イリヤは気分転換も兼ねてお風呂に入っている
「…はぁ〜、何やってんだろ…わたし…」
夜にニクスが家を出て行く音を部屋から聞いているだけな
自分が心底嫌いになる
「……」
無言になりシーンとした雰囲気が流れる
「イリヤ〜?どこー?こっちー?」
久しぶりに聞く声が聞こえた。
こっちに向かってくーー
「イヤッホゥイリヤちゃーん!
お ひ さー‼︎」
「マ…ママ⁉︎」
「うん!ただいまイリヤ♪」
海外で仕事をしてしていた筈の
アイリスフィール・フォン・アインツベルンこと
イリヤや仁久須の母親がお風呂に突撃してきた
そして服をポンポンと脱ぎ捨てて一緒にお風呂に入ってきた
「どうして…一緒に…」
「長旅で疲れちゃったんだもん。
こうすればすぐにお風呂に入れるし
可愛い愛娘ともスキンシップも取れるし、
一石二鳥でしょ?」
ママはわたしを抱くようにして一緒に湯船に浸かっている
「あら何これ?お風呂で、おもちゃ?
イリヤもまだまだ子供ね〜」
「ふぇ?…そ、そうかな?」
物と化しているルビーを摘んで茶々を入れられ
イリヤはルビーをひったくってお湯に沈め、隠す
「と、ところでママ。
ずいぶん急な帰宅だねママ…」
「んんー?
私が急に帰ってきたら
何かまずいことでもあるのかにゃ〜?」
ほっぺをウニウニとされる。ちょっと不自然な質問だったかも…
「仕事がひと段落ついたから私だけ帰ってきたの。
切嗣はまだ向こうで仕事だから
すぐに戻らなきゃいけないんだけどね?」
「そうなんだ…」
パパにも会いたかったな…
「だからこうして愛娘の成長もかくにーん!
…じゃなくてスキンシップを…」
「それにしてはちょーと過剰じゃないかな?…これ…」
イリヤの胸部装甲をアイリが触診計測をする
「ねぇ、私が留守の間なにか変わったことあった?」
「えっ?ううん、別に…」
カード回収や魔法のこととか
ママにも言っちゃいけないから…
なんとか誤魔化さないと…
「またまた〜!
あったでしょ?
すっご〜く変わったことが!」
も、もしかして…バレてる?
「ほら、ウチの目の前に建った豪邸!
ちょっと見なかったうちに
あんなのが建っちゃうなんてね〜
一瞬帰り道間違えちゃったかと思ったわ」
「あはは…」
そっちか…よかった…
「セラから聞いたけど
クラスメイトが住んでるんですってね。
なんて子なの?」
「…ミ…ミユ…」
「ミユちゃんか〜
転校生なんでしょ?
友達にはなれた?」
「……うん」
…友達か…ちゃんと…なれてた…のかな……
「ねぇ?
イリヤ、そのミユちゃんって…どんな子?」
「どんな…って…えっと…
ミユは…なんて言うか静かな子。
必要なことしか喋らないし…
喋るのがあんまり得意じゃないのかも…」
わたしの言葉にママが優しく相槌を打っている
「あ、でもね。勉強も運動でもすっごいんだよ!」
長距離走で仁久須が勝った時はとっても嬉しいかった…
「なんでもできる子なのね」
そう、なんだ…なんでもできる…1人でも…
「そういえば、さっき外でね、
ニクスにもあったのよ。
それでイリヤちゃんに酷いことをしちゃったって」
「ッ⁉︎違うの‼︎ママ‼︎
ニクスは何も悪くなくて…わたしが……」
ニクスは何も悪くない…悪くないの…
イリヤは涙を流すのをグッと堪えて
「わたしが、ニクスに酷いことして…
ミユにも迷惑かけちゃって…
みんな…3人でやろうって決めたことから
わたしが逃げたときも……
誰も…誰も、わたしも責めないの!
