紫の星を紡ぐ銀糸N   作:烊々

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11. 双銀の相剋

 

 

 

 

 ネプテューヌたちとネプギアたちは、心次元の拠点にて合流した。

 

「お姉ちゃん!」

「ネプギア! そっちはどうだった?」

「くろめさんがダークメガミを出してきて大変だったけど、うずめさんから貰った小型のクリスタルでシェアリングフィールドを展開できたからなんとかなったよ。その間にギンガさんとマジェコンヌさんがくろめさんを撃退してくれてゲーム機は取られなかったんだけど、結局くろめさんには逃げられちゃって……」

「そっか。ギンガは?」

「それが、超次元で何か起こる予感がするから残るって言って……」

「なるほど、ギンガらしいね」

 

 納得しながらも少し不満げなネプテューヌにネプギアは苦笑いする。

 その瞬間、心次元全体が揺れた。

 

「な、何⁉︎ 何が起きてるの⁉︎」

『あいつとうとうやりやがったな』

「どういうことなのクロちゃん! 説明して!」

『お前に捕まる少し前にな、あいつにタリの女神の力を渡してたんだよ』

「タリの女神の力って……?」

『次元に干渉する力だ。凄えことに、この心次元を移動させることだって、その力を使えば容易くできちまうんだぜ。本当は、あいつが自分の身体を取り戻した後に使えって言ったんだけどな、力が強すぎて呑まれちまうから。けど、この様子じゃ全部一気に取り込んだみたいだな』

「次元融合を加速させるつもりか……!」

『ここまで来ちゃ、もう止められないぜ! 久しぶり面白い歴史が見られるってもんだ!』

「次元融合を止めるためには暗黒星くろめを倒すしかない。けど、暗黒星くろめを倒すとうずめや海男たちも……」

「いや、俺に考えがある」

「うずめ……?」

「【オレ】からタリの女神の力を奪って、逆に次元融合を止めれば良いんだ」

「確かに、それならなんとかなるね!」

「そうと決まれば【オレ】の元に殴り込みだな!」

 

 タリの女神の力を取り込んだ暗黒星くろめが放つ強大なエネルギーを辿れば、その場所を特定するのは容易かった。

 『心ノ最深部』、暗黒星くろめはもう逃げも隠れもせずそこにいた。

 

「……来たか」

「あぁ、来てやったぜ、【オレ】」

「あなたを倒して、ゲイムギョウ界を救ってみせるわ!」

「ふっ……救う、ね」

「何がおかしいのよ?」

「既に超次元滅亡のカウントダウンは始まっている。次元融合とは別の要因でね」

「どういうことだ?」

「何も不自然に思わなかったのか? オレの元に来るまでに、一切の猛争モンスターと遭遇しなかったことを」

「まさか、お前……!」

「そうだ、そのまさかだよ。既に心次元中の猛争モンスターを超次元に向かわせた。超次元を壊して殺し尽くせと命令してね。キミたちが守ろうとしているものは既に滅びようとしているのさ!」

「……」

「……ん?」

 

 どうやら、くろめにとって女神たちの反応は思っていたものとは違ったようだった。

 

「……やっぱり、ギンガさんの想定通りだった」

 

 ネプギアが声を漏らす。

 

「なるほど。ギンガが超次元に残ったのか。その余裕の正体はそういうことだったんだな。ふふ……はははっ!」

「何がおかしいんだよ?」

「ルギエルって言えばわかるかな? 彼も超次元に向かった。抵抗する人間どもを皆殺しにするためにね。一度戦ったねぷっちたちにはわかるだろう? ギンガではルギエルに勝てないさ。そして、キミたちのいない超次元にはもう彼を止められる者などいない」

「……だとしても、わたしはギンガを信じてる」

 

 ネプテューヌに迷いはなかった。

 ネプテューヌだけではなく、女神たちは、成すべきことを成すためにここに立っている。

 

「この場で俺たちは【オレ】を、憎悪に染まった天王星うずめを倒す!」

「そうか。ならばオレも受けてたとう。再び顕現せよ、ダークメガミたちよ!」

 

 そう言ってくろめはネガティブエネルギーを放出し、ダークメガミを四体呼び出す。

 

