「いい?何があっても決して動いてはダメよ」
そう言って姉さんは蓋を閉めようとした。
ゴブリンに襲われて無事だという話は聞いた事がない。
姉さんも解っているんだ。
これが最後に肉親と会話できる最後なのだと。
だけど、僕には何もできない。
非力な子供でしかないのだから。
だけど、姉さんが僕の隠れている場所の蓋を閉めようとした時、聞いたこともない轟音が響き渡った。
その時、思わず咄嗟に姉さんの腕を引っ張って同じ場所に入り込んでしまった。
それからしばらくの間、竹が爆ぜるような音が連続で響き、ゴブリンの声がだんだん少なくなってきた。
その頃には突然の事で硬直していた体が動けるようになっていた。
そして、姉さんと一緒に隠れていた場所から出て、窓からそっと外の様子を伺った。
そこには孤軍奮闘する女の人が居た。
その光景は圧巻の一言だった。
見たことの無い竹の爆ぜる音が連続して聞こえてくるモノを両手に持って、かと思ったら次の瞬間には剣を持って舞うようにゴブリンを殺していった。
ゴブリンの死体が積み重なり、足場も悪くなっているというのに、体制を崩してもそれを利用して次の行動に繋げている。
だけど、そんなことがいつまでも続く訳がない事は幼い僕にも解る。
そして案の定、槍を持つゴブリン数匹によって串刺しになってしまった。
どう見ても致命傷だと思った。
何故なら、その人は鎧を着ていなかったからだし、槍の一本が胸を貫いていたからだ。
現にゴブリンたちは卑下た笑みを浮かべているのだから。
「
何を言っているのか解らないけど、怒っているのは解った。
……………………………………………………………………………………………………あれ?
生きてる!?
思わず姉さんと顔を見合せてしまった。
姉さんもどうやら同じ事を思っていたみたい。
と言うか、槍が数本刺さったままで動けるのも、素手でゴブリンの首を引き千切るとか色々と可笑しい。
あ、自分の体に刺さってる槍を抜いてゴブリンを三匹位を纏めて串刺しにした………。
ただの投擲なのにゴブリンの頭が爆散してる。
「
うん、なに言っているのか全く解らない。
でも、たぶん挑発だよね。
あ、何か小瓶を取り出して中身を自分に振り掛けた。
そこからゴブリンの動きがおかしくなった。
おかしくなったというよりも、女の人に向かって一目散に突撃し始めたんだ。
それもこの村を襲ったゴブリンの、女の人に殺されずに隠れたりしていたのが全て。
よく解らないけど、あの小瓶はゴブリンを誘き寄せることのできる水薬が入っていたみたいだ。
その状態で女の人は、ゴブリンを一匹残らず駆逐していった。
そして、夜が開ける頃にはゴブリンは全滅していた。
髪の色も、目の色も、槍に貫かれても生きてるなんて色々とおかしいけど、この日僕は憧れたんだ。
舞うように戦い、綺麗な容姿をしたこの人に。
この人の様に強くなりたいって。