紫の星を紡ぐ銀糸N   作:烊々

14 / 38
04. 辿り着いた真意

 

 

 

「『ギャラクティカエッジ』ッ‼︎」

 

 外敵のロボ型モンスターに私の剣技を叩きつけ破壊します。

 

「お見事ですわ、ギンガ」

「ありがとうございます」

「相変わらず綺麗な剣技ですわね」

「お褒めいただき光栄です」

「そういえば、結局ネプテューヌはこの技を使えるようになったのでしょうか?」

「わかりませんが、多分使えないかと」

「教えて差し上げないのですか?」

「女神様が私の真似事などする必要はありませんので」

「はぁ……ネプテューヌが可哀想ですわね。いつか愛想を尽かされても知りませんわよ」

「嫌われる覚悟も無くては、女神補佐官は務まりませんよ」

 

(……流石に鈍すぎはしませんか? ネプテューヌに同情する日が来るとは思いませんでしたわね……)

 

 さて、状況を説明しますと、私たちはここ数日ソルジャーとして外敵やモンスターの駆除に明け暮れていて、今日も今日とて外敵退治に駆り出されたわけです。魔王による呪いでソルジャーが次々とらん豚にされている現状、戦えるソルジャーが減る一方なので、私たちも忙しくなる一方です。

 

「……ん?」

 

 破壊されたロボ型モンスターの内部がふと目に入り、ある『違和感』を覚えます。

 

「ギンガ、どうかいたしました?」

「……ベール様、少しお時間をいただけますか? このロボの残骸で調べたいことがあるので」

「構いませんけど……」

 

 ベール様に許可をいただいたので、ロボ型モンスターの残骸の腕部を引きちぎって強引に中身を取り出して観察します。

 

「やはり……このロボ、リーンボックス製のパーツが多く使用されています。いえ、それどころかほぼ完全にリーンボックス製です」

「何ですって……?」

「外見だけではわからないのですが、内部パーツは国ごとに個性が出るんです。こういったロボ型モンスターは過去に何度もぶっ壊してきたので、中身を少し見ただけでどこ製なのかわかっちゃうんですよね」

「そして……これがリーンボックス製と?」

「はい。間違いありません」

「……ならば、つまりこれは外敵を模して作られた偽物ということですわよね? けど、どうしてそんなことを、誰が…………って、ここで考えていても仕方ありませんわ、考えるのは後にして、今は進みましょう」

 

 私たちの外敵排除任務の次にはもう魔王討伐任務が入っています。

 そう、討伐なのです。ここ数日間の教会の調査により、ついに我々は魔王の住処を突き止めたので、すぐに魔王の住処たるダンジョンへの向かいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが魔王がいるダンジョン……ですか」

「魔王の住処にしては地味な場所ですね。もっとおどろおどろしいものかと思っていたのですが」

「私の国にそんなダンジョンがあってたまりますか」

「それもそうですね。失礼しました」

 

 そのままダンジョンに突入し、迫り来るモンスターをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、どんどん奥へと進んでいきます。

 

「うーん……」

「どうかいたしましたか、ベール様?」

「い、いえ、何でもありませんわ」

 

 ここ数日間ベール様は戦っている時少し不満そうな表情をするんですよね。私が何かしてしまったのでしょうか……?

 

 ……おっと、魔王とやらの気配が近づいて来ました。

 

「ベール様、この先に……」

「わかっています。魔王がいるのでしょう?」

「気を引き締めていきましょう!」

「ええ!」

 

 と言って気を引き締めはしたものの、魔王とやらにしては何か気配が弱々しいですね。それに、私はこの気配に覚えがあります。

 

「……お出ましのようです」

「これが、魔王? 確かに不気味な外見をしていますわ」

 

 私たちは魔王の正体を目の当たりにしました。いえ、魔王と呼ばれているだけのただのモンスターと言った方が正しいですね。

 

