それから二人は決勝戦のある第三アリーナへ着いたのだが
「うわ、席がほとんど埋まってらぁ」
「しょうがない、結構遅めにここに来たからな」
この時席はほとんど埋まっており、二人は少しプラプラしながらどこか席が空いてるか探した。部分部分席は空いてるが一席しか空いてないところが殆どで、二席空いてる所があったためそこに向かったら、空いている席の隣にいた女子にいきなり女尊男卑特有の絡み方をされて気分を悪くした結果、結局席に座らず後ろの方で壁に背を預けてアリーナを見ていた。
「はぁ……、席がないとかつらいぜ……」
「そういうな。まあこれでも飲んで元気出せ」
藍はそう言って左袖に右手を突っ込んだ後、袖から
「ありがと。……ん、うまい」
そして飲んだ後、二人は再びアリーナの方を向いたのであった。
簪はこの時を待っていた。倉持技研が打鉄二式の開発をやめて白式の方へに行ってしまったため、自分に残されたのは未完成の打鉄二式だけだった。開発資金ももらえず、自分自身の手で作るしかなかったのだった。
姉の楯無とは仲はいいが、頼ってしまうと自分がダメになると思っており時折アドバイスをもらう程度にしている。だがそれでも製作は一向に進まず、時折倒れてしまうということもあり本音と遥香がアシスタント兼見張りでいたため、一緒に作っていたが一向に完成しそうにもなかった。
後に藍が言った倉持は全く駄目だ発言にすごく落ち込みながらも、とりあえず製作を進めているとき一筋の光明が見えた。アナハイム社が打鉄二式の開発を受け継いでくれるとのことだ。
この時とある条件が言い渡されたが、簪は打鉄二式が予定より早く完成することを喜んだ。
だがクラス対抗戦に間に合わずに打鉄で出ることになった簪は、目の前にいる自分の存在を無視してるような一夏を睨みつけるのであった。
「決勝戦か……。さて、どうやって鈴と仲直りしよう……」
一夏は悩んでいた。
鈴と戦ってなぜあんなに怒ってたのか聞こうとしたが、鈴がまさかの四組、しかも訓練機に負けてしまい、仲直りする手立てが無くなってしまったことに困ってしまったのだ。
相手は日本の代表候補生というが、見た目はとてもおとなしそうな感じであり、そんな女の子があの気性の荒い鈴を一蹴するとは思っていなかった。
(くそ、どういう試合だったかきちんと見ておけばよかったな……)
一夏は記録されているであろう簪の戦闘記録動画を見ていたが、鈴が負けたときのショックでほとんど頭に入っておらずどう対処すればいいか悩んでいた。
「……織斑君、何考えてるか知らないけど……もしかして訓練機だからって勝てるって思ってる?」
この時簪から話しかけられたため顔を上げたら、そこには若干不機嫌そうな顔で一夏を睨んでいた簪がいた。
「い、いや、鈴に勝った相手にどうやって勝てばいいか考えてただけだ」
「そう。ならいい……」
簪はそう言って先程よりかは不機嫌さは消えたが睨むのはやめておらず、一夏は簪から出るプレッシャーで一歩後ろに下がった。
「それじゃあ……」
簪がそう言った時両腕に粒子が纏い始めたため、一夏は雪片弐型を展開して簪が何をしてきてもいいように警戒をした。
「一気に終わらせるね……?」
簪がそういった瞬間、簪の両腕にはひときわ目立つものが装備されていた。円形ののぞき窓が付いた青色の六角形のシールド。だがそのシールドを囲むように爪が取り付けられており、シールドの上の方にサーベルの柄だろうか、近接引きの柄らしきものが生えており、そしてシールドの下の方の先には大型ガトリング砲が装備されていたのだった。
「お、おい……。その二つをどうするつもりなんだよ……」
一夏は冷や汗をかきながら簪に聞いた。
『試合開始』
そして始まりのアナウンスとブザーが鳴った瞬間であった。
ドドドドドドドドドド!!!!!
