では改めまして拙作を見てくださる皆様への感謝を。
おかげさまでUAも77997、お気に入り件数も618件、しおりも244件、感想も170件(2022/1/27 6:42現在)にまで上りました。誠にありがとうございます……あれ、二週間以上投稿なしだったんですけど。なんか伸びてて怖っ。
それとふうすけさん、サボテンテンさん、もろQさん、ロイクさん、拙作を評価してくださってありがとうございます。皆様がこうしてこの作品を評価してくださるおかげでまたモチベーションを高く保つことが出来ました。ありがとうございます。
今回も話を分割した都合で短くなっております。では本編をどうぞ。
(ホントに……何が何なんだよ!!)
玉井淳史は心の中で叫んでいた。
危なげなくこなせた訓練の終わりと同時に何故か現れた冒険者達。
何かやろうとして抑え込まれた中村と、中村や南雲を抑え込んでいた神殿騎士が倒れると同時に始まった乱闘。
そして冒険者達が突如発狂し、自分達が敵視していた南雲達の名前を叫んであのグランツ鉱石のとこへと一目散に向かっていく。しかもそれに触ったせいなのかどこかの階層へと転移してしまう羽目に遭う。
起きた不幸はそれだけではない。自分達のいる石造りの橋の両端に魔物が現れて挟み込まれているのだ。連続して起きた異常事態で頭が回らなくなっている彼の耳に背後の魔物の凄まじい咆哮が響く。
「グルァァァァァアアアアア!!」
「ッ!?」
その咆哮で正気に戻ったのか、メルドとクゼリーが矢継ぎ早に指示を飛ばそうとする。
「お前達、今すぐ階段に向かえ!! ボサっとするな!!」
「アラン! 神殿騎士と合流し、生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァン、ベイル! 全力で障壁を張れ! ヤツを食い止め――!!」
「死ねぇええぇぇえ!! 中村様を害する寄生虫めぇえぇえ!!」
「ぐっ!?」
「お前らのせいで、お前らさえいなければ南雲様はっ!!」
「見ていますか谷口様ぁ! あなたを邪魔した騎士団を今、ダニエラが殺してみせますぅーー!!」
「俺の全ては中村様のためにぃーー!!」
だがここで錯乱していた冒険者が次々と
「皆様! 落ち着いて下さい! 皆様は我ら神殿騎士が命に代えても守ります!!」
(どうして、どうしてこんな時に騎士団の人を襲うんだよ!! ホント意味がわかんねぇよ!!)
前方から無数に湧いてくる骸骨の魔物と背ろから迫る恐ろしい気配。そして南雲達を崇めるかのような言動をする冒険者達のせいで自分を含めた永山グループの皆は半ばパニックを引き起こしていた。この一連の出来事で誰もが違和感を感じたが、いきなり石造りの橋全体が大きく揺れたことでその小さな気づきも恐怖に塗りつぶされてしまう。
(こんな、こんなところで死にたく――)
「これまでの厳しい訓練を潜り抜けた皆様ならば如何なる魔物も倒せます! 背後の魔物は騎士団に任せ、我らと共に前方の魔物に対処しましょう!」
悲鳴を上げ、転倒する人間が続出する中、ここで冷静に判断を下して導いてくれた神殿騎士の言葉に玉井だけでなく、永山グループの皆がすがる。やはり自分達を守ってくれる大人は彼らだけなのだ、と誰もが信じてしまった。
「行くぞ玉井……俺と仁村、お前で目の前の魔物を食い止める。いいな?」
「……ああ、わかった! 頼りにしてるぜ、リーダー!!」
そして天職“斧術師”である玉井は得物の斧を構え、眼前の骸骨の魔物である“トラウムソルジャー”へと向かっていく……敵視する南雲達が属する光輝達のグループの誰もが来ないことに気づけないまま、頼りになる神殿騎士のために、自分のいるグループの奴らを守るために鍛えた腕を振るうのであった――。
「中村恵里、
「は――い、や……だね!」
ノイントの言葉に恵里は思わずうなずいてしまいそうになってしまうも、頭を振ってどうにかその考えを追い払う。ノイントの言葉がひどく甘美なものに思えたことに軽くショックを受けるも、恵里の脳裏にあることが浮かぶ――エヒトが自分にやった『褒美』とやらであった。
