ダンガンロンパ 〜希望の半身と絶望の半身〜 作:レッドクロス
〜プロローグ〜 私には才能なんてない。
【中途半端】
この言葉は私のためにあるような言葉だ。
そもそも中途半端とは果たしてどんなものなのだろうか。
辞書で調べると『物事が不完全で未完成なまま』『どっちつかず』と言った事が書いてあるだろう。
要するに私は大にも小にもなれない存在なのだ。無能にはならないが有能にもなれない。『希望』にもなれなければ『絶望』にもなれない。
そんな何者にもなれない未完成で不完全な存在、それが『私』なのだ。
私はそれ、【中途半端】から抜け出したくて行動を起こした。
勉強や運動、その他諸々…全ては中途半端な自分を捨て去るために。どんなことでも挑戦した。
全ては少しでも『完全』に近づくために、【中途半端】という醜い鎖を断ち切るために。
でも、それらは全て無駄だった…
何をやっても私は『完全』にはなれなかった。どんなに頑張っても『不完全』なままだった。
だからだろうか、私が周りの人間たちから蔑まれているのは。
最初こそ私の周りの人間は私に期待を寄せる。しかし、最後には誰もが口を揃えてこう言う。
「「「「所詮お前は、中途半端なんだよな」」」」
……と。
私はどうしたら『完全』になれるの…?
どうして『不完全』なの…?
私は永遠に『完全』にはなれないの?
暗闇の中でいくら問いかけても誰も答えてくれない。
それも当然だ。この暗闇は私のためにあり、私しかここにはいないのだから。
光一つ刺さない漆黒の闇の中、その中に私は今1人でいる。
答えてくれない暗闇に私は今日も問いかける。
『私が私として認められるためにはどうすれば良いの?』と。
当然答えは返ってこない、この暗闇の中には私しかいないのだから。
でも、そんな私にも転機が訪れた。
愚かで醜い今の私が生まれ変われる絶好の機会が訪れたのだ。
それは私の目の前にある2つの存在だ。一つは光、もう一つは闇。2つの存在が私に向かって手を差し伸べて『生まれ変われ』と訴えてくる。
この2つの手を取れば、私は『完全』になれる。私は『不完全』ではなくなる。そう思える誘いだった。
私はその差し伸べられた二つの手を同時に手を取った……
そのせいだろうか、今の私が『ここ』にいて『こんなこと』をしているのは。
あの時にどちらかを選んでいたらこうはならなかったかもしれないのに。
私はここで思い知った。
私はどこまでも『不完全』なのだと……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今から約70年前、希望ヶ峰学園に起きたある事件を発端として、人類史上最大最悪の事件が発生して、世界は混沌と絶望に包まれた。しかし、絶望的事件の首謀者の江ノ島盾子を打ち倒し、未来機関をはじめとする希望を信じる人々の働きにより、世界は少しずつ復興していった。
そしてそれから70年の時が経ち、世界は以前と同じように平穏を取り戻していた。絶望的事件で街の中に蔓延っていた暴徒や絶望は全て駆逐され、全世界は以前と同じ様に希望に包まれていた。
そして、世界が絶望から復興した約30年前、世界を担う新たな希望の育成のために日本に『新希望ヶ峰学園』もとい『希望之園学園』が誕生したのだ。
希望之園学園は、希望ヶ峰学園と同じく『超高校級の才能を持つ高校生』を集めた学園だ。
さらに、この学園は才能ある若者の育成のための研究機関でもあるため、入学費用はかからないし、一度入学してしまえば、その後の授業料も免除されている。学園の運営資金や生徒たちの研究資金や活動費は世界各国からの出資でまかなっているし、世間では『希望の象徴』とまで言われている。
しかし、そんな希望之園学園は、希望ヶ峰学園と同じく完全なスカウト制で誰でも入学できるわけではない。
希望之園学園に入学するためのスカウト条件は二つで、【現役高校生であること】と、【超高校級の才能を持つこと】だ。
もしこのスカウト条件に当てはまり、希望之園学園に入学できれば、将来の成功は約束されたも同然との評判があり、高校生ならば誰もが希望之園学園にスカウトされることを夢見ていることだろう。
………だからだろうか、私に『希望之園学園』のスカウトが来たときに義父と義母と義妹があんなに喜んでいたのは。
希望之園学園のスカウトの話が来た時、私の家族は大喜びしていた。それはもう小躍りするほどに。
スカウトの話が来たときに私自身は鳩が豆鉄砲を食ったように放心していたのに対して義両親は飛び上がるように喜んだ。そして、その場で呆然とする私をよそに義両親はスカウトの話を受けた。
それから私の生活は一変した。
興味を向けられたことのない義父からは『お前は自慢の娘だ』と笑顔で言った。暴力を振るわれていた義母からは『流石私の娘ね! 優秀だわ!』と抱きしめて言った。家と学校で私を虐めていた義妹は『流石私のお姉ちゃん! 希望之園に入ったらそこのクラスメイトの人を紹介してよ!』と私に言った。
