紫の星を紡ぐ銀糸N   作:烊々

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12. 未来を否定する魔剣

 

 

 

 

(心次元でのこいつらと女神の戦いをチラ見してたから知ってはいたが、マジで当たんねえんだな)

 

 常人の目では追えないほどの速度で放たれたルギエルの打撃だが、ギンガトリニティを捉えることはない。

 

(……いや、当たんねえのはまだ良い。問題はシェアリングフィールドだ。今の俺はあれに対する対抗策がねえ。巻き込まれたら即ゲームオーバーだな)

 

 ルギエルは自分から攻撃を仕掛けることを無駄だと悟り、回避と反撃に専念する。

 

「……そこっ!」

「ちぃ……っ!」

 

 対するギンガは、敵の反撃を喰らわないために隙の小さい斬撃や魔法攻撃を仕掛け、少ないながらも確実にダメージを与えていく。

 

(……そして当然こいつはそれをわかってやがるな。シェアリングフィールドという強力な択をチラつかせながら、少しずつ俺を削っていくって魂胆だろうな)

 

 ルギエルがダメ元で拳を振るって反撃してみるも、当然回避される。

 

(くっそ……やっぱわかっててもどうにもならねーな。今はダメージを安く済ませて変身の時間切れを待つしかねーか。確かあいつらの変身は時間制限あるっぽいし)

(……と、彼は思っているでしょうね。だからこそ……)

 

「「『光ノ羽根』‼︎」」

 

(彼が攻めに消極的な今、ここで畳み掛ける‼︎)

 

 ギンガが展開したのは、イストワールのスキル『光ノ羽根』。

 光属性の魔力で構成される羽根部分を相手にぶつけてダメージを与える技であり、展開中は機動力も大きく上昇する。

 

(……っべ! 速っ!)

 

 急な速度上昇に、ルギエルの反応がほんの少し遅れる。

 その隙をギンガは逃しはしない。

 

「『ギャラクティカネプテューンブレイク』ッ‼︎」」

 

 そして、ギンガの必殺剣舞がルギエルに炸裂する。

 

「……っ⁉︎ ぐ……ぉおおおおおっ‼︎」

 

 その衝撃で、ルギエルは瓦礫の山に吹っ飛んでいった。

 

(倒し……てはいないでしょう。これで終わる相手なはずはありません)

 

 

 

 

 

 

 

 今までのダークメガミの比ではない強さのダークオレンジを前に、苦戦する女神一同。 

 

(今までのみたいな理性や知性を感じられないようなものではなく、巨大な体躯、膨大な魔力、そしてネガティブエネルギーを使いこなしている。……やりづらいわね。攻め方を変えてみましょう)

 

「……行くわよノワール!」

「もう、命令しないでよね!」

「「『アサルトコンビネーション』‼︎」

 

 ネクストパープルとネクストブラックの連携技を合図に、女神たちはバラバラに攻撃を仕掛けるのではなく、連携をとりながら攻めていく。

 

「行くわよロムちゃん!」

「わかった……! ラムちゃん……!」

「ネプギア! あたしたちも!」

「うん!」

「「『ロムちゃんラムちゃん』ーー!」

「「『シュタルクヴィータ』!」

 

 ノワールのトルネードソードとネプテューヌの32式エクスブレイドの同時攻撃、ルウィー女神候補生自慢の氷魔法連携攻撃、ネプギアとユニの連携攻撃が三方向からダークオレンジを襲う。

 ただのダークメガミなら、これだけでもHPの大半を削られるものだが、

 

「効かん! 効かん効かんっ!」

 

 ダークオレンジは怯むことすらなく、反撃に巨腕を振るう。

 

「ロム! ラム! 私の後ろに!」

 

 ネクストホワイトがロムとラムの盾となり、ダークオレンジの攻撃を防ぎ切る。

 

「……ふん、今の攻撃を防げていい気になっているようだが、長引けば長引くほど不利になるのはお前たちだぞ? シェアリングフィールドにも、お前達の変身にも制限時間は存在する。そのうちの片方でも過ぎればオレに勝つことなどできなくなるのだ! ふははははははッ!」

「なら、過ぎる前に倒し切ってあげるわ!」

 

(ギンガも頑張っている。だから私も……!)

