異次元のゲートからギンガたちはプラネテューヌ教会へと帰還した。
「少しずつですが、天王星うずめさんという女神のことを思い出してきました。プラネテューヌの歴史を綴る史書として、歴代の女神様のことは覚えておかなくてはならなかったと言うのに……面目ありません……」
「イストワールのせいではありません。それがあの方の力なのです」
「しかし、どうしてギンガさんが覚えているのなら、私たちの合体時に共有されなかったのでしょうか?」
「ギンガイストワールでのリンクは、お互い全ての記憶が共有されるわけではありません。イストワールがスリーサイズと体重のデータを私に共有されないように設定しているのと同じです」
「そ、それは言わないでください!」
「隠したところで私にとっては服の上から見ても
大体わかるんですけどね」
「……それ、セクハラですよ」
「これは失敬。さてイストワール。おそらくうずめ様はここに来るでしょう。例のゲーム機はどこに?」
「ちゃんと隠してあります」
「隠し場所を知る者は?」
「私だけです」
「良いですね、秘密を知るものは少ないに越したことはありませんし」
「……困るよ隠されちゃ。オレにはそれが必要なんだから」
「「‼︎」」
プラネテューヌ教会正面のドアから入ってきた暗黒星くろめが、ギンガとイストワールに語りかける。
「久しぶりだね、イストワール。その様子だとオレのことを少しずつ思い出してきたようなのかな?」
「あなたが……うずめさん?」
「あー……キミの知るオレと今のオレは少し容姿が異なっているからね。その反応でもしょうがないか」
「……」
「話を戻そう。キミが隠した例のゲーム機の場所をオレに教えてくれ。キミとオレの仲だろう?」
「それは……できません」
「だろうね。念のため聞いてみたけど、そう言うのはわかっていたさ。まぁ良い。キミたちを全て排除し、超次元と心次元を融合させれば、必然的にこの次元も心次元となる。そうなれば、隠されたゲーム機を見つけることなど容易い」
そう言ってくろめはネガティブエネルギーを解放し、自身の力を高めていく。
「久しぶりの超次元だ。少し暴れさせてもらおうかな」
「させはしません」
「オレだけに気を取られていて良いのかな? キミたちが抵抗するだろうと思って、先程国の周りに適当にダークメガミを一体放っておいた」
「……!」
「ギンガさん! ダークメガミは私たちがやります!」
「ネプギア様……しかし……」
「大丈夫です! 実はさっき、うずめさんからシェアリングフィールドを発生させられる小型のクリスタルを貰っておいたから、これを使えば私たちだけでもダークメガミは倒せます!」
「わかりました。頼みます! 私はうずめ様を止めます!」
ネプギアたちは変身し、ダークメガミの元へ向かった。
ちなみに、この後彼女たちがダークメガミと戦う直前、誰がシェアリングフィールドを展開するかでクリスタルの取り合いになったのだが、それをギンガたちが知るよしもない。
「……ならば、私は貴様に力を貸してやろう、ギンガ」
「マジェコンヌ……?」
「奴に好き勝手されるのは気に入らんのでな。それに、貴様一人で抑えられる相手ではなかろう?」
「それはそうですね。すみません、ありがとうございます」
「良いね。キミも直接潰してあげたいと思っていたんだよ、マジェコンヌ」
「はっ! 潰れるのはどちらだろうな?」
「神聖な教会の中で戦闘とは……しかし、場合が場合なのでしょうがありませんか」
「無駄話は終わりだ。来るぞ!」
ギンガはギンガネプテューヌに、マジェコンヌは最終形態にそれぞれ変身し、迫り来るくろめに応戦するのだった。
*
「……こんなものね」
「ねぷっちたち、すっかりダークメガミとの戦いに慣れてるね」
「まぁね。あなたのシェアリングフィールドがあればもう苦戦するような相手ではないわ」
ダークメガミを苦戦もせずに一蹴したネプテューヌたちは、変身解除する。
「へぇ〜、やるじゃねえかお前ら」
「クロちゃん!」
「どのツラ下げてここにいるのよ」
アイエフがクロワールに対し嫌味を吐くも、それを気に止める様子はない。
「お前らは、この次元の秘密を知ってどうするつもりだ?」
「そんなの聞かれるまでもないわ。もう一人のうずめを倒す、それだけよ」
「倒す、ね。いいのか? この心次元はあいつそのもの。お前らがあいつを倒せば、心次元も零次元も消える。そしたらそこのうずめもこの世界の住人みんなも消えちまうんだ。それでもお前らはうずめを倒すってのか?」
「そんな……」
「困ったよな。あいつを倒さなきゃ、超次元は救えない。けど、あいつを倒すと、心次元も零次元も救えない。守護女神としてお前らはどういう答えを出すんだ?」
