「大丈夫かテレサ?『癒しの光、今ここに集え、ヒール!』」
「は、はい。」
俺はゲス男を甲冑縛りで縛った後、テレサの傷の治療をしていた。シャインフィールドは応急処置みたいもんだし、綺麗な肌が傷付いてるのは見たくねえからな。
「すまなかった、もっと早く来ていれば!!」
「大丈夫ですよハヤト先生、ハヤト先生は助けに来てくれたじゃないですか。」
そう言ってテレサは頬笑む。いや、微笑んでるがそれは強がりだな。体は震えているし、目は涙目になってる。
「そんなに強がるなよ、怖かった筈だ。今は俺しかいないから泣いてもいいんだぞ?」
「こ、子供じゃないんですから。な、泣きま……うぅ。ぐすっ。」
「俺からして見ればテレサは子供だ。辛かったな、感情を思う存分ぶつけていいぞ。」
俺がそう言うとテレサは静かに泣き始める。やっぱり、3年前に俺が助けたあの時の子だな。
「よく頑張ったな、偉いぞ。」
俺は泣いているテレサの頭を撫でる。まるで兄になった気分だ。
「おーいハヤト、終わった……か?」
「ちょっと!!立ち止まらないでくれ……る?」
ん?グレンとシスティーナが俺の方を向いた時、固まったな。なんでだ?
「あんた!テレサを泣かしたのね!?しかも乱暴までして!ろくでもない奴だと思っていたけど、本当にろくでもない奴ね!」
「違うぞシスティーナ!これは俺がやった訳ではなくてだな!」
テレサの服装を乱したのはそこに縛られているゲス男なんだぞ!俺はこんなことしねぇよ!
「うるさい!『大いなる風よ』!」
「ちょ、人の話を聞け!ギャアァァァ!」
システィーナが放った突風で俺は壁に叩き付けられた。酷くね?俺テレサを助けたのに、なんでこんな仕打ち受けてんの?
「システィーナ、ハヤト先生は私を助けてくれたのよ。」
「そうなの?なら早く言いなさいよハヤト先生!」
「システィーナが聞く耳持たなかったからだろ!」
こんの、生意気猫娘め!
「どうどう、落ち着けお前ら。「私は馬か!?」言い争っても時間の無駄だ。」
「グレンの言う通りだな、とりあえずテレサ、これを着とけ。」
俺はテレサにスーツの上着を渡す。まあ、今のテレサの格好がちょっと乱れすぎてるからな。にしてもテレサはスタイルいいな!ご馳走です!
「どうしてですかハヤト先生?」
「あれだ、服装が乱れてるからだな。」
俺がそう指摘するとテレサは顔を真っ赤にしながら、俺の上着を来た。まあ、これで大丈夫だろう。
「グレン、セリカに連絡は取ったか?」
「取ったけどよ、応援は来ないぜ。」
んなことだろうよ、やっぱ俺とグレンの二人で解決するしかねぇか。
「グレン先生、やっぱり助けは来ないんですね。私のせいでルミアが……、私悔しくて……。」
システィーナが俯いてポロポロと泣き始めた。まあ、多分皆を庇ってルミアはテロリストに着いていったんだろうな。
「先生達の言う通りだ、魔術なんてロクでもないものだった!こんなものがあるからルミアは!」
「泣くなバカ。」
しくしく泣くシスティーナの頭をグレンは撫で始めたな。
「ルミアはな、そうして魔術で人が悲しむ人がいなくなるような導く人になりたいって言ってたぜ?」
ルミアらしい夢だな。大層な夢だけど、そういうの俺は嫌いじゃないぜ。
「あの子がそんなことを?」
「大層な夢だよなアホだろ?けど立派だ。そんな奴を死なせるわけにはいかねーよな。」
「グレンの言う通りだ、だから安心しろテレサ、システィーナ。俺達が動くからよ。」
「そして残りの二人の敵も速やかに殺す。」
グレンがそう言った瞬間、システィーナとテレサがビクッとして体を震わせた。
「ケッケッケッ!そんな台詞があっさり出るなんてな、お前らもこっち側の人間かよ。」
……縛っておいたゲス男が起きたか。
「なあシスティーナちゃん、テレサちゃん、気を付けた方がいいぜぇ?二人の先生は絶対ロクな奴じゃねぇ。もう何人も殺ってきた俺らと同じ外道さ。」
「貴方いつから起きて!?一緒にしないでください、ハヤト先生とグレン先生は貴方達みたいな人殺しとは違います!」
テレサが俺とグレンを庇うようにゲス男に言ってるけど、間違いじゃないんだよな。
「違わねぇよ。最近会ったばかりのそいつらの何をテレサちゃんは知っているんだ?ただの三流魔術師が俺をこうしてふんじばれると本気で思ってるのか?思ってるならお目出度い頭してやがるぜ、ケケケッ!」
「……さてグレン、1つ聞きたいんだがいいか?」
「奇遇だな、俺もハヤトに1つ聞きたい事があった。」
「「骸骨召喚したのお前か?」」
何か俺の目の前に骸骨がうじゃうじゃいるんだよね。何でかな?
