おかげさまでUAも104738、お気に入り件数も714件、感想数も309件(2022/5/6 8:31現在)となりました誠にありがとうございます。
そしてAitoyukiさん、今回もまた拙作を評価していただきありがとうございます。感謝の表し方に芸がないですが今回もこう述べさせていただきます。貴方のおかげでまたモチベーションを保つことが出来ました。感謝に堪えません。
今回もまた確実に15000字余裕でオーバーしそうだなー、と思ったので分割しました(白目) なので気持ち短めです。
では原作メインヒロインである彼女にスポットライトの当たった今回のお話をどうぞ。
――アレーティア・ガルディエ・ウェスペリティリオ・アヴァタール。
三百年前、ここトータスに存在した吸血鬼族の国の王の名前であり、前世? で恵里が“化け物”と
「もう……もう謝らなくていい……」
「いや、どんな理由であれ貴女にとてつもない苦しみを与えるところだったんだ……これは皆を率いた俺が責任をとる。だから、だから俺はともかく皆のことは――」
「ダメっ!! 光輝が、光輝が罪を背負うんだったら私も!!」
「いや待ってくれ!! 光輝と雫のことは許してやってくれ!! 俺が、俺がしっかりしてたらどうにかなったことかもしれないんだ!! だから、罰するんだったら俺を――」
「嫌っ!! 龍太郎くんが、龍太郎くんが罰を受けるんだったら私も罰して!! お願い、おねがいします……」
「ダメだよ皆! 調理して出そうとしてた僕にだって責任がある!! だから、受けるんだったら僕も――」
「…………ハァ~」
自身が囚われていた真のオルクス大迷宮五十階層に突如現れて自分を助け出した少年少女の集団に、うっかり魔物の肉を使った料理を出して自分を殺しそうになった頭のおかしい奴らの集まりに必死に何度も何度も頭を下げられ、責任のかばい合いを見せつけられて心底うんざりしている吸血鬼族の少女の名前でもあった……。
「もう、わかった……もうわかったから。理由……ううん、ここに来た経緯を説明してくれたら許すから……」
そうして寸劇もかくやの謝罪合戦を十数分見せつけられ、自分が悪い訳でもないのに罪悪感を感じていたアレーティアはいつになく饒舌に話しかける。
もう十分に謝罪は受け取ったし、彼らのへこみ様や自分に何度も詫びる様子から彼らの善性は理解できた。そこから察するに魔物の肉を食べるのが“習慣化”したのが原因であって、助け出してからわざと殺そうとした訳ではない。そうアレーティアは見抜いていた。だからそれが正しいかどうかを確かめようとも考えた上でこう発言したのである。
「い、いいのか……? いくら食べずに済んだ、って言っても俺達は……」
「いいから……頼むから話して……もう許して……」
未遂で済んだのだし、これ以上謝罪し続ける様を見せられたら今度は別の理由でおかしくなってしまいそうだったのでアレーティアはそうつぶやく。
「わかった……俺達はそもそも、別の世界の出身で――」
そうしてこの集団のリーダーらしい天之河光輝――先程からこちらを申し訳なさと何かを見定めるような思惑が入り混じった顔で見ている偉丈夫ではなく、落ち着きのある少年の方が話を始める……それは親友や自分達のことをあまりよく思わない知人、自分達を教え導く存在と共にこの世界に召喚されたことが発端であった。
トータスに来て早々、魔人族とやらと戦うことを命じられたり、それを何とか先延ばしにしたのはいいものの、今度は幼馴染であり親友の一人である南雲ハジメ、中村恵里、谷口鈴がその日の晩餐会で誘拐され、あまつさえ“裏切り者”として扱われることになってしまった。
その後、自分を見ていたあの偉丈夫ことメルド・ロギンスにしごかれ、その彼が自分達をかばい立てたことで騎士の身分も失ってしまい殺されかけたこと、ここオルクス大迷宮に訓練の名目で立ち入った際に裏切り者と扱われた三人を殺されかけ、それに抗おうと立ち向かったことも……力及ばず返り討ちに遭って命の危機に怯えたことも話した。
