紫の星を紡ぐ銀糸N   作:烊々

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08. 胎動する光

 

「来たか! 女神ども!」

「あなたがアフィモウジャス将軍ね」

「いかにも。ワシこそ秘密結社アフィ魔Xの首領、アフィモウジャス将軍じゃ!」

「まさにラスボスの風格ってやつだね! アフィなんとか将軍を倒して、世界を元に戻す!」

「そうはさせぬ! 安泰な世など、金にならぬ! この猛争に染まった世界こそ、金を生み出す泉! その水源を枯れさせると言うのならば、排除するのみ!」

「なら、わたしたちも本気で行くよ! 変身っ!」

「ふん、女神化したところで、今の貴様らが得られるシェアエネルギーなどたかが知れている!」

「確かに……前に比べればシェアは少ない。だがな、多いとか少ないとかじゃないんだ! どんなにシェアが少なくなっても、想いが強ければシェアエネルギーは何倍にもなるんだ!」

「そう、私たちは今平和を願う人たちのために立っているの。その人々の想いで、お金に染まったあなたの猛争を壊してあげるわ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ステルス流忍法、分身の術!」

「ステマックスが増えた⁉︎」

「ほぅ……」

 

 確かに見事な分身の術ですが、そのような小細工、女神様には通用しても私には通用しません。

 分身に実体があろうがなかろうが『魂』が存在しないので本体がどれだか丸わかりです。

 

(分身には目もくれず、一直線に拙者まで……っ! だが!)

 

「喰らうで御座る!」

「む?」

 

 ステマックスは接近させまいとクナイや手裏剣を投げつけてきます。

 しかし、それら全てはユニ様の援護射撃によって撃ち落とされます。

 

「あたしを忘れてもらっちゃ困るわ!」

 

 ユニ様が作ってくれた隙を逃さず、ステマックスの懐に寄ります。

 

「術は私に看破され、投擲はユニ様に撃ち落とされる。そして、それらに頼ると言うことはあなたは正面からの戦闘はあまり得意ではないということ」

「……っ!」

「その反応、どうやら図星ですか。後はわかりますよね? 詰みです。あなたは」

「まだで御座る……! 『ステルス流必殺忍ぽ……「『ギャラクティカエッジ』」

 

 おそらく敵の最大の技であろうものに対し、先に技を出して潰します。

 

「ぐあっ!」

「詰みだと言ったはずです」

 

 『ギャラクティカエッジ』はヒットして敵がよろけてから再び『ギャラクティカエッジ』で追撃できるようになっています。一度技を当てて敵の体勢が崩れ、そこに上手く追撃するのを繰り返せば無限ループのようにハメ続けることができるのです。

 ヒットしても思うようによろけてくれない女神様のような強者には、ループまで持ち込むのは不可能なんですけどね。

 

「『ギャラクティカエッジ』!」

「ぐあぁぁぁぁっ!」

 

 というわけで、ループが決まったので後はステマックスが倒れるまでこれを繰り返せば私たちの勝ちというわけです。

 

(うわぁ……ギンガさんえげつない……じゃなくて!)

 

「ギンガさん! トドメを刺さないでくれませんか! そいつと話したいことがあるんです!」

「……かしこまりました」

 

 ユニ様からの頼みなので、ハメループの手を止め、ステマックスを地面に叩きつけます。

 

「ぐえっ!」

 

 私としては粉々にしてやっても良かったのですが、ユニ様の優しさに感謝することですね。

 

「ごめんなさい。ワガママを聞いてもらって……」

「いえいえ、私がいると話の邪魔でしょうし、先に向かわれた皆様の元へ行っていますね」

「はい!」

 

 

「うぅ……酷い目にあったで御座る」

「なら、諦めればよかったじゃない。早めに降参してればいくらギンガさんでも許してくれたと思うわよ」

「でも、あそこまで行った手前、引くに引けなくて……」

「だと思った」

「かたじけない……」

「そう思うなら逃げるんじゃないわよ? あんたが逃げたら、あたしが怒られるんだから」

「わかっているで御座る。そして、ユニ殿、将軍を……」

「わかってるわ。悪いようにしないから安心しなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 さてさて、カチコミのしおりを再度確認し、船橋に急ぎましょう。