「ケッケッケッ!お出ましだァ!ナイスだぜレイクの兄ちゃんよぉ!」
「ッチ、いらんことすんなよ!」
召喚魔術『コール・ファミリア』で作り出したボーン・ゴーレムかよ。『コール・ファミリア』は小動物などのちょっとした使い魔を召喚する魔術で使い手によっては自己作成したゴーレムなども遠隔召喚したりも可能だけど、ざっと数十体いやがるな。
「にしても何て数だ!人間業じゃねえぞこれ!」
「下がってろテレサ、システィーナ。」
俺は向かってきた骸骨に右ストレートを放つが、骸骨の頭は砕けなかった。こいつ硬すぎ!
「ハヤト、お前まだまだだな。ニート生活で腕落ちたんじゃねぇの?」
「そういう問題じゃねえって。グレン、多分お前でも「痛って!」やっぱり。」
この固さ、竜の牙を素材にして作られてやがるな!そんな大盤振る舞いなんかすんなよ!
「この骸骨ミルク飲み過ぎだろ!」
「いや、煮干しの食べ過ぎだな。手がジンジンしてやらぁ。」
魔技や魔術を使えば倒せなくもないけど、マナを温存しておきたいんだよな、どうすっかな。
「「『その剣に光あれ』!」」
むっ、テレサとシスティーナが黒魔術『ウェポン・エンチャント』を俺達に掛けてくれたのか、助かるぜ!
『ウェポン・エンチャント』は魔力によって対象部位を強化することが出来る黒魔術だ。これなら骸骨も……ってあら?
「すまん白猫!テレサ!」
「えっ!?俺にはないの!?」
グレンがもう1回骸骨の顔面に右ストレートを放つ。すると骸骨の骨は砕けて粉々になった。けど俺には掛けてくれなかったのか骸骨は無傷だ、なんて日だ!
「よし、今の内に逃げるぞお前ら!」
「あらほいさっさ!」
俺はテレサとシスティーナを両脇に抱えて実験室から出る。グレン?置いてきた!
「ちょっとハヤト先生!?グレン先生を置いていくんですか!?」
「大丈夫、ちゃんとあいつなら追い付くから。」
「ハヤト!待ちやがれ!」
しばらく走っていたが、グレンの息が切れ始めたから止まる。体力ないなぁグレン。
「はぁ、はぁ、これで骸骨は撒けたか?」
グレンよそれはフラグだ、っとシスティーナとテレサを降ろさないとな。
「残念グレン、お前の後ろにうじゃうじゃいるぞ。」
しかもさっきより数増えてね?どっから出て来たんだよお前らーーー!
「こいつらを相手にするのはキリがねぇぞ!」
「グレン先生の『固有魔術』で無力化出来ないんですか!?」
出来たらこんな逃げ回ったりしねぇよ!
「無理だ!俺の『愚者の世界』はあくまで魔術の
「こいつらに有効なのは魔力相殺の魔術、つまり「『ディスペル・フォース』ですか!?でしたら私使えますよ!」マジかよ!?」
「テレサも使えるわよね!?」
「システィーナ程の練度はないですけど、私も一応は使えます!」
おいおい、『ディスペル・フォース』は高等呪文だぞ。その若さで使えるなんて、俺やグレンより優秀じゃねえか。
「……いや、やめとけ!この数相手じゃお前らの魔力が持たない!」
「ですが、この先の廊下は突き当たりで行き止まりですよ!」
行き止まりの廊下なんて作んなよ!
「おい白猫、俺とハヤトが骸骨を食い止めてる間に、お前は先に廊下の突き当たりまで行って得意の『ゲイル・ブロウ』を改変しろ。」
「そ、そんなの無理です!」
「大丈夫だ、お前は生意気だが才能はある。きっと出来るさ、生意気だからな。な・ま・い・きだからな!」
「生意気強調しないでください!」
おいおい、いきなり実戦で改変かよ。無茶な提案をするなぁグレン。
「テレサ、お前はシスティーナのサポートだ。」
「で、でもハヤト先生!私はシスティーナみたいに才能はないですし、サポート出来るんでしょうか?」
「大丈夫だって、もっと自分に自信を持てよテレサ。テレサは優秀な生徒なんだからさ。まあ、生意気の差でシスティーナに負けるけどな。」
「だから!私は生意気ではないです!」
「「どの口が言うんだが。」」
さて、俺もなんか魔法を考えておくか。範囲魔法はあるんだけど、直線上に放つ魔法はあんまねえんだよな。
「つーか文句言うな二人とも、もし出来なかったら単位落とすからな!」
「「り、理不尽だ!」」
世の中は理不尽だらけなんだよ。まあ、こんだけ煽ればなんとかなんだろ!
