「どうして、僕を好きになったの?」
あてがわれたホルアドの宿の一室、夜に自分の部屋を訪れた少女と向き合いながらハジメは問いかける。自分が好きだということも部屋を訪れた目的もわかった。けれども一体何がきっかけで自分を好きになったのか。香織も一瞬どこか遠くを見ると、微笑みを浮かべながら口を開いた。
「それはね、南雲くんが――」
「南雲お前ぇー!!」
しかしその答えは部屋のドアを蹴破る音と光輝の叫びによってかき消えた。音のする方を振り向けば、声の主である彼を筆頭に何人ものクラスメイト達が部屋へとなだれ込んできたのである。
「え、ちょ、えっ!? と、扉が――」
確かに香織が何度も大声を上げたのだから来てもおかしくないとは思ったが、それでもクラスメイト達が怒りや侮蔑の表情を浮かべて入ってくる様に思わずハジメも及び腰になってしまう。それに部屋のドアもベッドの近くまで吹っ飛んでいるため、最初に部屋に入って来た光輝がどれだけ怒っているのかもハジメは一瞬で理解できた。
「こ、光輝君!?」
「待ちなさい光輝! せめて話を聞いてからでも――」
「見損なったぞ南雲!」
香織が驚きの声を上げたり、数人がざわめいたり雫が光輝を制止しようと声をかけるが、光輝はそのままずかずかと自分の方へと向かってくる。憎しみと敵意のこもった眼差しを向けられてハジメは何歩か後ずさるが、すぐに目の前まで彼はやって来た。
「離しやがれ雫! どうして止めやがる!」
「当たり前でしょう! 部屋の外から聞いただけで何がわかるっていうの!」
「光輝君やめて! 南雲くんに乱暴なことしないで!」
光輝がハジメの方へと手を伸ばした瞬間、香織が二人の間に立ちはだかる。いきなりのことにハジメも驚いたが、ほんの少しの間を置いて光輝が彼女をギュッと抱きしめたことに思わずつぶやきが漏れてしまう。
「ぁっ……」
「光輝、君? え? 何してるの? 離れて――」
「香織。香織が無事で良かった……」
ハジメも思わず香織に手を伸ばそうとしたが、光輝の言葉にどうすればいいのかわからなくなってその手が止まってしまう。香織も困惑した様子で光輝に声をかけており、光輝は安心したような声色でただ彼女の無事を喜んでいたようであった。
「えっと、その……っ」
一体どういうことかとハジメは視線をさまよわせると、檜山と目が合った。その瞬間、彼の口元が吊り上がったのを見て彼は察する。
「檜山から話を聞いたんだ。南雲の奴が君を部屋に無理矢理連れて行くのを見たって」
「え?……違うよ! そうじゃない! 私、自分で南雲くんに――」
「もう大丈夫だ。俺がいる。俺が香織を守るから」
光輝が香織に誓いの言葉を並べ立てると共に部屋中に黄色い声が上がる。そして香織をそっとどかすと光輝は浮かべていた微笑みを崩し、憤怒に染まった表情をハジメへと向けてきた。
「光輝、ちょっと待ちなさい! そんな雰囲気じゃなかったって恵里と鈴も――」
「南雲! お前は人間の屑だ! 嫌がってる香織を部屋に連れ込んで何をしようとしてたんだ!」
再度雫が光輝を制止しようと声を上げたものの、それにもかかわらず彼は叫ぶ。クラスメイトの大半もそれと共に非難の声をハジメへと叩きつけ、ハジメも思わず自身の手を強く握る。
「違う! 僕はそんなことなんてしてな――」
「黙れ! この期に及んで言い訳なんて見苦しいぞ!」
きっと檜山が見ていたのだ。香織が自分の部屋を訪れた一部始終を。そしてその事実をねじ曲げて光輝や他のクラスメイト達に吹聴したのだと。そうじゃないと声を上げようとするも、目の前の少年は拳を振りかぶった。
「待って! やめて! 南雲くんに乱暴なことしないで!」
「落ち着くんだ香織! 君はアイツにひどいことをされて混乱してるだけだ! 今俺がアイツを殴って正気に戻す! 止めないでくれ!」
香織が抱き着いて止めにかかるが、光輝は全然止まろうとしない。このまま自分が殴られてはきっと二人の間に遺恨が残ると考え、ハジメは何か方法が無いかと探るが全然いい方法が浮かばない。
(どうすればいい、どうすればいいんだ!? このまま殴られたら駄目だ! でも土下座とかで何とかしようとしたら僕を好きだと言ってくれた彼女の思いを裏切りかねないし……ええい、こうなったら!)
