紫の星を紡ぐ銀糸N   作:烊々

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零次元編
01. 切り拓く次元


 

 

『どうしてあなたが封印されることを選ぶのですか……っ⁉︎ あなたはこの国の女神、あなたに従うべきは国民たちでしょう⁉︎」

 

『そんなことないよ。このままだとこの国のみんなが不幸になっちゃう。だから……』

 

『どうしても……どうしても封印されると言うのですか……!』

 

『ごめんね。こんな力を持って生まれてきて……』

 

『謝らないでください。私は、あなたに仕えられたことを誇りに思っていますから』

 

『……ありがと。次の女神のこと、よろしくね』

 

『かしこまりました……』

 

『……おやすみ、さよならギンガ』

 

『はい、おやすみなさい……うずめ様』

 

 

 

 

 

*

 

 

(……何笑ってんだよ、そんなにあの方がいなくなって嬉しいか……? あの方がどんな思いでこの国を、お前たちを守ってきたと思っている……! ……愚民どもが……!)

 

 

 

 

 

 

*

 

 

『イストワール! 何故うずめ様の存在そのものがプラネテューヌの記録から消されているのですか⁉︎ なぜそこまでする必要があるのですか⁉︎』

 

『え? うずめ……?』

 

『な……何ですかその反応』

 

『あの……申し訳ないのですが、そのうずめさんという方は一体……?』

 

『……は?』

 

『申し訳ありませんが……私のメモリーの中にデータが……』

 

(何が起こって……? この感じ……おそらく、うずめ様の力なのでしょうか?)

 

『ギンガさん……?』

 

『…………こちらこそ申し訳ありませんでした。忘れてください』

 

『は、はい……』

 

(もし、うずめ様の力なら……あの方が世界の記録から消えることを選んだのなら……私はその意思を尊重するのみです。しかし……そんなのあまりにも……)

 

『悲しすぎますよ……』

 

 

 

 

 

 

*

 

 

「……夢……ですか」

 

 ……うずめ様のことを今更夢に見るとは。あの頃は女神様を信じない国民のことを心の底から嫌悪していました。そのせいでいーすんと意見が食い違い、言い争いになることも多かったです。最近になってネプテューヌ様に嗜められたことでようやく国民に対して寛容になることができるようになったんでしたね。

 

 それに、今思えばうずめ様は世界や人々の全てに拒絶されていたわけではありませんでした。うずめ様を信じ、愛してくれる方もたくさんいました。それなのに……

 

\ 〜♪ /

 

 着信……? ……知らない番号ですね。誰ですかこんな朝っぱらから。とりあえず出ましょうか。

 

「もしもし………………っ、お前か。何の用ですか?」

『ーーーーーー』

「……マジですか?」

『ーーーーーー』

「……なるほど、わかりました。その条件をのみましょう」

『ーーーーーー』

「……では、任せます」

 

 通話を切り、Nギアを毛布が盛り上がった柔らかいところに投げ捨て……

 

「ぁ痛っ⁉︎」

 

 ……ると、ガツンと鈍い音が鳴り、さらにそこから悲鳴が上がりました。この声、そしてこの独特なリアクション……

 

「ネプテューヌ様……?」

「ねぷぅ……まさか頭にNギアを投げつけられて起こされるなんて……」

 

 どうやら今の通話の内容を聞かれてはいなかった様子。聞かれたくなかったので安心しました。

 

 そんなことよりもまずはNギアをぶつけたという罪を清算しなければ……私の命で足りるでしょうか。

 

「申し訳ありません、大丈夫ですか? まさかネプテューヌ様がいるとは……」

「大丈……いや、ナデナデしてくれないと許さないもんねー!」

「そんなことで許されるのならいくらでもさせていただきます」

 

 ネプテューヌ様からの許しを得ることができ、なおかつネプテューヌ様の頭を撫でることができる……正に一石二鳥です。

 

「ねぷぅ〜〜♪」

「あの、ネプテューヌ様はなぜ私の寝床に?」

「んー? いいじゃんたまには。ギンガだって愛しの女神様が添い寝してくれて役得でしょー?」

「それはそうですけど……」

「ほらほら、撫でる手が止まってるよー!」

「すみません」

 

 ……役得は役得なんですけど、最近は以前にも増してネプテューヌ様の距離が近いような気がするんですよね。いや別に嫌ではないですし、むしろネプテューヌ様が近くにいると元気になれますけど。直接ネプテューヌ様に理由を聞くのもあれなので、あいちゃんとコンパさんに聞いてみたのですが……

 

『まぁ……それはギンガさんに原因があると思うですよ』

『むしろ目の前で消滅されたから、ネプ子がそうなっても仕方ないというか……』

 

 ……と言われてしまいました。よくわかりませんが、ネプテューヌ様にとって私はまるで目を離したらどこかへ行ってしまう飼い犬のような感覚なのでしょう。だから監視しておきたいわけですね。なるほど、腑に落ちました。飼い犬である私が主人であるネプテューヌ様を撫でているのは逆な気がしますけど。

 

