわぬおぞましいもの。しかしそれは向こうの恵里がこちらの恵里の無害化を果たすために作ったものである。

 

「えー! いいなーエリリン! 鈴にもそれ貸してよー!」

 

「うん、いい――ご、ごめんね鈴! や、やっぱり嫌!」

 

 沈んだ場を盛り上げようと半ば空元気ながらも鈴は恵里に話しかけるも、恵里は強い抵抗を見せた。それを見て恐怖を感じつつも香織はアーティファクトがしっかりと機能していることに確信を抱く。

 

 ――効果その一、身に着けた相手はこのアーティファクトに対して執着心を持つ。しかもこのアーティファクトは身に着けている人間から魔力を吸い取って機能を維持する仕掛けもあるため、起動さえしてしまえば外部の力で壊れない限りは二度と相手は手放さなくなる。

 

「鈴、恵里が嫌がっているだろう? じゃあ恵里。そろそろ戻ろうか」

 

「?……っ!?――う、うん。行こう、光輝君」

 

 ――効果その二、身に着けた相手の執着する対象を別のものに()()()()()

 

 光輝から声をかけられて反応が一瞬遅れたのを見て、香織はこの効果も問題なく機能していることに気付き、同時に恐怖に震えた。光輝に対する執着を薄れさせ、暴走する目的を無くす。そのために向こうの恵里が調整し、作ったものだ。それが如何なく発揮しているのを見て罪悪感で心臓が潰れそうになった。

 

「みんなー! 香織は戻った! 南雲の()を無駄にしないためにも地上に戻ろう!!」

 

「……っ」

 

 そんな自分の心の内も知らずに光輝は自分達に号令をかける。状況から見れば確かにそう断じるのが自然ではある。しかし訪れた並行世界で出会った南雲は左腕を失いながらも生きていた。心が砕けても彼はまた再起したのだ。だからこそ香織は光輝の無意識かつ無神経な言葉に香織は苛立ちを覚えた。

 

「っ……!?」

 

 だが遅れて恵里のリアクションを見てその怒りも消え、同時にこのアーティファクトが何に執着を移し変えているかを香織は理解する――彼女が光輝に抱いていた関心が段々と薄れ、それが別の相手に移り変わっていることに。

 

「ねぇ恵里ちゃん」

 

「っ……何、香織ちゃん?」

 

 あの時は何に変えるのかという説明はされてなかったが、今では理解できる。それに納得を覚えつつもあんまりだと香織は思う。いくら多くの人間を自分の目的のためだけに犠牲にするとしても。人間として許されざることを向こうの恵里はやったということに怒りを覚えた。

 

「恵里ちゃんがどうしてそうなってるか。私は知ってるよ」

 

 だけど自分もそれを黙認するしかなかった。目の前の親友だったはずの少女が何に怯え、震えているかをわかっていながらもだ。トータスの人達が死なないために悪事に手を染めようと香織は考えていた。

 

 自分達によくしてくれたというのもあるし、『ただ誰にも死んで欲しくない』という地球で培った倫理観からくる思いもある。けれど一番強いのは友達である鈴が傷ついて欲しくない。ただそれだけのものでしかなかった。

 

 単なるワガママと言ってしまえばそれまででしかない。そんなもので自分は動いているのだ。けれどもそれで構わないと覚悟を決めて香織は恵里の耳元でささやき続ける。

 

「お前、お前ぇ……ッ!!」

 

 振り向いた彼女の表情は憤怒に染まっていた。けれどもそれが必死に維持しなければそこまでの怒りを保てないということも香織にはわかっている。いくらでも恨まれよう。何度だって蔑まれよう。それでも自分は曲げないと香織は恵里に向けて言葉を紡ぐ。

 

「一緒に南雲君のところに行こう。そうしたら恵里ちゃんの身に何が起きたか話してあげるから」

 

「……後で殺してやる。絶対に」

 

 ――天之河光輝への執着、それが南雲ハジメへの()()へと書き換えられている。言葉にするのもはばかられる、思考の書き換えが今起きていると。悪い人間に堕ちたとしても、せめてこの約束だけは守ろうと思いながら。

 

『昔のボクは光輝君を手に入れるためになんでもやろうとしてた。地球にいた頃でも光輝君の幼馴染だった香織と雫は後でどうにかしようと思ってたし、それ以外は積極的に排除してた』

 

 ただ光輝への好意を無くしてるだけではない。とてつもなくおぞましいことが目の前で行われていることを思いながらも香織は向こうの恵里の言葉を思い出す。

 

『トータスに来てからはなおさらだったよ。降霊術なんて便利なものを手に入れたからね。光輝君も殺してお人形にしようと思ってたし、クラスメイトの皆も殺して人形にして魔人族に寝返ろうと思ってた』

 

 多くの人間に慕われている彼女の漏らした言葉に香織も違う世界の南雲も言葉を失っていた。だがその計画も彼女の前世? に出てきた南雲ハジメという少年によってことごとく阻止され、遂には光輝までも失って自爆したのだと当人は述べる。

 

『光輝君も失った。自分の都合のいい人形じゃなくなったからもう何もかもいらなくなって自爆したよ――その後ちょっと不思議なことが起きてね。爆発に巻き込まれた鈴と話をしてたんだ』

 