「酷いよクロちゃん! そんなの選べるわけないじゃん!」
「答えを早く出さないと、次元の融合が進んじまうぜ?」
「……っ」
「迷うなよ、みんな。【オレ】を倒せ」
「でも、そんなことをしたらうずめは!」
「わかってる。けど、それで良いんだ。俺は過去の女神、そんな俺が今の世界のみんなの足を引っ張るわけにはいかねえ」
「そうだな。うずめの想いから生まれた俺もまた過去の産物。そんな俺たちが君たちの負担になるべきじゃない」
「うずめ……海男……」
「ダメに決まっているでしょ、そんなこと。わたしたちはみんなでハッピーエンドを迎える。誰も欠けちゃだめだよ」
「ねぷっち⁉︎ けど……! 【オレ】を倒さないと超次元が!」
「別の方法があるよ。わたしがアフィモウジャスを斬った時、そしてさっきネプギアたちがわたしたちを元に戻してくれた時のように、ネガティブエネルギーをシェアエネルギーで打ち消して、もう一人のうずめ……紛らわしいから、ええと……黒いから『暗黒星くろめ』って呼ぼうかな」
(同じネプ子だから、ネーミングセンスも同じなのね……)
「とにかく、くろめをシェアエネルギーで浄化すればいいんだよ」
「確かに……ですが、暗黒星くろめは長い間世界中のネガティブ感情を吸っているんですわよね? そう簡単に浄化できるでしょうか……」
「やってみる価値はあると思うわ」
「そうね。やってやりましょう。で、やると言ってもどうするの? 直接くろめにシェアエネルギーをぶつけるの?」
「この心次元がくろめの心の中なら、その中心となる場所を浄化すればいいんだよ!」
「じゃあ早速中心とやらに向かおう!」
心次元の中心を目指し進んでいくネプテューヌたち。
そんな彼女たちの前に度々幻影のようなものが映し出され、その行く手を阻む。
「もー! さっきから何この変なの! 進みづらいよー!」
「そういえばマジェコンヌが言ってたな。この次元はここに迷い込んだ者の夢や願望が映し出されることがあるって」
「わたしたちは急いでたから、みんなの夢を見る暇がなかったんだよね」
「ふーん、夢……ね。じゃあ、これって誰の夢?」
「見た感じわたしたちでも、ネプギアたちでもあいちゃんやこんばでもなさそうだし……」
「もしかして…………ギンガ?」
「言われてみればそんな雰囲気がするわね」
「ギンガの夢か……」
「……気になりますわね」
「少しだけ見ていっても……いいんじゃない?」
「そうだよね! わたしはギンガの女神として、ギンガの夢を把握しておく必要があるよ!
ネプテューヌたちは、映し出されたギンガの夢の中に入ることにした。
「ここは……プラネテューヌ教会?」
「あ、あれ見て!」
そう言ってノワールが指を刺した方向には、ギンガとある女神が向かい合って座りながら談笑する映像が流れていた。
「あの女神……ネプ子ね」
「ギンガさんはねぷねぷと一緒にいることが夢……です?」
「へー、良かったじゃないネプテューヌ」
「……違う」
「え?」
「あれはわたしじゃない……わたしに似ていたらしい、初代のプラネテューヌの女神だよ」
「そうなんだ……」
「あはは……やっぱりギンガは今でもその人のことが大好きなんだ……そうだよね……」
そう言ってネプテューヌは後ろを向いて、ギンガの夢の中から去ろうとする。
「ネプテューヌ?」
「ごめん……ちょっと一人にさせて」
「……行っちゃった」
「一人に……させてあげましょう」
他の皆はネプテューヌを追いかけようとはせず、ギンガの夢の映像を見続けるのだった。
『……で? 私との約束を果たしたってことは、私よりも好きな人ができた、ってことよね?』
『はい』
『はぁ……少しショック』
『申し訳ありません……気の多い男と罵られようと構いません』
『冗談よ。むしろ安心したわ。あなたの心を縛り続けるのは、辛いもの』
『……』
『あなたの好きな女神、ネプテューヌちゃん、だっけ?』
『はい』
『可愛いの?』
『それはもう。可愛くてしょうがないです』
「ちょっと! 今好きな女神のことネプテューヌって言わなかった⁉︎」
「そうですわね! そうですわよね⁉︎」
「……話の流れ的に敬愛とか友愛とかそういうのじゃないわ。ガチのやつよ。つまり、ネプテューヌが大勝利してるってことよ……!」
「ネプ子と師匠って相思相愛だったってことですね」
「ねぷねぷ、もう少しここにいて見てればよかったですぅ……」
「へぇー小さいわたしとギンガがねぇ……」
「わぁ……なんか素敵……」
(みんな盛り上がっているね。うずめも完全に素に戻っているが……まぁ今は良いだろう)
「それにしても、ギンガの夢ってどういうことなの?」
「多分ですけど、昔好きだった女神様とお話をしてからちゃんとネプ子と向き合いたい、とかじゃないですか?」
