試合が終了したと思ったらいきなり閃光がアリーナのシールドを貫いて降り注いできたため、簪は一夏を夢現の切っ先に引っ掛けて一緒に後ろに下がった。
閃光が当たった地面からは衝撃で土煙が舞い上がっており、その煙の中に何かが入り込んだため左腕にガトリングシールドを展開した簪が土煙を見た瞬間、煙の中から閃光……いや赤いビームが簪めがけて飛んできた。
「っ……!!」
簪は咄嗟に右腕に装備したままだったシールドで腹を守る形でビームを受けたが、威力が高いのかそのまま後ろに押され始める。簪は踏ん張ってその場に止まろうとしたが、ビームの威力が高すぎてシールドが溶け始めたため冷や汗が簪の頬を伝った。
「くぅぅぅぅ……!……きゃぁぁぁ!!」
そしてシールドが一気に崩壊したため簪はビームをもろに受ける形になり、左腕のガトリングシールドで咄嗟に受けたがそのまま後ろに飛ばされて壁に激突した。
「簪……!うぉぉぉぉぉ!!!!」
簪が壁に叩きつけられたのを見た一夏はスラスターを吹かして雪片弐型を回収した後、正体不明機に向かって突撃していくのであった。
「簪ちゃん!どどどどうしよう、簪ちゃんが!」
「落ち着け楯無!お前が焦ったら周りの生徒はさらに恐慌に陥るぞ!」
藍は簪が吹き飛ばされたのを見て焦っている楯無をひたすら宥めていたが、全く効果がなく楯無は焦ったままだった。
「で、でも……!」
「先程の織斑戦ではほぼ無傷で勝ったんだ。あの威力のビームだったら、あと三発は耐えれる。それよりここにいる生徒たちを避難させるぞ」
「ほ、本当ね?分かったわ」
藍はどうにか宥めるのに成功して、楯無は生徒たちを落ち着かせて避難誘導し始めようとした時だった。
『あーあー聞こえているか~?こちら戦闘してたけど横やり入れられて殴り飛ばされた八神さんちの和麻君だ』
「和麻!?……あ、何でもないから早く避難して?」
楯無は和麻から
『遅いわよ!全く何をしていたの』
『その無人機を追っていたんだが、まさか他の無人機に邪魔をされてな……、んでそいつを潰すのに手間がかかってしまったって訳』
この時楯無は無人機という単語で指がピクリと動いた。
『え、無人機って?』
『いや、さっき所属不明機に邪魔をされて頭に来たから横一閃で切り裂いたんだが、血が一滴も出なくてオイルしか出なかったんだよな』
『それって本当?』
『嘘を言ってどうする』
『で、あなたは今どこにいるの?』
『ん?アリーナの真上、上空約千メートルぐらい?』
和麻はそういうが、今はアリーナの観戦席は既に遮断シールドでおおわれており、本当にアリーナ上空にいるかわからなかった。だが楯無は本当にいると確信していた。
『それじゃあこっちは突入させてもらうぞ』
『ちょっと、顔が見えたら色々と危ないじゃない!』
そう、和麻の使う第三世代IS『叢雲』はEx-Sみたいに顔まで金属に隠された
和麻の顔はどこからどう見ても十代後半の男子。アリーナに降りてきたら100%記録映像に残り、世界に存在がばれてしまう。彼の存在を隠蔽してきた楯無たち更識にとっては非常にまずいことになってしまうのだ。
『ああ、それは問題ない。ちゃんと顔は隠してるから……あ、織斑が殴り飛ばされた』
和麻のあまりにもそっけない言い方に楯無は一瞬だけキョトンとした後をしたが、鬼一戦の時の一夏を思い浮かべたらなぜか納得してしまった。恐らく突っ込んだらカウンターでもくらったのだろう。
『それじゃあこっちは避難誘導とかあるから、そっちはその時間稼ぎをして、いいわね?』
『わかった』
その言葉を最後に通信を切った後、数刻してアリーナのシールドを突き破る音がした。
「和麻……、頑張って……」
楯無はアリーナの中を見えなくしている遮断シールドの方を見てそう呟いた後、生徒たちがいる方を向いた。生徒たちのほとんどが怯えきった顔をしており、楯無はそんな生徒を落ち着かせるかのように笑みを浮かべた。そして観戦席と通路学校を繋ぐ通路へと足を歩めた。