まさかこれがと思った次の瞬間、ノイントの言葉によって恵里は確信してしまう。
「ふむ。この程度では無理ですか。ならば主に代わり私が命じます――“首を絞め続けなさい”」
「は――がっ!? あ、ぐ、うぅ……」
「恵里!?」
「そんな、しっかりしてよ恵里!」
ノイントの言葉を聞いた途端、自分の腕が勝手に首を絞めだす。どうにか手を動かそうとしてもわずかたりとも腕は動かない。ハジメ達が駆け寄ろうとしても、元凶であるノイントに攻撃しようとしても、背中の翼から放たれた銀の弾丸がそれを許すことは無かった。
「よくも……よくも恵里を!!」
「あなた方に選択肢はありません、
そう事もなげに話すノイントに大介達四人は恐怖し、彼ら以外のこの場にいた誰もが怒り狂う。だがノイントの翼から放たれる分解能力を宿した羽根が彼らの行動の一切を許さない。故に恵里の命のカウントダウンは刻一刻と近づいてきていた。
既に恵里も顔を青ざめさせてきており、何度も鈴が“天恵”で治そうとしているが結局は堂々巡りでしかない。どうすれば、と誰もが思っていると不意にハジメがわかったとつぶやく。
「なら、僕と恵里があの化物を相手するなら解放してくれるんだよね?」
「ダメだハジメ! お前と恵里だけであの化物は――」
「従うと見てよろしいですね。なら改めて我が主に代わり私が命じます――“その手を放しなさい”」
そうノイントが告げると同時にどうやっても動いてくれなかった手が離れ、ようやく呼吸が出来るようになった恵里はむせ込んでしまう。
「恵里!」
そこにハジメだけでなく鈴や光輝、雫らも行こうとするも、再度放たれた羽根によりハジメ以外の接近をノイントは許さなかった。何度となくむせこみ、ようやく頭に酸素が行き渡るようになると、恵里は寄って来てくれたハジメの耳元で伏し目がちにつぶやいた。
「ごめん、ハジメくん……また、ボクのせいで……」
「恵里の気にする事じゃないよ――恵里、僕と一緒に戦ってくれる?」
「当然、でしょ……ハジメくんの隣は、いつだってボクの居場所だ……!」
しかしハジメは気にする事なく恵里の肩に手を置いて問いかける。そんな愛しい人からのお願いに心からの笑顔を、そして獰猛な笑みを浮かべて応えると恵里は差し出された彼の手を取って立ち上がった。
「ありがとう、恵里――ごめん、光輝君。皆は永山君達の救援をお願い」
「すまないハジメ、俺達は――」
「光輝君の言いたいことはわかるよ。でも、こうなった原因は僕だから……それに、彼らだって怪我したら家族の人が悲しむよ。だから、お願い」
ハジメからの真摯な願いと自分達が忘れていた当たり前の事実を言われたことで誰もが呆然としてしまう。自分達といがみ合っていた彼らだって帰る場所が、帰りを待ち侘びている家族がいるのだ。そんな、あまりにも普通の事に誰もが思い至って何も言い返せなくなる。
「頼むよ。こっちは僕と恵里でどうにかするから。それと浩介君、コレ」
「お、やっとか。待ちくたびれたぜ、ハジメ。これでアイツを――」
「相変わらずハジメくんはお人好しなんだから……ま、そっちの方は任せるよ。エヒトとの戦いで頭数は必要だしね」
ハジメが気配を断っていた浩介に何かを渡すと、そのまま恵里と一緒に走って巨大な魔物相手に対処している騎士団の方へと向かっていく――何も言えずに二人を見送っていた光輝達だったが、不意に龍太郎がある事を立案する。
「……永山達の方は俺と香織、あと何人か来てくれ。そっちの方は俺らで対処する」
その言葉に誰もが顔を見合わせる。永山達が戦っている魔物は遠目から見ても相当な数であり、永山グループの面々と神殿騎士十数名を以てしても倒しきれていない事を考えれば何かしら厄介な要素を持った相手なのだろうと龍太郎も考えていた。だがそれを行かない理由にはしなかった。
「龍太郎、でも……」
「正直俺も残ってコイツらをブチのめしたいのは山々だし、アイツらと協力はやっぱり気が引けるんだがな……ハジメに頼まれたんだ。なら今は怒りを呑んでやるさ。だからよ、ハジメ達の