 

 

 

 

 

 

 

「痛ってぇー……」

 

 ルギエルは瓦礫の山から這い出て、邪魔な瓦礫を無造作に投げたり蹴飛ばす。

 額や腕から血は流してはいるが、戦闘を継続することには支障のない程度のダメージだった。

 ルギエルが頑丈だというのもあるが、咄嗟に防御してダメージを低く済ませていたのだ。

 

「ふーっ…………ははっ」

 

 戦況的にはギンガの方が有利に見える。

 しかし、ルギエルは余裕の笑みを崩すことはない。

 

「……お宝を使うのはもっと後にしようと思ってたんだけどな」

 

 ルギエルが取り出したのは濁った紫の刀身を持つ剣、そしてもう片方の手に持つのは様々な色に光る水晶だった。

 

「ゲハバーンって知ってっか?」

「「……!」」

「その反応、知ってるようだな。まぁこの次元にもゲハバーンはなかったんだけど、うずめちゃんが俺の話を聞いて作ってくれたんだ。本物より性能が劣るっつってたから『ゲハバーン・レプリカ』って感じかな」

「「その剣で……女神様を殺すつもりですか……!」」

「いや、この次元の女神をぶっ殺すのはうずめちゃんの役目さ。つーわけで使うのはこの水晶だ」

 

 その水晶とは、対女神武具『インターセプトスフィア』。

 女神の死後、行き場を失ったシェアが新しい女神を生むことを阻害するために、女神の遺体から神格とシェアエネルギーを封印し、国の発展そのものを止める禁忌のアイテム。

 

「この水晶は、俺が今まで殺してきた守護女神やそれに等しい神格を持つ者、そいつらの命をストックできるものなんだよ。つまりこの中にストックしてある命をゲハバーンに吸わせると……」

 

 ルギエルが水晶をゲハバーン・レプリカで斬り裂くと、水晶中の光がゲハバーン・レプリカの刀身に吸われていき、禍々しい紫色に光っていく。

 

「……完っ成ー! これで、ゲハバーン最終形態だ!」

 

 ルギエルが最終形態となったゲハバーン・レプリカを手にしたその瞬間、ギンガは戦慄した。

 

(これは……? 彼があの剣を持った瞬間から……彼の未来が予測できません……!)

 

 ゲハバーン・レプリカの禍々しい底知れない力の前では、イストワールですらその予測が不可能。

 故に、ギンガはこの先の戦闘において未来予測を封じられることになる。

 

「へえ……これの未来は見えないんだ、お前ら。まぁ当然か。レプリカとはいえゲハバーンだもんな」

 

 ルギエルはギンガの反応からそれを察する。

 そして、ゲハバーン・レプリカを思いのままに振り回す。

 

(……しかし、未来が見えなくても、勝負が決まるわけではありません!)

 

 ギンガは未来予測をせずとも、変身合体によって上昇した反応速度でゲハバーン・レプリカの斬撃を全て回避する。

 その斬撃の余波だけでギンガの背後にある高層ビルが薙ぎ倒される。

 

(たった一閃でこの破壊規模……噂である『ゲイムギョウ界を滅ぼす魔剣』という肩書きは嘘でなかったということですか……)

 

「ははっ、すっげ。本物には劣るっつってたけど、十分やべえもん作ってくれたじゃんうずめちゃん」

 

 ルギエルが笑いながら無造作に振るう斬撃の余波で、プラネテューヌの都市がどんどん崩壊していく。

 

「そうだ。俺がゲイムギョウ界のカスどもをぶっ殺して、うずめちゃんが女神どもをぶっ殺した暁には、あの一番でかい塔をうずめちゃんと一緒にゲハバーンで縦に両断すっか。ケーキ入刀みたいな感じで。ははっ!」

 

 ルギエルはプラネタワーだけに斬撃の余波が届かないように、器用にプラネテューヌを破壊していく。

 