 

『……もしもしギンガさん!』

「イストワール、何事ですか?」

『ギンガさん、ネプテューヌさんたちは今そこにいますか?」

「敵の構成員の一人を私とユニ様が引きつけてる間に首領を討ちに行かれました」

『……それは困りましたね』

「何がですか?」

『改変前の世界で、女神の皆さんがゴールドサァドに負けた理由をご存知ですか?』

「理由……?」

 

 女神様がゴールドサァドに負けた理由……

 

『なんたらエネルギーってやつのおかげで、あの四人は女神に勝てるだろうけど』

 

 ……世界改変が起こったあの日、別の次元の私に言われたことを思い出します。

 

「そういうことですか……!」

『説明しようと思ったのですが、どうやらギンガさんはもう分かっているようですね』

「はい、なんとなく」

 

 シェアエネルギーと相反する負のエネルギー、それをまとっていたことによりゴールドサァドは女神様に対して有利に戦えたということですね。そして、秘密結社の首領もそのエネルギーをまとっている可能性が高く、このままでは女神様は敗北してしまう。イストワールが私に伝えたかったことはそれでしょう。

 

『ゴールドサァドの皆さんが今対抗策を編み出している途中です。それまでの間……』

「わかりました。私が敵の首領を食い止めていればいいわけですね」

『お願いします!』

 

 

 

 

 

 

 

「……っ! たった一撃喰らったはずなのに、どうして力が入らないんですの……!」

「奴の剣にシェアエネルギーが……削り取られたのか……?」

「そんなチートアイテム……卑怯ですわよ……」

「ふははははは! ほれ、さっきまでの威勢はどこにいった! まぁ、殺しはせん。貴様らは身代金のために生かしておいてやろう!」

「身代金……? 私たちを金儲けの道具にしようっていうの……⁉︎」

「今に始まったことではないだろう? 世界が変わる前からワシは貴様らを使って、儲けさせてもらっていたんだからな!」

「……やはり『@将軍のまとめサイト」の管理人は……!」

「その通り! ワシだ! そして、世界は変わった! 泰平の世から、猛争渦巻く世界へと! 貴様ら女神はすでに過去の遺物! 女神の代わりとなるべく生まれたゴールドサァドも、黄金の頂を失い、その力は皆無! これからは、この世界が猛争の渦に呑まれ、争いに焼かれていくさまをここから眺めるがいい!」

 

「戦乱の世なんて、碌なものじゃありませんよ」

「……ぬぅ?」

「ギンガ!」

「申し訳ありません。遅れました」

 

 船橋に辿り着いて最初に目に入ったものは、敵の首領らしき大型ヒューマノイドの前で膝をつく女神様たち。

 残念ながらイストワールの言っていた通りになったようです。

 

「来たか、女神補佐官ギンガよ。待っておったぞ」

「待っていた……?」

「ワシの元につけ。ワシは貴様の力を高く評価しておるのだ」

「はぁ? 私とあなたは初対面ですけど?」

「それは当たり前だ。ワシの計画の懸念点は女神よりも貴様だったからな。ゲイムギョウ界の改変までは貴様に捕捉されんように隠密に行動してきたわけだ。噂やデマを撒き散らすことをあえてプラネテューヌではやらなかったようにの」

 

 なるほど……プラネテューヌでは他の三国に比べて女神様へのネガキャンが緩かったことや、『@将軍のまとめサイト』があまり有名ではなかったのはそういう理由でしたか。

 