その後、遠藤浩介という影が少し薄い少年や彼の師匠らのおかげで勝利し、その後は自分達で壁を伝って大迷宮を降りていったり、恵里が前世? というものがあると話してくれたことやここの魔物に殺されかけて心が砕かれそうになったことも、それでもなお立ち上がってこの階層に来るまで戦い続けたこと等を彼は話してくれた。
「――それでハジメや恵里、鈴の頼みもあって君を助けたんだ。これが今までの経緯かな」
「……そう」
話の途中、彼の親友や自分を口説いてきたあの五人の少年などから合いの手や補足が入ったりしたものの、“異世界からの来訪者”という点を除けばおおむね予想の範疇であった。食べたら死ぬ、しかし食べなければいずれ死ぬという状況で“食べても死なない”という手段――予想の通り、自分が飲まされたあの水であった――を使って生き延びてきたからこそ、あんな常識外れな言動をしたのだということもアレーティアは理解出来た。
「……皆、よく頑張った」
「……えっ」
無論、その道のりが悲惨で、辛くて、苦しかったものということも彼女は十分わかっていた。だからこそ、アレーティアは彼らに
「苦しくても折れなかった。とても、とても立派」
「ぅ……ぁ……っぐ……」
「ひっく……ひぐっ……わたしたち、まちがってなかったんだ……」
その一言で全てが報われたようで涙を流す者も多かった。彼らは互いに肩を寄せ合ったり、互いに向き合うなどしてお互いになぐさめの言葉をかけ合っている。そんな様子の彼らをアレーティアはただじっと眺める――ほんのわずかに自分の唇が強く結ばれていることに気付かないまま。
「……ごめんなさい。見苦しいところを見せてしまって」
そうして存分に泣きじゃくった彼らはばつの悪そうな顔でアレーティアを見つめ、申し訳ないと謝ってきた光輝に彼女はゆっくりと首を横に振るだけであった。
「……今度は私の番」
「え、えっと……いいのか?」
「構わない。どうせ聞かれる」
少年達も自分の過去が気にかかってはいたようだが、口に出して尋ねようとはしなかったことにもどかしさを感じていたアレーティアは自分の口から語ることにした。
吸血鬼の一族として生まれ、幼少のみぎりより魔法に関して天賦の才を持ち合わせていたこと、十二歳の時に発現した魔力の直接操作能力に魔法陣構成能力、そして固有魔法“自動再生”のことを。それらを駆使して戦場を駆け巡り、その功績を評価されて王位を継いだことを。
「謀反を起こされて、封印された……後は皆が知った通り」
『――!!!』
……そして
「……これが私の全て」
――その謀反を起こした下手人が叔父のディンリードとその配下であることや自分の名前は
「こんな……こんな仕打ちが……どうしてなんだ……」
「頑張ったのに……頑張ってたのにどうして……」
「あんまりよ……いくら何でもあんまりじゃないの!?」
「辛かったんだ……苦しかったんだね……」
「うぅ……悲しいよぉ……」
天之河光輝と八重樫雫の二人はうつむいて泣いている。それは園部優花、宮崎奈々、菅原妙子も同様であった。
「大丈夫、もう大丈夫だよ!! 私が、私で良かったら力になるから!!」
「俺もだ! 俺で良ければ頼ってくれ!!」
白崎香織はアレーティアに抱きつき、坂上龍太郎はそんな彼女のすぐそばまで来て協力を申し出てきた。
「そっか。そうだったんだ……」
「辛かったんだね。苦しかったんだね……それを、僕らは……」
「あぁもう、ったく……やり辛いなぁ……」
南雲ハジメ、谷口鈴の二人は罪悪感に苛まれた様子でこちらを見ているようにアレーティアは感じていた。またあの性悪女こと中村恵里もため息を吐きながら何か考えあぐねている様子であった。
「何も……何も言えねぇな」
