「あー、もう、浮いてる剣ってだけで嫌な予感するよなぁ。あれって絶対、術者の意思で自由に動かせるとか、手練の剣士の技を記憶していて自動で動くとか、そういうやつじゃん。」
「しかも魔術は起動済みか。本当に厄介だな。」
「「先生……。」」
俺とグレンがブーブー文句を言ってると、システィーナとテレサがこっちを不安そうに見てくる。
「グレン=レーダス。前調査では第三階梯にしか過ぎない三流魔術師と聞いていたが、誤算だな。それとハヤト、調査ではグレン=レーダスと同じ第三階梯と聞いていたんだがな。」
「俺の事まで調べたのか。ご苦労なこって。レイクさんよ。」
「ほう、私の名前を知っていたか。私が予想していた以上に優秀だなハヤト。しかし三人も殺されるとは、誤算だった。」
いや、あのゲス男が言ってのを覚えてただけだ。
「二人を完全に殺したのはお前だろうが。人のせいにすんな。」
「命令違反だ。任務を放棄し、勝手なことをした報いだ。聞き分けのない犬に慈悲を掛けてやるほど、私は聖人じゃない。」
ごもっともなこって。
「ああ、そうかい。そりゃ厳しいことで。で、なんだ?その露骨な剣の魔導器は俺対策か?それともハヤト対策か?」
「知れたこと。貴様は魔術の起動を封殺できる。そんな術があるのだろう?だが起動している魔術には意味が無い。それともう片方は今魔術の出力が下がっているのだろう?『ディスペル・フォース』は使えまい。」
こいつ、俺の『固有魔術』のデメリットも知ってやがるのか。
「おい白猫、残りの魔力はどれくらいある?『ディスペル・フォース』で奴の剣を無効化出来そうか?」
「……あの剣、相当な魔力が宿っている。私の全魔力を使っても少し足りない。」
「テレサ、お前は?」
「は、はい。残っています。ですけど、それを相手が許してくれるのでしょうか?」
んー、雰囲気的に奴は油断とかしないタイプっぽいから許してくれないだろうな。仕方ない。
「そうか、おいグレン。」
「あぁ、わかった。」
「「先生?」」
「「んじゃま、とりあえず落とすわ。」」
グレンはシスティーナを、俺はテレサの体を押して建物から突き落とした。
「「ええええええぇぇぇぇぇぇ!?」」
「…………。」
レイクって奴、お前ら何してんの?って顔になってるな。仕方ねぇだろ、こうでもしないとあいつらを逃がすことは出来そうになかったからな。
「さてと、やりますか。」
「貴様らは逃げないのか?」
おろ?これはひっとして見逃してくれる?
「えっ?見逃してくれ「そんなわけないだろう。」ですよねー。」
「おいハヤト!来るぞ!」
レイクは浮遊している剣を俺達に向けて放ってくる。あの剣全てが全自動もしくは手動だったらなんとかなるか。
「くっ!ちぃ!」
「あーうぜー!ちょこまかちょこまか鬱陶しい!」
俺は二本、グレンは三本の剣の攻撃を弾いたり、回避する。ってこの剣、まさか!
「あぐっ!」
「グレン!」
グレンはちとヤバイな。マナ欠乏症に加えて素手と剣、相性は最悪だ。
「どうした?その程度か?」
「テメェ、まさかその剣。全自動と手動の両方か!?」
「ご名答だ魔術講師。」
ッチ、最悪のパターンじゃねえか!
「手練れの剣士の技を模した所で自動化された剣技は死んでいる。さりとて五本全てを私が動かしても、所詮私は魔術師。どちらも真の達人には通用せん。」
「だから三本の自動剣、二本の手動剣ってことかよ。」
言うは易し行うは難しだよくそったれ!異なる二つの術をここまでのレベルで使いこなすなんて並大抵の事じゃねえぞ!しかも手動剣の方も魔術師とは思えない程の剣捌きじゃねえか!
「だったら!『紅蓮の獅子よ・憤怒のままに・吠え「『霧散せよ』」!!」
『トライ・バニッシュ』を使われたか!空間内の炎熱、冷気、電撃などの3属性のエネルギーを打ち消すことが出来る魔術だから使わない筈がないか。
「爆炎の魔術である『ブレイズ・バースト』か。確かに逃げ場のない空間なら有効な術だが、遅いぞグレン=レーダス。」
「させるかよ!『裂空刃』!」
俺は背中に隠してある刀を取り出し、グレンに向かってくる剣を風の刃で全て打ち落とす。
「中々の剣技だなハヤト。今ので殺すつもりだったが、まあいい。『ブレイズ・バースト』の一説詠唱も出来んとはな、手本を見せてやろう。『炎獅子「グレン今だ!」何?」
「『猛き雷帝よ・極光の閃槍以て・刺し穿て』!」
「ちぃ!」
グレンはレイクに向けて『ライトニング・ピアス』を放つが、レイクは俺が弾いた二本の剣を自分の前に持ってきて『ライトニング・ピアス』を防いだ。
更に俺が攻撃出来ないように残りの三本で牽制しやがった。グレンがポケットから取り出そうとした『愚者』のタロットカードも見逃さなかったし、場馴れし過ぎだろこいつ!