そう言って龍太郎は香織の方に視線を向けると、一瞬ためらいを見せながらもすぐにうなずいて返してくれた。それに申し訳なさそうな笑みを一瞬だけ向けると、龍太郎は香織と一緒に永山達の方へと向かっていく。その数秒後、鈴と幸利が顔を見合わせ、光輝達に自分達も行く旨を伝えてきた。
「私達も行くよ。回復役は何人いても足りないだろうから。後は頼むね」
「正直俺も龍太郎と同じでアイツらなんざ助けたくはねぇ。でもまぁ、ハジメからの頼みだしな。行ってくる……コイツらをちゃんとブチのめせよ」
そしてすぐに彼らに背を向けて走り出していった。四人の背中が遠ざかっていく中、相対した神殿騎士の一人が光輝達に問いかけてくる。
「……何故です? 何故勇者様は裏切者の肩を持つのですか?」
その言葉に光輝は聖剣を構えながら答える。
「親友だからだ。そしてお前達は俺の……俺達の親友を何度となく無実の罪で非難して、こうして死地へ向かわせた。それ以上の答えなんてない」
光輝が答えると同時に他の面々も各々の武器を改めて構えた。未だ戦う恐怖が消えた訳ではない。だがもうあちらの好きにされたくない、恵里達がこれ以上愚弄されるのを我慢していられないという思いでそれを塗りつぶし、誰もが戦うことを選ぶ。
そんな光輝達を神殿騎士の二人は信じられないものを見るような目つきで見ており、ノイントはただ静かにそれをながめていた。
「……ここまであの裏切者の存在が厄介だったとは」
「ならば一度、我らに逆らったらどうなるかを教えて差し上げましょう」
「それがあなた達の選択ですか。ならばせめて足掻いてみせなさい」
そして相対する三人の目つきが一層
「神殿騎士が一人、ルーニー・アティック」
「神殿騎士が一人、ファナ・アティック」
「「参る」」
「“神の使徒”ノイント、参ります」
「来るぞ皆! 俺が銀髪の女を相手する! 檜山達と優花達はあの神殿騎士の方を頼む!! 雫! 鷲三さん! 霧乃さん! こっちの援護を頼みます!」
「いいのか!? おい、死ぬかもしれねぇんだぞ天之河!」
「本気なのコウキ!?」
「俺に考えがある! いいから今は俺に従ってくれ!」
「すまんが光輝君、私達は少々やらねばならんことがあるんでな!」
「機を見て参加します。ですので雫、あなたが光輝君を支えなさい!」
「はいっ、お母さん! お爺ちゃん!」
一気に距離を詰めてくる三人に光輝達も向かっていく。今ここに戦いの火ぶたは切って落とされた。
「クソッ、邪魔だ!!――“風刃”!」
「ぐぅっ!? おのれぇええぇ!!」
「お前達は引き続き“聖絶”を維持! こちらは私と団長で今どうにかする!!」
「「「「はっ!!」」」」
「エレーナ!――お前の死は中村様の糧になったぞぉおおぉ!!」
一方、クゼリー達の方は通路側から出現した魔物である“ベヒモス”と正気を失った四人の冒険者相手に翻弄されるままであった。
現状、防御魔法最高峰の“聖絶”を三人で同時に行使したおかげで今のところは突破されていない。だがこの多重障壁が形を維持できるのは一分が限界であり、現状団員達が魔力を込めて維持しているが、魔力が切れてしまえばそれまでだ。
この限定された空間ではベヒモスの突進を回避するのは難しい。それ故、逃げ切るためには障壁を張り、押し出されるように撤退するのがベストだ。だがそれを許さないのが狂乱する冒険者達だ。メルドと一緒に対処し、一人ずつ倒していっているのだがこのままでは逃げ切る前に“聖絶”の効力が切れてしまいかねない。
(クッ、このままではもう保たん! ならばいっそ、多少の傷も覚悟で――)
「――“堕識”ぃ!」
「――“れんせぇ”っ」
だが二人の耳に聞き覚えのある声が届いた途端、相手をしていた男の冒険者が一瞬動きを止めた。それを逃さずメルドと共にクゼリーは切り捨て、残った二人の冒険者もいきなりつんのめったところを一気に倒した。
そこで声のする方にメルド達は視線を向けると、橋の上に胃の中の物を吐き出すハジメとそんなハジメの背中をさすりながら心底心配そうに見つめる恵里の姿が二人の視界に入った。