「あぁ……本当に」
遠藤浩介も、その友人と思しき位置に立っている清水幸利という少年も何とも言えない顔でアレーティアを見つめていた。
「……な、なぁ! お、俺……俺、アンタを助けるよ!! 何でも、何でも言ってくれ!!」
「お、俺も!! 俺達で良かったら手伝うから!!」
「え、遠慮なく、遠慮なく言ってくれ!! 俺らがついてるからよ!」
「俺達はアンタの味方だ! 信じてくれ!!」
檜山大介、近藤礼一、中野信治、斎藤良樹の四人も感極まった様子で訴えかけている。
「同類、か……いや、何でもない。その、よろしく頼む……えーと、俺達はお前をどう呼べばいいんだ?」
そして先程からじっとアレーティアを見ていた偉丈夫のメルド・ロギンスも、同情と共感のこもった眼差しを向けながら問いかけてきた。そこでふとどうしたものかと思案すれば、全員の意識が彼女の方へと向く。ほんの少し思案した後、アレーティアはあることを口にした。
「……前の名前はいらない。適当に呼べばいい」
父親代わりに自分と接していたあの男から呼ばれていた『アレーティア』という名前はいらない。だからそれ以外の呼び方を欲した。
別に自分で適当な名前を名乗ってもいいがありきたりな名前ぐらいしか浮かばず、それも過去に王として君臨していた際に覚えた女官などの名前だ。出来る限り過去のことを思い出したくなかったからこそ、彼らに委ねようと考えたのだ。
すると彼らの視線がある三人――南雲ハジメ、清水幸利、そして中村恵里に向けられた。
「……なぁ、恵里、あの人の前世での名前って覚えてるか?」
「うーん……アレー、何とかとか、“ユ”と“エ”がついてた名前だったような……思い出せなくてごめん」
「……なぁハジメ、それって――」
「うん、きっと同じだね。じゃあ――」
そして三人でヒソヒソと話し合っていると、今度は檜山を手招きして耳打ちをする。近藤礼一らがブーイングをする中、三人から話を聞いて何度もうなずいた檜山という男はせき払いをするとアレーティアの前へと出てきた。
「そ、その、さ……“ユエ”なんて、どうだ?」
「……ユエ?」
アレーティアは小首をかしげると、自分を巡って争っていた五人が顔を真っ赤にして悶えだす。見れば誰もが軽く頬を染めており、どこか気まずい感じが漂っていた。
天之河光輝と八重樫雫はお互い彼女の仕草に悩殺されたのを恥じたせいか視線をさまよわせており、先程まで自分に抱き着いていた白崎香織は罪悪感と嫉妬の入り混じった顔をしながらどこか後ろめたそうにしている坂上龍太郎の胸をポカポカと叩いている。また何かをごまかすようにして怒っている中村恵里と谷口鈴は南雲ハジメの尻を思いっきりつねり、当人は思いっきり悲鳴を上げていた。
王族であった頃も自身の美貌に見とれる相手は少なくなかったが、ここでもそうなのかと思いつつアレーティアは檜山が話を続けてくれるのを待った。
「あー、えっと、その……その名前ってさ、俺らのいる世界のある国の言葉で、“月”を意味するんだよ。えっと、髪の色がさ、夜の月みたいでキレイだったから、さ」
恥ずかしがりながらそう説明する檜山にうなずく形でアレーティアは相槌を打つ。そして彼の説明が終わったところでアレーティアはもらったその名前を何度かつぶやき、それが新たな自分の名前だと認識を改めていく。
「……ん、今日からユエ。よろしく」
そして少女は微笑みを浮かべながら新たな名前と共に改めて自己紹介をする。すると白崎香織が感極まった様子でまた抱き着いてきて、少女の目を見ながら思いを言葉にした。
「いっしょに……一緒に幸せになろう! ユエさん!」
少女もまた微笑みを浮かべながらそれにうなずく……何故かその言葉にちゃんとした返事が出来なかったことに彼女は引っ掛かりを覚えたが、きっと
「……そういえば食事がまだだったな。えーと、ユエ、だったな。お前はどうするんだ?」
