女神化をさらに超えた変身、その理論自体は存在していました。
しかし、その域に達した女神様をこの目で見たことは一度もありません。
今まで私はゲイムギョウ界には女神様を信奉する者のみが生きていればいいと思っていました。不純物を取り除く、つまり女神様を信じない人間を排除することによる信仰の『最適化』、これこそが女神様やゲイムギョウ界を新たなステージに押し上げる手段だとも思っていました。
しかし、違いました。女神様を信じる者、信じない者、それらは全てゲイムギョウ界の『可能性』なのです。完全ではなく不完全だからこそ辿り着く境地がある。現に女神様は私の言う『最適化』などせずとも、今ここにある世界によって進化を果たしました。
「ふっ……私は間違っていたようですね」
そして私は今、世界が、歴史が、そして女神様そのものが変革する瞬間を目撃しています。これを喜ばずにはいられましょうか……!
世界中の願いによって進化した、守護女神の極限進化、『ネクストフォーム』!
「人々やゴールドサァドの想いと共に、行くわよ!みんな! 次世代の女神の力、見せてあげるわ!」
「「「ええ!」」」
さぁ! 存分にお戦いください、女神様!
パープルハート様……いえ、ネクストフォームと化したのでネクストパープル様ですね、ネクストパープル様が先陣を切り、アフィモウジャスに飛びかかります。
(……私たちはようやく掴んだ、ギンガが以前言っていた『己の力の核心』を。そして『核心』を掴んだから、今の私にならできるかもしれない。いいえ、かもしれないじゃなくてできる! 見ていてねギンガ。私の大好きなあなたの技を!)
む? ネクストパープル様のあの構え、そして太刀筋……まさか……!
「はぁぁぁっ! 『ギャラクティカエッジ』!」
……ギャラクティカエッジは私やあいちゃんのような人間(厳密に言うと私は人間ではありませんが)にとっての最適な剣技であり、女神様にとっては違います。おそらく、ネクストパープル様にとってはギャラクティカエッジよりもクロスコンビネーションを使われた方が威力は高いでしょう。
……しかし、誰かが言ったことがありました。私の『ギャラクティカエッジ』はゲイムギョウ界で最も美しい剣技だと。正直女神様を差し置いてそんなこと言われるなど不敬の極みだと思っていたのですが……ようやくその意味がわかりました。
ネクストパープル様が放たれた『ギャラクティカエッジ』の美しさに、一瞬とはいえその場にいる全ての者が魅入られて動きを止め、時が止まったかのようにすら見えました。
「ぬぉっ! (いかん、敵でありながらもつい目を奪われてしまったわ!)」
(……やっと気づいたわ! ギャラクティカエッジは人によってやり方がほんの少し異なるのね。ギンガにはギンガのやり方があって、あいちゃんにはあいちゃんのが、私には私のがある。だから私がギンガやあいちゃんの動きを完コピしたところでできないわけだわ……)
「ネプ子もついにできるようになったのね。あーあ、師匠の技が使えるのは私だけの特権だと思ってたのに」
「その割には嬉しそうです。あいちゃん」
「私とコンパで何度も練習に付き合ってあげたからね」
「ふふ、そうですね」
「……しかし、甘いですね。ギャラクティカエッジは極めれば予備動作無しで技を出せるので、予備動作がある時点でまだまだです」
「師匠……(いつもはネプ子に甘々なのに、戦闘においては本当に厳しいわよね……)」
ギャラクティカエッジの完成度はともかく、ネクストフォームと化した女神様相手となるとアフィモウジャスはもう終わりでしょうね。現に、私とあいちゃんとコンパさんがお喋りをしている間にものすごい勢いでアフィモウジャスがボコボコにされてますし。
「ぬぅぅ……っ! おのれ! おのれおのれおのれぇっ! おのれ女神どもぉっ!」
「……諦めなさい。もう勝負はついてるわ」
「大人しく投降すれば、悪いようにはしないわ。それに、これ以上はあなたの大切な親友、ステマックスも望んでいないはずよ!」
ネクストパープル様、そしてユニ様がアフィモウジャスの説得を試みます。
「まだだ! ワシはまだ戦える! ワシの覇道は、誰にも止められぬ‼︎」
しかし、その声が届いていません。やはり、アフィモウジャスは負のエネルギーの影響で暴走しています。
「どうして……わかってくれないの!」
「多分、原因はあの黒いオーラね」
「ああ、あのオーラはアンチクリスタルと同じで、負の力を感じるぜ」
「どうにかならないの⁉︎」
「目視できるほどの瘴気に取り憑かれてしまっては、もう殺すしかありません」
「そんな……!」
汚れ仕事を引き受けるのは私の役目。
今楽にしてやる、アフィモウジャス。
「いいえ。そうはさせないわ」
「……ネクストパープル様?」
「例え敵であっても救う。そして共にハッピーエンドも迎える。それが私たち守護女神よ。エスーシャが言っていたわ。シェアとは祈り、そして願い。それを力に変えれば奇跡も起こせると」
ネクストパープルが刀にシェアエネルギーを込めます。何をなさるつもりなのでしょうか?