「ギンガよ。ワシに負けた女神どもなど裏切ってワシの元につけば、今なら高待遇で歓迎してやろう。ワシとお主とでこの世界の富を手にしようぞ!」

「お断りします」

「即答か。つれないのぅ……なぜそこまでして守護女神に拘る? 貴様には女神無き混沌の世界でも生きていけるだけの才と力があろうに、何故女神などに付き従う?」

「簡単な話です。私が女神様を愛しているからです」

「愛ぃ……? ふん、ワシには呪いのようにしか見えんがな。女神に心を縛られ続けている呪いにな」

「呪い……ですか、いいところ突きますね。確かに少し前までの私は呪われていたと言ってもいいでしょう。しかし、最近私はようやくその呪いから解き放たれましてね。私はもう女神補佐官としての使命で女神様に仕えているのではありません。私が愛する女神様に仕えたいから仕えているのです」

 

(ギンガ……)

(愛だって。よかったじゃないネプテューヌ)

(いや、多分違うわノワール。あの人のことだからどうせ親愛とかそういうアレよ……)

 

「ふん、ならば、女神のためにここで死ぬが良い!」

「……!」

 

 アフィモウジャスが剣を降りかかってきます。ステマックスとは比べ物にならない力。そして力任せではなく、剣の腕もそれなりにある。なるほど、秘密結社の首領なだけはあります。

 女神様に効くエネルギーをまとっていることを考慮すると、ネプテューヌ様からいただいた指輪で変身すると逆に不利になってしまいかねません。

 

(ちぃっ……やはり、ネガティブエネルギーはこの男には効果がないようだな……だが!)

 

「ワシの敵ではないわ!」

 

 例の負のエネルギーで女神様にはデバフをかかるとはいえ、多対一の状況で女神様を倒せるほどの相手。奴の言う通り、流石に私では勝てないでしょうね……

 しかし、勝てないことは戦わない理由にはならない!

 

「はぁぁぁっ! 『ギャラクティカエッジ』!」

「……ふん! パワーが足りん!」

「ちぃっ……!」

 

 やはり火力不足が否めません。こんな時にカタールとガンブレイドがあれば……

 

「師匠! 助太刀します!」

 

 女神様ではないため負のエネルギーの影響がほとんどなかったあいちゃんがコンパさんの応急処置を受け戦線に復帰してくれました。

 

「あいちゃん、助かります」

「いきましょう師匠!」

「ええ!」

 

 私が左、あいちゃんが右から同時攻撃を仕掛けます。

 

「「『クロスギャラクティカエッジ』!」」

「良い技だ……だが、ワシには届かぬ!」

「……っ⁉︎」

 

 敵の剣の振りから発生する衝撃波で薙ぎ払われ、ガードが間に合った私はともかく、間に合わなかったあいちゃんが吹っ飛ばされます。

 

「かはっ……!」

 

 そのまま壁に叩きつけられたあいちゃんは意識を失います。

 

「あいちゃん!」

「その小娘が素早いことは少し戦ったから知っておるのでな。わざと技を喰らうことで逆に隙を作ったのだ。そして……『スパークファイア』!」

 

 アフィモウジャスが剣を床に突き立てると、そこから衝撃波が炎のように発生し、床を這いずりながら、物陰に直撃します。

 

「嘘っ⁉︎ きゃあああっ!」

「ユニ様!」

 

 負のエネルギーが込められた技が物陰に待機していたユニ様に直撃し、ユニ様はたまらずノックダウンしてしまいました。

 

「狙撃の機会でも伺っておったのだろう? バレバレだったがな。さて、後は貴様一人! 貴様にはワシの必殺技を見せてやろう……!」

 

 どうやら、決めにくるようですね。必殺技ですか、確かに直撃すれば勝敗は決するでしょうが、そんなものに当たる私では…………っ⁉︎

 

「……ふっ、気づいたようじゃな?」

 

 この位置関係、私の後ろにはまだ動けずにいる女神様たちがいます……っ!

