おかげさまでUAも99815、お気に入り件数も699件、しおりも291件、感想数も277件(2022/4/17 17:40現在)になりました。本当にありがとうございます。
いやー、お気に入り件数もそうですけどUAが次の大台に乗るとは……感無量です。これもひとえに拙作に興味を持って見てくださる皆様のおかげです。改めて感謝いたします。
そしてAitoyukiさん、今回も拙作を再評価していただき、誠にありがとうございます。毎回拙作を評価していただけるおかげで今回もまたモチベーションが上がりました。本当にありがとうございます。
今回前後編と分ける都合で少し短くなっております。上記に注意して本編をどうぞ。
「あ、偵察に行った猫ちゃん達が戻って来たよ」
「えーと数は……うん、欠員なし。こっちの方は安全みたいだね」
鈴が言った通り、“縛魂”で操っていた六本足の猫や梟型の魔物達が恵里達
「そうだね鈴、ハジメくん――よーし、それじゃあ今度はそっちの方に行けー! 敵と遭遇したら死んでもいいから戦えー!!」
その号令と共に魔物達の群れは恵里の指示した方へと進んでいく。
――イナバが神水を飲んで知恵を得た騒動を話して男子~ズに軽く呆れられた後、恵里達は休憩もそこそこに作戦会議へと移った。内容はこの階層で相対した敵の情報の再確認とマッピングに関する班分けについてだ。
情報の再確認はつつがなく終わり、それで班分けは前の階層と同じでいいだろうかとメルドが問いかけた際、恵里があることを述べたのだ。『“縛魂”で魔物を操れば偵察部隊の代わりになるから、その分班を増やせるけど?』と。
メルドはそれを聞き、腕を組みながら思案する。それが出来ればマッピングにかける時間も幾らか減らせる。だが“縛魂”の射程が短いことを考えれば恵里が危険であり、しかも使役を前提と考えると全員が積める戦いの経験がその分少なくなることをメルドは問題視したのだ。
そこでその懸念をメルドが口にすれば恵里もその危惧にうなずいて同意を示すも、少し考えてから恵里はこう返してきた。
『その分時間も負担も減らせるからいいと思うけど? あとマッピングが終わった後でお互い万全な状態にしてから“縛魂”を解除すればいいんじゃない? 一応経験は積めるだろうし』
そう言い返されたことでメルドも何も言えなくなった。神水もいつまで出るかわからないことを考えれば攻略にかける時間は少しでも減らした方がいい。それに頑丈な拠点を用意できて、家具を作ったりなんだりしてはいるがちゃんとした場所で全員を休ませたいとメルドは考えていた。今あるのはあくまで代用品であって、ちゃんとしたものではないし、安全もちゃんと担保されている訳ではない。それ故の焦りがメルドにはあった。
そのため恵里の提案を受け入れた上で班決めを行うこととなった。結果、光輝、雫、幸利、大介ら四人にメルドの班とハジメ、恵里、鈴、龍太郎、浩介、優花ら三人の班でまずは行動し、ハジメ達のいる班は“縛魂”をしながら進むことに。そして“縛魂”で十分な数を揃えた後、ハジメ、恵里、鈴の三人が龍太郎達と別れて行動する、ということになった。
いくら魔物がいるといえど三人だけじゃ無謀だと誰もが反対したものの、ハジメの扱うドンナーによるフレンドリーファイアの心配や、他の班から下手に人員を引いた際のリスクも考慮してこのような結果となった。もちろん危険だと感じた場合の手段も用意してから向かうことになった。
「とりあえず大量の閃光手榴弾とこの盾があるから大丈夫だと思うけどねぇ」
そう言うと恵里はハジメが背負っている盾を指差す。訓練の時からずっと持ち続けている彼の盾だが、今は少し手が加えられている。
元々一般兵が使う代物をメルドが理由をつけてくすねてきたものであり、鉄製の盾に革のグリップや背負ったりするための革帯が取り付けられたタイプだ。ステータスが一般人程度でしかなかった頃は背負うのも一苦労していたそれは今、盾そのものは純タウル鉱石製となっている。ちなみに元の素材はピッチャーなどに化けた。
