「昨日はすまんかった。」
「昨日はどうもすみませんでした。」
翌日、俺とグレンは銀髪やクラスの人に向かって謝った。グレンは頭を下げた。俺?俺は土下座ですよ。
「確かに俺は魔術が嫌いだが、昨日は言いすぎた。ええと、その、悪かったな。」
「俺も言い過ぎた、すまん。」
俺とグレンは皆に謝った後、教壇の方に向かっていく。
「それでは、授業を始める。ハヤトは俺のサポートだ、分からないところはハヤトに聞いてくれ。」
「んじゃ、授業を始める前に俺から全員に言っておく事がある。お前ら本当にアホだよな。」
『はぁっ!?』
俺の発言によって生徒達全員の額に青筋が浮かび上がった。どした?ホットミルクでも飲んでリラックスしな。
「ハヤト、アホじゃないだろ。バカの方が正しいだろバカ。」
「バカって言うなよグレン!バカって言った方がバカなんだぞ!」
「今バカって言ったから認めた事になるぞハヤト。」
グレンめ、言わせておけば!
「「バーカ!!アーホ!!ドジ、マヌゲボォ!!」」
「早く授業を始めなさいよバカ!」
「システィーナの言う通り、授業を始めてくれませんか?」
痛ってぇ、人に向けて教科書投げんなよ。グレンにはシスティーナ、俺にはテレサの投げた教科書が頭にぶつかったか。
「へいへい、まあつまりだ、お前らは魔術のことをなぁーんにも分かっちゃいない。いや、わかったふりをしている。」
「ふざけるな!お前らには言われたくねえよ!」
「そうよ三流魔術師!『ショック・ボルト』程度の一節詠唱も出来ない癖に!」
おーおー、ブーイングの嵐だねぇ。
「いやぁそれを言われると耳が痛い。確かに俺はそのセンスが致命的に無くてな。学生時代は苦労したわほんと。」
「そこのハヤト先生もどうせ三流魔術師なんでしょう?」
「ごもっともだな眼鏡君。けど俺はちゃんと略式詠唱は出来るぜ?」
まあ、人並み程度だけどな。
「よし、今日はその『ショック・ボルト』について教えてやるよ。」
「詠唱は知ってるよな?念のためおさらいするぞ?『雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ』」
俺は教室の扉目掛けて電気の力線、雷撃を放つ。まあ、これは基本だな。
「三節詠唱からですか。」
「そんなもの、とっくに極めておりますわ。『ショック・ボルト』なんて。」
「じゃあ問題だ、今は三節詠唱だったが、四節詠唱になったらどうなるかわかるか?んじゃ、そこのいかにもガリ勉君なギイブル=ウィズダン、答えてくれ。」
俺はギイブルに指を指して当てる。流石にこれくらいは分かるだろう。
「その呪文はまともに起動しませんよ。必ず何らかの形で失敗しますね。そんなこともわからないんですか?」
「んなこたぁ、わかってんだよギイブル。俺はその失敗の形がどうなってるかって聞いてんの。」
「そんなもの、ランダムに決まってますわ!!」
ん?発言したのはさっき『ショック・ボルト』を極めたって言ってた茶髪ツインテールのウェンディ=ナーブレスか。
「ランダム?ブハハ!!お前極めたんじゃなかったのか?ププッ!!」
「ぐっ!」
俺に指摘されてウェンディは黙ったな。他は、だんまりか。
「なんだよ全滅かよ、じゃあグレン。答えを言ってやってくれ。」
「わーったよ。答えは、右に曲がるだ。」
そう言いグレンは黒板に向けて詠唱を始める。ん?ちょっとまて、その位置は!
「『雷精よ・紫電の・衝撃以て・撃ち倒せ』。」
「おまっ!その位置で放ったら俺に当たるだろうが!?」
グレンの放ったショック・ボルトは黒板に向かったが、黒板に当たる直前に右に曲がって俺に向かってきやがった!
「どぉぉぉあ!!」
当たる寸前にその場でブリッジをして『ショック・ボルト』を避けることが出来た。あの野郎!
「グレン!俺に当てる気だっただろ!?」
「ちなみに、四節ではなくて、五節にするとだな。」
「聞けや人の話!!」
グレンは得意気な表情で俺の方に向けて『ショック・ボルト』を放つ。だから俺に向けるな!