「ついえよ! 猛争‼︎」
そのままアフィモウジャスを切り裂きます……が、アフィモウジャスに外傷はありません。そして先ほどまで感じられた禍々しき瘴気が消えています。
シェアを感覚で察知できる私には、ネクストパープル様の真の力を理解することできました。どうやらネクストパープル様の必殺の一閃は事象や概念すらも切り裂くことができるようです。
「……将軍がまとっていた負のオーラ、猛争の力だけを斬ったわ」
「じゃあ、これで終わったんだよね。お姉ちゃん」
「ええ。首領を倒した以上、秘密結社は壊滅。作戦成功よ。帰りましょうみんな。いーすんが待ってるわ」
そして、アフィモウジャスの邪念を切り裂いたからか、改変されたゲイムギョウ界が元に戻っていくような感覚がします。とはいえ、なんとなくそんな気がする程度なので詳しい話は後でいーすんが教えてくれるでしょう。
……しかし、気がかりなことが一つ。結局マジェコンヌやネプテューヌさん、そして別次元の私と遭遇しなかったことです。奴らのことも秘密結社の一員と仮定していたのですが、どうやら違ったようですね。そこらへんはアフィモウジャスから尋も……事情聴取でもして聞き出しましょうか。
まぁ何はともあれ、今は女神様の勝利を讃えま………………
\ どさっ /
「……ちょっ! 師匠⁉︎ 師匠!」
「どうしたのあいちゃん? ってギンガ⁉︎」
「どうしようネプ子! 師匠が急に倒れて……!」
「将軍さんから受けたダメージが大きかったようです! 早く教会で治療しないといけないです!」
「私が抱えて飛んで帰るわ! ネクストフォームで最大加速したら教会なんてすぐよ!」
「ネプ子お願い!」
「わかってるわ! もう! ギンガはいつも自分がきつい時は倒れるまで何も言わないんだから‼︎」
*
「アフィモウジャスは負けてしまったようだ。それに、結局アレは女神達に奪還されてしまったようだね」
「その割には余裕そうっすね」
「……ルギエルか。オレを着信拒否しといて、よくおめおめと姿を見せられるね?」
「ただでさえもう一人の俺の足止めを殺さずにやれなんてクソ面倒な仕事任せてきたくせに、更に追加で面倒そうなお仕事を押し付けてこようとしたそっちが悪いと思いまーす」
「はぁ……そうかい。ところで、君は超次元で何をしていたんだい?」
「ん? あー、探し物」
「探し物って?」
「多分言ってもわかんねーと思うけど、まぁ別に隠すほどじゃねえか……
……『ゲハバーン』って知ってる?」
「ゲハバーン……?」
「その反応的に知らないっぽいな。まーなんつーかどっかの次元のゲイムギョウ界にあるらしい最強の剣でな、それを探してんだ。この次元にはなかったけどな」
「……なら、いいことを提案してあげるよ」
「あん?」
「オレの頼みをいくつか聞いてくれれば、オレの力でその剣を創ってあげてもいい」
「んなことできんのか?」
「それは君次第さ」
「……できることならやるけど、無理難題なら断るぜ?」
「そうだね、君に任せたいこと、それは………………」
*
目覚めて最初に目に入ったのは、安心そうに私を見下ろすネプテューヌ様といーすん。なるほど、私はぶっ倒れたんですね。
「……また無茶をしたようですね、ギンガさん」
「必要な無茶ですので」
「全くもう……いつもギンガさんは……けど、安心しました」
「そうですね……心配かけて申し訳ないです」
「こちらこそ申し訳ありません。追加装備の修復が間に合っていれば……」
「そんなことありませんよ。不覚をとった私が悪いのです」
「いいえ、私が……」
「いえいえ、私が……」
「ちょっとちょっと! 二人だけの世界に入らないでよー! ギンガを運んできたのはわたしなんだからー!」
「わかっています。ネプテューヌ様には感謝してもしきれません。あの指輪の件もそうです。あれがあったからリーンボックスでの戦いも切り抜けられました。ネプテューヌ様にはいつも助けられてばかりです」
「そ、そう……? えへへ….」
(ネプテューヌさん……ちょろすぎません……?)