「ちょっと通してもらってもいい?」
そう言った時モーゼの十戒かのように道ができてすんなりと楯無は通って行き、そして観戦席と通路を繋ぐゲートまで来た。
「遥香ちゃん、ちょっと来て」
「はい?」
楯無がそう言った後、楯無を中心にたくさんが生徒がいる中で返事が聞こえ、そしてたくさんの生徒たちがいる中をかき分けるように進んで一人の女子生徒が出てきた。
一夏や鬼一の他にISが使える男子、八神和麻の妹である八神遥香である。
「呼びました?」
「この扉、ハッキングで開けれる?」
楯無は背中にある扉を親指で指さしながら聞いてい見た。遥香は閉じられた扉の周りをじろじろと見ていたが、隣に小さなハッチがあり、それを開いたら小さく口角を上げて振り向いた。
「ここからハッキングしたらこの扉どころか、ほかの扉も開けれますよ?」
当たり前かのように言った時周りはシンッとしたが、そこにいた不安で泣きそうな顔をしていた女子達の歓喜の声が一気に出たため楯無、遥香、鬼一、藍はあまりのうるささに耳を塞いだ。
その後、遥香の活躍によって約五分後には全ハッチが開かれたため、観戦席にいた冷静な状態だったニ、三年たちが一年生をきっちりと避難させるのであった。
アリーナの避難誘導が予想より早く進んだせいか、既にこの時には三人の周りにはほとんどが人はおらず、そして避難する生徒の中で遥香が最後になって通路の入口に立った時後ろを振り返った。
「それじゃあ、みなさん頑張ってください」
遥香はそう言って通路の中へと消えて行くのであった。
「ありがとう」
楯無がそう言った後、緊張から少し解放されたからか溜息を小さく吐いた。
少しは休憩をしたいところだがこんなことで溜息を吐いておくわけにもいかない。中にはまだ簪と和麻と一夏がいるのだ。
楯無は顔をキッと引き締めてとあるところにISの回線をつないだ。
『織斑先生、ちょっといいですか』
管制室ではアリーナの中に入ってきた所属不明機が三機、一夏と簪の安否、観戦席の対応などで仕事に追われていた。
「織斑先生!観戦席の扉が開きました!」
「本当か!?」
千冬は真耶のとてもいい知らせを聞いたとき安堵した表情を見せた。これでまずは多くの生徒の安全を確保が出来る、そう思ってた時であった。
『織斑先生、ちょっといいですか』
「どうした楯無」
『今からアリーナの中を制圧しに行くのでアリーナのシールドを破壊して強制的に突入していいですか?』
それはとんでもない要求だった。それを聞いた先生たちは顎が外れるほど大口を開けており、千冬も眉間に小さく皺を寄せていた。
アリーナのシールドを破壊する、それはあの所属不明機がしたように異常なほどの威力がある武器が必要にあるのだ。
「ピットの方から行けばいいんじゃないのか?」
『そう思いましたが、突入部隊が中に入ってないってことはピットの扉が開いてないってことですよね?』
痛いところを突かれて千冬は眉間に寄せていた皺を深くした。さっき観戦席の扉が開いたがピットの方はうんともすんとも言っておらず、教師で構成された突入部隊がピットで待機したままなのだ。しかも通信がなぜかそこだけつながらず、強制突入の合図も送れないのが現状なのだ。
「……ならどうやって突入するんだ?」
『ちゃんとそれなら用意しています。斎藤君が持ってる武器をフルパワーで使えば穴をあけて突入することができます』
この時周りにいた教師陣のざわめく声が聞こえた。まあ
「……勝てる見込みはあるのか?」
『大丈夫です、問題ありません』
「……そうか、わかった。では任せたぞ」
『わかりました』
その言葉を最後に通信が途切れた後
「織斑先生。いくら更識さんがいるとはいえ、あのメンバーで大丈夫なのですか?」
真耶が不安そうに聞いてきた。あのメンバーとは楯無、鬼一、藍の三人のことだろう。