「いっ!?」
簪の両腕に装着されていた二つのガトリングシールドから一夏めがけて火を噴いたのだ。一夏はとんでもない弾幕に驚きながらもスラスターを吹かして逃げるが、簪は逃げる方向が分かってるかのように一夏に近い片腕を動かして、ガトリングが作る異常なほどの弾幕を利用して一夏の逃げ道を塞いだ。
「やばっ」
逃げ道が塞がれ、そして簪がガトリングの砲門を前にした状態で突っ込んできたので一夏はとりあえず上下左右と滅茶苦茶な機動でガトリングを避けていたのであった。
鬼一と藍は観戦席の後ろの方にある手すりに腰かけて戦況を見ていた。
「両腕にガトリングシールドとか訓練機ではそうそう扱いにくいものだけどな」
「確かにな」
「そりゃあ自慢の妹だもの」
「「!?」」
いきなり後ろから声がしたため振り返ってみると、そこには更識楯無がいた。手に持ってた扇子には『お久しぶり』と書かれており、楯無は何事もなかったかのように藍の左隣に腰かけた。
「それにしても簪ちゃん……、ダブルガトリングってどこで覚えたの……?」
そう言った楯無は少し引き攣った笑みを浮かべており、額からは一筋の汗が流れた。
「まあロボットアニメとかでこういうのあるからな。恐らくロマンを求めた結果がこうなったのだろう。それだから先程の試合ではストロングライフルを使用してたしな」
「そもそもアナハイム社って何?ロマンを追い求めるところなの?」
「あそこは技術馬鹿と変態とロマンが一緒くたになってるところだよ。だから開発するISも先進装甲系が多いし、使う人間が安全かつ、最大限に能力を発揮できるのが多いし。まあ日用品とかも作ってるから割と普通なところもあるんだけどな」
楯無の疑問をさっさと答えた鬼一はアリーナの方を向こうとした。
『わぁぁぁぁぁぁ!!!』
「「「!?」」」
その時観戦席にいた生徒が一気に歓声を上げたため、何があったかアリーナの方を見たら
「簪ちゃん!?」
いつの間にか一夏に懐に入り込まれ、切られるのを庇ったのか右腕のガトリングシールドで防御して砲身を切られた簪がいた。
時は少し戻って一夏が上下左右に逃げている時だった。簪は両腕のガトリングシールドを駆使し、一夏めがけてダブルガトリングで攻めていたが一夏が器用にかわしていくため
(なんで全く当たらないの……!)
簪は一夏にガトリングがあんまり当たらないことに焦っていた。弾薬は使い始めてから90%は残っているが、致命打になる一手がなかった。
近接戦に入ろうとしても両腕のガトリングシールドが邪魔をして近接武器を持つこともできず、だからってガトリングを格納して近接武器を出したら弾幕が減るため一夏に攻め入る隙を見せてしまうためどうするか考えながら弾を一夏めがけてばら撒いていた。
ガチッ!
その時だった。何かが挟まった音がしたため簪は音のした方を見たら冷や汗が止まらなくなった。
「嘘……、薬莢が詰まった……!?」
右腕のガトリングの薬莢を排出するところで煙が上がっており、いきなりのことで簪は驚いてしまい引き金を引くのをやめてしまった。
「もらった!」
この一瞬だけ弾幕が止んで一夏がそう言った瞬間、一夏が目の前の視界から消えて自分の懐に現れた。
そう理解するの簡単であったが、素人である一夏はなぜこんな高等技術を使えるのかは簪は理解ができなかった。
そして一夏が居合いの要領で雪片弐を抜こうとしたため、簪は右腕のガトリングシールドで防御することを選んだ。だが居合いをシールド部分で防ごうとしたが、刃の軌道が一気に上の方へと向かったため、シールド部分で受けるつもりがガトリングの砲身部分で受ける形となってしまい、砲身が切り裂かれてしまったのである。
簪は素人で自分より稼働時間の圧倒的に短い一夏が高等技術でもある、自身もまだ使えない
「……このぉぉぉ!!」
そして簪は怒りと共にガトリングシールドの残った砲身部分で一夏の側頭部を思いっきりビンタするかのように殴って一夏を側転をしたかのように吹き飛ばした後、スラスターを吹かして一気に一夏に近づいて左手のガトリングシールドの砲身を一夏の鳩尾に軽く当てて引き金を引いた。
「うわぁぁぁぁ!!」
一夏はほぼ零距離でのガトリングをくらってシールドエネルギーがガンガンと減っていくのを見て、やばいと思い雪片弐型をとりあえず横に振って簪が後ろに下がった後急降下をして簪から距離を取った。
「よし、とりあえず右手のガトリングを破壊したぞ!」
一夏はシールドエネルギーを半分近く失いながらも右手のガトリング部分を破壊したことで小さくガッツポーズをしており、それを見た簪は小さく顔をムッとさせた。
そして簪は右のガトリングシールドのガトリング部分をパージし、そして左ガトリングシールドのガトリング部分とは反対に生えているサーベルの柄を握って抜刀した。
「許さない!」
そして簪はガトリングから弾をばら撒きながら一夏に近づいた。一夏は弾をかわしながら薬莢が詰まるのを若干期待した。だがそんな都合いいことが二度も起きるわけもなく、片手だけになったのにもかかわらず恐ろしいほどの弾幕を作り上げていた。
(くそっ、どんだけ
一夏はそう悪態をついて弾をかわしていた。
(このまま押し切れば……!)