「……いえ、違います。このモンスターは、私が零次元という次元で戦ったモンスターです。身体が大きいですが、魔王と呼ばれるほどの強さはありません」

「零次元……あなたたちが以前迷い込んだ次元ののことですわよね?」

「はい……しかし、何故零次元のモンスターがここに……」

「……はぁ」

「ど、どうしたのですか? いきなり溜息など……?」

「このモンスター、雑魚なのでしょう? せっかくギンガが来てくれて、一緒に華麗な連携をしながら戦える思っていたのに、ここ数日間出てくるのは連携など必要のない程度の雑魚ばかり。不満も溜まりますわ……」

「そう言われましても……」

 

\ オオオオオオオオッ! /

 

 己を目の前にして雑談をする私たちに苛立ったのか、モンスターは咆哮を上げながら襲い掛かって来ます。

 

「ベール様!」

「言われなくてもわかっていますわ。さっさと片付けてしまいましょう……!」

 

 敵の攻撃を華麗に回避し、回避の姿勢から流れるように繰り出されたベール様の槍技により、モンスターは動けなくなるほどのダメージを負いました。図体だけ大きい雑魚モンスターなのもあって、私が何もせずとも一瞬で決着がついてしまいました。

 

「お見事です」

「褒められるほどの相手ではありませんわ。それよりも、私良いことを思いついたのですけれど」

「良いこと……とは?」

「このモンスターを魔王ということにしてエスーシャに差し出すのはどうでしょう……?」

 

 ベール様がニヤリと笑います。

 

「なるほど、いいですね……!」

 

 その意図を理解し、私も便乗してニチャアっとした笑みを浮かべます。

 

「先に笑った私がいうのもなんですが、その笑い方流石に気持ち悪いですわよ。二度としないでくださいな」

「……申し訳ありません」

 

 

 

 

 

 

 

「……まさか、こうも早く魔王を捕まえられるとは。流石女神とその僕と言ったところか」

「当然ですわ」

 

 ……やはりこの雑魚モンスターを魔王だと信じているようですね。

 ちなみに、このモンスターは私が引きずりながら教会に持ち帰りました。ベール様に「よくそんなもの素手で持てますわね……」とドン引きされてしまいましたが、ベール様にドン引きの表情で見られるというのは逆にご褒美みたいなものです。

 さて、エスーシャさんとの交渉はベール様に任せましょう。

 

「……こほん」

「なんだ?」

「まさかと言いますが、魔王を捕まえたのに礼の一つも無いということさ、ありませんわよね⁇」

「……ふっ。なるほど、褒美が望みか。ならば望みを言え。この度の活躍を称え、何でも好きなモノを褒美としてやろう」

「……ニヤリ。今、あなた、何でも、と言いましたわね」

「あぁ」

「ベール様……!」

「な、なんですのいきなり?」

「何か不穏なものを感じました。例えば『この世に存在するゲイムギョウ界中のゲームの初回限定版を店舗特典付きで全て望む』みたいなことを言い出しかねないような気がしたので、鍵を刺しておこうかと」

「心でも読んだんですの……?」

「ネプテューヌ様ほどではありませんが、私はベール様の言いそうなことは割と分かります」

「はぁ……結局何が望みなんだ。早く言ってくれ」

「あ、はい。リーンボックスを返していただきましょう……!」

「そうか。いいだろう。リーンボックスなど、欲しいのならばいくらでもくれてやる」

「……え? ……ええええええ⁉︎ そ、それは本当ですの?」

「魔王を捕獲した今、この国や今の立場に拘る理由はない。あとは君たちの好きにするといい」

「まさか……こんなにあっさり取り返せるとは……思いませんでしたわ」

 

 少し驚きましたが、エスーシャさんの国の統治への無関心さを思い返せば納得も行きます。ベール様が国を取り返し、これにてリーンボックス出張編も終了……といけばいいのですが。

 

「失礼するよ! エスーシャ、魔王のことで報告がある」

 