香織を引きずりながらも光輝はこちらに向かってきている。ならばいっそと考え、ハジメは足を震わせながらも一歩前に出た。
「殴って……殴っていいよ、天之河君」
こうなったらあえて殴られることで場を収めようと考えたのだ。この場の熱狂を収めるためにも自分が悪役をやるしかない。やられることでこの場にいる皆の留飲が下がる結果を用意するしかないんじゃないかと限られた時間で考えたのだ。
このせいで香織に嫌われることが怖くはあったが、幼馴染の二人の間に軋轢を残したくないとハジメは自分を犠牲にすることを選ぶ。
「だけど一回で――」
「覚悟したことだけは褒めてやる」
殴るなら一発だけ、と断りを入れようとした瞬間に彼の拳が飛んできた――ほほ骨が軋む、頭が揺れる、体が浮く感覚に襲われる、背中から来る痛み、空気が肺から抜ける。壁際まで殴り飛ばされたことにハジメが気づいたのは殴られて数秒たった後のことだった。
「「南雲くん!!」」
「今すぐ土下座しろ! 香織にひどいことをしたことを謝れ! そしてもう香織に近づかないことを誓え!」
歓声と悲鳴が半々に上がる中、近づいてきた光輝に胸ぐらを掴まれ、顔を上げさせられたハジメは思わず呆然としそうになってしまう。
「なん、で……」
未だ熱狂しているこの場を何とかするためだったら土下座程度ならハジメもやれた。だが自分は何もしていないのに香織に謝ったり、好きで自分に構ってくれた彼女にもう近づくなと頼むなんて出来はしなかった。それは彼女に対する裏切りだから。痛みに顔をゆがめながらもハジメはそれだけは出来ないとキッと光輝をにらみ返す。
「なんでも何もないだろう! 香織にひどいことをしておいてよくそんなことが言えたな! やっぱり反省なんてしてな――」
「いい加減にしなさい!!」
再度拳を振りかぶった光輝を前にしてもハジメはひるまずに彼をじっと見つめる。だがその時、雫の叫びが部屋に響く。
「止めないでくれ雫! 南雲の奴は何も反省して――」
「反省するのは
振り向いた光輝が雫に反論したようだが、彼女の叫びと共に彼の頭が一瞬ブレた。また自分の胸倉を掴んでいた光輝の手が離れたことに気付き、一体どういうことかとハジメは様子を確認すれば光輝は左ほほに手を当てている。雫の声、そして光輝の様子からして彼がほほを張られたのだと気づくのにそう時間はかからなかった。
「盛り上がってた皆だってそうよ! どうして香織の話を、南雲君の話を聞かないの! こんなのただのイジメじゃない! ふざけないで!」
彼女が怒鳴り散らせば一瞬で熱狂の声が止まり、途端にざわめきへと変貌する。泣きじゃくる香織の手を引き、ビンタされてから動けなくなっていた光輝を横に押しどけて雫はハジメの目の前に立った。
「傷は? ちゃんと意識はある?」
「大丈夫……大丈夫なの、南雲くん」
「うん……ちょっとまだ痛みで頭がクラクラするけど」
「待ってて。今、治すから」
今もグスグスと泣いている香織を見て、間違えたなと思いつつもハジメは治癒魔法を受ける。魔法のおかげで痛みが引き、そのことに感謝を伝えようとする間もなくハジメは香織に抱き着かれた。そしてすすり泣く香織の『どうして』という言葉を聞き、改めて自分は彼女を悲しませてしまったことを自覚する。
「なんで……南雲くん、何も悪くなんてなかったのに……」
「ごめん……この場を収めるには僕が悪役になった方が手っ取り早いかと思って……」
「そんなのだめだよ……らしいけど。南雲くんらしかったけど……うぅ」
『らしい』という言葉にちょっと引っ掛かりを覚えたものの、彼女を泣かせた報いとしてハジメはただされるがままとなっている。こうして胸に当たる柔らかい感触も、今こうしてクラスメイト達がざわめいている状況じゃなかったら色々と耐えられなかったかもしれない。
「どうして……南雲から離れるんだ香織! 雫!」
「そ、そうだ! 南雲の奴なんかかばう必要なんて――」
そんな下世話なことを考えていると、再起動を果たした光輝が鬼のような形相でこちらを見つめてきた。すると龍太郎や檜山達子悪党四人組などもヤジを飛ばしてきたため、雫が床を思いっきり殴った後で吼えた。
「いい加減にして!!……今回のことでわかったわ。あんた達最低よ」
聞き馴染みのない彼女のドスの効いた声を耳にし、ハジメも思わず心臓が止まってしまったかと錯覚しかけた。視線を下ろせば床に蜘蛛の巣状に亀裂が走っており、また彼女の拳からぽたりと赤い雫が垂れている。どれだけ彼女が怒り心頭なのかが嫌でもハジメも理解できた。
「そうだよ……南雲くんの話も、私の話も聞かないで勝手に悪いって決めつけて、そんな
そして自分を抱きしめていた香織もクラスメイト達の方を向いて叫んだ。彼女の怒りをあらわにした姿も初めてで、それも自分のためにここまで怒ってくれてるなんてとどこか場違いなことを思ってしまう。
「で、でも……香織が南雲の奴を好きになるはずがないじゃないか! 授業も訓練も不真面目で、居眠りばっかりしてる奴のどこが――」
「そ、そうだそうだ! そんなヘタレの一体何が良かったっていうんだよ!」
そして同時に光輝や檜山達の疑問も気にかかった。どうしてそこまで自分に構うのか。どうして自分を好きになったのか。もしや一目惚れの類だろうかと思った時、香織が再度叫ぶ。
「すごく強くて優しいところだよ!……あの時みたいに暴力で解決なんてしようとしなかった。だからだよ!」
ちゃんと理由はあったのかと思いつつも、一体いつの話だとハジメは記憶を探る。しかし彼女と出会ったのは高校に入ってからで、出会った頃からずっと変わらなかったはずなのだ。じゃあどうしてと思った時、香織が語り出す。
「中学生の頃……南雲くんは小さな男の子とおばあさんのために頭を下げてた。不良っぽい人達から守るためにね」
その言葉を聞いてある記憶が彼の脳裏に浮かぶ。確かにあった……が、同時に恥ずかしい記憶でもあった。