「……私はもう起きて朝食の準備をしますが、ネプテューヌ様はもう少しお眠りになられますか?」

「うーん、目が覚めちゃったしわたしも手伝うよ」

「ありがとうございます……その前に」

「?」

「おはようございます、ネプテューヌ様」

「……うん! おはよう! ギンガ!」

 

 

 

 

 

 

*

 

 

 その日の昼、私は教会のある場所へと向かうことにしました。ある場所……教会の地下深く、うずめ様が封印されている『それ』が祀られている祭壇へと。

 

 私以外の記憶からは忘れ去られ、私しか行き方を知らない祭壇なので、どうせ何も変わりはないでしょうしわざわざ様子を確認しに行く必要なんてないのですが、あんな夢を見たからか無性にそこに行って祀られている『それ』が見たくなってしまったもので。

 

 記録なら消された祭壇ということで、偶然誰かがたどり着かないように、少し変な行き方をしないと行けないようになっているんですよね。

 

 ええと、秘伝マシンを使い地下通路から何もない空間に出て、右に200歩、下に256歩、左に63歩……ここですね。……ん?

 

「……それじゃあ、クロちゃん帰るよ! ワープ! ……あれ? 何も起こらないよ?」

 

 ……祭壇の方から人の声がしますね? 何故ここに人が? この場所を私以外に知る者はいないはず。とりあえず侵入者であることには変わりないですし、やることは1つですね。

 

「……動くな!」

 

 その声と共にガンブレイドを構え、その銃口を侵入者に向けます。

 

「わわっ⁉︎ どうして教会の人が⁉︎ ここって記録から忘れられてるはずじゃなかったの⁉︎」

 

 声質的に女性のようです。いえ、性別は関係ありませんね。この神聖なる祭壇に土足で踏み入る者には容赦はしません。

 

「動いたら殺します」

「怖っ⁉︎ こんなところで捕まるわけにも死ぬわけにもいかないし、とりあえず逃げろー!」

「それでも動くか……忠告はした!」

 

 そのまま忠告を無視した侵入者に向かってガンブレイドからビームマシンガンを乱射します……が、鮮やかな身のこなしと素早い動きで避けられます。

 

 この女、只者じゃない……!

 

「本当にぶっ放してきた⁉︎ この次元のプラネテューヌってこんなに世紀末なの⁉︎」

 

 ……その声、その気配、その匂い。さっきまでは暗くてよく見えなかったが、一瞬だけ小さな電灯に照らされて見えたその姿、そしてその魂の輪郭……間違いない、あれはネプテューヌ様……⁉︎

 

 しかし、ネプテューヌ様にしては身体が大きく、パープルハート様にしてはシェアエネルギー反応がありません。なら、あの方は一体……?

 

(一瞬だけ動きが止まった……? よし、逃げるチャンスだよ!)

 

 ……いえ、今はそんなことを考えている場合ではありません。どうやら奴は祀られていた『それ』を持ち去った様子……! 取り返さなければ!

 

 一瞬の隙を突かれ、あまりにも速い逃げ足で教会を脱出されてしまいましたが、見失ってはいません。このプラネテューヌにおいて、私から逃げられると思わないことです!

 

「やばいやばいやばいあの人すごい速い! 本当に人間⁉︎ このままじゃ捕まっちゃうよ! こんな時にワープが使えたら!」

 

\ カチッ! ピッ! /

 

「……え? 何今の音?」

 

 その瞬間、人よりも大きな渦のようなものが出現し、彼女を吸い込んでいきます。

 

「ちょっ! 何この渦⁉︎ もしかしてわたし、飲み込まれてる⁉︎ あーれー!」

 

 逃走用のアイテムを起動した……ようには見えませんね。どうやら、彼女にとっても不測の事態のようで、そのまま彼女は渦に飲み込まれていきました。

 

 そして彼女を全速力で追いかけていた私もいきなり止まることはできず、その渦に飲み込まれていきます。

 

 うーん……どうやらこれ、抵抗とか無意味なやつですね、詰みです。どうしようもなさすぎて焦るどころか冷静になってきました。

 

「はぁ……勝手に行方不明になってしまっては、ネプテューヌ様に怒られてしまいますねぇ……」

 

 ーーーそのまま私は渦に飲まれ、意識を失い…………

 

 

 

 

 

*

 

 

「んぐぇ……ここは?」

 

 目が覚めると、見知らぬ街の中にいました。街……というよりは廃墟ですね。

 

 とりあえずそこらへんの高台に登り、周囲を確認します。眼前に広がる光景は、割れた空、淀んだ空気、広がる廃墟、その果てにある『何もない』大地。ここが私の住むゲイムギョウ界とは違う世界だということは一瞬で理解できました。

 

 しかしなぜだか、どことなく懐かしさを感じるような……? いや、そんなはずはありません、気のせいでしょう。

 

 そういえば、あのネプテューヌ様によく似た女もこの世界のどこかに飛ばされたのでしょうか? さっきまでは殺……拘束する気だったのですが、この世界の情報を集めるためにできれば合流したいところです。

 

「うーん、やはり電波も通じないようですね」

 