 話が済んだと思った瞬間、人型で筋骨隆々のスライヌがいきなり教会の謁見の間に入ってきました。

 以前ベール様が言ってたのですが、エスーシャさんには配下の人型スライヌが二体いて、今入って来た筋骨隆々のオススライヌとナイスバディらしいメススライヌとのこと。仕える主は違えど、主君に仕える者同士のシンパシーを感じますね。

 

「なんだ、言ってみろ」

「魔王の体組織を調べたんだが、オイラの舌が普通のモンスターだと告げているんだ」

「どういうことだ? あれは魔王ではなかったのか?」

「魔王であって魔王ではないのだろう」

「つまり、私たちが魔王だと思っていたのが、魔王と呼ばれていただけの、普通のモンスターだった、ということか」

「だろうね」

「そうか……っ!」

 

 報告を聞き終わり、エスーシャさんは何か焦った様子で教会の奥へ駆けて行きます。

 私たちは何が何だか分からず、そのまま教会を後にしました。

 

 

 

 

 

 

 

「上手くいきませんでしたわね……」

「上手くいきませんでしたね……」

 

 結局リーンボックスを取り返す話は有耶無耶になり、意気消沈しながら街中を練り歩くベール様と私。まぁ、女神様とお散歩ということで少しだけ浮ついた気持ちになりますが。

 

「魔王が存在しなかったということは、ソルジャーはどうなるのでしょう?」

「外敵だけを相手にする組織にでも生まれ変わるんじゃないでしょうか?」

「リーンボックス製のロボ型モンスターが出てきたこともあって、外敵というのも何かきな臭いですわよね」

「やはり教会に殴り込んでエスーシャさんを尋問した方がいいのでは?」

「そんな強引なやり方は好きではありませんわ。もっとスマートでエレガントにいきたいものです」

 

\ pppppp /

 

「おっと、私の携帯端末ですわ……あら? エスーシャからメールだなんて珍しいこともあるんですのね」

「いつもは通話で呼ばれますからね」

「ええと内容は……『エスーシャを止めてください イーシャ』……と書かれていますわ」

「エスーシャさんなのに差出人がイーシャさん……ということですか? イーシャさんとは?」

「私も知りませんわ…………あっ! ギンガ、あなた以前エスーシャの身体にはもう一つの魂があると言いましたわよね?」

「はい……あ、そういうことですか」

「気づいたようですわね。イーシャというのもしかして……」

「エスーシャさんのもう一つの魂……」

「可能性は高いですわ」

 

\ pppppp /

 

「またメールですわ。ええと……『エスーシャは百万匹のらん豚を連れて黄金の頂に来ている。時間がない。@イーシャ』……と書かれています」

「百万匹……魂……まさかっ⁉︎」

「何か心当たりがある様子ですわね」

「……禁術です」

「え?」

「魂の器、すなわち肉体を創り出す禁術です。おそらくエスーシャさんはイーシャさんなる方の身体を用意しようとしているのでしょう。百万匹のらん豚はその禁術の素材です」

「素材って……! らん豚は元は人間。このままでは百万人が犠牲になるということなのでしょう……⁉︎」

 

 何故この禁術をエスーシャさんが知っているのでしょう……? この禁術は私とイストワールでゲイムギョウ界の歴史から抹消した筈……

 

 そして、色々と繋がりました。おそらくエスーシャさんは『魔王』を禁術のための素材にしようとしていたのでしょう。しかし、魔王なんてものは初めから存在せず、禁術の素材も存在しない。だからエスーシャさんは焦って最後の手段に出たわけなのでしょう。最後の手段、百万匹のらん豚を素材にするという手段に。

 

 あとは、これは推測なのですが、外敵というのも魔王捕獲のためにソルジャーたちを鍛えるため、そしてソルジャーという職をそれっぽくでっち上げるための自作自演だった可能性があります。

 