「更識が大丈夫と言ったら大丈夫なのだろう。あとはあいつらに任せるしかあるまい」
千冬はそう言って手元に置いてあったコーヒーに手を伸ばすのであった。だがこの時、千冬は管制室から箒が消えていることに気付いてなかったのであった……。
楯無は突入の許可をもらった後、鬼一達の方を向いた。
「さて二人とも、中に入って一気に制圧するけど協力してくれる?」
それを聞いた鬼一はニッと笑い、
「いいぜ」
そう答えた。藍はそんな鬼一を見て小さく微笑んでいたが、結構になることがあったため、楯無に聞いた。
「私も鬼一がいいならいいが……、どうやって突入するんだ?」
藍がそういうのも無理はない。ここからピットまで最短距離を走っても走っても五分は時間がかかるのだ。いくら五分と言えども今の状況下では一分も惜しむことができないのだ。
だがその中でも楯無は不敵な笑みを浮かべていた
「藍さん。FAZZの“あれ”を使えばいいじゃないの」
藍は一瞬“あれ”について考えたが、すぐに意味が分かって楯無と同じような笑みを浮かべた。
「……なるほど、そういうことか」
「そゆこと」
楯無は『たぶん正解』と書かれた扇子を広げてお互いに「ふふふ……」と笑っていたため、鬼一が若干引きつった笑いを浮かべていたのは無理ないだろう。
そして鬼一はそんな二人の会話にあんまり付いて行けなかったが、“あれ”に付いてはなんとなく思いついた。
「えっと……、二人が言ってる“あれ”ってハイパーメガカノンのことか?」
「「正解……あ、当たった」」
お互いに声がダブっていたため二人は顔を向き合ったが、どちらともなく笑い出した為鬼一はさっさと終わらせたいのか、溜息を吐いて頭を掻いた。
「まあそれはいいからさっさと終わらせよう。中が不安だ」
「あ、そうだった。それじゃあ始めようか」
楯無がそう言い、ミステリアス・レイディを展開した。鬼一は藍に後ろから抱きしめてもらってEx-Sを展開した後、二人(三人?)は観戦席の一番前に向かった。
「藍、お願い」
「わかった」
いつもはプライベート・チャネルで鬼一にだけ話していた藍だったが、今回は楯無にも聞こえるようにオープン・チャネルを介して声を出していた。
そしてEx-Sの右側にFAZZを展開して、ハイパーメガカノンの標準をアリーナの目の前にあるシールドにロックオンして引き金を引き、砲口から光の濁流が吐き出されてアリーナのシールドに吸い込まれるかのように向かった。
ドォォォォォン!!
「よし突入!」
轟音を立ててシールドに大穴を開けて、FAZZを格納した後楯無の掛け声と共にアリーナの中に侵入した鬼一達はアリーナ内の惨状を目の当たりにした。
「おいおい……、何だよこれ……」
鬼一はそう言葉をもら押してしまうが仕方がない。地面はハイパーメガカノンで溶かされたところ以外にもあちこちが溶かされてガラス質になっており、アリーナの壁の部分にも何かを叩きつけられたかのようなクレーター後が多く入っていた。
「簪ちゃん!」
楯無首をきょろきょろ動かしては割と近くに転がっていた簪の元へと向かい、胸元に抱き寄せたとき打鉄の姿を見て絶句した。
簪を護っていた打鉄の装甲はあちこちがビームで溶けており、防御に使ったのであろう殆ど溶けたガトリングシールドがビームの威力を物語っていた。
「お、おねえ……ちゃん……?」
「気が付いたのね!?よかった……」
楯無は簪が気が付いたことに安堵の溜息を少し洩らして一つ思い出したことがあった。
「えっと、織斑君は……、あ、いた」
上空を見ると二機の無人機と、白い装甲を持った一夏のIS『白式』の姿と、黒い装甲にまるで猛禽類かのような大きな翼上のスラスターを付けた和麻のIS『叢雲』がいた。
「あ、確かに顔は見えないわね」
楯無は和麻が顔は隠している発言をしていたため顔を見たが、バイザー的なもので顔が見えなくなっており、これなら安心だと思って一夏の方を向いてみた。