「メルドさんも皆も心配なんだよ。僕だって、光輝君、雫さん、幸利君だけだったらものすごく心配してただろうし」
そう言うとハジメも盾を構えて周囲を見渡す。全員が“気配感知”を使って半径十メートル内を索敵しているが、それらしい相手は今のところいない。また恵里も“縛魂”によって出来た魔物との魂のリンクによって、使役している魔物の反応が弱まったり無くなっていることからあちらが交戦中なのも把握していたが、“気配感知”には引っ掛かってないことから十メートルより遠くにいるということはわかる。
「……反応が二つ消えた。それとこっちに逃げて来る気配が二つ。ハジメくん、鈴」
「うん、了解」
「わかったよ。じゃあまずは“聖壁”!」
行き止まりだったら戻るか、進んで『魔物とだけ』戦うこと以外命令していない魔物達から離れていくのを見るにおそらく逃げ出したのだろう。こちらに迫ってくる相手の反応からそう考えた恵里はすぐにハジメと鈴に声をかける。
ハジメも鈴も油断することなく武器を構え、バリアを張って接敵に備える。そうして現れた梟の魔物相手に三人は難なく勝利を決め、恵里達はマッピングを再開していく。
……そうしてしばらく後に光輝達全員と無事に合流し、龍太郎の班が下に続く道を見つけたことから、“縛魂”で操っていた魔物達を何匹か解放し、それらを経験と食料に変えて一旦休憩をとってから恵里達は向かうことにした。
次の階層は蒸し暑く、地面がどこもかしこもタールのように粘つく泥沼のような場所であった。
「暑さもそうだけど、この足場は……結構キツいな」
「うん……足を取られて動きづらかったね。私達は“空力”があるからまだ何とかなるけれど、それが使えなかったら移動だけでも結構時間がかかりそう」
光輝の言葉に香織も続き、同行していた恵里達も顔をしかめながら二人の言葉にうなずいた。彼らは今、せり出た岩を足場にするか、“空力”を使って透明な足場を展開することで無理矢理進んでいる。それは先行している浩介と雫も同じであり、誰もが蹴りウサギから得られたこの技能に心底感謝していた。
そして拠点は一体どこにしようかと全員が周囲を見渡していると、ハジメが顔を青ざめさせていたため、それが気にかかった恵里はすぐさま彼に問いかける。
「どうしたのハジメくん。何かあった?」
「いや、その……皆、落ち着いて聞いてね? ここ、火気厳禁なんだ……」
一体どういうことかと一度浩介と雫も呼び出し、全員で“気配感知”を使って索敵を続けながらもハジメの話を聞いていれば、何故彼の顔色が悪くなったのかが嫌というほどわかってしまった。
曰く、拠点探しついでに銃弾や武器製造に使える素材はないかと“鉱物系感知”を使いながら周囲を見ていた際に見つけたのだ……この階層特有のものであるフラム鉱石を。
それは艶のある黒い鉱石であり、熱を加えると融解しタール状になるものである。しかも融解温度は摂氏五十度ほどであり、タール状のときには摂氏百度で発火するという。この程度だったらまだ皆背筋がヒヤリとしただけで済んだだろう。だが問題はここからであった。発火した際の熱は摂氏三千度にまで達し、燃焼時間はタール量による……うっかり火種が舞おうものならどうなるか。それを誰もが理解してしまい、ハジメに負けない程に顔を青ざめさせていく。
「……うっかり火をつけたら灼熱地獄待ったなしだな」
「そうね……本当に、本当に使わなくて良かったわ…………」
浩介も雫もこれには本気で体を震わせ、今自分達が踏みしめているタール状のそれを見て冷や汗と悪寒が止まらなくなっていた。
こんな“炎術師”である信治涙目なところじゃ絶対安心して寝れないと誰もが思っていると、不意にタールのしぶきが舞うと同時に恵里の連れていた魔物の反応が消えた。
「汚っ――!? 皆、魔物とのリンクが全部消えた!! 敵はどこ!?」
「け、“気配感知”に全然引っ掛からなかったぞ!? 一体どういうこった!?」