簪はただひたすら引き金を引きっぱなしにして弾を吐きだした。普通はここらへんで弾切れになるはずだが、
一夏はそんなことを知らずひたすらかわし続けたが、いい加減動きが読まれ始めて弾が当たるようになってきたのだった。一夏はしだいに当たり始めたことに焦り始め、その焦りからか動きが雑になっていき、被弾率が上がって行ったのであった。
「一夏!……くそ!何だあの弾幕は!弾切れを起こさないとか反則ではないか!」
ここはアリーナの管制塔。その中で試合を画面で見ていた箒は一夏が一方的にやられていることに苛立って声を荒げていた。
「篠ノ之さん、落ち着いてくださいまし。私だってそう叫びたいですわ」
そんな箒をセシリアがなだめていた。そして箒はセシリアを睨んだが、なぜ睨んだのかわからなくなって画面に顔を戻した。
「それにしても本当にあの弾幕はおかしいですわ。本当にあれが訓練機ですの?」
箒とセシリアは知らなかった。訓練機である打鉄がすごいのではなく、装備しているガトリングシールドがいろいろとおかしいのだと。
あれから10分以上たっただろうか。簪はひたすらガトリングの引き金を引いたままだった。
(あと50%……、引き金を引いたままなのに、すごい……)
簪はチラリとガトリングの弾数を確認して弾がまだ半分も残ってるのに軽く驚いた後一夏の方を見た。一夏の白式はあちこちに弾痕が残っており、スラスター部分にあたったのか機動力が最初の頃より落ちていて地に足がついていたのであった。それを勝機と見た簪は一気に詰めてこの戦いを終わらせようとした。
(これで……、終わらせる!)
そして簪は引き金を引くのをやめて、ガトリングシールドのガトリング部分を格納した。この時一夏は一瞬だけキョトンとしたが、弾切れを起こしたのだろうと思って
そして距離はどんどん近くなっていき、途中で零落白夜を発動させた後、雪片二型の切っ先があともう少しで届くってぐらいのところで振り上げてそして
この時、簪がクスッと笑った。
「これで……あなたの、負け」
一夏は簪が何かつぶやいたのを聞いて一瞬寒気を感じたが、それを無視して振り下ろした。だが簪がサーベルで斬撃を逸らし、一夏が簪とそのまますれ違うと思った瞬間
「がっ……!?」
顎に強い衝撃が走り、脳が揺さぶられて一夏の目の前は大きく揺れて見えた。いきなり何が起きたのかわからない。一夏は体に力を入れようとするが全く力が入らず、雪片弐型を手放してしまった。そして平衡感覚を失い地面に落ちていく一夏が見たものは、左手掌底を振り上げた姿をした簪であった。
ああ、そういうことか。一夏は理解した。すれ違う瞬間に顎に掌底を叩き込まれたのか、と。
そして地面に叩きつけられた一夏は一気に意識を取り戻し、立ち上がろうとした。だが
「動かないで……」
そこにはいつの間にか夢現の刃を一夏の首筋に当てた簪がいた。雪片弐型はここから十メートルほど先に地面に刺さっている。だが動いたら夢現で首を薙がれて残り四分の一ほどあるシールドエネルギーが絶対防御が発動して無くなって負ける。一夏は悟った。もう足掻いても無駄、と。
そして一夏は両腕を天に掲げた。
「俺の負けだ」
ビーーー!!
『勝者、更識かんz「ドォォォォォン!!!!」
その時だった。アリーナの天井がいきなりビームでぶち抜かれたのであった。
鬼一「訓練機で専用機を二回も墜とすとかすごかったな」
藍「そうだな。それにしても簪はアナハイム社の武器を二回とも使っていたが……、よくあんな使い憎い武器たちを選んだな。ストロングライフルは反動が異常なほどにすごいし、ガトリングシールドは弾数を通常量しか入れてなかったら引き金を引きっぱなしにしておくと30~40秒ほどで弾切れを起こす武器なのにな」
簪「だって……、打鉄二式を作ってくれる代わりに、あそこの作った武器を今回にクラス対抗戦で使ってくれって言われたんだもん……。あの武器(ガトリングシールド)……、打鉄二式に取り付けようかな……?」
鬼一、藍「「!?」」