「さて、いーすん。聞きたいことがあります」
「なんでしょうか?」
「私がぶっ倒れる直前、ネクストパープル様の一閃の影響か世界改変が元に戻るような感覚がしたのですが、教会の方で何か観測されましたか?」
「はい。今私もそれを伝えようと思っていました。空中のアフィベースを中心に、事象そのものを切り裂くような力が観測されました。それにより女神様のことを忘れていた人々も記憶が戻ってきたんです」
「やはりですか。流石はネプテューヌ様ですね」
「ふっふーん! もっと褒めてくれていいんだよ!」
そう言ってネプテューヌ様は撫でろと言わんばかりに頭を差し出してきます。そして勿論撫でさせていただきます。
「ねぷぅ〜♪」
さて、いーすんに聞きたいことはもう一つ。
「秘密結社の方はどうなりましたか?」
「意識を失ったアフィモウジャス将軍は女神様たちが拘束。今はコンパさんが様子を見ています。そして忍者ステマックスも自首してきました。これにより秘密結社は一応壊滅したものとしています。ですが……」
「残る者たちのことですね?」
「はい。依然マジェコンヌと大きいネプテューヌさん、そして名の知れぬ少女と別の次元のギンガさんの行方はわかっておりません」
「なるほど。そういえば、例のゲーム機の回収は?」
「そちらの方は大丈夫です。回収した後、以前より厳重に保管してあります」
「わかりました」
(……多分ギンガはあのゲーム機が何なのかを知ってる、そしてその正体が何かわたしやいーすんにも言えない事情があることを。けど、わたしがそれを問い詰めてもギンガを苦しめるだけだから今は聞かないでおこうかな)
「さて、身体も動くようになってきたので、私はアフィモウジャスの様子を見にコンパさんの元へ向かいます。奴が目覚めたら色々と聞かなければならないことがありますので」
「まだ安静にしていたほうが良いのでは?」
「じっとしているよりある程度身体を動かした方が回復も早いものです」
「根拠あるのそれ?」
「ありません。そんな気がするってだけです」
「ギンガって割と気分で生きてるとこあるよね……」
*
「うっ、ここは……」
「あ、将軍さんが目を覚ましたです。ここはプラネテューヌ教会ですよ」
「……そうか。ワシは守護女神たちに敗れたのか……しかし、何故だろうか。まるで憑き物がおちたような、清々しい気持ちだ」
「実際に落ちましたしね。禍々しいエネルギーが」
「あ、ギンガさん」
「コンパさん、アフィモウジャスの看護、ありがとうございました。あとは私に任せてください」
「わかりましたです……けど、痛いこととか酷いことをしたらダメですよ?」
「善処します」
「善処じゃダメです。約束してくださいです」
「……わかりました」
「ならオーケーです」
(あのギンガが……押し負けている……? この看護師……なかなかの強者なのか⁉︎)
「さて、アフィモウジャス将軍。あなたには聞きたいことが沢山あります」
「その前に……」
「はい?」
「ステマックスはどうなった? 奴はワシが秘密結社から解雇した。もはや奴は秘密結社とは無関係の一般人。故に、ことの騒動には奴は無関係。責任は全てワシにある……だから……!」
「残念ながら……
『出会ったあの日から、拙者と将軍は運命共同体! 拙者だけ知らぬフリをして将軍だけに罪を被せるわけにはいかないで御座る!』
……と言って自首してきたらしいので、彼も身柄を拘束せざるを得ませんでした」
「そうか……」
「とはいえ、今回の件はあなたたちを裁いて終わる問題ではなさそうですし。私の質問に素直に答えてくださるのなら悪いようにはしません」
「良かろう。ワシに答えられることならなんでも答えようぞ」
「協力的で助かります。では、秘密結社の構成員にマジェコンヌとネプテューヌさんがいたはずです。その方々はどちらに?」
「やつらは離反し消えた。消えた先までは知らぬ」
「そうですか……」
消えた……となるとネプテューヌさんの能力でしょうね。ワープされたとなると手がかりもありません。
「では、次の質問です。あなたに負のエネルギーを授けた者がいるはずです。その方は何者ですか? 目的などを語ってはいましたか?」
「ワシが言われたのは例のゲーム機の回収だけだな。それ以外は知らぬ」
「そうですか……では、どうやってその方と知り合ったのですか?」
「ある日突然其奴に、自分に協力すれば世界を都合よく改変してやると持ちかけられたのだ。今思えば、ワシもゴールドサァドのように利用されていただけだろう」
「……でしょうね。となるとこれ以上あなたに聞くことはありません。あなたがた秘密結社の処罰は一旦保留としますので、今は療養しててください」
「保留? それで良いのか……?」
「悪いようにはしないと女神様が約束してしまったもので」
それに、ゲイムギョウ界の改変は元に戻った良いものの、事態は何一つ解決していませんしね。
「では、私はこれで」
そう言ってアフィモウジャスの元から去ります。
さて、まずは女神様を集め、今後のことについて話し合わなければなりませんね。
\ ーーーーーーーー! /
その瞬間、プラネテューヌ教会に鳴り響くアラート。
このアラートは……緊急事態のものですよね……? 一体何が……?
*
「相変わらず人使いの荒いクライアント様だぜ。まぁいい、こっちも準備は終わったし、始めさせてもらうか……!」
『紫の星を紡ぐ銀糸N』第二部 超次元編 -完-
戦いは、続く。
次回から最終章に入っていきます
ていうかほんとに活躍しねーなこの主人公……