「ゲホッ、ゴホッ、うぇっ……」
「大丈夫ハジメくん!? しっかり、しっかりして……今、魔法で落ち着かせるから」
「坊主、中村……どうして戻ってきた!」
「そうだ! お前達にも退避しろと命じたはずだぞ!!」
橋の上に転がっていた人間の死体を見て吐いていたハジメの心を魔法で落ち着かせると、恵里が二人の質問に答える。
「まぁ教会の奴らの差し金、ってことで……それより今の状況は? 思いっきりヤバいみたいだけど」
「……そう、か。今のところはまだあの魔物――ベヒモスを抑え込めてはいる。しかし――」
「本来なら押し出される形で徐々に退いていく予定だったんだが、襲い掛かってきた奴らの始末に時間がかかってしまった。このままでは――」
緊急時故に猫を被る余裕こそ無かったものの、努めて冷静かつ端的に恵里が説明し、状況の説明を求めた。メルド達は恵里の不遜な物言いは流石にイラっときていたものの、助けられたのは事実であり、そんなことをしている暇はないため、あえて流して今の状況を恵里に聞かせた。
「どっちにせよ乗るしかなかったかぁ……ハジメくん、やれる?」
「……うん。もう、大丈夫。ここで動かなかったら一生後悔する、から……」
「待てお前達、こんなところで死ぬ気なのか!」
結局ここに来なければ本当にまずかったかもしれないことに心底頭を抱えたくなったものの、恵里は吐き気が収まりつつあったハジメに問いかけた。一方ハジメも戦う意思を奮い立たせながら立ち上がり、恵里の目を見つめながら了承する。それをクゼリーは咎めるものの、メルドは一度目をつぶってから恵里達の方を見やった。
「……わかった。中村、ここに転移する前に冒険者の意識に干渉するような魔法を使ったな? やれるか?」
「メルド団長!?」
メルドがそれを認める発言をしたことでクゼリーは大いに慌ててしまう。たった二週間程度の訓練しか受けていない戦いに関しては素人同然な二人を引っ張ってくることと、国の犠牲者である彼ら二人をこうして死地に送り込むことにためらいを見せないメルドの正気を疑ったからだ。
「はい。でも詠唱に時間がかかります」
「ですので僕が恵里の詠唱の時間稼ぎをします。それで大丈夫ですか、メルドさん」
「わかった。クゼリー、間に合わない場合は俺達で二人の時間を稼ぐ。いいな?」
だが当の二人は事もなげにそれを受け入れてやれることのすり合わせを行っていく。正直頭痛がするものの、こんな状況で答えを先延ばしにすることの愚かさをクゼリーはよく知っていた。故に――。
「……わかり、ました。ですが、二人の無事を最優先に。いいですね?」
ため息を吐きながらもクゼリーはそれを承諾するしか出来ず、二人がうなずくのを見るとすぐさま団員達の許へと向かわせた。無論団員達も驚いていたが、手短に恵里達が説明するとすぐに納得した様子を見せた。
「もう“聖絶”は維持出来ん! やれ、南雲!!」
「はいっ!――“錬成”!」
そして悲鳴交じりの団員の指示を受けたハジメの詠唱から作戦は始まる。ベヒモスが突っ込んできて障壁の亀裂がひと際大きくなったと同時にベヒモスの足元が一メートル以上沈みこみ、ダメ押しとばかりにその埋まった足元を錬成して固めていく。
「グルゥォォォオオオオオオ!!」
「――“堕識”!!」
ベヒモスが咆哮と共に沈んだ足場を破壊して脱出しようとする直前、恵里の詠唱が間に合った。ベヒモスの目の前に明滅する闇黒色の球体が現れた途端、魔法の効果で意識を失ってそのまま体ごと倒れ込んだ。
「――“錬成”!」
それをハジメは逃すことなく、ベヒモスの体全体を更に沈めていく。特に頭をより深く、目元以外が見えなくなるまで埋めていく。すぐに脱出が出来ないようにするのと窒息狙い、そして恵里の“堕識”や“邪纏”の効果が発揮するのが“詠唱時に出てくる黒い球体を目で見ること”であるためこうしたのである。
「これなら……クゼリー、アランを貸せ! 俺とアランで他の奴らの援護に回る!!」