「ほ、本気の浩介君ぐらい影が薄い敵が相手なの!? ど、どうしよう!?」
恵里の言葉に皆が混乱し、龍太郎と香織の言葉に誰も反応なんて出来なかった。“気配感知”を使っていても本気の浩介のように気配の『け』の字も感じさせない相手にどうすれば、とパニックを起こしてしまったのだ。
浩介も『皆が普段俺に対してどう感じてたのかがわかったよ畜生!!』と内心キレながらも周囲を見渡す。そこでいち早く立ち直った雫が大声を上げた。
「円陣! 皆、背中合わせになって円陣を組みましょう!! それならどこから来ても誰かが相手出来るわ!!」
「そうだね雫! じゃあ香織、“聖壁”を」
「うん、わかったよ雫ちゃん! じゃあいくよ、鈴ちゃん!」
「「――“聖壁”!!」」
武術に幼少期から慣れ親しんでおり、八重樫の裏にも精通していた彼女であったが故に適切な判断を下せた。全員がそれにうなずくとすぐに雫の言った通りに陣形を組み、香織と鈴も姿の見えない相手がいつ来てもいいように円形の結界を張って全力で警戒する。
釣り餌代わりになる魔物はさっきの襲撃で既に全部死んだ。トータスに来てから世話になっていた“気配感知”は今は使えない。一体どこから? 一体どうやって? 苛立ちと疑問符が重なる中、恵里は目を皿にして天井、通路、地面を幾度も見まわすがそれらしい影は中々見えない。そこでふとさっきタールのしぶきが飛んだことを思い出し、まさかと地面――タールの沼に視線を落とせば波紋が広がっていた。
「――全員、下だ!! 下から来るぞ!!」
誰よりも早く気付いたらしい光輝が声を上げると、全員が下に向けて武器を構える。途端、黒い水面から現れた
「――! このっ!!」
「「“光縛”!!」」
「“邪纏”!!」
撃鉄を叩いた際の火花が地面に落ちるのを恐れ、ドンナーでなく盾を構えたハジメへとバリアを砕きながら鮫型の迫るが、そのバリアのおかげで迫る勢いは弱まり、すぐさま鈴と香織が発動した“光縛”によりヒレと尻尾を拘束されて勢いを失った魔物はそのままタールの沼に叩き落され、恵里の“邪纏”によって動くことすら封じられた。そしてそれを逃すような間抜けは恵里達の中にはいない。
「そこだっ!――って弾きやがった!?」
「“剛力”――うぐっ!? デカいゴムを殴ったみてぇだ!」
浩介は針を投擲するも目玉以外は容易に弾かれ、龍太郎も必殺の一撃を叩き込んだはずなのに魔物を軽く転がす程度のことしか出来なかった。
「なら私が――ハァッ!!」
そこで雫が剣を抜き、更に“風爪”を上乗せして袈裟懸けに切る。すると“邪纏”によって身じろぎ一つ出来ない魔物は体の半ばまでがその一撃で裂かれ、吹き出た鮮血がタールの黒と混ざっていく。切る方ならば効くと誰もが確信し、雫もトドメを刺すべく“風爪”で魔物の頭を両断して確実に息の根を止めた。
「斬撃は効くな……よし、一度撤退しよう! この魔物の肉を切って全員を強化してからここに再度来る。そして全員でマッピングをしてから一気に抜ける。いいか?」
光輝の指示に全員がうなずき、香織と鈴が結界を張り直すとすぐに全員で鮫型の魔物の解体に移る。ソリに載せるには足場が悪いし、また内臓も持っていくとなると面倒になったためあくまで身の部分のみを切り落とし、それを光や岩のロープで縛って下げると、恵里達は周囲を警戒しながら足早にこの階層を去っていった。
「はい一本釣りOK!」
「任せたよ鈴!」
「うん、いくよ! “聖壁・刃”!」
恵里が使役していた魔物がタールの沼から出てきた鮫型の魔物に食われるのを確認すると、ハジメは盾を構えて二人の前に立ちながら鈴に声をかける。それに応じた鈴も“聖壁・散”の応用でバリアを一つの巨大な刃に見立てた“聖壁・刃”によってたやすく魔物を真っ二つにした。そしてすぐさま解体作業に移り、軽めの金属で作った背負子に切り身を載せて針金で固定していく。
「――よし、それじゃあ次に行こうか」
