心次元を突き進み、中心部となる場所に辿り着いた女神一行。
「ここが中心になるのかな?」
「そうだね」
「なぁ、でっかいねぷっち。心次元に入ってからずっと気になってたんだけど、あの遠くに見える壊れたでかいシェアクリスタルはなんなんだ?」
「あれは封印されているうずめの体内に蓄えられているシェアエネルギーが結晶化されたものだよ」
「マジか。そんなに大事なものだったのか……」
「お前らは知らないと思うが、零次元に落ちていたシェアクリスタルはこいつのカケラだったんだよ」
「……!」
女神一行を阻むように待ち構えていたクロワールが会話に割って入る。
「クロちゃん!」
「よっ、また会ったな」
「クロちゃんがここにいるってことは、わたしたちを邪魔しに来たんだね」
「大正解。あいつも人使いが荒いよな。まぁ、その方が面白えから良いけどよ」
「クロちゃん! これ以上はダメだよ! 今すぐ暗黒星くろめに協力するのはやめて! このまめじゃ二つの次元が滅んじゃう!」
「次元が滅ぶなんて俺にとっちゃ今更なのはお前もよくわかってんじゃねえのか? 俺が今までどのくらい世界の始まりから終わりを記録してきたなんてな。ま、お前に捕まってからはそれもさっぱりだけどな」
「そりゃそうだよ! ただ歴史を記録するだけなら良いけど、面白くするために滅茶苦茶にするなんて絶対間違ってるよ! だからわたしはクロちゃんを外には出さなかったんだよ!」
「だろうな。お前との付き合いも長いんだ。そんなことはわかってるさ。お前がおちゃらけたフリしながらも俺やうずめの計画を邪魔してたこともな」
「クロちゃん……」
「ま、話し相手としては退屈しなかったことにだけ感謝しといてやるよ。けど、今回ばかりは俺のやりたいようにやらせてもらうぜ。出ろ、ダークメガミ!」
「性懲りも無くまたダークメガミ? 今更そんなものが役に立つと思ってるわけ?」
「確かに、ダークメガミ程度じゃもうお前らに勝てねーだろうな。けど、俺がお前らを適当に足止めしてるだけで、次元の融合は進んでいく。そうならばあいつの目的も果たせてちまうわけだ。さぁ、行ってこいダークメガミ‼︎」
(……大きいわたし)
(どうしたの? 小さいわたし)
(わたしたちでダークメガミを倒すから、大きいわたしはクロワールを捕まえてよ)
(良いの?)
(良いんだよ。大きいわたしはクロワールのことを大切な友達だと思ってるんでしょ?)
(……うん)
(じゃあ、任せたよ)
(わかった! ありがとう!)
*
マジェコンヌの闇魔法の援護を受け,真っ直ぐ突っ込むギンガ。
くろめが迎撃のため掌からエネルギー弾を放つも、浮遊するNPカタールとNPガンブレイドに防がれる。
「面倒だな……けど、面倒なだけだ。キミの攻撃など、オレにはダメージにならないさ」
振り下ろされたギンガの剣を、くろめは容易く握りしめる。
刃を握りしめているというのに、くろめの手は少しの傷もついていなかった。
「消えろ、『夢幻粉砕拳』」
そのまま剣ごとギンガを引っ張り、ネガティブエネルギーを纏わせた拳を叩きつけようとする。
「させん!」
しかし、その拳はマジェコンヌの槍で弾かれ、その隙にギンガはくろめの正面から離脱し、距離を取る。
くろめは見た目こそ変身していないうずめとそっくりだが、戦闘能力はネクストフォーム相応かそれ以上。たとえ二対一とはいえ、まともに戦って勝てる相手ではないとギンガは判断した。
「マジェコンヌ! アレを頼みます!」
「命令をするな!」
マジェコンヌの闇魔法により、教会中が黒い霧で覆われ、敵味方問わず視界を奪われる。
「目眩しか……」
人並外れた五感を持つギンガは、暗闇の中でも問題なくくろめを捕捉すること可能。
そのまま、物音ひとつ立てずにくろめに斬り込む。
「甘いよ」
しかし、暗闇の中であっても、くろめの拳はギンガの剣を受け止めた。
「『目に見えるものだけを信用するな』、キミがかつてオレに教えてくれたことだろう、ギンガ!」
そして剣を砕き、その奥にいるであろうギンガを、ネガティブエネルギーを纏わせたもう片方の拳で貫いた。
「これで終わりさ!」
………かのように見えた。
(……⁉︎ 違う! ギンガじゃない! 剣だけ……!)