 

「貴様が避ければ女神たちに当たってしまうのぅ?」

「てめえ……!」

 

 ならば、この場から動かずに迎撃するしかありません。

 この技は零次元での戦いの後にふと思いつき、なんとなく習得してみたもので、実戦で使うのはこれが初。ぶっつけ本番となってしまいましたが……

 

「『リミテッドシェアリングフィールド』……」

 

 『リミテッドシェアリングフィールド』。本来シェアエネルギーで空間生成を行う技『シェアリングフィールド』を自分の体の周りにのみ展開するもので、例えるならシェアリングフィールドが『攻め』ならリミテッドシェアリングフィールドは『守り』。自身の周りに形成されたフィールドが敵の攻撃を感知した瞬間にカウンターを繰り出して防御するというものです。

 シェアリングフィールドなど空間生成能力の効果から自身を守るというのが本来想定された用途なのですが、こういったことに応用が効くこともリミテッドシェアリングフィールドの利点です。

 

「ほぅ……なにか策があるようだな。だが無駄だ! 喰らえ! 『成・金・斬』!」

 

 必殺の一閃、そして拡散する衝撃波……! リミテッドシェアリングフィールドの範囲内に入った敵の攻撃は、後ろの女神様に届かぬように全て迎撃します。ですが、流石にダメージを0にできるほど都合のいいものではありません……!

 

「むぅ、まさか耐えるとは……」

 

 『成・金・斬』とやらを耐えることはできましたが、ぶっちゃけもう立っているのが精一杯です。リミテッドシェアリングフィールドを使わなかったら即死でしたね。

 

「だが、見るからに満身創痍。勝負あったな」

「そうですね。流石は秘密結社の首領。この勝負は私の負けです」

「ふん、やけに潔いではないか」

「……」

「女神どもの身代金を要求してやろうと思ったが、気が変わった。ここで女神どもを滅ぼし、世界をより混沌にしてやった方がワシの望む世界に近づくだろう……!」

 

 ……どうやら負の禍々しいエネルギーがアフィモウジャスの性格にまで影響を及ぼし思想まで過激になってきているようです。

 

「最期に何か言い残すことはあるか?」

「いいえ? 何もありませんよ。最期ではありませんので」

「何……?」

「間に合ったということですね」

 

 私が言葉を言い終わった瞬間、ゴールドサァドの四人が船橋に乗り込んできました。

 

「ビーシャ⁉︎ それに、他のゴールドサァドまで!」

「これが貴様らの策か? ふん、今更ゴールドサァドどもが加勢しようがワシは止められぬ!」

「そうだろうね、だから……」

「受け取れ、守護女神たち!」

 

 そして、ゴールドサァドたちは女神様に『例のもの』を渡します。

 

「これは……シェアクリスタル⁉︎」

「ただのシェアクリスタルじゃないよ! ゴールドクリスタルの欠片と合わせて生成した、その名も『ハイパーシェアクリスタル』!」

「アタシたちなりに、君たちの力になりたくてね。イストワールに渡して作ってもらったんだ」

「守護女神とゴールドサァドへの信仰心、この世界全ての信仰心がそのクリスタルには宿っているんです!」

「シェアとは祈り、そして願いだ。それを力に変えることができれば、奇跡も起こせるはずだ」

「もちろん、値段はプライスレス! 思いっきりやっちゃえ!」

「ゴールドサァドのみんな……感謝するわ!」

 

 『ハイパーシェアクリスタル』を使えば女神様は通常の女神化を超えた更なる変身が可能となります。おそらく、アフィモウジャスが放つ負のエネルギーすら弾き飛ばせるほどの力を手にすることができるでしょう。

 

「上手くいきましたね」

「ギンガ……! 貴様、最初から時間稼ぎのつもりで……!」

「いえ、倒せるなら私が倒してしまおうとは思っていましたよ? 残念ながら私では無理だったんですがね。しかし、女神様にあのクリスタルが届けられる時間を稼げただけ良しとしましょう」

「くっ……!」

「さぁ、刮目するが良いアフィモウジャスよ! 女神様の新たな姿を!」

 

 

 

 

 

『ネクストプログラム、起動』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 『紫の影』を読んでくださった方には久しぶりの『リミテッドシェアリングフィールド』でした。
 次回、超次元編最終話です。
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