「その人達に囲まれて何度も土下座してた。唾吐きかけられても、飲み物かけられても……踏まれても止めなかった。それで不良っぽい人達も呆れて帰っちゃったの」
――香織の述べた通り、それは中学生の時にあった事件だった。
歩いていた男の子が不良連中にぶつかった際、持っていたタコ焼きをべっとりと付けてしまったのだ。男の子はワンワン泣くし、それにキレた不良がおばあさんにイチャもんつけるし、おばあさんは怯えて縮こまるし、中々大変な状況だった。
偶然通りかかったハジメもスルーするつもりだったのだが、おばあさんが、おそらくクリーニング代だろう――お札を数枚取り出すも、それを受け取った後、不良達が更に恫喝しながら最終的には財布まで取り上げた時点でつい体が動いてしまった。
といっても喧嘩など無縁の生活だ。厨二的な必殺技など家の中でしか出せない。仕方なく相手が引くくらいの土下座をしてやったのだ。公衆の面前での土下座はする方は当然だが、される方も意外に恥ずかしい。というか居た堪れない。目論見通り不良は帰っていった。
そんななんとも言えない結末の話であった。
「は……? いやまぁ、よく立ち向かったなとは思うけどよ」
「そ、そうだ! 結局南雲は情けない様を見せただけじゃないか! それがどうして香織の興味を引くなんて――」
龍太郎や他数名のクラスメイトは疑問を抱きつつも反論し、また光輝の言葉にハジメも思わず苦笑いしてしまう。結構見苦しかっただろうにと思っていると、光輝の言い分に香織はすぐに反論を返した。
「だからだよ。南雲くんは弱くても立ち向かった。他人のために頭を下げられた。だから私は彼のことが気になったの!」
その言葉を聞き、ハジメは思わずポカンとしてしまう。
今にして思えば警察を呼んだと言って不良連中を帰らせる方法だってあっただろうに、自分がやったのはお世辞にもカッコいいとは言えない行動だ。それでも彼女はそんな自分が気になったと言ってくれた。そのことを飲み込めた途端、ハジメは胸の高鳴りを覚える。
「あの時、私は怖くて……自分は雫ちゃん達みたいに強くないからって言い訳して、誰か助けてあげてって思うばかりで何もしなかった。でも南雲くんは違った」
あの時は体の痛みや助けた相手の何とも言えない視線で周りが気にならなかったが、きっとどこかに香織がいたのだろう。それが彼女が自分を好きになるきっかけだったと思うと、ハジメは香織から目が離せなくなってしまう。
「強い人が暴力で解決するのは簡単だよね。光輝君もよくトラブルに飛び込んでいって相手の人を倒してるし」
「そ、そうだ! 俺だってトラブルの解決だってしてる! 少なくとも南雲の奴なんかよりももっと――」
「そういうことじゃないよ。自分じゃどうしようもならない相手かもしれなくても、でも立ち向かえる勇気があった。だから私は南雲くんを尊敬してたの」
香織の言葉に光輝が反論するも、彼女は首を横に振って否定する。そしてハジメを見てからクラスメイト達の方へと顔を向けた。
「ううん、違う。好きなの。私はどうしようもないぐらい南雲くんが好き。私のそばには南雲くんがずっといてほしい」
そして香織の告白にハジメの胸はドキドキしてしまうが、これじゃあ自分がヒロインじゃないかと思わず苦笑しそうになってしまう。いくらクラスメイトの前だからってここまで大胆に告白されては顔が緩みそうになるし、恥ずかしくて仕方がなくなってしまう。ハジメの情緒はもうぐちゃぐちゃになっていた。
「なっ……そんなはずはない! だって香織はずっと俺の傍にいたし、これからも同じだろ! 香織は俺の幼馴染なんだから俺と一緒にいるのが当然なんだ! そうだろ、香織。雫も!」
「ねぇ
「そうよ、光輝。香織は別にあんたのものじゃないわ。何をどうしようと決めるのは香織自身よ。いい加減目を覚ましなさい!」
だがその告白を真っ向から光輝が否定すれば、普段よりも半オクターブ低い声が香織の口から出て来た。また雫の方も大きな声を上げて光輝を糾弾すれば、彼だけでなく多くのクラスメイトも何歩か後ずさってしまう。
「……そうね。こればっかりは白崎の言う通りよ」
「うん。さっき部屋の外で話を聞いてたけど、結構いい雰囲気だったもんね」
そしてここで園部優花と宮崎奈々も香織の言葉を認める。そのせいで余計にクラスメイト内のざわめきは大きくなり、『別に南雲を好きになったっていいんじゃないか』といった旨の言葉がちらほらと出始めた。
「園部! 宮崎も! あれはどう考えても南雲が何かしたんだろう! 香織がこんなこと言うはずがない!」
「天之河アンタ黙ってなさいよ!……ごめんね白崎、南雲。ちょっとうるさかったし、何があったか気になって聞き耳立ててたわ」
「ちょくちょく叫んでたからね~。ごめんね二人とも」
激昂する光輝に啖呵を切り、どうして二人は味方したのか理由を言ってくれた。そういえば二人は隣の部屋だったことを思い出し、ハジメは引きつった笑みを浮かべる。また隣の香織もみるみるうちに顔が赤くなっていき、さっき自分を口説いたのが嘘のように縮こまってしまっていた。
「園部、宮崎、落ち着いてくれ! 香織が大声を上げていたのもきっと南雲の奴が薬か何かを飲ませようとしたんだ! きっと力じゃ敵わないからそうやって――」
「は? アンタ達が檜山にそそのかされて来る前に私とナナ、それと中村と谷口は一緒に話聞いてたのよ」
だが優花が啖呵を切ったにもかかわらず光輝はその言い分を信じようとせず、勝手に理由をでっちあげてきた。当然優花の方も眉間にシワを寄せて反論し、奈々もうんうんとうなずいている。
「本当にあんたは……!」
ふとギリッと歯ぎしりをする音が聞こえた方を向けば、近くにいた雫が憤怒に染まった表情で光輝を見つめていてハジメは軽くビビる。尤も、ハジメ自身も香織の好意を否定した光輝に対して強い怒りを覚えていたが。
「そんなものただの聞き間違いだ! だって檜山はそう言って――」
「「――いい加減にするんだ/して!」」
光輝は結局言い訳を並べ立てるばかりで優花達の言い分を認めようとはしない。このままじゃ埒が明かないと感じたハジメは香織と目配せをし、一緒に立ち上がって叫ぶ。