「射程が落ちる。一部を抜かすと威力が下がる。まあ極めたって言うならこれくらい知っておかねえとな。」
「グレン、後で覚えておけよ?」
お前は俺を怒らせた。後でたっぷり仕返ししてやる。
「要するに、魔術ってのは要は高度な自己暗示なんだ。呪文を唱える時に使うルーン語ってのはその自己暗示を最も効率よく行える言語だ。人の深層意識を変革させ世界の法則に結果として介入する。魔術は世界の真理を求める物じゃねぇんだよ。魔術はな、人の心を突き詰めるもんなんだ。」
うんうん、グレンの言う通りだ。グレンはやる気を出せば凄い奴なんだよな。
「と言われても想像出来ないんですけど。」
「そりゃそうだよなルミア。口だけの説明で言葉ごときが世界に介入するなんて言っても想像出来ないよな。じゃあそうだな、おい、白猫。」
「私にはシスティーナっていう名前があります!!」
システィーナはグレンに猫って言われてるな。ひょっとして、
「そうだ、折角だからハヤトも誰かにやってみろ。俺一人じゃ信じて貰えなさそうだからな~。」
「はぁ?グレンだけやればい「そうですね、ハヤト先生もやってくれればグレン先生の言ったことは信じざるを得ませんね。」ギイブルてめぇ、わーったよ、やりますよシスティーナ以外の人でな。」
仕方ない、この人にするか。普段おっとりとしているから効かないと思うけど。
「あの、ハヤト先生?」
「「愛してる。一目見た時から、お前に惚れていた。」」
「「はにゃ!?」」
おーおー、システィーナとテレサの顔が真っ赤になったな。今黄身をシスティーナの顔に当てれば目玉焼き出来るかな?
「はい注目~。白猫とテレサの顔が見事真っ赤になりましたね~。言葉ごときがこいつらの意識に影響を与えたワケですよ。」
「う、ううっ、うううっ!」
騙されたなシスティーナ、可愛そうだが、これも白猫の定めなのだぁ!!
「はははハヤト先生!?」
「悪いなテレサ、反省も後悔もしてないから許してくれ。ウェンディ、テレサを起こしてやってくれ。」
未だに顔を真っ赤にしてフリーズしているテレサ、レアだねぇ!
「言葉で世界に影響を与える。これが魔術のうがっ!?教科書投げ付けんなバカ!!」
恥ずかしさに耐えられなかったのかシスティーナはグレンに向けて教科書をぶん投げたな。面白ぇ!
「馬鹿はあんたよ!!馬鹿馬鹿馬鹿ーー!!」
「ヒーヒヒヒ!!アーッハハハ!!腹いてぇ!!お前ら漫才でもしてるのかよぼぶぇ!?」
爆笑していたら顔面に教科書をぶつけられたんですけどぉ!?誰だ?テレサだな!
「いてて。まぁ、魔術にも文法と公式みたいなもんがあんだよ。深層意識を自分が望む形に変革させるためのな。それが分かりゃあ例えば、そうだな。」
「だからグレン!俺の方に「『まあ・とにかく・しびれろ』。」撃つんじゃねばばばば!?」
もう許さねえ、マジで許さねえからなお前!
「とまあ、こんな感じに改変とか出来る。」
「グ~レ~ン?人の注意を何度も無視するなんてなぁ。覚悟はできてんだろうな?」
「えっと、てへっ☆」
ウィンクしながら舌を出して謝ろうとしても無駄だ!そんなの男のグレンがやっても気持ち悪いだけだ!
「んな笑顔見せても無駄だ!『神聖なる光よ集え、この名を以ちて、我が仇なす敵を討て!ディヴァインセイバー』!!」
「おまっ!!それはだギャァァァァァ!!」
俺は魔法陣をグレンの上に展開させて周りに雷を落としながら最終的にグレンに雷が当たる術を唱える。反省しやがれ!
「す、すごい。」
「ふぅ、すっとしたぜ。おっと、横道にそれたな。簡単に言っちまえば、魔術なんて連想ゲームと一緒なんだ。『ショック・ボルト』なら相手を痺れさせる。だからそれが連想できるキーワードを言えば、それが呪文になる。」
「だ、だが、そのド基礎をすっ飛ばしてこのクソ教科書で『とにかく覚えろ』と言わんばかりに呪文を書き取りま翻訳だの、それがお前らがやって来た勉強だ。はっ!アホか。」
そう言いグレンは小鹿のように足を震わせながら教科書を放り捨てる。
「今のお前らは単に魔術を上手く使えるだけの『魔術使い』に過ぎん。『魔術師』を名乗りたいなら自分に足りん物は何かよく考えとけ。」
「あと、常に物事について疑問を持て。人に言われたからその通りにやる。書いてあったからその通りにやるじゃ、力は付かねえぞ。」
「じゃあ今からそのド基礎を教えてやるよ。興味のない奴は寝てな。」
「じゃあ俺寝てるわ。グレン、あとは任せた。」
さあて、おやす「お前は黒板に文字を書くんだよ!」へいへい。