「っち、最悪一本は取れると思ったんだけどな。熱・冷気・電気の耐性を付与する『トライ・レジスト』、そんなものまで付与済みかよその剣。」
「貴様、今のはやはり!」
グレンがやろうとしていたことを説明すると、『マナ・バイオリズム』を狂わせること。まあ魔術を使用するために必要なマナの状態は三つある。
通常の状態をニュートラル、制御している状態をロウ、マナが乱れた状態をカオスって言うんだ。
魔術を使うには精神集中や呼吸法によってニュートラル状態の『マナ・バイオリズム』をロウ状態にしないといけないんだ。
魔術を使った後、『マナ・バイオリズム』は一気にカオス状態にまで落ちる。まあ、落ち方は魔術の規模によって異なるけど。
そしてカオス状態の時はいかなる魔術師でも魔術を扱う事は出来ない。これらが魔術の絶対法則なんだ。
「あのまま『ブレイズ・バースト』を使用したら貴様の封印魔術によって起動が封じられ、その上私のマナはカオス状態になって一時的に剣が動かせなくなって、貴様は近接戦で私を倒そうとしただろう。」
分析力も高いなこいつ。
「だが剣で迎え撃とうとすれば、そのまま『ライトニング・ピアス』に撃たれていた。保険として『トライ・レジスト』を付与していたから防げた。更にハヤト、貴様はもし先程の二つの作戦が失敗したら私に攻撃しようとしただろう。」
自動化の三本の剣によって防がれたけどな。
「僅かな時間で私に突き付けた三つの選択肢。貴様ら、一体何者だ?」
「「ただの講師だよ。非常勤だけどな。」」
あの様子からして二度目は引っ掛かってくれなさそうだな。しかもシスティーナがグレンに掛けてくれた『ウェポン・エンチャント』の効果も切れそうだし。こりゃ覚悟を決めるしかねぇか。
「そうか、なら貴様らに敬意を表そう。私を相手にここまで戦えたのは貴様らが初めてだ。死ね!!」
そう言いレイクは浮遊している剣5本をグレンに突き刺した。これはいけるか!?
「俺を忘れ「忘れてはいない。」な、に。」
俺にも五本の剣が刺さってる?あいつ!?
「五本しかないと思ったか?保険としてもうワンセット隠していたまでだ。」
「だろうな!グレン今だ!」
「『原初の力よ・正負均衡保ちて・零に帰せ』!」
グレンは『ディスペル・フォース』を唱えたけど、今の魔力量だと剣の魔力を少々削れただけか。だがそれでいい。
「悪足掻きか、だがそれもし「「『力よ無に帰せ』!!」」先程の小娘共!?」
ようやく来たか、テレサとシスティーナのありったけの魔力を使って五本の剣を無力化したな。って全部グレンの剣かよ。
「だが残りの五本で仕留めれば!!」
「させっかよ!『陵、其は崩壊の序曲を刻みし者、 重圧、エアプレッシャー』!」
俺は自分の周りの重圧を上げて、刺さっている剣を抜けなくする。くそっ、思った以上にキツいぞこれ!
「「ハヤト先生!?」」
「自分ごとだと!?『目覚めよやい「おっせぇ!」がはっ!」
グレンは刺さっていた剣の一つを掴み、『愚者の世界』で魔術起動を封印した後に剣をレイクの急所を刺した。ふぅ、エアプレッシャー解除と。
「そうか、思い出したぞ。つい最近まで帝国宮廷魔導師団に一人、凄腕の魔術師殺しがいたそうだ。いかなる術理を用いたのか預かり知らぬが、魔術を封殺する魔術を持って、反社会的な外道魔術師達を一方的に殺して廻った帝国子飼いの暗殺者。」
「それも、知っていやがったのか。」
「活動期間はおよそ三年。その間に始末した達人級の外道魔術師の数は明らかになっているだけでも二十四人。その誰もが敗れる姿など想像もつかなかった凄腕ばかり。裏の魔術師達の誰もが恐れた魔術師殺し、コードネームは。『愚者』」
そこまで解説した後、レイクは口から血を吐いた。さて、剣を抜くか。うわっ!痛てぇなこりゃ!
「それと、半年前まで帝国宮廷魔導師団に所属し、『愚者』と同じように反社会的な外道魔術師達を、魔術ではなく魔法と剣技で殺していった化物がいたと。」
「……。」
「『愚者』がいなくなっても、その代わりとして活動していた。始末した魔術師は少なくても30人以上、しかも全員達人以上の実力者。さらにセリカ・アルフォネアと互角の戦いをしたという伝説を残した。コードネームは『未知』、だがハヤト。貴様が使っている『未知』の魔法と剣技は貴様ではなく
レイクは何故と言いたけば表情のまま動かなくなった。ってか、何でこのタイミングで解説すんの?要らなくね?