『魔物は食べ物じゃない』発言を聞いた後、適当なところで調理を切り上げてほったらかしにしていた彼らであったが、話がまとまったところでメルド・ロギンスがそのことを切り出した。
「……私は吸血鬼。血を分けてもらえばいい」
それで食事はどうするのかと彼から尋ねられた彼女はそう答える。血さえ吸えればそれで事足りるのだ。そこで檜山が緊張と下心満々の表情でこちらに向かおうとしてきたため、少女はすぐに別の人物の許へと向かう。
「えっ!? お、俺かよ!?」
「ん……いただきます」
相手は清水幸利であった。檜山の口から魂が抜けるような音や彼をからかう声を無視し、少女は彼の腕を手に取り牙を立てる――口の中に流れ込んだ血から、幾種もの野菜や肉を煮込んだスープのような熟成された味わいが広がっていく。紛れもなく美味であるその味わいに陶然としていた彼女は――。
「……ごちそうさま」
「ぅぁー……なんか、頭が軽くクラクラする……」
吸血を受けた彼も過去に自分がそうした相手と同様、少し焦点が合わないような目で軽く惚けている。口元の血を舌で舐めとると、少女は清水幸利から離れていった。
「えっと、思ったより吸わないみてーだけどよ、大丈夫なのか?」
どうやら立ち直ったらしい檜山からの問いかけに少女は首を縦に振って答える。全快したとはいえないものの、動くには申し分ない程度の量はもらっている。だから問題なんてない、と少女は
「そうか……わかった。じゃあ皆、少し遅くなったけれど調理の続きをしようか」
天之河光輝が指示を出すのを見てから少女は離れた場所に腰掛けた。自分の肌や髪はどうなったかと魔法を発動してちょっとした水たまりを作って覗き込めば、見立てていた通り、問題ない程度には回復していた様子であった。
肌の血色も戻っており、髪の方も幾らかツヤが戻ってきている。瞳の色もくすんだものでなく鮮血のような色合いを取り戻していた。
「よし、じゃあ皆手を合わせて――いただきます」
いつの間にか調理の方も終わったようであり、ふとその様子を見やれば誰もが食前の祈りを捧げているようであった。メルド・ロギンスに関しては見覚えのあるような祈り方であったが、他の面々の方――目をつむって手のひら同士を合わせるというものは少女にとって見たことが無いものであった。
「よし、じゃあまずは俺から――んぐっ。よし。食ったぞ!!」
「はい“呆散”……よし。龍太郎にはちゃんとかかったから後は三人とも、お願いね」
……その後、食事をする際に聞きなれない魔法の名前が出たり、まず食事の場では見ないであろう一人の人間に回復魔法を何度もかけていく様を繰り返し見て、『食事とは一体何だろうか』と一瞬思考が彼方へと行った。
コイツらはいつもこうなんだろうかと思いながらも、少女は視線を何もない方へと動かし、魔法を使う際の勘が鈍ってないかを確かめるのであった。
「――“凍柩”」
つぶやくようにして唱えられた魔法は一瞬にして襲い掛かろうとしていた魔物の命を奪い去った。その名の通り、瞬時に魔物の周りを長方形の氷が覆い、閉じ込めていく――まるで氷の
透明な氷に包まれた中にいた魔物の目からは急速に光が消え、あっという間に物言わぬ存在になり果てる。
一切の反撃を許さぬ容赦ない一撃。
あまりに圧倒的。あまりに強大。それをたった一瞬で事もなげにやってみせれば、先行部隊の一員として同行していた天之河光輝らは何度目かわからない驚きに口をあんぐりと開けていた。
「……すごいな、ユエさんは」
「――ぷはっ……戦場を何年も駆けて敵を倒し続けてた。これぐらいは当然」
水系魔法の上位属性である氷属性の上級魔法を使ってごっそり魔力が無くなった結果、吸血鬼の少女は遠藤浩介の腕から軽く血を分けてもらった。それに軽く一区切りついたところで、天之河光輝のつぶやきに彼女はそう答える。その表情はかつて戦場を駆け巡っていた時の、配下の者達を鼓舞するためにもよくしていた自信に満ちたものであった。