それに私は笑顔で『ありがとう』とか『任せて』と心にも思ってないことばを返す。これまで義家族は冷遇してきたのに将来を約束する学園にスカウトされただけでこんなにも態度が変わるとは……掌返しと言うのはこんなに身近で起こるんだな。
義父母と義妹が喜んでいる理由は何となく分かる。義父母と義妹は私にスカウトの話が来ると学校や会社、近所などあらゆるところで知人に自慢していた。希望之園学園にスカウトなんて自分の家族がエリートだって他人に自慢できる良い材料だし、承認欲求の強い3人は周囲の嫉妬と羨望の眼差しを受けてさぞかし良い思いをしたことだろう。
特に義妹はスカウトの話がきたその日から今年度の希望之園学園の新入生を希望之園学園のスレッドでやたらと調べていた。
おそらく、私を仲介してクラスメイトになった超高校級とよばれる一流の人たちとお近づきになろうって魂胆だろう。まあ、光に虫が集まるように一流の人に人が集まるのは当然だろうけどね。
それが理由なのだろうか、私を取り巻く環境も以前とガラリと変わった。義父母の奴隷で義妹のパシリだった私は家では本当の家族のように扱われるし、学校では義妹の自慢もあってクラスや学年だけにとどまらず、学校全体も私に注目してヒーローのような扱いを受けた。
クラスメイトや教師は『お前の活躍が認められたんだ』と言ってくれた。確かに体育の成績が良かった私は運動部のクラスメイトに頼まれて部活の助っ人に入り、そのチームの県大会優勝に貢献したりした。義妹のパシリで街を歩いていたら美容師に声をかけられてその日だけのカットモデルを頼まれたりもた。他にも演劇部、科学部、吹奏楽部、ボランティア活動、生徒会などでそれなりの活躍はしたが、それらはどれもこれも超高校級と呼べるほどの活躍はしていない。
万人を虜にするような美貌も、オリンピックに出場するような身体能力も、人を統率するカリスマ性も、見るものを魅了する芸術性も、人類の発展になるであろう知識も私は持っていない。
そのため、周りがいくら持て囃していても私自身は少しも納得できていないのだ。むしろ、学園で抽選枠として毎年1人選ばれる超高校級の幸運としてスカウトされていた方がもう少し現実味があったかもしれない。
しかし、そんな私の内心など気にも留めずに周りは私の事をもてはやす。
この人たちは希望之園学園に私が入学すると言う事実があればそれで良いのだろうか?
まあ、実際そうだろうな。学校の教師やクラスメイト、義家族にとって私なんてそれくらいの価値しかないだろうし。私もこの人たちに出来ることはそれしかないと思うから。
そもそも私自信は自分に才能があるとは思ってない、むしろこれから行く希望之園学園の人たちからしてみれば、私は彼らの劣化版だ。
確かに私は人より器用かもしれないけど、ただそれだけだ。私はどこにでもいるただの冴えない女子高生。希望之園学園の天才たちみたいに『完全』じゃない。
私はその人たちみたいな天才にはなれない出来損ないだ。何もかも『中途半端』にしかできない『不完全』なのだ。
学園はこんな『不完全』な私をスカウトするなんて何を考えているのだろうか……?
そして、月日は飛ぶように流れ、私の疑問に答えは出ないまま、希望之園学園に入学する日がやってきた。
私が希望之園学園に入学する今日も義家族は私を持て囃した。 それは今まで私を冷遇してきたとは思えないほどの甘やかしぶりだった。
今まで厄介者として冷遇してきた娘が自慢できる道具に生まれ変わったからか、血は繋がっていないとはいえ娘が将来安泰と呼ばれる学園にスカウトされたことに喜んでいるのかは分からないが、おそらく前者だろう。
人間は都合の良い方に流れるというのは私自身が今までの人生の経験からよく知っている。それに冷遇されていたとはいえ、身寄りのない施設育ちの私を引き取って養ってくれたのは感謝しているし、これで彼らへ養ってくれた恩を返せるのなら安いものだ。
義家族に見送られた後、私は家に背を向けて歩きながら数少ない私服のパーカーのポケットに突っ込んでいるぐしゃぐしゃになった入学証を見る。
この入学証は希望之園学園にスカウトされた証明書で、これがないと希望之園学園に新入生は入ることもできない。
私は目を細めてその紙を見る。 そこには私の才能と名前、スカウトされたということが記されていた。
『貴方を【超高校級のーーーー』として…………』と書いてあった。
やっぱり……改めて…見ても……納得できない。
こんな才能で……私は…………希望之園学園に……スカウトなんて……
……そこまでが私の覚えている記憶だった。
この時、私は知らなかった。
これが私の運命を大きく動かす出来事の始まりだったという事を……
今回はここまでです。
かなりの低クオリティで申し訳ありません……
キャラクターの心情や展開が上手く描写されているか、感想欄やメッセージで評価をもらえたら嬉しいです。