 と、言いつつも少し楽しくなってきました。私は散歩が趣味なので、このようなディストピア散策に少し憧れていたんですよね。少し不謹慎ですが。

 

「〜〜〜♪……あ?」

 

\ ーーーーーーッ! /

 

 軽快なステップを踏みながら踊るように歩いていたら、いつの間にかモンスターに囲まれていました。数は……5体。見たことがない種類ですが、そこまで強くはなさそうなので軽く蹴散らしてあげましょう。

 

 そうですね、戦闘訓練でパープルハート様には隙がなくて使えなかった新武器のギミックなどの実験相手になってもらいましょうかね。

 

 NPカタールとNPガンブレイドの合体機能には大剣モードに加え、武器のエネルギーを射撃機能に特化させたライフルモードがあります。何本もの剣がくっついて大型のライフルになるというものなので、見た目はかなり変になってしまいますが。

 

 私に襲い来るモンスターの群れがほぼ直線上に並んだタイミングを狙い、

 

「一掃する!」

 

 大出力の照射ビームを射出します。5体の雑魚モンスターのうち、私に近かった3体が消し飛びました。

 

「……中々良いですねこれ」

「ーーーーーッ!」

「遅い」

 

 残りの2体も分離させたカタールで切り刻むと消滅していきました。

 

 ゲイムギョウ界のモンスターは、ダメージが限界を超えると消滅するのですが、どうやらこの世界のモンスターもそのようですね。ならば、この世界もどこか別の次元のゲイムギョウ界なのでしょうか?

 

 そんなことを考えていると、更なるモンスターたちの気配を察知しました。どうやら今の戦いの音に釣られてやってきたようですね。

 

 数は……十数体ぐらい、この数全てと1人で戦うとなると割と面倒ですね。

 

 ……となると、この魔法を使いましょう。あいちゃんのノートから名前をもらったこの魔法を、そこに書いてあった詠唱と共に。

 

「血に飢えた死霊の宴を始めよう……『魔界粧・黒霊陣(まかいしょう こくりょうじん)』!」

 

 詠唱と共に魔力を解き放ち、地面に術式を展開すると……

 

 ……………………

 

 ……何も起こりません。

 

 『魔界粧・黒霊陣』とは術式の範囲内に眠る死霊を一時的に蘇らせ使役する魔法。こんな廃墟が広がるような世界ならばこの魔法で使役できる死霊も多いと思ったのですが、術式には何も反応していません。

 

 考えられるケースは2つ。

 

①『魔界粧・黒霊陣』は別の次元や世界の死霊を呼び出せない。

②そもそもこの世界には死霊が眠っていない。

 

 可能性が高いのは①の方ですかね。②の可能性がないわけではありませんが、死霊の類が一切存在しない世界なんてあるわけないですし。

 

 死霊に助けてもらおうと思っていたのですが、結局私1人で戦うことになりそうですねこれは。まぁ、いいでしょう。

 

 そして私が剣を抜こうとしたその瞬間……

 

「うぉおおおおお‼︎」

 

……突如謎の少女が私の目の前に現れて拳を振るい、モンスターたちを吹き飛ばしました。

 

「爆発音が鳴ったから様子を見にきてみりゃ……まさか、モンスターと戦ってる人間がいるなんて思わなかったぜ……」

 

 少女……いえ、違います。この気配は……女神様です!

 

 赤い髪をした女神様……ふ……ふひひひ……まさかこの世界の女神様に会えるなんて……ふひ……心が踊りますねぇ……! 別の世界とはいえ、女神様を目の前にしたらやることは一つ! それは頭を垂れて平伏すこと……

 

『第二条! 女神ネプテューヌの許可なしに他の女神にデレデレしてはならない!』

 

 ……っ! そうでした……私はネプテューヌ様が制定した法律でそれを禁止されていたのでした……っ!

 

(何だこいつ……? 急に表情が明るくなったと思ったらいきなり倒れこもうとするもその途中で何かに気がついて中腰でプルプルしてやがる……)

 

\ ーーーーーーッ! /

 

 ……おっと、どうやらこの女神様の先程の素晴らしき一撃でもモンスターを殲滅できていなかった様子。今はこの女神様と共にモンスターを殲滅するのが優先、女神様を崇め奉るのは後ですね。

 

「お前、名前は?」

「ギンガと申します」

「ギンガ…………(ギンガ……ぎんっち……んー、なんか違ぇな、ギンガでいいか)……なぁギンガ、お前が敵じゃねえなら、一緒に戦ってくれるか?」

「もちろんです。お任せください」

「サンキュー! よし、行くぜ!」

 

 そう言ってその女神様が手元に武器を顕現させます。この方はどんな武器を使うのでしょ………………メガホン?

 

 ……武器にメガホンを使う女神様……だとしたらこの方は……まさか……っ!

 

「あ、名乗るの忘れてたな。俺の名前は……」

「天王星……うずめ……様」

「え? なんで俺の名前を?」

 

 

 

 

 

 




 前作最終決戦でプラネタワーは消し飛んだのですが、祭壇は地下深くだから無事だったのいうことにしといてください。書いてる途中で思い出したんですよね。
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