くろめが砕いた剣は、ガンブレイドとカタールが合体した中型の剣であり、脳波制御で浮遊させて斬りかからせたものだった。
当然、その奥にギンガはいるはずもない。
「……私の教えを忘れずにいてくださったことは、嬉しい限りです」
背後から、声が聞こえた。
「しかし、私もあの頃より強くなっているということです……『ギャラクティカエッジ』」
そして、無防備な背中を晒したくろめに、ギンガの技が炸裂した。
「ぐぅぅっ……ぁぁああっ!」
くろめは技の衝撃で数メートル吹き飛び、教会の壁に叩きつけられた。
「やったか?」
「いいえ。手応えはありましたが、この程度で勝てる相手な筈ありません」
「……だろうな」
ギンガの言う通り、くろめはすぐに立ち上がる。
「……オレは今この瞬間にも世界のネガティブ感情を取り込んでいる。そしてそのネガティブ感情はエネルギーとなり、オレの力になる。キミたちがオレに与えたダメージもすぐに回復してしまったよ」
くろめを倒し切るためには、高出力のシェアエネルギーを帯びた攻撃をするしかない。
しかし、ギンガネプテューヌもマジェコンヌはそれができず、くろめを倒すための手段が存在しない。
ギンガネプテューヌには女神の力が付与されているが、あくまでもギンガの基礎スペックを底上げする程度の力しかなく、敵への攻撃にシェアエネルギーを帯びさせることまではできない。
「しかし、攻撃を当て続ければ動きは止められるということ……!」
「何度でも地べたを這いつくばらせてやろう!」
ギンガもマジェコンヌも諦めはせず、剣と槍を構える。
「無理はしない方がいい。わかっているよ。キミたちの変身は時間制限がある。そろそろ時間なんじゃないかい?」
その瞬間、くろめの言ったとおりギンガもマジェコンヌも変身が解除されてしまった。
「女神でもないキミたちが、女神を超える力を出し続けるなんて不可能なんだよ。結局キミたちはここで終わりってことさ」
くろめは拳にネガティブエネルギーを込め、ギンガとマジェコンヌにトドメを刺そうとする。
「ぐ……なんだ……? 力が……っ! この感じ……シェアエネルギーか‼︎」
しかし、くろめは急にうずくまって苦しみ出す。
「何が起こっている……?」
マジェコンヌは困惑しながら呟く。
「おそらく……心次元、つまりうずめ様の心の中に残ったネプテューヌ様たちが、何かをしたのでは……?」
「なるほど……確かに、ネガティブエネルギーを原動力としている暗黒星くろめにとって女神どものシェアエネルギーは毒となるわけだな」
「……っ! 後輩と絞りカスの分際で……オリジナルに楯突くとは……許さんぞ‼︎」
激昂したくろめは、ギンガたちが心次元から帰還する際に使用した次元のゲートを使い、心次元へと逃亡していった。
「ギンガさん!」
くろめが去ってからすぐ、ダークメガミを撃破してきたであろうネプギアたちが駆けつける。
「ネプギア様! その様子ですと、ダークメガミを撃破してきたようですね。流石です」
「ありがとうございます! そっちは大丈夫でしたか?」
「ええ、なんとか。ネプテューヌ様たちが心次元で何かしてくれたようなので助かりました」
「流石お姉ちゃん。くろめさんはどこへ?」
「たった今逃げていきました。あまりにも早い逃げ足だったので、追うことはできませんでしたが、おそらく心次元に戻ったものだと思われます」
「そうですか。じゃあ、私たちも心次元に向かいましょう!」
「……いえ、私は超次元に残ります」
「え? どうしてですか⁉︎」
「今この瞬間にも心次元と超次元の接近が続いています。もしかすると、超次元の方でも何か問題が起こるかもしれません。超次元に何も問題がなければ私も後から心次元に駆けつけますので」
「わかりました! じゃあ、行ってきます!」
ギンガは、再び心次元へと向かう候補生たちの背中を見送るのだった。
「……お前は心次元には行かないのですか、マジェコンヌ?」
「貴様と同じ理由さ。私には超次元を守る理由がある」
「ナス農場……でしたっけ?」
「それもそうだが、ナスを食べる消費者、ナスを卸す市場、それだけではなく、私は農業に関わる全てを守る必要がある」
「……ナスの守護女神にでもなるつもりですか?」
「ナスの守護女神か。悪くないな」
(悪くないんですか……)
「皮肉なものだ。かつてこの世界に混沌を齎そうとした私が、世界を守ろうとしているなどな」
「良いことじゃありませんか」
「……うるさい」
*
ダークメガミはやはり一蹴された。
それどころか、守護女神たちは、ダークメガミ戦に慣れてしまっていることにより、先ほどよりも早く撃破することができた。
「……ちっ、時間稼ぎ程度にしかならないとわかっていたけど、まさかこんなに早くやられるなんてな。しょうがねえ、適当にずらかるとするか」
「……てーい!」
「あべし!」