「了解しました! では、私達は――」
「もうしばらく残ってくれ! 坊主達だけにした途端、神殿騎士の方が排除にかかってくる可能性があるからな!」
「了解!……聞こえたな二人とも! 今しばらくの辛抱だ!! こちらも土系魔法で援護するからなんとしても保たせろ!!」
「はいっ! 恵里、もう少しだけ頑張って!!」
「――“邪纏”! とぉ~ぜん! ハジメくんからのラブコールがあるならもっともっと頑張らないとねぇ!!」
メルドはすぐにクゼリーと話し合い、騎士団員のアランを連れて階段側へと向かっていった。そして残ったクゼリーと他の団員もハジメと息を合わせながら土系魔法を発動し、恵里も魔力回復薬をちょくちょく飲みながら“邪纏”を何度も詠唱してベヒモスを拘束していく。
この場にいた誰もが玉のような汗をかき、軽く肩で息をしながらも『このままならいける』と勝利を確信していた。ベヒモスは呼吸困難で段々と顔を青ざめさせてきており、拘束に使う魔力もほんのわずかではあるが減って来ていた。
「まだ気を抜くな! ここでもし逃して息を吹き返されでもしたら終わりだぞ!」
「「はいっ!」」
「「「「了解!」」」」
だが誰も気は抜かない。いっそここで確実に仕留めるとばかりに恵里達はその手を緩めはしなかった。
「――――――――!!」
「――“錬成”!」
もう何度目か数えるのも億劫になったベヒモスの足掻き。白目を剥き、けいれんで体を震わせながらであったものの、その巨躯故にもたらす破壊力は凄まじかった。
亀裂こそハジメが錬成を続けているおかげで入ってはいないものの、橋が大きく揺れ、もし仮に何らかの理由でハジメが錬成を止めてしまったらそのまま拘束から逃れたであろう事はこの場にいる誰もが想像していた。
「――“邪纏”!」
「「「「―― “縛石”!」」」」
故に誰も手は抜かない。容赦はしない。白目を剥いているためあまり効果はないものの恵里が再度“邪纏”を叩き込んで動きを封じ、石の鎖を作る土系魔法“縛石”によって雁字搦めにしていく。そして――。
「……終わった?」
もがいていたベヒモスが大きくのけぞったのを最後に、そこから地面に大きく倒れ込んで動かなくなったのだ。それを見た恵里は思わずそうつぶやいたものの、まだ安心は出来ないと恵里を手で制してクゼリーが前に立った。
「……念のため私が確認する」
そう言って腰の剣を抜いておそるおそる近づくと、大きく見開いた白目に勢いよく剣を突き立てた。勢いよく出血こそしたものの、これといった反応は特になく、更に根本まで深々と刺しても
(倒した、のか……私たちが? 本当に?)
目の前の光景が信じられず数秒程呆然としていたものの、ようやく自分達が成した事を理解出来たクゼリーは大いに安堵した。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物をこうして倒せた。後は階段側に沸いた魔物を倒して帰路を確保するだけだ、と。
「お前達、ベヒモスの討伐を今ここに確認した! これより撤退に移るぞ!」
ベヒモスを倒せた事で気が抜けそうになったものの、それはまだ早いと自分に言い聞かせ、まずは恵里達を含む全員がここを離脱することが最優先だと動こうとした――その時であった。
「――総員、前方に伏せろ!!」
階段側の通路から渦巻く炎――炎系の魔法である“螺炎”が自分たちを焼き尽くさんと迫ってきていたのだ。恵里もハジメもクゼリーの声にすぐに反応できたおかげで体を燃やされることは無かったが、螺旋の炎は動かなくなったベヒモスに着弾した。
「総員走れ! 絶対に足を止めるな!!」
クゼリーの指令に従い、恵里達は橋を駆け抜けていく。どうしても自分とハジメを排除したい教会の意志に呆れながらも恵里は走る。鈴が、親友達が、ひどい目に遭ってないことを祈りながら。
本日も懺悔のコーナー
話の構想をしていた時は一話で終わる予定だったのに。気づけば前話含めて四話構成になりそうです……どうしてこうなった定期
あ、あと次回の更新は二、三日後の予定です。