 その後向こうの恵里は何があったかを語った。ようやく本音で向き合い、言いたいことを言い合ってようやく気付いた。鈴と一緒にいた時間はほんのわずかに安らげるものであったと。

 

『もしあの時橋で会ったのが鈴だったらきっとこんなことになってなかった。こんな風に道を踏み外すことなんてなかったかもしれない』

 

 かつての親友への変わらない思いを吐露するも、『でもおかげでやり直せたしね。すっごく大切なものも手に入ったから』と結局自分の行動を後悔してない様子をしれっと述べたが。これには香織も違う世界の南雲も呆れてしまっていた。

 

「一緒に来て、恵里ちゃん。本当に大事なもの、見つけよう」

 

「……わかった。行ってやるさ」

 

 お互い小声で言葉をかわすと、そのまま香織は宝物庫からゴーレムを格納した三つのガーディアンズボール(山羊型ゴーレム入り宝物庫)を取り出し、そこからゴーレム全てを展開する。

 

「か、香織!? そ、それは一体何なんだ!?」

 

「譲ってもらったものだよ。私のためにね――雫ちゃん。雫ちゃんも一緒に来て」

 

「え?……えぇーーーーっ!!??」

 

 唐突に現れた金属製の山羊に誰もが大いに驚くも、いきなり香織から誘われた雫が一番驚いていた。何せ脈絡もクソもないからだ。

 

「い、一緒に、って……い、行くでしょ香織。だって地上にもど――」

 

「ううん。私、南雲君――ハジメ君を探しに行きたいの」

 

 更に香織の口から出てきた言葉に雫はあんぐりと口を開けるばかり。確かに目の前の親友はこうと決めたらてこでも動かない質だというのは理解できた。だが一体どうやって? そう考えた時、彼女が出した山羊っぽいなにかに目が留まった。これか、と理解してしまった雫は思いっきり顔をヒクつかせる。

 

「ね、ねぇ香織……ど、どうやって! まさかここを降りていくなんて言わないでしょうね……?」

 

「そうだよ雫ちゃん! 話が早くて助かるよ! じゃあ山羊さん、雫ちゃんと恵里ちゃんを乗せて!」

 

「えぇっ!?」

 

 唐突かつめちゃくちゃなことを言い出した香織に雫はまさかと思いながら疑問をぶつけるが、当の本人はそれを全力フルスイングで思いっきり叩き返してきた。しかも巻き込む気マンマンなことに雫はもう訳がわからなくなってしまう。

 

(ここで雫ちゃんをひとりぼっちにしたらどうなるかわからない。だったら連れて行った方がきっといいはず!)

 

 あの狂乱ぶりを見るからに自分がいなくなったら荒れてしまうだろう。それに自分がいなくなったことで光輝が彼女をどう振り回すかわかったものではない。幼馴染の一人に軽く見切りをつけた香織は、ゴーレムが器用に頭を使って雫を乗せたのと恵里がまたがったのを確認し、自分もまたもう一体の背中に乗った。

 

「ま、待ってよカオリン! 南雲君を探したいのはわかるけど、その山羊さんロボにでも乗っていく気なの!?」

 

「何を言ってるんだ香織! 南雲の奴は()()()んだぞ! 君もアイツの後を追う必要なんてない! 雫も恵里も俺がいる! だから絶対守って――」

 

「馬鹿抜かしてんじゃねぇ!! ベヒモスでさえマトモに倒せなかったってのに、そんな誰からもらったものかわかんねぇロボットに頼ったぐらいで――」

 

「……ごめんなさい。()()()君、みんな。私はハジメ君を探すよ。まだ死んでない可能性だってある。だから私は雫ちゃんと恵里ちゃんと一緒に行く――山羊さん、お願い!」

 

 光輝だけでなく他の皆も自分達を止めようと声をかけてきたが、それを振り切って香織は山羊型ゴーレムに指示を出す。その瞬間、体から展開された固定用のハーネスが自分達の腰と足をロックし、奈落の底へと首を向けた。

 

「えっ、えぇっ!? わ、私体固定されちゃったんだけど!?」

 

「ね、ねぇ香織……ま、まさか、このまま落ちるとか言わないよね……?」

 

「えーと……た、多分違うと思うけど、大丈夫! じゃあ山羊さん、ゴー!!」

 

 困惑する二人を他所に香織が号令をかければいななくフリをし、三体のゴーレムはそのまま崖を走っていく。

 

「い、行くなー!! 行かないでくれ香織ー! 雫ー! 恵里ー!」

 

「待ってよカオリン、シズシズ、エリリ~ン!!」

 

「いやぁ~~~~~~~~~~~!?」

 

「ぎゃぁああぁあああぁ~~~!?」

 

「みんな、行ってきまーす!!」

 

 自分達を止めようとする声、漏れ出る二人の悲鳴を耳にしながら少女は奈落の底へと向かう。切り立った崖を足場にし、時には見えない足場を作ってはそこを跳ぶ紛い物の山羊の背に乗って。

 

「ハジメ君、待ってて。今迎えに行くから」

 

 未だ見えぬ暗闇をためらうことなく、ただ自覚した恋心のままに。暗闇の中を突き進んでいくのであった。




別の世界のハジメ君の話は近日投稿する予定です。今度こそ、今度こそエイプリルフールのお話は終わります!……はず(ォィ)
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