ダークメガミ戦には参戦せず、クロワールの隙を伺っていたネプテューヌ(大人)は、上手く背後からクロワールを捕まえることに成功し、すぐさまねぷのーとにクロワールをしまい込む。
「クロちゃんゲット!」
「おいやめろ! 出しやがれー!」
「もう離さないからね! わたしたちは一心同体だよー!」
「気色悪いこと言うんじゃねー! 出せー!」
クロワールを捕まえたネプテューヌ(大人)は、してやったりといったふうな得意げな表情だけでなく、大事な友達をどこか遠くへ行かせずに済んだ、そんな安堵を浮かべていた。
「さて、邪魔者はいなくなったことだし、そろそろ浄化を試みようかしら」
そう言ってパープルハートはネクストパープルへと変身し、それに続いて他の女神たちもネクストフォームへ変身する。
「ベール、ブラン、ノワールはありったけのシェアエネルギーを私に。他のみんなは祈って」
シェアエネルギーと祈りの力を得たネクストパープルの『次元一閃』が、心次元の中心部に浮かぶシェアクリスタルのネガティブエネルギーを斬り裂いた。
「…………駄目だわ。手応えは感じたけれど、やっぱりシェアエネルギーがネガティブエネルギーにかき消されてしまったわ」
ネクストパープルの言った通り、表面のネガティブエネルギーを斬り裂いて消滅させることには成功したが、シェアクリスタルからネガティブエネルギーが次々と溢れて出てくるため、効果があったとは言い難い。
「しかし、手応えは感じたのなら、エネルギーの量さえあればなんとかなるということだ」
「なら、一度ネプギアたちと合流して、作戦を練り直しましょう」
*
「クソ……ッ‼︎」
「おうおう荒れてんねぇ、うずめちゃん」
「ルギエル……!」
「今戻ったよ。その様子だと、失敗しちゃったようだねぇ」
「黙れ……!」
「ごめんごめん。で、クロワールは?」
「捕まったんだろうさ」
「あらら。あいつがしくじるなんてな。んー、多分あいつも知らないうちにだいぶネプテューヌちゃんに絆されちゃってたんだろうな」
(……やはり誰も役には立たなかった。そして、この男もオレを見限って去って行くんだろうね。その前に借りを返しておくとしようか)
「……キミに、これを渡しておく」
「ん? これって……」
「キミの言っていたゲハバーンさ。完全なモノは今のオレでは作れないから、女神の命を込める前のただの剣でしかないし。キミやクロワールの話を聞いて作った物だから、キミの言うようなスペックがあるかわからない」
「いやいや全然オッケーだ! ていうか、最初からそれで充分だったんだよ! 女神の命なんて後から込めるさ! いやぁ、作れるならさっさと作って貰えばよかったぜ!」
「そうか。喜んでもらえて何よりさ。これでもうオレがキミにできることはない。どこへでも行くといい」
「おいおい、せっかく対女神武具を持ってきたんだぜ? 最後まで付き合うさ」
「もうキミにはオレに付き合う義理なんてないだろう? それに、これ以上報酬とやらで渡せるものなんてないよ」
「あるさ」
「じゃあ何が欲しいんだい?」
「うずめちゃんが欲しい」
「……はぁ? 何を言い出すんだ急に」
「そのまんまの意味さ。濁った目。歪んだ心。俺のタイプなんだよ、うずめちゃんって」
「貶されてるようにしか聞こえないんだけど」
「俺は好きなのさ。ま、この報酬は気が向いたらで良い。嫌がる娘に無理やり言い寄るのは趣味じゃないからな。んなことより、これからどうすんの?」
「そうだな。超次元に行く直前にクロワールからいただいた『タリの女神』とやらの力を取り込み、次元融合をさらに加速させる。そして……これは完全に融合させてからにしようと思っていたが、今から心次元から超次元へのゲートをこじ開け、猛争モンスターを大量に送り込む。超次元を破壊し尽くせと命令してね。そして、オレを止めに来るであろう女神たちを今度こそ消し去ってやるさ」
「ほーん。良いね。じゃあ俺はどうすればいい?」
「超次元に行って、抵抗する者たちを全て排除してくれ。超次元には猛争モンスター如きじゃ倒せなさそうなのが何人かいそうだし」
「オッケー。じゃあさ、あのギンガってやつが来たらもう殺してもいいよな? 今まではずっと殺すなって言われてきたけど」
「うん、もういいよ。彼はもうオレのものにはならない。だったら死んでくれた方がいい。それに、いい感じに妥協できる相手が見つかったしね」
「……お? もしかして、うずめちゃん意外と乗り気? ははっ、嬉しいね」
「さぁね。今のオレには好意や愛なんて感情はない。キミの望むようになるかはキミの活躍次第さ。とにかく、頼んだよ」
「りょーかい。じゃ、超次元に屍の山を立てて、うずめちゃんを待ってるぜ」
最終決戦が近づいてきました、つまりお別れが近いということです。
ダークメガミ戦は書いてておもんないのでほぼカットです。