ハジメの言葉に恵里と鈴もうなずき、お供の魔物こそいなくなったものの、三人は目印をつけながら階層を巡っていく。
こうして恵里達が何の苦も無く三人だけでここを駆け抜けることが出来るのには相応の理由があった。次の階層へと続く道の近くに作った拠点に全員が戻り、魔物を食してステータスプレートを見た時のことである。そこで新たに生えた技能を見たことで全員がそのからくりに気づいたのだ――“気配遮断”といういかにもな技能である。
要は自分達を“気配感知”で調べ、“気配遮断”を使ってこちらに迫っただけということだ。ならば自分達も同じことをすればこの階層の突破は容易であると考えた……つまり、ここにいると悟られなければいいのだ、と。
「今度は僕が餌役をやるよ。二人はちゃんと“気配遮断”を使っててね」
だがそれでは技量も伸びず、気配も感じさせずに迫る相手に対する経験が積めない。それも少しもったいないということになり、誰か一人だけそのままに他は“気配遮断”を使って進むことで敵を水面から引きずり出して戦いながら進もうということになったのだ。
「……やっぱり戻んない二人とも? いくら鈴がバリア張れるから、って限度があるよ? やっぱり二人が怪我したら――」
しかしその疑似餌役を誰にもやらせたくないと恵里が駄々をこね、彼女達の班のみ前の階層の猫と梟の魔物を従えて再度挑戦することになった。そこで餌役の魔物がいなくなったことで不安になった恵里は階層を駆け巡っていた二人に向けて戻ることを提案するも、ハジメも鈴も苦笑いを浮かべながらそれに優しく反対する。
「気持ちだけ受け取っておくね、恵里。未来の僕はここを自力で抜けていったんだろうし、自分の技量を高めるためにもやっておきたいんだ」
「鈴もそうしたいけど、そのせいでハジメくんの技量が落ちてどこかで死んじゃうって思ったら……ね? 我慢だよ、恵里。後でいーっぱい甘えよ?」
二人にこう言われてはさしもの恵里も何も言えず。自分が甘やかしたせいでハジメと鈴、そして皆の危機に繋がるとなれば受け入れざるを得ない。いいように転がされることに甘んじながらも恵里は二人と一緒に階層を進むのであった。
「ふんふふ~ん♪」
そうしてタールまみれの階層を突破し、このタールを使って焼夷手榴弾を作ることを考えたハジメがある程度の量を確保してから次の階層へと進むこととなった。
拠点を作り、二つ前の階層から汚すことなく無事に運び出した家具も配置した彼らは今、ご機嫌な様子で鮫型の魔物の肉を調理しにかかっていた。
「こっちの方は骨取り除けたよ。これで全部終わりー!」
「私もこびりついてた血とかタールを洗い流しといたよー!」
「先生ー! とりま風で水気は切っといたぞー!!」
今回はただ焼くのではなく、ちょっと手間暇を加えた上での調理。久々に
「こっちも第一陣の裏ごしが終わったー!! お鍋の水はどう、優花さーん!」
「ちゃんと煮えてるわよー!!……いよいよね」
丁寧に骨を取り除き、不要な血もタールも脂も水属性魔法のエキスパートである奈々が洗い流し、余計な水気も良樹の風系統の魔法で取った。それを細かい網の目で裏ごししたハジメが、あまり調理をしてこなかった大介や幸利らに渡してそれの形を整えてもらう。団子状にしたそれを浩介が優花の下へと持っていくと、それを受け取った優花も形を崩さないようゆっくりと鍋に入れていく。
「な、なぁ園部、い、一体いつ出来るんだ? すぐか? それともかなり待たないと駄目か?」
「はいはい慌てないの。こういうのは適度に時間をかけるのが大事なんだから」
礼一に急かされるも、特に気に留めた様子もなく優花は鍋に浮かぶ灰に近い色合いの団子をじっと見つめる。ぷかぷかと浮かぶそれを眺め、家でやってた時はどれくらい時間をかけていたかを思い出しつつ、借りた時計にも視線を向けながら煮えるのを待つ。
「まだかまだかまだかー! あーもういいだろ園部!」
「すまん優花、俺も大介と同意見だわ。もういい具合に煮えただろ?」