「南雲、お前はいい加減香織から離れろ! 香織の優しさを利用するんじゃない!」
「利用なんてしてない! 白崎さんの言葉までどうして否定するんだ!」
「そうだよ! 今こうしてここにいるのも私の意思だよ天之河君!」
端正な顔を怒りに歪めながら光輝が叫ぶがハジメは屈さない。自分のことを好きだと言ってくれた香織の想いを否定させないとばかりに声を張り上げた。そして香織も望んでやったのだと声高に訴える。
「なんで俺の名前を、どうして……南雲、香織に何をやったんだ! 答えろ!」
「まだ何もやってない。だからするよ」
さっきから香織が自分を苗字で呼んでいることに動揺し、青筋を浮かべてハジメに突っかかってきた光輝に向けてハジメはそう宣言する。また光輝がこちらに手を伸ばそうとしたが、雫に羽交い締めにされて引っぺがされた。
「放せ! 放すんだ雫!」
「絶対に嫌よ!――香織! 南雲君! 見せつけてやりなさい!」
「ありがとう雫ちゃん!」
「ありがとう八重樫さん!――じゃあ、僕から言わせて下さい」
雫のフォローに感謝しつつ、ハジメは香織と互いの手を握り合いながら向き合う。
手から伝わる体温、うるむ彼女の瞳、かすかに震える唇、それら全てがハジメの理性を狂わせそうになる。今この場でなければこんな大それたことなど出来そうにないと思いつつも、ハジメはただ胸に沸き上がってきた思いをぶつけていく。
「好きだ。僕も白崎香織さんのことが好きだ! 僕を優しいと言ってくれて、こうして僕のために立ち向かってくれた! そんな白崎さんに僕は夢中になった! ずっと、ずっと僕と一緒にいてほしい!」
「私も……私も南雲くんが好き! 誰にも渡したくない! 南雲くんと一緒に生きていきたい!」
どこまでも情熱的な告白。一言口にする度に全身が熱くなっていく感覚に襲われてもなおハジメはそれを続けていく。向かい合う香織も顔を赤くしながらもこちらをじっと見つめ、どこまでも胸を昂らせる言葉を送ってくれる。
『好き』というものはこんなにも頭をぐちゃぐちゃにさせて、自分をおかしくさせて、そして何より夢中になる感情なのかとハジメは理解しながら香織に微笑む。
「し、白崎がこんなキモオタを好きになるワケねーだろ!」
「そうだ! 香織も正気に戻るんだ! 優しさを好きと勘違いしてるだけだ!」
「間違いじゃない! 白崎さんの言葉を否定するな!」
「うん! じゃあ間違いじゃないってことを今から証明するから!」
檜山達が、光輝がまたしても否定するがそれにハジメ達はひるまず、香織もそう言いながら彼の両ほほに手をそっと差し当てる。たったそれだけで彼女の望みをハジメは察して瞳を閉じた。
「あっ――んっ」
「うん――ちゅっ」
唇に温かいものが触れる。途端、更に体に熱が、愛おしさが、幸せが湧き上がる。そっとハジメは彼女の背中に手を回して密着した。
ほんの一瞬だけヤジが止み、その後黄色い声や叫びが聞こえてきたが彼は何一つ興味がわかなかった。そしてそれはずっと唇を重ねている彼女もそうなんだろうと思いつつ、ハジメはただ彼女の唇の熱を感じることに神経を集中させる。
「そんな……嘘、だろ」
「香織……香織ぃー!!」
「認めなさい皆! 香織は、ずっと南雲君が好きだった。あの子はしたかったことをしただけよ!」
たとえ息苦しくなったとしてもずっとその感覚を貪っていたかった。だがそれも不意に失われてしまう。切ない思いを抱えながらまぶたを開けて彼女を見れば、向き合った彼女は花のような笑みをキッとした表情へと改めた。
「改めて言うね。私は南雲くんが好き。日本にいた時からずっと。勘違いでも何でもないよ」
「……うん。白崎さんは僕のことをどう思ってるかわかったよね」
「「だから――」」
そしてクラスメイト達に顔を向け、彼女自身の思いを改めて伝えたのにハジメも続こうとする。だがその言葉は香織が自分の腰を引いて抱き寄せたことでその機会を失ってしまう。
「ぇっ?」
「――
目を細め、普段より少し低い声でそう宣誓する。母が描いている少女漫画に出てくるイケメンさながらの仕草に今まで体験したことがない程の胸の高鳴りを感じた。
「そん、な……」
「あ、その……はぃぃ」
これじゃあ役者が男女あべこべだ。今夜のイケメン賞は間違いなく香織だろうし、とすればさながら自分はヒロインだ。
男としてはなんとも納得し難いが、こんなのを見せつけられれば流石に笑って受け入れるしかない。ハジメは力無く笑うと、自分も彼女の背中に回していた腕に少し力を入れた。
「カオリン、すごい……シズシズ以上の王子様だよぉ」
「っし! これで後は雫が消えれば……」
「それがわかったら出ていって! 南雲くんを悪く言う人と一緒にいたくないから!」
香織の訴えと共に部屋から一人、また一人とクラスメイト達が出ていく。無言で出るのが半分近く、それも男子の方ばかりだったが中には謝罪や応援などをしてから出た人もいた。大体は女子だったが。
「その……悪かったわね。盗み聞きなんてして」
「ううん。実際僕もそういう状況になったら気になるだろうし。それにまぁ、ね……」
「白崎っち色々世話焼いてたのに無視してたしねー。ま、でもごめんね二人とも」
「ううん。いいの。それとありがとう園部さん、宮崎さん」
「別にいいわ……じゃ、応援してるから」
ハジメ達に何か伝えてから出ていく中に優花と奈々もいた。盗み聞きしたことを謝罪し、手を振って二人は部屋を後にする。
「あれ? エリリンも?」
「うん……ねぇ香織ちゃん、おめでとう。私、二人のことを応援してるからね!」
「ありがと、恵里ちゃん。応援してくれて」
「うん。
その中にはさっき夢の事で話題に挙がった中村恵里もいた。彼女も香織と一言二言言葉を交わすとそのまま部屋を出ていった。そうして大半が部屋から出て行った後、それと入れ違いにメルド達もやって来た。
「お前達! 一体何が……もう解決したみたいだな」
