まずは牽制。ガンブレイドを構え、そこから粒子ビームをマシンガンのように連発し、敵の出方を伺います。
「甘い!」
秒間約十二発の弾幕を難なく剣で斬り伏せるパープルハート様。迎撃から流れるような動きで距離を詰めてきて、私に剣を突き立てます。
「……っ!」
私は突き立てられた剣をガンブレイドの刃の部分で受け止めます。
(やっぱりトゲトゲしてる部分は刃なのね)
一本の剣を二つの刃で受けているとはいえ、力勝負となれば私に勝ち目はありません。体格では私が優っていても、相手は女神様。身体能力では私と女神様は天と地ほどの差があります。
だから手数で押すしかありません。脳波制御によって脚部に装着されているカタールをパープルハート様に向かって射出します。
(……⁉︎ その武器、そういう感じなのね……っ!)
カタールに気を取られた一瞬の隙をつき、パープルハート様の剣を押し返し、ガンブレイドを腰部に装着して背中の剣を抜きます。やはり近接戦ならこれを使う方が私としてもやりやすいので。
(トゲトゲした見た目なだけあって、近接戦の手数が私より多い。この状況で至近距離でやり合うのはこっちが不利ね……ならっ!)
パープルハート様は一旦バックステップで距離をとられる様子…………と思ったら一瞬でまた距離を詰めてきます。
「……おっと!」
距離をとったと思ったら一瞬で距離を詰めて攻撃、そして攻撃後はまたすぐに距離をとる。パープルハート様の持ち前の機動力を生かした、所謂ヒットアンドアウェイの戦法。
なるほど、私が手数で対応する前に削り切ろうという魂胆ですね。
(こんなに冷静にすぐ対応してくるなんて、流石はギンガね………っ⁉︎ これは……っ⁉︎)
その瞬間、空中を浮遊するカタールが、左右からパープルハート様に襲いかかります。不意をつくために先程射出したカタールをあえて回収せずにいたわけです。
(脳波制御で操作する武器なんて私には使えない……ネプギアもまだ練習中とか言ってたわね。それを難なく使ってくるなんて……正直嫉妬しちゃうわ、けどそれ以上に……)
とはいえ、あのカタールごときじゃ女神様の気を散らせることはできても、倒しきることは到底できませんね。浮遊するためのエネルギーもそろそろ切れますし、一旦カタールを脚部に再装着させましょうか。
パープルハート様は……すごく楽しそうな表情をされていますね……全く、私はあなたについていくのが精一杯だと言うのに。
(…………楽しいわ。ギンガと戦うのは本当に楽しい。何と言っても私たち女神をも凌駕する戦闘技量。そして、行動が殆ど読めない。
私たちは敵の体のシェアエネルギーの流れから敵の次の行動をある程度予測できる。シェアエネルギー量が多い女神同士の戦いなら尚更。
けど、ギンガはこのゲイムギョウ界において唯一と言っていい『シェアエネルギーを一切持っていない』という特異体質の持ち主。だからギンガの行動をシェアエネルギーの流れから予測するのは不可能。
そして、ギンガはその研ぎ澄まされた技量により、攻撃や技の予備動作がほぼ存在しない。
だから、ギンガの行動は私たちには読めない。そして読めないからこそ……楽しい!※)
『※この辺の設定は前作の幕間『ギンガのパーフェクトシェアエネルギー教室 』に載っています。その回は所謂原作のネプステーションのような本編時空とは違う時間軸のもので、シェアエネルギーを作者なりの独自解釈に基づいた独自設定をまとめ、オリ主のギンガに解説させたものです。』
(……ここからは本気でいかせてもらうわ! 私の本気、受け止めてちょうだい!)
……! パープルハート様からのプレッシャーが増した……ということは技を使うおつもりですか。どうやら本気でくるようですね。
いいでしょう。その本気、私の本気で応えましょう!!
「はぁぁぁっ! 『クロスコンビネーション』!」
「……『ギャラクティカエッジ』!」
(きた! ノーモーションでいきなり出てくるギンガの必殺剣技『ギャラクティカエッジ』……私が必死で練習してもできない技! 何故かあいちゃんにはできるけど!)