「はいアンタらは焦んない。いい加減待つのも覚えなさい」
そして早く早くと急かしたてる奴らを適当にあしらいつつ、お玉や菜箸(という名目で使っている金属の箸)でつついて具合を確かめると、さっきの階層でいいとこ無しで火の番ぐらいしかマトモにやれず不機嫌な信治を見てため息を吐く。
「……中野、良かったら食べなさいよ」
「え、マジ!? いいのか!?」
「アンタさっきいいとこ無かったでしょ。ま、文句も言わないで火力調整してくれてるんだからね。これぐらいならいいでしょ。はい」
団子と汁を持った器を自身の使っている箸と一緒に差し出されて困惑する信治。だが差し出した優花はやれやれといった感じで食べろと言ってきたためその厚意に甘え、他の奴らから恨めしそうに見つめられる中それを受け取って口にする。その瞬間信治は目をひん剥いた。
「マジかこれ! うわ、うんまっ!! ダシ出てるし美味ぇし!」
「ん、それなら大丈夫そうね。はいじゃあ皆、並びなさい!――つみれ汁、出来たわよ!!」
その一言に誰もが沸き立つ。つみれ汁。つみれ汁である。
調理に関しては肉を焼くか煮るかが大半で、他の家具の作成などで後回しになっていたことで最近蒸し器が完成したから蒸すのも出来るようになった程度でしかなかった。食材のバリエーション自体がないせいで誰もが諦めかけていた時、鮫型の魔物が出てきた意味は大きかった。疑似的とはいえ海産物が食べられるのだ。
鮫なんて誰も食べたことがないとはいえ、その衝撃はとても大きい。拠点にいて説明を受けた面々は元より、それを拠点に持ち運び、説明を終えて緊張が解けた後でどう食べるかを考えだした恵里達もまた興奮したのである。
その時は流石に量が少なく、個々人が好きな調理法で少量の身を食べてもらっただけであったが、どうせだから何か工夫して食べたいと調理を担当している面々は考えた。その際良樹が『刺身食いてぇ!』と言い出したものの、寄生虫や未知のウィルス相手に危険ということで没となり、他に何かないかと優花が思いついたのが“つみれ”だったのである。
「うわぁ……ダシ! ダシ出てるよ!!」
「久々にお肉以外の食べ物だぁ……生きてて、生きてて良かったぁ……」
行儀よく一列に並んで自分の器を優花に渡せば、彼女も上機嫌になりながら器につみれとその出汁が染みたお汁を入れていく。
「よーしお前ら、久々の肉以外の食事だ!! ちゃんと味わって食えよ! では――」
いただきます、と恵里達は神妙な面持ちで目の前の食事に向き合い、メルドもいつも以上に熱のこもった祈りをささげた後、それに手を付けていく。全員がアツアツのつみれを口に含んだ途端、顔が一気にほころんでいく、
「~~~~~~~~~~~~~~~っ!! あ~もう、美味い!」
「本当に美味しいね! 塩ぐらいしか味付けしてないただのつみれなのに懐かしくて美味しくて……あれ、涙出てきちゃった」
誰もが泣き笑いをしながら久方ぶりの肉以外の食事を、その触感を楽しんでいた。口の中でほぐれるその感触を。シンプルに塩味がついただけなのに、あまりにも淡白なそれがとてもとても美味しくて仕方が無かった。
「キュゥ~……」
「あ、イナバ。もう食べ終わっちゃったのね……はい、いいわよ。今持ってくるわね」
そして軽く怯えた様子で器を口にくわえたイナバが優花のところへとやってきていた。お汁含めて既に空になった器を見てイナバの頭を優しく撫でると、微笑みながらイナバ用に取り分けた小さい鍋の方へと向かう。そして冷ましたつみれ汁を盛って出してやれば、イナバも美味しそうにそれを口につけていく。
「美味しいよねぇ~流石優花だよぉ~」
「本当、妙子の言う通りだよな。優花が思いついてくれなきゃコレ食えなかったしな」
「わ、私だって洋食屋の娘よ。それくらい思いついて当然でしょ……でも、ありがと」
感慨深そうに言う妙子と幸利を見て優花もそっぽを向きながら答える。まんざらでもない様子を見て奈々と妙子がからかい出し、料理上手であまり素直になれない彼女に幸利も何か温かいものを感じていた。