「分かりました、やります!テレサ、行くわよ!」
「ハヤト先生、グレン先生、無茶はしないでくださいね!」
そう言い残してシスティーナとテレサは走っていったな。これで目の前の骸骨共に集中出来る。
「よし、行くぞハヤト!」
そう言いグレンは骸骨の群れに突撃する。俺も突撃しないとな。
「ウラーーーーー!」
「どけどけーーー!骨っこ供!慰謝料は降りねぇからなぁ!」
いや、こいつら死んでるからなグレン!
「だぁぁぁぁぁ!無理、もう無理だ!死ぬぅぅぅぅ!」
早っ!さっきまでの勢いはどうしたんだよ!?
「グレン!まだ数行しか持ちこたえてねえぞ!」
「きついもん!こっちは素手なのに相手は武器持ってんだぞ!」
「持ちこたえねえと白猫にまたブーブー文句を偉そうに言われるぞ!」
「おっしゃぁぁぁぁ!かかってこいやカルシウム共ォォォォ!」
よし、グレンがピンチになった時はシスティーナの話をしよう。
「グレン先生!ハヤト先生!出来ました!」
ナイスタイミングだシスティーナ、あと数十秒しか持ちこたえれなかったからな。
「白猫!何節だ!?」
「三節です!今から唱えます!テレサ、行くわよ!」
「えぇ!分かったわシスティーナ!」
システィーナとテレサが魔術を唱えると同時に俺とグレンはシスティーナとテレサの隣に移動する。
「「『拒み阻めよ・嵐の壁よ・その下肢に安らぎを』!」」
「成功したか!しかもこれは!」
あいつがよく使っていた『ストーム・ウォール』!?まさかまた見られるとはな!
「でも、完全には足止め出来ない。ごめんなさい先生!」
「いいや、充分だ白猫、テレサ。」
「でも!このままじゃ!」
「大丈夫だテレサ、グレンを信じろ。」
グレンはポケットから赤色の宝石、魔術触媒を取り出して構えた。
「今から使う魔術はこのカルシウム共の相手をしながらじゃ唱えられないんでね!『我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と終を知る者・其は摂理の円環へと帰還せよ・五素より成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離すべし・いざ森羅の万象は須く此処に散滅せよ・遥かな虚無の果てに』」
おいおいマジかよ!これってセリカが使っていたあの黒魔術じゃねえか!
「ええい!ぶっ飛べ有象無象!黒魔改『イクスティンクション・レイ』!」
グレンの前方に出現した魔法陣から虚数エネルギーを放つ、前方の空間を消滅させた。
『イクスティンクション・レイ』は炎、冷気、電撃の三属性を強引に重ね合わせることで、 虚数エネルギーによって元素まで分解する魔術。
かつてセリカ・アルフォネアが編み出した神殺しの魔術だけど、術者がマナ欠乏症になる程の多大な魔力を消耗してしまうデメリットもあるけどな。
「「す、すごい。」」
『イクスティンクション・レイ』が通った場所である壁や天井がものの見事に消滅していた。ヒュー、派手にやるねぇ!
「でも、これを使ったあとはマナ欠乏症になるんだけどな。」
「「グレン先生!!」」
グレンは倒れこんで血を吐いた。それを見たシスティーナとテレサはグレンに駆け寄る。グレンの奴、無茶しやがって。
「大丈夫だ、これで骸骨も全滅……何だと!?」
奥の方からまたわらわらと骸骨共が現れてこっちに向かってきた。新たに召喚したのか、用意周到なこって。
「骸骨はまだ全滅してないな。さっきの倍の数になってるぞ。」
「そ、そんな。」
グレンはマナ欠乏症、システィーナとテレサじゃ骸骨は倒せない。仕方ねえな。
「グレン、骸骨はこいつらで最後か?」
「恐らくはそうだ。だがハヤト、カルシウム共はさっきの倍の数いる。『イクスティンクション・レイ』みたいな魔術とかあるのか?」
「あるから聞いてるんだよ。テレサ、システィーナ、グレンを少しでも回復させとけ。」
さて、実戦で使うのはこれが初めてだな。上手く発動してくれよ!
「『大地の咆吼、其は恐れる地龍の爪牙、その身を贄にして、敵を砕かん、グランドダッシャー』!さらに『凍牙、其は非常の槍と化し、殲滅の宴を開け、凍槍、アイシクルペイン』!」
俺は骸骨がいる床に魔法陣を展開させ、床に展開した魔方陣から岩の槍を出現させ骸骨共を串刺にし、上空から巨大な氷柱を出現させて骸骨共に向けて落としてぺしゃんこにした。
「ふぅ、殲滅完了っと。」
上手く発動して良かった良かった。
「ハヤト先生!!大丈夫ですか!?」
「大丈夫大丈夫、まだ余力は残してあるからな。グレン、立てるか?」
「なんとかな。それに、立ってないと敵を倒せないしな。」
そう言いグレンは血を拭って立ち上がる。顔色悪いな。
「ほう、あの骸骨を殲滅したか。たかが三流魔術師と聞いていたが、侮っていたようだ。」
何だ?なんか顔面に傷が付いている黒ローブの男が来たぞ?しかも剣を浮遊させてるし。
「「あっ、恐れ入ります。」」