「ケジメをつけるってことね」
「変なところで無駄に真面目ですわね」
『随分とぞっこんね。どうしてそんなにその子のことが好きなの?』
『そうですね。あなたが私の命を救ってくれた方なら、あの方は私の心を救ってくれた方だから、でしょうか』
『心……』
『……あなたが生きていた頃から行われていた守護女神戦争は、ここ最近までずっと続いていました』
『……やっぱり、そうよね』
『敵を殺し、自らが育てた兵士たちを死地に送り、そうやって殺して殺して、殺して、たくさん殺しました。それを自分の役割だと、自らの心も砕いて捨てて、そしてまた殺し続けました。そのうち表立った武力衝突は減っていきましたが、それでも、私の手は血に汚れすぎていました』
『ギンガ……』
『しかし、ネプテューヌ様はそんな戦いの日々に終止符を打ちました。そして、私の崩れ落ちた心を掬い上げてくれたんです。今の私が少しでも人間らしく笑えてるのは、あの方のおかげなんです。だから私はあの方のお側にいたい。以前はあの方のためなら命を捨てる覚悟がありましたが、今は違います。生きて、生き抜いて、あの方のお側にい続けたいんです』
『………そう。ふふ、なんだか妬けちゃうわ』
「……すごいこと聞いちゃったわ」
「今まで『ネプテューヌ→ギンガ』と思ってたけど『ネプテューヌ→←←←←←ギンガ』ってことだったのね」
「ネプテューヌを呼び戻して来た方が良いんじゃないでしょうか?」
「うーん、ギンガが心次元から去って時間が経ったからか、この映像も消えかけてきてるから、小さいわたしを呼び戻してる時間はなさそうだよ」
「えー! じゃあねぷっちとギンガはすれ違ったままってことなのー? そんなの悲しいよー!」
「まぁそこは本人たちがなんとかすることだと思うわ」
「ねぷねぷもギンガさんも、頑張れ、です!」
(俺は零次元でギンガから聞いたから知っていたけどね)
こうして、ノワールたちもギンガの心の映像の元から去った。
「……」
去った先には、ネプテューヌが落ち込みながら立っていた。
「みんな……」
「どうしてすぐどっか行っちゃうのよあなたは。もう少し我慢して待ってればいいことが聞けたのに〜」
「え? ……え?」
「全くよ。まぁ……良かったわね、ネプテューヌ」
「え? なに? どういうこと? みんなは何を見たの?」
「秘密ですわ。気になるなら、ギンガ本人から聞くといいですわね」
「え? ちょ、教えてよー!」
「よーし、じゃあ気を取り直して、心次元の中心に向かおう!」
「「「「「おー!」」」」」
「教えてってばー!」
*
女神の身ではないながら女神をも凌駕する戦闘力を持つギンガネプテューヌとマジェコンヌは、ネガティブエネルギーによって強大な力を持つ暗黒星うずめとも互角に渡り合えていた。
「……やるじゃないか」
「あなたもやりますね、うずめ様。昔を思い出します。あなた鍛錬を積んでいたあの日々のことを」
「……その感じ、やめてくれないか? そうやってオレを絆そうとしているのかい? 大きい方のねぷっちみたいに」
「……」
「無駄さ。それに、キミからオレを拒んだんじゃないか。オレはキミが来てくれるなら世界全てを滅ぼすつもりはないとまで譲歩したよ? それなのに、キミはオレよりもねぷっちたちを選んだんだ」
「それは……」
「聞くに耐えんな。まるで子供の癇癪だ」
「……何?」
「世界を拒んだのは貴様だろう。それだけの力があれば、別の生き方などいくらでもできただろうに、憎しみに囚われ他者の声を聞こうとせず、他者を踏み躙る。当然、そんなことをしていれば誰しも貴様からは遠ざかっていく、ただそれだけのことだ。まぁ無理もないか、今の貴様は憎しみだけのエネルギー体だからな」
くろめに対して容赦ない言葉を浴びせるマジェコンヌ。
「黙れ。キミに何がわかる」
「わからんさ。何もな。それより、貴様もいい加減覚悟を決めたらどうだ、ギンガ。貴様は女神ではない。全てを守ることなどはできん。貴様の守りたいものを守るために、奴を倒す覚悟を決めろ。それに、貴様が信じるべき天王星うずめは奴ではない、今心次元で戦っているあの天王星うずめだろう」
ギンガは痛いところを疲れたようなバツの悪い表情をする。
手を抜いているつもりはなかったが、くろめを倒すことに躊躇いがあったのもまた事実だった。
「……まさかお前に諭される日が来るとは思いもしませんでしたよ」
「気に入らんか」
「いいえ。ありがとうございます」
再びギンガは剣を構え直す。
「全く、イラつかせてくれるね、マジェコンヌ。まぁでも少しだけ感謝するよ。ようやくギンガが本気でオレと戦う気になったようだからね」
多分このシリーズで一番優遇されてるキャラはマジェコンヌ。
どうしてこうなった。