「……地球にいた頃はさ、こんなシンプルな味のつみれ汁でここまで感動するなんて思わなかったな」
「うん……今まで食べたご飯の中で、一番染みるわ……」
出汁を飲んで顔をほころばせながらも光輝は地球にいた頃を振り返っていた。そんな彼を見ながら雫も涙を流しながら笑いを浮かべる。こんな、こんな些細なことで喜べることが何より嬉しかった。
「龍太郎くん、ちゃんと食べてる? さっきのマッピングでいっぱい“風爪”使ってたし、いつもと違う戦い方だったから疲れてない? 食べないと疲れがとれないよ? お代わり持ってくるよ?」
「いや、流石に自分の分は自分で持ってくる。それと、疲れてるのは香織もだろ? お前だって魔法を結構使ってたんだから腹減ってるだろうし、ちゃんと食べないと辛いぞ?」
「……うん。こんな状況だし、食べ過ぎってことはない……よね? うん、わかったよ。一緒に行こう」
ガッツリスケベとからかわれるようになったあの時以来、お互いに距離が近くなった龍太郎と香織は一緒に器を持ってお代わりをしに行く。心が通じ合った今、二人はこんなちょっとしたことでも幸せであった。ここが地獄と隣り合わせな場所であっても、二人にとっては天国であった。
(やっぱりちゃんとした武器も作らないと……とりあえず浩介君と雫さんの刀を作ろう。あと
「もう、ハジメくん……焦ってない? 気持ちはわかるけど、今はご飯食べてるんだから後にしよ。ね?」
「そうだよ。皆ピリピリしちゃうし食べてから考えようよ――はい、あーん」
今後のことを考えて色々と思案するハジメの脇腹を鈴が軽くつついてやめさせ、それに乗って恵里がたしなめにきた。二人にそう言われて申し訳なさそうな顔をしたハジメに恵里は自分の分のつみれを箸で掴んて食べさせようとする。ハジメもちょっと頬を染めながらも無言でそれを食べ、お返しとばかりにハジメも自分の分を恵里に食べさせようと箸で掴む。恵里もにへら~としながらそれを食べる。鈴もまたおねだりをしてきたためお互いにあーんし合った。
それを偶然見た香織はキラキラした目で龍太郎を見つめ、龍太郎は『流石に勘弁してくれ……』と顔を真っ赤にして大柄な体を縮めていた。浩介は恋人達のイチャつきを見て内心気が狂いそうになり、箸を握りつぶしたためにハジメ以外の調理を担当している子達から殺意のこもった眼差しを向けられて土下座した。
そうして食事とその後の休憩を終えた一同はこの階層の魔物を狩りに向かうことになった。ただ、ハジメは今後のことを考えて武器を作りたいと主張し、恵里と鈴もそのサポートのために残ることになった――かくして真のオルクス大迷宮の攻略は更に進んでいく。
「みんなー、無事に帰ってきてねー。ちゃんと美味しいご飯作るからー」
ハジメの言葉に狩りに行く部隊の皆が『任せろー』と力強く応えたのを確認し、ハジメは恵里と鈴と一緒に武器の製造に移っていく……拠点に残った恵里達も、狩りに向かった光輝達も、どこか何かが狂い出していることに誰も気づいていはいなかった。
……本当は前回と今回、次回合わせて一つの話のはずだったんですが、どうしてこんなことになったんでしょうね(遠い目)
次回はとりあえず火曜日前後を予定しています。なお予定は未定の模様
よもやま話(読み飛ばしてOK)
私的に今の奈落編の恵里達のテーマ曲は「Party★Connection」(某エンクリのOP曲)です。地上の彼らは……「Fighter」(某鉄血2期2クール目のOP)かな? 多分。
あと個人的には拙作のハジメ君のテーマ曲は「ALIVE」(某アバチュ2のOP)です。まぁOPの主人公が無双するシーンに影響されてるだけですが。でもたったの十割ですよ、ええ(キッパリ)
それと、拙作そのもののテーマ曲はMADKIDさんが作曲、編集された「FAITH」です。え、違う作品の曲だろうが? さぁ?(ォィ)