「なるほどね。あなたの力で何度でも復活できるってわけ。でも、数を揃えてもダークメガミ如きじゃもう私たちには勝てないわよ?」

「早まるなよのわっち、まだ準備の途中さ。キミたちの力を使って作り出したダークメガミの力を全て一つに集め、最後にオレ自身が融合することで、最強のダークメガミの誕生だ‼︎」

 

 くろめは全ての力を一つに集め、最強のダークメガミ、『ダークオレンジ』へと姿を変えた。

 

「ふはははははっ! これぞ正に究極! ゲイムギョウ界のクズどもに復讐には最も適した力だ‼︎」

「正にてんこ盛り、ですわね」

「私たちから吸い取った力に、タリの女神の力もある」

「それに加えて……ネガティブエネルギー……」

「だとしても、俺たちは勝つ。それだけだ」

「勝つ? 今更シェアリングフィールドを展開できたところで、今のオレの力を抑えることなどできはしない!」

「それはどうかな? 心次元の中心に浮かぶクリスタル……アレを使ってシェアリングフィールドを展開したら……どうだ?」

「……っ、正気か⁉︎ それはオレたちの生命線、その力を使い果たすのはオレたちの死を意味するんだぞ⁉︎」

「うずめ! 差し違えるなんてダメだってば! 命を大事に、だよ!」

「わかってる。全部使ってあいつと心中する気なんてねえよ。壊れるギリギリまであのクリスタルの力を使えば、あいつも弱体化する筈だ」

 

(……うずめさん。ああ言ってはいるけど……死ぬ気かもしれない……! 場合によっては私が止めなきゃ……!)

 

「これが俺の最後の女神化だ! 変身‼︎」

 

 うずめはオレンジハートへの変身を合図に、四女神たちはネクストフォームに変身し、候補生たちは女神化する。

 

「『シェアリングフィールド』展開!」

 

 心次元、心ノ最深部。

 最後の戦いの幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

『……やはり、猛争モンスターの群れが異次元のゲートから接近していますね』

「超次元に残って正解でした。これでネプテューヌ様たちも決戦に集中できるでしょう」

『ですが……あれだけの量のモンスターを一人で食い止めるつもりですか?』

「マジェコンヌもいますしなんとかなりますよ。いえ、なんとかしてみせます」

 

 ギンガとマジェコンヌは暗黒星くろめが作った次元のゲートの座標に待機していた。

 

「準備はいいですか、マジェコンヌ」

「言われるまでもない」

 

 彼らの眼前に迫る大量の猛争モンスターたち。

 

「さて、この魔法はじつに28話ぶりの出番ですね」

 

 ギンガは魔術の印を手で編み出し、術式を展開する。

 

「血に飢えた死霊の宴を始めよう……! 『魔界粧・黒霊陣』‼︎」

 

 その詠唱と共に地面から湧き出るゲイムギョウ界に眠る死霊たち。

 

「さぁ行くぞ死霊たちよ。我らの手で女神様の帰るこの地を守るのだ!」

 

 大量の死霊たちと共に、ギンガとマジェコンヌが先陣を切って猛争モンスターたちを迎撃する。

 

「ふん、相変わらず気色悪い魔法だ」

「私たちの同志ですよ。気色悪くなんてありません」

「貴様から見ればそうだろうな」

 

 ギンガとマジェコンヌは雑魚モンスターを死霊に任せ、死霊たちでは相手をするのが難しい大型のモンスターに攻撃を仕掛けていく。

 

「『ラ・デルフェス』!」

「『EX・H・インパルス』!」

 

 ギンガとマジェコンヌの活躍により、猛争モンスターの数はみるみると減っていく……が、減るスピード以上に次元のゲートから次々と猛争モンスターが出てくる。

 

「やはり……数が多すぎますか……!」

「く……抑えられん……!」

 

 あまりにも多い猛争モンスター全てを倒し切ることができず、防衛ラインを突破されようとしていた。

 

(まずい……魔界粧・黒霊陣の展開も限界が近い……このままでは……!)