「あ、メルドさん。すいません!」
来るのがもうちょっと早かったら、とハジメは苦笑しつつもまぁいいかと気持ちを切り替えた。もしそうであれば香織がどうして自分を慕ってくれているかを知ることが出来なかったかもしれないから。逆に遅く来てくれたことにハジメは感謝しつつも残った面々と共に事情を説明する。
「そうか……全く。光輝の扱いに関しても考えておく必要がありそうだな」
経緯を聞いてメルドはため息を吐くと、呆然としている光輝を渋い表情を浮かべながら見つめる。ハジメと香織は揃ってメルドにお願いしますと頭を下げると、あちらも頭を何度かかいてから再度ため息を吐いていた。
「色恋沙汰ってのは面倒だからな……龍太郎、それと出来れば雫もだ。光輝の手綱をちゃんと握れ。俺もなるべくフォローはするつもりだが、一番やれそうなのはお前達ぐらいだろうしな」
「あ、はいっ!――いや、でも、その……」
「……はい」
光輝の正義感と思い込みが共に強いが故の厄介さを知ったからか、自身がフォローに入る前提は入れつつもメルドは龍太郎と雫に光輝の扱いを任せた。ただ任された二人は戸惑いや倦怠感に苛まれていた様子で、チラチラと光輝に視線を向けていた雫のところに香織が向かう。
「メルドさんごめんなさい。雫ちゃんはずっと天之河君に振り回されてるんで、それだけはお願いします」
「……ったく。最悪手荒になっても知らんからな」
雫の手を握りながら香織が訴えれば、メルドは何か諦めた様子で大きく息を吐いて背を向けた。そのまま部下と一緒に部屋を出ていく。
「まぁその、なんだ……南雲、香織の奴を悲しませたら許さねぇからな」
「うん。頑張るよ」
「……いいツラになったじゃねぇか。じゃあな」
「じゃあ私も行くわね。この馬鹿がまた何かしないとも限らないし」
「違う……香織は、俺と一緒で……南雲なんかと、そんな……」
「うん。お願い、雫ちゃん」
そして残っていた龍太郎と雫もまた放心状態の光輝を引きずって部屋を後にしていく。そうしてハジメと香織は再度向き合うと、お互いの手を握って微笑み合う。
「ちょっと色々あったけど……よろしくね、白崎さん」
「うん。何かあっても私が一緒だから」
そうして二人の影は重なる――それを見ていたのはトータスに浮かぶ月だけであった。
「なぐも、くん……?」
ハジメが奈落へと落ちていく。彼が足止めしていた巨大な魔物と一緒に、橋の崩落に巻き込まれて。その瞬間、香織の脳内にこれまでのことがよぎっていく。
『俺達で回収しようぜ! 白崎にプレゼントするんだ!』
『――! なら俺も! 俺も手伝うぞ檜山!』
『こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!』
――ハジメと雫と一緒にパーティを組み、他のクラスメイト達から離れて香織はオルクス大迷宮で訓練をしていた。時折彼が魔物を倒す手伝いをしたりしながら進んでいたが、その最中見つけた青白く光る鉱石を取りに檜山達
『待って下さい、メルドさん! 俺達もやります! あの恐竜みたいなヤツが一番ヤバイでしょう! 俺達も……』
『馬鹿野郎! あれが本当にベヒモスなら、今のお前達では無理だ! ヤツは六十五階層の魔物。かつて、“最強”と言わしめた冒険者をして歯が立たなかった化け物だ! さっさと行け! 私はお前達を死なせるわけにはいかないんだ!』
メルドの忠告も無視して触れた途端、別の階層へとワープし、そこで伝説の魔物と呼ばれる存在と無数の骸骨の魔物が現れた。そんな状況に至ったせいでクラスメイト達はパニックを起こし、我先にと逃げ出したり襲い掛かって来た骸骨の魔物相手に武器をただ振り回すなどしていた。
『白崎さん! 八重樫さん! 皆を助けよう!』
『っ! うん!』
『わ、わかったわ!』
自身もどうすればいいかと迷っていた時、ハジメが号令をかけてくれたことで立ち直れた。彼と雫、二人と一緒に動いて魔物を倒したり救助にあたった。
『ありがとう白崎さん! 八重樫さん!』
『えぇ!……こんな時に何やってるのよあの馬鹿は!』
そうして何人もクラスメイトを助け、彼らを立ち直らせていたがそれでも限度がある。無数に湧き続ける魔物じゃ倒してもキリがないし、かといってメルド達に何度も突撃を仕掛けている巨大な魔物相手を倒せるとは思えない。雫のボヤきを聞いてどうしたらと香織が思った時、何か意を決した様子のハジメがこちらに声をかけてきた。
『二人とも、ちょっと協力してほしいんだ。どうにかして天之河君を連れ戻したい』
『……あいつの力で突破口を開く、ってことね南雲君?』
『うん、わかった。南雲くん、行こう!』
そうして二人と共に光輝達のところへ行き、光輝を説得し、ベヒモスという魔物の一撃で倒れたメルドを助かるために全員が時間をかせぎ、そして――。
『ごめん白崎さん。絶対戻るから』
『約束だよ。絶対だよ!』
雫や光輝らの全力を以ても倒せなかった魔物の足止めのためにハジメがある作戦を披露し、残ると伝えた。あふれ出る涙を何度もぬぐいながら光輝達と共にクラスメイト達のところへと下がり、窮地を切り抜けた。
「――えっ」
魔物を埋めることで時間稼ぎをしてくれたハジメの撤退を支援するため、皆で一斉に魔法による攻撃をした。だがある“火球”と思しき魔法がこちらへと向かってくるハジメの近くに着弾し、そのせいで彼が逃げ遅れてしまう。魔物の一撃で石橋が崩れ、彼のいた足場も無数の亀裂が入っていく。
「――嫌」
ハジメがいなくなる。昨日見た最後の夢と同じになってしまう。そう思った時には既に香織は足を一歩前に出してしまっていた。
「香織……まさかっ!」
「香織?――駄目だ、香織!」
雫や他の人の制止する声が聞こえる。けれどもそんなものは香織にとって何の意味もない。行かないと、一刻も早く彼のところに行かなきゃと更に一歩強く踏み出す。
「香織っ、ダメよ! かお――りぃ!?」