「何としても止めなくてはなりませんわ!」

「はい、行きましょうベール様! 黄金の頂とはおそらく……」

「……わかっていますわ。以前のリーンボックスには存在しなかった巨大な金色の塔のことでしょう? 行きますわよ! 全速前進ですわ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 私たちは黄金の頂に侵入しました。侵入、というよりは黄金の頂自体が来るもの拒まずといった感じで開放されていたのです。

 

 黄金の頂の内部は、まるで宇宙空間のような景色が広がっており、パネルのような足場が点々と配置され、それを少しずつ登っていくことで上を目指すようになっていました。

 

「不思議な場所ですわね……」

「そうですね、まさか内部がこうなっていたとは……」

「この上にエスーシャがいるのですわよね」

「おそらく」

「なら、変身して一気に上に飛んでいきましょう。あなたも専用のプロセッサユニットで飛べますでしょう?」

「わかりました。確かに飛べる我々にはこんなステージギミックにわざわざ付き合う必要なんてありませんよね」

「そういうことですわ」

「えー? ダンジョン攻略にそんなズルしちゃダメだよー!」

「と言われましても……状況が状況ですし」

「そうですわ。ゲームの攻略ならダンジョンの隅々まで探索しますが、今はそんなこと言ってられませんもの」

「それもそっか。でも私飛べないんだよねー。大ジャンプはできるけど」

「そういえばネプテューヌさんはネプテューヌ様と違って変身して飛行することはできないんですね」

「そうそう」

「では私が抱えて行きましょうか? ……………………って、え⁉︎ ネプテューヌさん⁉︎」

 

 思わぬ再会による驚きもありますが、それ以上にあまりにも私たちの会話に自然と混ざってきてとても馴染んでいたので不覚にも気付くのに少し時間がかかってしまったことの方に驚いています。

 

「久しぶりだね、ギンガ」

「お、お久しぶりです……」

「そっちのお姉さんはホテルの大浴場で胸を揉み合った以来だね」

「そうですわね。ネプテューヌって……もしかして、あなたたちが零次元であったという大きいネプテューヌのことですか?」

「はい、そうです」

「お風呂で会った時は湯気でよく見えなかったのですが、やはりネプテューヌだったのですね……」

「ネプテューヌさん、何故あなたがここにいるのですか?」

「それは、わたしが秘密結社アフィ魔Xの一員で君たちの足止めを頼まれたからだよ!」

「秘密結社……? あなたは秘密結社の一員だったのですか?」

「まぁ、色々あってね」

「秘密結社の一員がここにいるということは、ゴールドサァドと秘密結社は結託しているということでいいんですか?」

「完全にグルってわけじゃないよ。とりあえずお互いの目的のために協力だけしてるって感じかな?」

「そしてあなたの役割は私たちの足止め……ということですか」

「うん、そういうこと」

 

 彼女の言葉の全てが真実とは思えません。何か別の企みがあるように見受けられます。しかし、真実を確かめている時間はなさそうです。

 

「ベール様、ここは私が。ベール様は先に上に向かってください」

「……わかりましたわ。ギンガ、気をつけて」

「はい。ベール様も」

 

 そのまま塔の上を目指すベール様を、意外にもネプテューヌさんは見逃しました。

 

「やけに素直にベール様を通しましたね」

「流石にギンガと女神様を同時に相手取ろうってほど自惚れてないよ。それに……」

 

 ネプテューヌさんはニヤリと笑い、双剣を顕現させ、両手に待ち臨戦態勢に入ります。

 

「ギンガとは一回戦ってみたいと思ってたんだよねー!」

「実を言うと私もです……が、今はそれよりも優先すべき事情がありますので、押し通らせていただきます!」

 

 そう言って私も剣を抜き構えます。

 

「さてと……名乗りでもあげちゃおうかな! 秘密結社アフィ魔X、ネプテューヌ!」

「……女神補佐官、ギンガ!」

「おっ、ノリがいいね! いざ尋常に……!」

「「勝負ッ‼︎」」

 

 

 

 

 

 





  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。