私のギャラクティカエッジの威力はパープルハート様のクロスコンビネーションのものに劣ります。ですが、威力では劣っていても発生の速さから敵の攻撃が届く前にこちらの攻撃を届けられ、互角のぶつかり合いができるのです。
そう、今のところは互角。しかし、今の私には足があります! 脚部のカタールは射出するためだけのものではなく、蹴りを斬撃にするためのものでもあるということです!
「『ギャラクティカエッジ』!」
(嘘……っ⁉︎ 足でも⁉︎)
「きゃあぁっ⁉︎」
そのままパープルハート様を技の衝撃で吹っ飛ばします。女神様を足蹴にするなど死罪級の不敬ですが、今は戦闘中なので許してください。
「やるわね……っ!」
何事もなかったかのように体勢を整えて立ち上がるパープルハート様。足で放つギャラクティカエッジは、まだ普通の威力には昇華させられてはいなかったようで、吹き飛ばすことはできても大したダメージにはなっていないようです。
「これはどうかしら? 『32式エクスブレイド』!」
パープルハート様が唱えたその技名と共に、シェアエネルギーで創り出された大剣がこちらに射出されます。
……まともに受ければやばいですね。ならば、奥の手を使うとしましょうか。
追加装備のガンブレイドとカタールには更なる機能があり、それら合計4本の小剣は、私のメインウェポンである剣と合体し、1つの大剣となります。これは、私の弱点であるパワーを補うための機能です。
これで32式エクスブレイドを避けるのではなく、迎撃してみせましょう……!
「『エクステンドエッジ』‼︎」
大剣を薙ぎ払い、斬撃に加えてそこから巻き起こる衝撃波で敵を攻撃する技『エクステンドエッジ』。あいちゃんのノートからアイデアを貰って創り出した技です。
「うぉぉあああああっ!」
気合の入った掛け声と共に大剣を振り、そこから放たれる技でエクスブレイドを弾き飛ばします。
……しかし、
「『ネプテューンブレイク』で決めるわ!」
そこから間髪入れずに叩き込まれるパープルハート様の必殺技の連撃。大剣モードからガンブレイドとカタールを分離させ再び装着し、両手足全てを使って迎撃しますが……
……結局パープルハート様の攻撃を捌ききることはできず、首元に剣を突きつけられてしまいました。
「これで、私の勝ちね」
そのまま両手を上げ、降伏の合図をします。
「お見事です。パープルハート様」
「いい勝負だったわ。ていうか、あなたこれでよく私より弱いなんて平気で言うわよね」
「実際そうじゃないですか」
「私があなたに勝っているのは女神としての力の差だけじゃない。単純な技量はあなたの方が遥かに上よ」
「そう言われましても……その力の差が絶対的なものですし……」
「その絶対的な差とやらがあるのになんでここまでいい勝負になるのよ?」
「それは……」
「今回は私の勝ちだけど、私はまだあなたを完全に超えたなんて思っていないのよ? それなのにあなたより私の方が強いなんて断言されて、少し遠ざけられているような気がするから寂しいわ。まだ私はあなたに習いたいことがたくさんあるのに」
「も、申し訳ありません……」
そんなつもりはなかったのですが、寂しい思いをさせてしまっていたとは……なんたる不覚、反省しなければ。
そのままパープルハート様は変身を解除していつもの姿へと戻ります。
「まぁでも楽しかったよ、またやろーね!」
「はい」
「それにしてもさー、ギンガの新武器が強くてびっくりしちゃったよ」
「実は戦闘で使うのは今日が初めてでして、中々使い勝手が良かったのを自分でも驚いてます」
「あんなに使いこなしておいて初めてなんだ……うーん、わたしも色々新技とか作らないといけないかなぁこれは。ネプギアも新必殺技の開発中らしいし」
「いいですね」
「どんな技にしよっかなー」
こうして、戦闘訓練から流れるようにネプテューヌ様の新技開発が始まり、教会に帰るのは夜になってしまいました。
そしてネプテューヌ様と私が帰った後、結局いーすんにお説教されたのは言うまでもありません。
戦闘シーン書くの苦手ですが好きです(矛盾)。