 

 次々と死霊が消えていくが、猛争モンスターの数はゲートからどんどん増えていく。

 そしてついに、防衛ラインが突破された。

 

「とりゃぁぁああっ! 『ビーシャキック』‼︎」

 

 その時、ビーシャ、ケーシャ、シーシャ、エスーシャのゴールドサァドが駆けつけ、防衛ラインを突破した猛争モンスターを撃破した。

 

「私たちもこの戦いにさせてもらうよ!」

「ゴールドサァドの力はほとんど失ったけど!」

「この世界を守りたいという気持ちはあります!」

「共に戦おう、この世界の安寧のために」

「皆さん……ありがとうございます」

「どういたしまして。それに、駆けつけたのは私たちだけじゃないよ」

 

 そう言ってシーシャが指を差した後方に目を向けると、物凄い人数の義勇兵たちが防衛ラインに集結してきていた。

 国籍や信仰を問わず、皆この世界を守るために立ち上がったのである。

 

「それにしても、なぜこんなに多くの人が……」

「決め手となったのは、アブネスチャンネルとかいう有名な配信者の放送を、アノネデスとかいうハッカーが世界中の放送局にハッキングして強引に流したことらしい。私たちはよく知らないんだけど、知り合いなのかい?」

「まぁ……知り合いっちゃ知り合いですけれど……まさかあの方たちまで協力してくれるとは……」

 

 既に数の利は完全に超次元側にあった。

 そして、この光景は超次元ゲイムギョウ界が守護女神の転換期を完全に乗り越えたことも意味していた。

 

「……女神様たちにこの光景をお見せできないのが残念です」

「そうだね。さて、女神補佐官のギンガさん。今はブランちゃんたち守護女神がいないから、暫定的に私たちのトップは君だ。集まった義勇兵たちに号令をかけるといい」

「わかりました」

 

 ギンガはプロセッサユニット:リミテッドパープルを装備し空に上がる。

 そして星晶剣銀牙を掲げ、高らかに宣言する。

 

「……諸君らの気高き想いは決して絶やしてはならない! 守護女神様の魂は常に我々と共にある!」

 

\ おおおおおっ!/

 

「……ゲイムギョウ界の真理はここだ。皆、我が剣の元へ集え‼︎」

 

 ギンガの宣言が響き渡る。

 これ以上ないほど士気も上がり、超次元防衛戦の幕が上がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ははっ、カスどもが最高に調子こいてんねぇ。ぶち殺してえわ」

 

 

 

 

 

 

 

 だがその瞬間、ギンガは猛争モンスターよりも鋭く悍ましい殺気を感じ取った。

 

(……‼︎)

 

 そして、次元のゲートから猛争モンスターのネガティブエネルギーの中に『無』を感じ取る。

 

(やはり来たか、ルギエル!)

 

「そうそう、お前だよお前。ギンガだっけか? 初めて見た時から殺したかった。ようやくその時が来たってな! はっはぁ! お前を殺してうずめちゃんとランデヴーだ!」

 

 ルギエルはマジェコンヌやゴールドサァドたち、そして義勇兵たちには目もくれず、猛争モンスターすらも押しのけてギンガの元に一直線で向かってくる。

 

「マジェコンヌ! モンスターの迎撃の指揮はお前とゴールドサァドの皆さんに任せます! この男の狙いはわた……」

 

 ギンガが言い終わる前に、ルギエルに頭を掴まれ都市部に向かって思い切り投げられていた。

 

(速い……っ!)

 

 そして追撃の跳び蹴りが入り、高層ビルを数本突き抜けて更に吹っ飛んでいく。

 

「こんななんもねーところでやり合ったって面白くねえ。もっと派手なフィールドでやろうぜ」

 

 タリの女神の件もあり、緊急事態の際はプラネタワーなど都市部のシンボルが狙われることを想定し、予め国民は都市部からの避難を済ませていたためすでに無人となっている。

 

「んー? 街の中だってのに人の気配がねえな。ノーギャラリーか」

「……」

「しゃーねー。さっさとお前をぶち殺してカスどもをすり潰しに戻るか」

「させはしません」

「なら、精々止めてみせろ!」

 

 ドン、という足音が鳴った瞬間、ギンガの眼前にルギエルの拳が迫る。

 

「……っ⁉︎」

「遅えよ」

 