「「胸糞悪い事させやがって。」」
「「先生!!大丈夫ですか!?」」
「なんとかな、よく俺の意図が分かったな白猫?」
グレンがそう言った時、システィーナは涙目になっていた。
「グレン先生は、何の意味もなく行動するとは思えませんでしたから。」
「多分、7割くらい駄目だと思ってた。」
それな、本当にそれな!
「ハヤト先生。」
「ん?どしたテレサ?」
何故驚いた表情をしているんだ?何か俺に付いているのか?
「その出血量、大丈夫ですか!?」
足元を見たら、血だまりが出来ていた。まあ、15分以内に治せば大丈夫でしょ。
「……俺よりもグレンを診てやってくれ。」
グレンは、倒れたな。まあ、マナ欠乏症に大量出血、そりゃ倒れるわ。
「「『慈愛の天使よ・彼の者に安らぎを・救いの御手を』」」
システィーナとテレサはグレンに『ライフ・アップ』を掛けたな。
「やっぱ、駄目だったか。」
「「えっ?」」
「正義の魔術使いになりたかった。」
そう言ってグレンは意識を失った。思い出さないようにしていた過去を思い出したのか。
「さて、俺は座って休むか。その前にシスティーナ、テレサ。」
俺はシスティーナとテレサがこっち向いた瞬間に水色のグミを口に向かって放り投げる。
「「あむっ、なんですかこれ?」」
「マナと体力の回復を早めるグミだ。」
俺も水色のグミを食べてと。うん、ミラクルな味だな。
「テレサ、システィーナ、俺は少し寝る。」
「ハヤト先生!」
「そんな顔すんなよ。少し寝るだけだ。」
おやすみー、いい夢を見よう。
******
「ん?ふあぁ。よく寝たな。」
何時間寝たかわかんねえな。システィーナとテレサは寝ているのか。
「起きたのかハヤト。」
「グレン、目が覚めたんだな。ん?セリカと連絡していたのか?」
グレンは立ってストレッチをしていたが、傷が傷むのかしかめっ面になる。
「ああ、お陰で黒幕がいる場所が分かった。俺はルミアを助けに行く。ハヤトは白猫とテレサを見ていてくれ。」
「わかった、これを持っていってくれ。」
俺はグレンに腕時計を渡す。まあ、ただの腕時計じゃねえけどな。
「それは俺と通信出来る腕時計だ。何かあったら呼べよ?」
「分かった、にしてもハヤト。テレサはあいつに似てるよな。あいつと重ねているのか?」
「ッ!早く行けグレン!お前だってシスティーナをあいつと重ねているだろ!」
重ねちゃいけないのは分かってる。けど!
「……悪い、じゃあ行ってくる。」
そう言ってグレンはルミアが捕らえられている所に向かって走っていった。
「時刻は夕方、寝ていたのは数時間程度か。」
「あら、寝ていないのですね。」
「誰だ!?」
後ろから声が聞こえたから振り替えったら、黒髪のショートカットで緑色のメイド服を来た女性がいた。
「そう身構えなくてもよろしいのではなくて?私はただのメイドですわ。」
「んじゃあ、その殺気をしまえよ。二人が起きちまうだろうが、天の智慧研究会の者。」
天の智慧研究会、これが今回のテロリスト達がいた組織だ。簡単に言うと魔術の真理を追い求めるに当たって外道な手段も躊躇なく使うイカれた組織だ。
「隠していたつもりなんですが、気付くとは流石コードネーム『未知』ですわね。」
そう言いながらメイドは笑う。何の用なんだ?胡散臭いオーラが匂うぜ全く。
「『未知』は俺じゃねえんだけど?そこんとこ分かってるお前?」
「存じておりますわ。さて、王女はあの愚者が助けると思いますので、そこの二人を人質に捕ろうと思っていたのですが、貴方がいたのでは無理ですね。」
「無理ならここに来ないだろ、何かしたな?エレノア=シャーレット。」
メイドの名前を当てると、エレノアは口角を最大まで吊り上げて微笑んだ。こえーなおい。
「まあ、私の名前を知っているなんて光栄ですわハヤト様。ええ、私の可愛い子供達を呼びましたのよ?」
エレノアがそう言うと後ろの廊下から大量のゾンビが出現した。一、十、百、って多すぎだろ!
「テメェ、何体召喚しやがった!?」
「それは秘密でごさいます。さて、どうします?そこの二人を私にくれるのならハヤト様は見逃してあげますわよ?」
「ほざけネクロマンサー、教え子を危ない奴に渡すかよ。」
「そうですか、なら私の子達と優雅な一時をお過ごしくださいませ。」
「逃がすか!!」
俺はエレノアに刀を投げ付けるが、その前にエレノアはスカートを捲し上げて礼をし、消えていった。
「逃がしたか、それよりもゾンビをなんとかしねえとな!!」
マナは、全快じゃねえけどそれなりにある。ったくバイオ○ザードじゃねえんだからよぉ。
「さてゾンビ供、お前らの姿は女の子には見せられねぇ。だから駆逐してやんよぉ!!」
1対100?200?上等、1匹残らず倒してやらぁ!!