――彼女が先行部隊の一員となったのはその実力の片鱗を見せたのが理由である。
最初に拠点に来て、自分を救出してくれた少年少女らが食事を終えてしばらくした後、どれ程強いのか見せてくれと頼まれ、
その際天職が“水術師”である宮崎奈々が大いにへこみ、天之河光輝が『上には上がいるんだな……天職が“勇者”で、各属性魔法のエキスパートの皆にも負けないぐらい魔法が使えるからって調子に乗ってたな、うん』と乾いた笑いを浮かべていたのは記憶に新しい。だが……。
(……でも、中村も南雲も谷口も妙なことを聞いてきた。
南雲ハジメ、中村恵里、谷口鈴がその時妙なことを口走ったことも少女は覚えている――魂に関する魔法も扱えるだろうか、と。それに関しては首を横に振り、三人が少しばかり落ち込んだ様子も覚えていた。
「あー、ユエ。そっちがすごいのは嫌ってなほどわかったよ……その上でお願いがあるんだけど」
そして他の面々が自分の倒した魔物を凝視する中、中村恵里だけは困惑した様子を隠さずに彼女に声をかけてきた。
「……何?」
「もうちょっと……もう少しだけでいいから威力を抑えられない? さっきのえーと、確か“凍柩”だったっけ? それよりも弱い“冷結”辺りでいいからさ」
その言葉に少女は思わず首をかしげる。その様に中村恵里は何とも言えない顔をし、それから遅れて他の先行部隊の人間達も苦笑いを浮かべる。その様に一層ユエは困惑した。
先行部隊の目的が“侵入した階層の敵の戦力及び地形などの調査”と“能力向上のために魔物を狩猟し調達する”ことであるというのは事前の打ち合わせで聞いている。だからこそこうして
「……“冷結”だと完全に凍り付く前に敵がこっちに来た。だから威力と速さのある“凍柩”を選んだ」
ここの階層の魔物はとてもすばしっこく、こちらに迫ってくることもそう少なくなかったのである。そのためユエは“凍柩”を選んだのだ。相手が機先を制する前に、確実に命を奪える手段を。そう判断したからなのだが同行している彼らはそれに納得した様子を見せず、今度は南雲ハジメが吸血鬼の少女にその理由を話した。
「ユエさんが言いたいことはわかるんだけどね……周りの氷がちょっと大きくて、ソリに積むことを考えるとスペースをとっちゃうんです。持ち運ぶ際に滑る可能性もありますし、それも考えて恵里は“冷結”でお願いします、って言ったんですよ」
南雲ハジメの言う通り、件の死体は氷の柩に閉じ込められている分かさが増している。その上凍っているために滑りやすいのだ。そのため運ぶのにあまり速度は出せず、不都合であったことを述べたのである。それを聞いた少女もそれに反論しようとした。
「……近くまで寄られたら危険。だから――」
「俺達じゃ、頼りないですか?」
その時、天之河光輝がポツリとつぶやいた。それに反応した少女は彼の方を見やると、悔しそうな、悲しげな様子で彼女を見ている。
「ユエさんにとって俺達は戦力として数えるに値しないのかもしれません……けれども、貴女のことは俺達が守るつもりでいました! そのことも、取り決めてたじゃないですか……」
言葉を詰まらせながらも語ろうとする彼の様子にかつて王であった少女は何も言えなくなった。
かつて軍を率いていた時も、自分は魔法により敵を殲滅するか部隊を
そういったことまでは彼らに話さなかったものの、その彼らは前衛と後衛そして遊撃に分かれてこれまで対処していたのだ。だから前衛を担っている天之河光輝と坂上龍太郎はそれをやってくれる可能性は十分にあった。それを何故か少女は
「サソリ型の魔物との戦いで苦戦してた俺達を頼りないと思ったのかもしれません……でも、でも俺達は……」
悔し気につぶやく天之河光輝の姿に少女は申し訳なく思う。