わたしが…悪いのに…」
「それは駄目ね…ニクスも」
【なんで⁉︎】言わんばかりアイリの方に振り返ると
とても真剣な表情だった
「悪いことをしたら、ちゃんと怒る、ちゃんと叱る。
じゃないとイリヤが何が悪かったのか反省出来ないし、
それだとイリヤはずっとやな気持ちを抱えてしまう。
だから本当にその人事を思うなら
ちゃん怒らなきゃいけないの」
罪を犯したのにも関わらず
特に罰もなにもなく許される事は
その者の己の中で罪と決着をつけられないままにされ
良心の呵責に苛まれ続けるという
生き地獄を味合わせるということ
これにより狂気に身を委ねた
とある
「それでイリヤは叱ってほしくて…
そしてニクスやミユちゃんのことが
心配でしょうがないんでしょ?
そんな顔もしてるわ」
「それは…でも…」
わたしなんか行ったところで…
足手纏いでまた傷つけて…また…
「何か難しい事をやってるんでしょ?
手伝ってあげればいいだけじゃない。
そんなに……自分の力が怖い?」
え…なんで、それを…ママが知ってるの?
「マ…ママ…?今なんて…」
「…鍵が2度開いてるわね。
10年間も溜めていた魔力のほとんどが空だわ…
随分と盛大に使っちゃったのね。
こんなに早く解けるとは思ってなかった」
「なにを…言ってるの…ママ…?」
聞き間違いなのかと思ったけど
つらつらと核心に迫るような発言をして
「きっと驚いたのね。
今までの
絶対ママはわたしのあの力について知っている
「ママ…知ってるんだよね…?わたしの力のこと…
…だったら教えて!あの力は何なの⁉︎なんでわたしがあんな…」
ママに聞けばその答えがわかると思っていた…
「さぁ?」
唖然とした…完全に知っているはずなのに
ここぞのタイミングですっとぼけた。
「あ、あからさまにすっとぼけないでよ!ママ!」
「えーとホラあれよ
【それは自分で気づかねば意味がないのだ…】
とか【今はまだその時ではない】みたいなっ!」
「なにそれー⁉︎」
流石に納得がいかない。
沈んでた雰囲気もどうでも良くなって思うがままに反応した
「あーもー反論禁止‼︎」
「DVッ⁉︎」
突然の
「とにかく!わたしが言える事はひとつ。
力そのものに良いも悪いもないの。
重要なのは使う人…あなたの意思。
あなたにどんな力があろうと恐れる必要はないわ。
それは紛れもなくあなたの一部なんだから。
そんなこと言われたって…
「そしてね、人間誰しもやらかしちゃう
間違いを起こしちゃう事もあるの。
どんな凄い存在でもね?
重要なのはそのあとどうするか
どう行動するかなの」
どう行動しろって…言われても
「イリヤちゃんはこのままでいいの?
このまま立ち止まって」
でも…またわたしが足引っ張って迷惑かけたら…
「そんなに失敗を怖がらなくていいのよ
あなたのやりたいようにやればいいのよ、
イリヤちゃんは本当は何がしたいの?
ミユちゃんやニクスを助けたいでしょ?
叱ってもらいたいんでしょ?
なら助けに行ってあげなさい。
怒られに行きなさい。
大丈夫よ。
イリヤならできるわ
邪魔な恐怖なんてぶっ飛ばしてきなさい」
そうだよ…わたし!
