鬼一が無人機とにらみ合っている頃。和麻は『叢雲』の最大の持ち味である速度をフルに使って無人機に怒涛の攻撃を行っていた。
飛行パワードスーツであるISの持ち味である右左前後上下から縦横無尽に攻めたてる三次元的なヒット&アウェイ。だが無人機は両腕にあるマニピュレータのように開閉する4本のチェーンソーで受け止め、決定打が入らない。
「チッ……!」
天叢雲剣の刃がチェーンソーの回転する刃に弾かれて火花が散る。舌打ちしながら和麻は後退する。
「これでも喰らいやがれッ!」
剣を右手に持ち替え、左腕を水平に振るう。するとそこから稲妻が迸り、無人機に向かう。
叢雲の第三世代兵器『雷禍』。
叢雲の漆黒の装甲に刻まれた蒼いラインの中を駆け巡る電気を生み出す『ライトニング・ナノマシン』。それをイメージインターフェースを用いて指向性を持たせることで、雷撃を自在に放つことができる。
高速で迫る回避不能の光の槍は無人機を直撃。激しくスパークさせる。
が、無人機は多少動きを止めただけで再び動き出す。
「固いな。あいつの守り」
『有人機と違って無人機は疲労による行動の乱れはありません。厄介な相手ですね、マスター』
「ああ」
和麻とシャーリーが無人機相手に手をこまねいていると、今度はこちらの番だとでも言うように無人機が背中のスラスターを噴かせて動き出す。
両腕を構え、四本のチェーンソーをこちらに向けて突進してくる。さらには頭部のサングラスのようになっているパネルからビームを連射してきた。
「八咫鏡!」
それを和麻は独立稼働するシールドビットである八咫鏡を呼び出し、ビームを弾く。
楯に隠れながら真上に向かって急上昇。
無人機も和麻を追いかけるために方向転換する。
和麻は無人機が追いついてきているのを確認すると、反転して急降下。落下の勢いを加えて剣を振るう。
ガキンッという音を立てて再び剣とチェーンソーが火花を散らし、両者左右に飛んで距離を取る。
「マジで手詰まりだな。あのチェーンソー何でできているんだよ。『
『現状ではリスクが高すぎますね。使ったとしても倒せる確率は低いかと』
和麻とシャーリーは途方に暮れる。
相手はどうも速度を犠牲にしているが、代わりに攻撃力と防御力がずば抜けている。速度に特化した叢雲とは真逆の機体だ。
「さて、どうしたものか……」
悩む和麻。そんな彼のもとに、唐突に
『和麻君無事!?生きてる!?』
相手は……更識楯無。
和麻の恋人だった。
聞こえてくる声には彼女らしくないくらい余裕がない。
「無事だよ。そんな心配すんな……っと」
体を半身にずらしながら、横に移動する。するとさっきまで和麻がいた場所をビームが通り過ぎ、空に消える。
『ちょっ、今何か変な音聞こえたわよ!?』
「問題ない。ゴジラの熱線の超劣化バージョンが通り過ぎただけだ」
『そっか~それなら安心ね♪』
いやなんで安心するの?という突っ込みが(避難した簪のいるあたりから)聞こえた気がしたが、シャーリーは気にしないことにする。
この二人はいつもこんな調子なのだ。
「で、何かこの手詰まりの状況を何とかしてくれる作戦でもあるのか?」
『もちろんよ!
「了解」
チャンネルを切ると和麻はすぐに上昇し、無人機から逃げる。
速度と無人機との距離を意識するのも忘れない。
無人機は、和麻が追いかければすぐに追いつける距離にいることで追いかけるが、追いつけないように和麻とシャーリーは叢雲を慎重に操る。
そして、楯無に指定された地点までやってきた。
そこはIS学園のある人工島の埠頭、ヨットや小型船が停泊している場所だった。
そこにはIS『
『相変わらずですね、あの人は』
「だからこそ、あいつはいい女なんだよ。いつでも自分を見失わないからな」
そう言いながら叢雲は楯無の隣に降り立つ。
「や、直接顔を合わせるのは久しぶりだね、
「そうだな。逢えてうれしいぜ、
楯無は右手、和麻は左手の装甲を部分収納してコツンと優しく合わせる。
それと同時に二人の前に無人機が降り立つ。
二人と無人機の距離は10メートルほど。IS同士なら有って無いような距離だ。
無人機は両腕の四本のチェーンソーの刃を回転させ、さらに頭部のビーム砲になっているレンズを紅く光らせ、エネルギーを最大出力で放つ準備をする。
それでも、二人は余裕の態度を崩さない。
「宣言しましょう。そこの無人機ISを操っている犯人さん」
楯無は装甲を解除した右手を前に突き出し、三本の指を立てる。
「私が三つ数え終わった時、私たちの勝利が確定するわ」
その言葉を聞いたからなのか、無人機は頭部からビームを撃ち出した。
アリーナのシールドを貫通したそのビームはISの絶対防御を貫くだろう。そのまま楯無の右腕を消しとばす――ことはなかった。
突然、ビームがぐにゃりと曲がり、空の彼方に消えて行った。
「いーち」
楯無が指を一本折る。
無人機はチェーンソーを振り回しながら、背面ブースターを点火。楯無の華奢な体をズタズタにしようと迫るが、突然その動きが止められる。
「にーい」
楯無が二本目の指を折る。
無人機が何とか前に進もうともがくが、進めない。それどころか無人機は徐々に後ろに引っ張られていく。
「さーん」
そしてついに楯無の三本目の指が折られた。
「はい。私たちの勝ち♪」
その瞬間、無人機に向かって埠頭が面していた海から大量の海水が無人機に殺到し、飲み込む。
大漁の海水に飲み込まれた無人機は、まるで洗濯機に入れられたかのごとく、大量の水の流れにもみくちゃにされた。
頭が、腕が、足が、チェーンソーが、胴体が軋みを上げて曲がりそうになる。シールドエネルギーなど関係ない。水の渦が生み出す遠心力が無人機の機体をひねり上げ、強大な圧力が体を潰そうとする。
そして、その渦の中を幾筋もの青白い閃光が走り、その機械の体を完全に破壊しつくした。
やがて海水の動きが止まり、ぼろぼろになった無人機が地面に落ちる。
空中には真っ黒な水の星が滞空していた。
これがリミッターを外すことで初めて使える、
大量の水と準備の時間がかかる代わりに、何者をも高濃度のアクア・ナノマシンの水でとらえ、水圧と水の渦の遠心力で破壊する。競技では絶対に使用許可が下りない技だ。
「覚えておきなさい。覚醒したISコアは何物にも縛られない。操縦者の望むままに力を振るう」
「例え、創造主だろうとそれを邪魔することはできないぜ」
バチバチと腕から先ほどの放電の余波をまき散らせながら、和麻は楯無の言葉に続いた。
これにて学園を襲った無人機は全滅するのであった。
実は書き貯めがないから次の更新は未定だったりする。