「そう、ね……私もあの時は大して力になれなかった。せいぜい穴掘りをやってたぐらいだもの。けれど、私にもやれることはあったはずだから……」
「俺も……やっぱり駄目、なのか? 確かにユエさん程の力があるなら俺らみたいな奴がいなくってもいいのかもしれないけどさ……信じて、欲しかったな」
天之河光輝に続いて八重樫雫と遠藤浩介の二人もまた自嘲気味に漏らす。その様に少女の良心はチクリと痛む。
「うん。少なくとも攻撃に使う魔法じゃユエさんには敵わないけど、でも……でも、私と鈴ちゃんは“聖壁”が張れるし、“縛印”で動きを封じれるよ。私だって、やれるよ」
白崎香織の発言に言葉が詰まる。“聖壁”より上の“聖絶”を彼女は行使できるし、“縛印”どころかその上の“縛光鎖”も使える。何より複数の魔法を同時発動だってやれるがそんなことは重要じゃない。彼女なりに役に立とうという思いを自分は知らぬ内に踏みにじっていたのだ。そのことに
「ユエ……さん。アンタがとんでもない力を持ってるのは俺だってわかってるつもりだ。でもよ、俺達を頼ってくれよ。そんなに俺達は頼るに値しないものなのか?」
「僕も、かな。確かに僕は元々一般人と大差ない強さの“錬成師”でしたし、今でも僕に出来ることはものを作ることだけ……でも! 僕なりに出来ることがあると思ってやってます――このドンナーも、色んな手榴弾も、今作ってる対物ライフルも、そのためのものです!!」
坂上龍太郎と南雲ハジメもまた訴えてくる。坂上龍太郎に関してはあの魔物にトドメを刺したことから評価はしているし、南雲ハジメも弓とは違って片手で扱える飛び道具を作れていることに彼女も一目置いている。だから決して無碍には出来ない。
「私も……私も役に立てると思います! バリアを――結界を張ることぐらいしか役に立てないかもしれないけど、それでも鈴は……私だってユエさんの力になりたいの!」
「……ボク達は連携して、力を合わせてここまで来たんだ。たとえそっち一人に何やったって勝てなくってもハジメくん達を――皆の強さは否定させない」
谷口鈴と中村恵里の言葉――特に中村恵里のものにユエは軽く圧倒される。彼らの中で南雲ハジメと同じくらいに強い光を放つ二人の瞳に、わずかではあったが少女は気圧されていた。
そう。その通りなのだ。本来ならば彼らと息を合わせ、力を合わせてここを突破しなければならない。それぐらいはわかりきっている。だからそれに応えようと口を開き――。
――信じられない。
「――っ!?……わかった。私もちゃんと合わせる」
――途端に口から出かかったどす黒い言葉を無理矢理抑え込み、協力することを誓った。その言葉に多くが安堵の表情を浮かべる。
「……ありがとうユエさん。じゃあ、行きましょうか」
「……今のは気づかなかったことにしといてあげる」
「えっと……じゃあ行こうよ、ユエさん」
……南雲ハジメ、中村恵里、谷口鈴が気づかないフリをしていることに気づきつつも、少女は魔物の氷の大きさを調節してソリに載せ、探索に戻るのであった。
続きは来週の半ばまでに投稿出来たらなー、と思っております(まだ下書きで数百字程度の段階)
あ、それと今更ですし関係ないことかもしれませんけど、ベヒモスのいる階層で檜山や優花達を追い詰めたアティック兄弟の名前の元ネタ、実はLunaticとfanaticから来てるんですよー。
あと占いっていいですよね! 一時期ハマってたんですよ! 星占いにオーラといったスピリチュアルとか!
色々とありますけどタロットもいいですよね! 一つのカードに色々な意味がこめられてますし、向きの違いでも意味が変わったりして!!(なお塔)
それから他の方にもコメントしましたけど、原作の正ヒロインである彼女ってハジメ君やオリ主によく惚れますけど、それって『いついかなる時』でもなんですかね!?
……え? 何が言いたいんだって? さあ?(ニヤリ)