「「あまり調子に乗らないでいただきたい!」」

「お?」

「「これで終わらせてあげましょう! 『シェアリングフィールド』展開‼︎」」

 

 ルギエルが悦に浸ってる隙に、ギンガは射程距離にまで一気に接近し、必殺のシェアリングフィールドで一気に勝負を決めにかかる。

 

「……はっ! 調子に乗ってんのはどっちだろうなぁ!」

 

 しかし、展開される寸前に、シェアエネルギーの塊がゲハバーン・レプリカによって両断され霧散していき、シェアリングフィールドは不発となった。

 

「「……⁉︎」」

 

(……なんという力! シェアリングフィールドそのものを切り裂くとは……!)

 

「さっきまでの威勢はどうしたァ⁉︎ お得意の未来予測とシェアリングフィールドが通用しなくてお手上げってかァ⁉︎」

 

(まずは、あの剣をどうにかしなくては……!)

 

「さぁて! こっからは出し惜しみなしで行かせてもらおうか!」

 

 ルギエルが懐から取り出して投擲したのは、対女神武具『神誅手裏剣』。

 幻影夢忍界というゲイムギョウ界と似た次元で入手した手裏剣をルギエルが自身のアトリエで加工したもの。

 その効果は、投擲した手裏剣がシェアエネルギーに反応し自動で追尾していく、というもの。

 

(……厄介な武器ですが、奴の手を離れた瞬間に私たちの未来予測が可能となり、完全に躱し切れます。だが、おそらく彼もそれは承知。本命はやはりゲハバーンの斬撃……!)

 

「はっ、ゲハバーンがお望みかい? だったら、こんなのはどうだ!」

 

 ゲハバーン・レプリカの持ち手に鎖を縛り付け、鞭のようにしなやかな軌道とロングレンジで振り回す。

 その鎖もまた対女神武具であり『トラッカーチェーン』と呼ばれ、高いシェアエネルギーに反応しどこまでも伸びていくものである。

 

(……厄介な道具ですが、鎖を斬れば……!)

 

「おおっと」

 

 ギンガが狙いをトラッカーチェーンに向けた瞬間、ルギエルはチェーンを縮小させて手元にゲハバーン・レプリカを戻す。

 

「おいおい、ゲハバーンだけに意識がいってるぜぇ?」

 

 ルギエルは、ゲハバーン・レプリカに意識の大半を割いていたギンガの横腹に回し蹴りを入れ込んだ。

 

「「かは……っ!」」

「いいね、いい気分だ。さっきまでなんも当たらなくてイラついてたけど、ようやく当てられて気分がいい」

 

 ギンガイストワールやギンガトリニティは敵の攻撃を喰らわないことが前提の合体であり、合体時のダメージは通常よりも行動に支障をきたすものとなる。

 変身合体による消耗に加えて溜まっていくダメージによってギンガの動きは段々と悪くなっていく。

 故に、先程までは拮抗していたように見えた戦況も次第にルギエルの方に傾いていく。

 

「……いい加減飽きてきた。お前らの限界も見えたしな。そろそろ終わりにしようか。俺も必殺技ってやつをやってやろうかね。えっと……さっき食らったのはこうだったっけか?」

 

(……! あの構えは……!)

 

「名前は……そうだそうだ、『ギャラクティカネプテューンブレイク』っつったか。よっし、じゃあ行くぜ。『ギャラクティカネプテューンブレイク』!」

 

 ルギエルは、一度受けただけで、ギンガトリニティの必殺技『ギャラクティカネプテューンブレイク』を完全に模倣してみせた。

 

「「……『ギャラクティカネプテューンブレイク』ッ‼︎」」

 

 対するギンガも自身の必殺技で迎撃する。

 ギンガの持つ星晶剣銀牙とルギエルの持つゲハバーン・レプリカが正面からぶつかり合う

 そして。

 

「……終わりだな」

 

 ガキン、と金属が砕ける音が鳴り響く。

 

「「……ぁ」」

 

 星晶剣銀牙が。

 長い時の中、だだ一度も欠けることも朽ちることが無かった刃が。

 折れて、砕けて、散っていった。

 

 

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