後悔だけしてて肝心なことしてない…
ニクスやミユに一度も…
「ママ!ちょっと先あがるね!」
お風呂からあがる、そして決戦の地に向かう
仁久須が決戦に向かう為に家を出た所まで時は遡る
仁久須は家の前に出てイリヤの部屋の方を
見て気分が落ち込んでしまう
その時
「……つ〜かま〜えた〜♪」
「ふぁ⁉︎えっ⁉︎」
いきなり身体を捕獲され抱擁される。
背中に柔らかい何かを感じる。
「えっ…母さん…」
「久しぶり〜♪愛しきママですよ〜♪
あ〜この感触…やっぱり、いいわ〜食べちゃいたい」
アイリが仁久須を両手で抱きしめて
自分の頬に仁久須のほっぺに擦り付けている
かなり危ない発言をしているアイリだが
本当に危ないのはここからである。
「愛息子
「ひゃんっ⁉︎」
そういい仁久須のニクスをまさぐって触診している。
突然の事でびっくりしてしまう…完全にメスの声だった
「あっ…ん"っ……ほんとに!や、めて‼︎」
これ以上はこの作品がR18になってしまう。やめてもらいましょう
仁久須が真っ赤になりながらアイリの腕を振り解く
「はぁ…はぁ…」
「ふふふっ、ごめんなさいね。
ちょっとやり過ぎちゃったわ♪
ちゃんと成長してるわね」
もう二度とやらないで欲しい…
最後の何か言った気がするけど
聞かないでおこう…寒気がした
「で、なんかあったの?」
先程の雰囲気と打って変わって
心配している雰囲気である
「さっきのニクス、何かとても辛そうだったわよ?」
「……はい…実は…イリヤの前で死にました
…しかも…イリヤの…手で」
「そう…だったのね……」
イリヤは自分を責め続けて苦しんでるのに
僕は何も出来ずに何の言葉もない…
「いや…僕はなんともないよ…
怪我はないし痛みもないよ」
「………」
「それよりもイリヤが苦しんでるんだ。
僕のせいで…イリヤを悲しませて
…ごめんなさーー」
言葉を遮られた。
「もうそれ以上言わなくていいわ。
辛かったわよね、苦しかったわよね」
向かい合って抱きしめてられている。
慰めるような抱擁力を込められた感じで
「そんなこと…ないよ」
「強がらなくていいわ。
ニクスが苦しんでるのかなんて、すぐわかるわよ」
違うよ、本当に辛くて苦しいのはイリヤの方だ
僕はただ…
否定するが静かに首を横に振る
「そんな無理した笑顔されたって
何言ったって、ママはお見通しよ?
我慢しなくていいの
家族なんだから、全てぶちまけちゃいなさい」
あぁ…やっぱり…母さんには…勝てないな…
いつもはノリだけで動いてるのに…
こういう時はお母さんしちゃうんだもん
「僕は…
イリヤが自分の手で家族殺してしまって!
苦しんでるのに!
何も出来なくて!
僕が原因なのに!」
生前何度も死を体験していたが
ここまで心が苦しくなった死はなかった
あの時のイリヤの表情
それ以降のイリヤの挙動
全てに胸が苦しくなって
心が辛かった
仁久須は下唇を噛んで我慢するが
押し込んだものが涙となってこぼれ落ち
「ねぇママ、僕はどうすればよかったの?
どうすればイリヤが苦しまなくてよくなったの?
どうすれば…どうすれば…」
僕はママに抱きつくように顔を埋めボロボロと泣く
ママは受け入れるように
ぎゅっと力を込めて抱きしめて
辛いもの吐き出させるように背中を摩ってくれる
「あなたはイリヤが背負うべきものを背負いすぎなのよ。
悪い事をしたら叱らなきゃダメよ」
「そうじゃないと、イリヤが
いつまでたっても成長できないわ。
ちゃんとイリヤが背負うべきものはイリヤが背負って
手助けする程度に止めるの。
まあそれに甘えるイリヤが1番悪いんだけどね?」
「イリヤちゃんの方はママに任せなさい♪
何かやる事があるんでしょう?
何をやっているかは聞かないでおくから」
そう言われて目をゴシゴシと擦り
母さんから離れ深呼吸する
「うん、ありがとう母さん」
「あれあれ〜?
からかうような目で
手を口に当てながらニヤニヤとしている
カァーと顔を赤くして、ポカポカと叩く
「ムフフフ、ごめんなさい」
「…ん"〜まったく母さんは…じゃあ行ってきます」
「いってらっしゃい」
決意を固めた表情で決戦の地に向かった
やっぱり僕は覚悟を決めないとダメな分類かもしれない