自分の手を掴んだ雫をそのまま引っ張り、香織はそのまま駆け出していく。行くのだと決意を固め、親友である雫と一緒なら何一つ怖くないとある魔法を詠唱しながら崖へ向かって走っていく。
「ちょ、ま、待ちなさ、待って――ぅええっ!?」
『香織っ!!』
「――“来翔”!」
皆の叫び声が聞こえる中、香織は思いっきり踏み込んで崖から跳ぶと共にある魔法を発動する。強烈な上昇気流を発生させ跳躍力を増加させる風系統の初級の魔法をだ。
「っ! 白崎さん!?」
「南雲くんっ!!――っ」
風に乗り、大きく跳躍するとそのまま香織は手を伸ばす。だが愛しい人を掴むために伸ばした手はほんのわずかに届かない。
「白崎さん!」
「南雲くん!」
指先すら触れぬまま、
「“来翔”!」
「――雫ちゃんっ!」
「まったく……巻き込んだからにはしっかりやりなさい香織!」
体が少し前へと進み、香織は雫と手を繋いだまま両腕を広げる。そして同じく腕を広げたハジメに迎えられ、そのまま三人抱き合って落下していく。
「白崎さん!……ごめん。嘘ついた」
「南雲くん!――うん。じゃあ罰として一緒にいて?」
目の前の彼から聞こえたうめき声とうるんだ瞳を見て、香織は条件付きで許す。もう別れたくない。たとえ死ぬとしても一緒にいてほしいと思いを込めながら言えば、彼は唇へのキスで返事をしてくれた。
「まったくもう、私だっているのよ?……でも、香織と一緒なら怖くはないかしら」
「ごめんね、雫ちゃん」
「ごめんなさい八重樫さん」
「いいわ。香織もいなくなったあの中で、マトモでいられる気がしなかったし」
軽口を叩くようにつぶやいた雫であったが、軽く顔を青ざめさせながら述べていることから死ぬのが怖いのだということはすぐにわかった。ハジメと一緒に香織は謝るものの、当の雫は色々と諦めた様子でそう語る。
「ねぇ雫ちゃん、もし死ななかったら私と南雲くんと一緒に戦ってくれる? 一生のお願い」
その時、ふと香織の脳裏に昨晩の夢と一緒にある考えが浮かぶ。もしあの夢がハジメや自分が落下した後の未来だったのではないか、と都合のいいものだ。だが、どうしてかその予想があまり外れてないような気がしてしまい、香織は軽く噴き出してしまう。
「もう終わっちゃうでしょ……ま、そうだったら何でもするわ。約束よ」
雫だけでなく自分もすがるためにそう言ってみれば、彼女もしょうがないなぁと言わんばかりの表情で香織を見つめ返す――そして少女達は奈落の底へ、真のオルクス大迷宮へと落ちていく。ほんの少しの希望とも言えない何かに沸き上がる恐怖、そして好きな人と共にいることが出来る安心を香織は胸に抱いて落下を続けるのであった。
「――ふぁ。夢、かぁ」
真のオルクス大迷宮の最奥にある解放者の住処、その寝室にてハジメは目を覚ます。ずいぶん懐かしい夢を見たなぁと思いながら、隣でまだ眠る香織の頭をそっとなでながら昔のことに思いをはせる。
(よく無事だったよなぁ
あの後誰一人欠けることも怪我することもなく、三人揃って洞窟の中の川辺で目を覚ました。川から上がって服を乾かした後、近くにあった通路を三人で慎重に進んだ。その途中、強い魔物と遭遇しないよう通路の壁に穴をあけて通路を作り、壁に小さな覗き窓を等間隔で用意しながらだ。
(まぁその後は怖かったけど。蹴りウサギが壁破ってきた時は死ぬかと思ったし。必死に錬成使ったり二人と協力して生き埋めにしたりして勝ったけど)
左手を何度もグーパーと動かしながらあの時の危機も思い返す。
どうも覗き窓の穴から自分達の匂いが漏れ出てしまったのか、蹴りウサギと称したウサギ型の魔物の奇襲を受けてしまったのだ。しかも運が悪いことにその奇襲でハジメの左腕の骨が砕け、また肉を突き破ってしまったのだ。
(これのおかげで乗り切れたんだよね。神結晶様々かな)
ハジメも死を覚悟したが、自身の“錬成”と香織と雫の土魔法で必死に生き埋めにしたことでどうにか倒し、またその際青白く光る鉱石――後の神結晶を発見したのである。宝物庫と呼ばれる四次〇ポケットみたいなアーティファクトから例の結晶を取り出し、そういえば蹴りウサギに砕かれたせいで元の状態にするのに苦労したなぁとハジメは思い返す。
「ハジメー、香織はもう起きた?」
「あ、まだだから
あの後も大変だったなぁと思っていると、不意にコンコンと寝室をノックする音が聞こえた。この大迷宮で仲間になった少女の声にハジメも対応する。少女に念押しをした上で待っててほしいと伝えるが、一拍置いてから例の少女が
「……なるほど。わかった。じゃあ二人はどうぞごゆっくり。雫と一緒に待ってるから」
「いやいい加減無意味に裏を読もうとするのやめてくれない!?」
……この大迷宮で仲間になった少女であるアレーティアだが、彼女にはいくつかの
囚われの身になっていた彼女を助けた際、
「わかってる。まだ香織とハジメの情熱はまだ燃え上がってるのは私も理解できる……でも雫様もどうか気にかけてあげてほしい。きっとハジメ様のお情けを待ちわびているから。あと香織様の説得は私に任せて」
「だから誤解だし、それと気にしてること言うのやめてくれない!?」
なおこうしてふとした拍子に接する感じが元に戻るし、何度言っても無駄に腹の内を探ってくる癖は直そうとしなかったが。訂正する暇も無いまま遠ざかっていく彼女の足音を聞き、ハジメは思わず深くため息を吐く。
「そうなんだよなぁ……雫さんのこともなぁ」
アレーティアのことは一旦あきらめ、ハジメは雫のことについて考え込む。
一緒にこの大迷宮を攻略していく中、強い魔物と遭遇して彼女が死にかけたことも何度かあった。そこで神水を使ったり、香織の治癒魔法を使って体の傷は癒したのだが、何分心の傷だけはどうにもならなかった。恐怖で震える彼女をケアするべく香織と共に奮闘した結果、彼女とも距離が近くなってしまったのである。
(ヒュドラとの激戦の時もなぁ……香織さんと一緒にボロボロ泣いてたし)
トドメはこの大迷宮の最後の番人であるヒュドラのような魔物との戦闘だったなとハジメは過去を振り返る。