、白式の装甲はあちこちがボロボロになっていた。そして無人機は一夏に対して閑散な攻撃を繰り出しており、まるで遊んでいるかのような動きであった。
一方の和麻の方にいる無人機は一夏の方にいる無人機がしている閑散的な攻撃ではなく、潰すっていう意思が見えるほどの攻撃を繰り出しており、両腕からシャワーともいえる勢いでにビームが降り注いでいた。和麻はそれを全く体に掠らせずにかわしていたが、あまりの弾幕に射撃戦を強いられていた。
「くそっ、ここまでの弾幕を放つとかどれだけのエネルギーが詰まってるんだよ、あの機体は……!」
和麻は
『マスター!無人機の額が!』
「なっ!?」
この時、無人機の額にあった六角形になってるビームの発射口みたいなところが大きく光り始め、その熱量で無人機の周りに陽炎が立ち始めていた。回避しようとするが、ビームの弾幕で逃げ道を綺麗に塞がれ窮地に立ち入っていた。
「和麻!」
その時だった。今の声は藍なのだろう、楯無が後ろを振り向くと同時にビームスマートガンからビームを一気に上空に放った。ビームは和麻目掛けて額のビームを放とうとしていた無人機の方へと一直線へと向かうが、寸のところで体を後方宙返りをして回避され、そして回転をしている途中で額の光りが大きく光ったため全員嫌な予感を感じ一気に全員がばらけるように離れたらFAZZのハイパーメガカノンをも上回りかねないほどの光の濁流が上空目掛けて放たれた。
そして回転中ともあってそのビームはアリーナのシールドを一瞬で掻き消しながら観戦席も一気に薙ぎ払い、ビームが消えたころにはアリーナにはビームによってけ削られた酷い爪痕が残された。
この時全員が冷や汗を掻いており、上空にいた一夏もいきなりのことで動きを止めてしまい、無人機に首を掴まれた後そのまま頭から地面に叩きつけられた。
「ぐあぁ!?」
そして地面にぐったりした後、白式が解除されてしまったため一夏は無防備になってしまい、その近くに無人機が立っていたため危機を感じた楯無は少し遠くながら蒼流旋のガトリングを無人機に向けてばら撒いて無人機をさがらせた後、一夏を急いで回収した。
「鬼一君たちは和麻の加勢に向かって。私は簪ちゃんと織斑君を避難させてからそっちに援護に向かうから」
「「わかった」」
二人を抱えた楯無をさがらせるために背部ビームカノンを適当ながらも無人機に向けて放った後、楯無がピットの中に消えたのを確認して一気に急上昇をして和麻のいるところへと向かった。
「遅いぞ」
和麻は若干怒り気味に言い、鬼一は少し苦笑いして軽く謝った後二人は背中合わせになった。無人機はお互いで二人を囲むかのような配置になっており、いつでもビームを放てるはずなのに両腕をブランと下げたままだった。
そしてお互いに動かず睨みあっているとき、鬼一は和麻にプライベートチャネルを繋いだ。
『和麻、さっきお前が相手していた無人機を相手してていいか?お前には織斑と戦っていた?無人機譲るから』
『あいつの弾幕は異常だぞ?』
そう、先程見せたシャワーのようなビームの弾幕、そして頭部から放たれた極太ビーム、それは近距離機だったらまったく戦いずらい相手、だが鬼一はニヤリと笑ってビームスマートガンを構えた
『大丈夫だ、こいつだったら射撃戦はお手の物だからな』
『……わかった。だが負けるなよ?』
『その言葉、そのまま返すぜ』
そしてとちらともなくフッと笑った後、鬼一は頭部にキャノン砲が付いた無人機を、和麻はノーマルの無人機のほうっへと向かって行ったのであった。
鬼一「なあ、足の怪我だが……大丈夫か?」
妖刀「やっと最近瘡蓋ができたからガーゼと包帯をしなくてもよくなったよ」
藍「そうか……、それはよかった」
鬼一「それにしても次は無人機と本格的に戦うのか……」
妖刀「頑張れ」
最後にですが、頭部にビーム砲が付いた無人機の顔はモノアイっぽくなった量産型ZZをイメージしてください