 ギンガが迎撃のために振るった剣は、側面に的確な打撃が加えられることにより、その勢いが殺される。

 

「おいおい、それでも『俺』かよ? ちと弱すぎんじゃねえか?」

 

 常人には目で追えないほどの速度の攻防。

 しかし、喋る余裕もないギンガの攻撃を、ルギエルはヘラヘラ笑いながらその全てを正面からねじ伏せている。

 それはまるで技術を嘲笑うかのような圧倒的な暴力だった。

 

「……まだまだっ!」

 

 ギンガはネプテューヌリングを使い、ギンガネプテューヌへと変身する。

 

「あーん? 女神の力を使うなんて、人と同じ顔しながらきっしょいことしないでくれよな。まぁ、そうしてもらわないと張り合いがねえか」

 

 変身前のギンガから繰り出される攻撃は全て無力化していたルギエルだったが、ギンガネプテューヌの攻撃は回避し始める。

 その表情からは、先程のような笑みは失われていた。

 

「『クロスコンビネーション』‼︎」

 

 そして、遂にギンガの刃がルギエルを捉える。

 

「……けど、さっきよりはマシって程度だ」

 

 ……かのように見えたが、ルギエルはその刃を素手で掴んで防いでいた。

 

「こんなもんで俺とお前の力の差は埋まらねえッ!」

 

 そして剣を引っ張ってギンガの身体を引き寄せ、顔面に拳を叩きつける。

 

「が……っ!」

 

 衝撃で後退り、大きく呼吸を乱すギンガ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 対するルギエルは息一つ乱すことない。

 

「お前がこんなに弱い理由がわかるか?」

「……」

「何かを得て強くなるのが女神なら、捨てて強くなるのが俺たちだ。言うなれば俺たちは世界のバグ、不純物さ。だからこそ、バグがシステムに順応しちまったら弱くなるに決まってる。俺たちはシステムを壊す側なんだからな」

 

 ルギエルは一旦戦いの手を止め話を続ける。

 

「お前も全てをかなぐり捨てればよかったんだ。情や想い、絆、それら全部捨てて強さだけを求めれば俺並みになれただろうに。でもお前はそうじゃない。持ちすぎた、背負いすぎた。だからお前はこの世界のカスどもと同じにまで堕ちぶれてんだ」

「私がこの世界の皆さんと同じ……?」

「あぁ、同じだよ。同じ有象無象の雑魚でカスだ」

「それは……嬉しいことですね」

「……あ?」

「確かに……女神様すら守れる力が欲しいと思ったことはあります。私にもう少し力が有れば……何度そう思ったことか。しかし、あなたの理屈が正しく、私が弱い理由が、私がこの世界の一員として皆と共に生きているからということならば、私はそれが……とても嬉しい」

 

 言いながら、満ち足りたような穏やかな笑みを浮かべるギンガ。

 ルギエルは対照的に心底つまらなそうな表情を浮かべていた。

 

「……あっそ。じゃあもう死ねよ」

 

 ルギエルが拳を振りかぶったその時、魔法の光弾が横切る。

 

「ギンガさん!」

「イストワール! なぜここに? あなたも避難したはずでは?」

 

(あれは……この次元のクロワールか。中々可愛いじゃん。けど、俺的にはクロワールの方が好みだな)

 

「放っておけない誰かさんの様子を見に戻ってきました。それに、私は教祖、この国の信者の代表です。ただ逃げるわけにはいきません。私も共に戦います!」

「……わかりました。今更逃げろなどとは言いません。行きましょう、イストワール!」

「はい、ギンガさん!」

「「合体‼︎」」

 

 ギンガネプテューヌの頭にイストワールがしがみつき、合体が開始される。

 

(……なにあれ、おもしろ)

 

 女神(ネプテューヌ)の加護、史書であり教祖(イストワール)のデータ、器となる身体(ギンガ)。その三つが合わさった新たな形態となる。

 

「「合体完了……」」

 

(ギンガイストワールネプテューヌ……それとも、ギンガネプテューヌイストワールですかね? どちらにせよ長すぎますね。ではこうしましょうか)

 

「「『ギンガトリニティ』‼︎」」

 

 

 

 

 

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