途中までは傷を負っても香織の上級の治癒魔法を使いながらどうにか対処してたが、隠し玉の銀の首の極光を彼女の代わりにかばっていた。そこで生死の境をさまよった上、ハジメ自身の左目もお陀仏になってしまったのである。
どうにかヒュドラは倒せたものの、そのことを三人が気に病んでしまい、フォローするのに相当苦心したことも思い出していた。
(今はもうそこまで気に病んでないみたいだけど、思いっきり香織さんに遠慮してる様子だし、いない時はよく僕のことを熱っぽい目で見てくるしなぁ……どうしよ)
「ん……んぅ」
今となっては大迷宮の攻略よりも彼女とどうするかが大変だと思い返していると、ふと横になっていた愛しい人のうめき声がハジメの耳に届いた。
「……香織さん」
オルクス大迷宮攻略前日の夜に告白してくれたことで好きになった香織との関係は『好き』ではもう収まらなくなってしまっていた。幾度も困難を乗り越え、苦労して食事を作ったり風呂に一緒に入るなりしたことでお互いの思いが更に強くなってしまったのだ。ただそばにいるだけでなく、全てが欲しいと思えるほどに。
「ぁ……おはよう。ハジメくん」
「おはよう。香織さん」
目を覚ました愛する人は寝ぼけまなこをこすると、そのまま抱き着いてキスをねだってきた。ハジメも微笑みながら彼女と唇を重ね、長く長く口づけを楽しむ。
――あることが原因で少女が一歩踏み出した際に起きた波紋はこうして大きく世界に変化を刻んだ。分かたれることなく、よりその絆を強めながら少年と少女は日々を過ごす。神殺しを果たし、地球に戻る日を迎えるために。
おまけ
香織達と関わった皆の未来について(一部抜粋)
※保存してなかったため2024年投稿時とは異なります。昔の方が好きだった人はゴメンなさいね。
・アレーティア=ガルディエ=ウェスペリティリオ=アヴァタール
原作と同様真オルクス大迷宮の五十階を探索してた際、見つけた扉を香織達が開いたことで出会う。ただしこちらでは「あ、あの変な金髪の子!」と香織が叫んだせいで「なんやコイツ」と彼女はイラッとしてしまったが。
その後不審に思いつつも香織達は彼女から境遇を聞き、仲良く号泣。辛かったね、苦しかったね、と何度も言葉を投げかけた後、絶対助けるからね! と三人が思いっきり意気込んでしまう。
そして何か解除ギミックがないかどうか香織達が必死に探したことで例の紋章を見つけてしまい、そこからディンリードのメッセージが込められたアーティファクトを発見。その場にいた皆でそれを見て真実を知ってしまう。それに反発しようとしたアレーティアだが記憶を洗った際に叔父の言葉が真実であることを知り、感激のあまり望陀の涙を流す。
その後魔法やら錬成やらで無理矢理拘束をこじ開け、降ってきたサソリモドキを相手に奮闘。なんだかんだ苦戦するも「絶対に助ける!」の一点張りで微塵も退かない。また戦闘の際に吸血すれば倒せるかもと言い出したら三人から「わかった吸って!」とノータイムで言われ、脳がこんがり灼ける。
そして無事に撃破し、香織達の経緯を聞いたことでシンパシーを感じ、脳も魂も灼き尽くされる。結果、アレーティアは三人の前でかしずき、永遠の忠誠を誓う。ちなみに去年のエイプリルフールもだいたいこんな感じだが、悪印象がほぼないせいで『崇拝』にまで到達してしまう。
なおその直後に香織達が土下座も込みで必死に説得した結果、『表面上は』原作魔王に接する感じに近くなった。ただし心の中では持ち上げに持ち上げまくってる上にいらん気を回しまくっている。しかもふとした拍子に元に戻る上にそれがなんだかんだ上手く回るという質の悪さまで発揮している始末。
そのためこの平行世界のアレーティアは香織達にとってちょっとした頭痛のタネとなっている。
・天之河光輝
香織、ハジメ、雫がいなくなった後も引き続きリーダーを務めようとしたものの大ブーイングを食らう。ハジメは死んだことにしたくせに香織と雫が生きているから迎えに行こうと言い出したり、また転移のトラップを起動させる要員となったのを全員が覚えていたからである。
その上ことある毎に正論でぶつかってくるせいでクラスメイト達のほとんどから煙たがられ、人望が失墜。またメルドからの薦めもあって龍太郎にリーダーを譲ることになり、サブリーダーという立ち位置ではあるものの孤立してしまう。結果、唯一味方してくれた恵里に依存してしまった。
そんな状況の中、オルクス大迷宮を龍太郎主導で攻略する中、魔人族の女とも遭遇。人望を取り戻すために、メルドを助けるために奮闘したはいいが味方の士気が低いせいでアッサリ敗北。
そこに香織達が顔合わせ兼救助目的で来てくれたものの、香織と雫がハジメといい仲なことにショックを受けて原作通りケンカを仕掛ける。なおキレた香織が割って入り、ストマックブローを叩き込まれたせいでアッサリ沈んでしまう。
その後も人望どん底な状況で頑張っていたものの、恵里の裏切りによって精神までどん底に落ちてしまう。しかしそこで恵里の本音を聞いたことで光輝、覚醒。彼女ひとりのために戦うことを決意する。
・坂上龍太郎
人望が底値まで落ちた光輝に代わってリーダーを務めることに。不慣れながらもメルドのサポートを受けてどうにか指揮をしていたが、それも恵里の裏切りまでだった。その後は目を覚ました光輝にリーダーの座を渡し、サブリーダーとしてそれまでの手腕を発揮することとなる。ちなみに経緯は違うが原作同様鈴に惚れた。
・中村恵里
ハジメだけでなく香織と雫がいなくなったことに内心ガッツポ。ただ表向きは皆と一緒にへこんでいるよう演技していた。そこで傷心中の光輝に近づき、彼の理解者を演じることで段々と依存させていった。
なおその後魔人族とエンカウントしてヤバくなるも香織達がカムバックしてくれたおかげでなぶられる羽目に遭わずに済む。その後香織を自分のものにしないかと檜山に持ちかけ、魔人族の女の死骸に降霊術を用いて原作通り裏切ることに。
リリアーナをあえて泳がせて逃がし、香織達をおびき寄せること
その後は本音も何もかもブチ撒け、覚醒した光輝から本物の愛を、鈴から真の友情を得る。そしてアレーティア謹製「逆らったら演技してる時の人格に洗脳する」首輪をつけられ、協力することを強制される。結構寛大な処置で済んだ(そんなに寛大じゃない)
また昇華魔法、地球帰還の際に首輪の制約を強化させられた程度で済んだ。めでたしめでたし(そんなにめでたくない)
・谷口鈴
ハジメだけでなく香織、雫までいなくなってしまったことに大いにショックを受けてしまった。そのせいで普段のエロ親父ムーブもどこかぎこちなく必死なモノになってしまい、またクラスメイトから何か言われたり鋭い視線を向けられるだけで押し黙ってしまうことがしばしばになった。
魔人族に負けた際、香織達が助けに来てくれたことに大いに安堵して戻ってきてほしいと半ばすがるように頼み込むこともしている。だが苦しげながらも袖にされた時は空元気で彼女達を見送った。また八方美人ムーブが続いたのも恵里が裏切るまでである。
恵里が自分達を裏切った際には絶望感のあまりただただ涙を流していたが、無力化された彼女から本音を聞いた時には泣いて彼女にわびる。そして本当の彼女の親友に、味方になると決意して周りから白い目を向けられても献身的に動いた。
ちなみにその姿を見て龍太郎に惚れられ、鈴も気遣ってくれる彼にときめいて恋仲となる。
・その他大勢のクラスメイト(清水含む)
ハジメだけでなく香織、雫も後を追うように奈落へと落ちていったことで自分達が今いる状況を理解させられてしまう。結果、戦意喪失。だがイシュタルから「戦わなかったら今いる場所から追い出すんで。あ、それと指名手配もするんで(意約)」と言われたせいでもう戦うしか出来なくなってしまう。あと光輝、小悪党四人組に対する信用信頼が地の底に。
そのため大迷宮の攻略もあまり進まず、原作よりも浅い階層で魔人族の女と出くわして割と負けてしまう。しかもすぐに降伏しようとしたのに光輝だけがそれを突っぱねるものだから死ぬ寸前までなぶってやると言われて戦慄。ただすぐに香織達が助けに来てくれたことで無事に助かったが。
その後、恵里の裏切りによって死んでいた士気がここで完全にお陀仏になる。しかしエヒトがアレーティアの体を乗っ取って神域に連れ去った後、ハジメ達の激励と「地球にいる家族を一緒に守ってほしい」と懇願されたことで一度だけ立ち上がって戦うことを決意した。
・檜山
奈落の底に落ちたのがハジメだけじゃなくて香織と雫もであったため、やる気がほぼ消滅。神の使徒特権で娼館に通いつつ無理矢理モチベを維持していたが、ある日香織達が自分達を助けに戻ってきた後、恵里にそそのかされて彼女の企みに乗ることに。
その後恵里の裏切りでクラスメイトを助けに来た香織を原作通り殺そうとするも、余裕で気配を読んだ香織に攻撃を避けられて頭を杖で思いっきり殴打される。無事昏倒した。
そしてキレにキレまくったアレーティアによってスマッシュされ、いち漢女としてやり直し。ディアベルちゃん、爆☆誕。エヒトとの最終決戦は他の漢女と共に大いに暴れまくった。
・近藤
概ね他のクラスメイトと同じ。なお香織達の乱入によって恵里に殺されずに済んだ。
・愛ちゃん
香織達が死んだ(死んでない)ことにクラスメイト達同様強いショックを受ける。そこで全員を死なせないために保護しようとするもイシュタルに脅されたせいで原作と違って誰も保護できずに終わる。
結果軽く精神を病んでしまい、またハジメがそこそこ上手く立ち回ったせいで彼に対してそこそこ強めに依存してしまった。あと割かし卑屈に。
・シア含めたハウリアの皆
香織達が原作よりも一日早く拠点を出た影響で、帝国兵に追い回される前に彼女達と遭遇。その後帝国兵とエンカウントするも香織達が無力化。キツ~く灸を据えたことでハウリア族全員が無事な上に情報が広まらずに済んだ。
そして原作通り助けて貰ったお礼とハウリア族が厄介ごとに巻き込まれない為に香織達の旅に加わることに。なおその際香織達がシア含むハウリア族を鍛え直したのだが、原作と違って助けたタイミングと保護した人数が多いこともあって若干スムーズに鍛錬が進んでたりする。
・イオク(仮)さん
香織達が北の山脈地帯で出くわした黒竜であり、その正体である人物。なお戦闘の際にシアが頭にキツい一撃を叩き込んだことで洗脳から目が覚めたどころか記憶喪失に。その後、何者か尋ねた際に「……ィオ、ク……多分イオクじゃな」と半端に思い出したせいでしばらくその名で呼ばれることに。ペシャン公ではない。
原作通り襲ったウィルから今すぐ殺せだの何だの言われた際、「この命を以て償わねばなるまい。何かすべきことがあったはずじゃが、それを理由に命乞いなど許されるはずもなかろう」と述べて大人しく首を差し出した。しかしそこで竜人族のファンであるアレーティアが必死にウィルに頭を下げまくって取りなしを得る。
自分を助けてくれたアレーティアに感謝して仲間に加わることに。だが記憶喪失のせいか割と豪胆かつ上手く駆け引きをしながら動くせいで、アレーティアの中の竜人族に対する見方にちょっとヒビが入ってしまう。
具体的に言うとこう「えっと、誇りある種族だけど、えっとでもこういう押せ押せ的じゃないはずだし、でも駆け引き上手だし……」とどう見ればいいかわからなくなった感じ。
魂魄魔法を手にし、アレーティアから治療を受けたことで記憶も元に戻る。なお記憶喪失してた時のこともしっかり覚えていたため、しばらくの間めちゃくちゃギクシャクしていた。あとその時のことを言及されるとよく顔を赤くして背ける。あんまり言うとキレ出す。
・リリアーナ
なんやかんやクラスメイト達の境遇に心を痛めてた。とりま理性的な人間を集めてお茶会開く、向こう側のワガママを時に抑えるなどして上層部に訴えたり。恵里が裏切って国の上層部の人間が爆死したことで一層おいたわしくなった。
・イシュタル
死因:爆殺
なお下手人である愛子はやった当初、涙を流しながら高笑いしてた。