紫の星を紡ぐ銀糸N   作:烊々

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14. 暗黒と虚無の女神

 

 

『女神でもねーのに、そんな小せえ身体ででけえモンスターを倒しちまうなんて、面白いやつだな、お前』

『………』

『お前、名前は? ……っておい! いきなり掴むんじゃねえ! おいやめろ! 口に入れようとすんな!』

『……うるさい。腹が減ってんだ』

『俺は食い物じゃねえぞ!』

『モンスターは殺すと消えるから食えない。この際食えればなんでもいい』

『おいやめろ! 食い物なら出してやるから!』

『なら食わないでやる』

『なんなんだこいつ……』 

 

(……けど、こいつ面白えな。人間が持ってるはずのシェアエネルギーを微塵も感じねえ。人よりシェアが劣る分身体が強えやつは何人も見てきたが、全くのゼロなのは初めてだ。まだガキだが、こいつを上手く使えば、世界をめちゃくちゃにできて楽しめそうだ……)

 

『おい』

『ん?』

『俺と一緒に来ないか? お前はこんな次元なんかで燻ってるやつじゃない。俺はそう思うんだ』

『……食い物をくれるなら行く』

『それなら俺がやるさ。じゃあ、交渉成立だな。俺はクロワール。お前は?』

『俺……? 俺には名前なんかない』

『あー、そういう感じか。まぁ、次元を旅していくうちに名乗りたい名前も見つかるさ』

 

 

 

 

 

 

 

 心ノ最深部。

 サーガの光は次元を超えてネプテューヌたち守護女神にバフをかけ、拮抗していたダークオレンジとの戦況は、一気に女神側が有利となった。

 そして遂に、

 

「必殺! 『烈破夢双絶掌』ッ!」

 

 オレンジハートによる最後の一撃が振り下ろされ、決着となった。

 ダークオレンジは断末魔を上げながら消えていき、先程までダークオレンジが存在していた真下の地面にくろめが苦しみながら這いつくばっていた。

 

「オレは……! オレは…………っ!」

 

(消えるのか……こんなところで……なにも為せぬまま……!)

 

 なんとか立ち上がれたものの、ネガティブエネルギーを練る体力はもう残っていない。タリの女神の力も失われ、次元融合を加速させることはもうできない。

 目の前の女神たちに消されることを待つだけの身であることを嫌でも理解していた。それどころか、女神たちが手を出さずとも自身のエネルギー体を維持できず消滅していく運命であった。

 

「【オレ】……」

「やめろ! 来るな……っ!」

 

 うずめがくろめの方へゆっくりと歩いていく。

 

「……【オレ】の罪は俺の罪だ。お前を一人にはしないさ、一緒に死んでやるよ。一人じゃ寂しいだろ? それに、俺は過去の女神だから俺に帰る場所なんてないしな」

 

 その表情は優しく穏やかなものだった。

 加えて、それはうずめの出した答えでもあった。天王星うずめという女神そのものが消えてなくなること、これこそが真の猛争事変の終息である、と。

 

「そんなの嫌です!」

 

 しかし、ネプギアがうずめの腕を掴み、その歩みを妨げる。

 

「私はまだうずめさんと一緒にいたい! うずめさんに死んでなんてほしくない! うずめさんの帰る場所ならあります! 私たちの帰る場所がうずめさんの帰る場所です! だから……死ぬなんて言わないでください……!」

 

 ポロポロと瞳から涙を流しながら、うずめの腕を掴んで離さない。

 

「うずめさん……行かないで……行かないでよぉ……」

「ぎあっち……」

 

 うずめも涙を漏らす。

 

「良いシーンだな」

 

 吐き捨てられた言葉にその場の全員が振り返る。

 声の主は心ノ最深部へと辿り着いたルギエルだった。

 

「天王星うずめは帰る場所を見つけて、暗黒星くろめは消えてなくなって、心次元編終了。ハッピーエンドか。感動的だな」

 

 身体中傷だらけで右腕も無い満身創痍のルギエルに対して、女神たちは手を出すことはできなかった。それどころか、敵であるルギエルを心配そうに見つめる者さえいた。

 

「気に入らねえ終わり方だ。だから、助けてやるよ、うずめちゃん」

「助けるって……そんなことより、どうしたんだよその傷!」

「ははっ、ごめんな、負けちまった。心配してくれんの? 嬉しいね」

「……そうか。オレも負けたよ。猛争モンスターも全滅した。オレたちの負けさ」

「諦めんなよ。まだだ」

「まだ……? オレはもう【俺】にシェアクリスタルの力を殆ど使われてしまった……タリの女神の力も今のオレには扱えない……もうオレたちにできることはない」

「いいや、方法はある。うずめちゃんに俺の命をやるよ。そうすれば、うずめちゃんはまだ戦える。そして、シェアクリスタルに依存する必要もなくなるさ」

「……! でも……そんなことをしたらキミが……!」

「良いさ。男ってのは馬鹿な生き物でな、惚れた女のためなら命なんて捨てれるんだよ」

 

 そう言ってルギエルは『インターセプトスフィア』の欠片を懐から取り出した。

 インターセプトスフィアには、女神の神格を封印するだけでなく、ある者の命を単位として形にし、他者に譲渡できるようになるという効果もある。

 

「さぁ、コンティニューといこうか、うずめちゃん。俺と君の二人で」

「オレが好きって本当だったのか……どうして……」

「さぁな。俺もよくわかんねーよ。でも、俺にとってはこれでいいのさ」

「ルギエル……」

 

 自らの命をインターセプトスフィアの欠片に込めていくルギエル。

 

「クロワール!」

『あ? なんだよ?』

「お前にも、色々世話になったな。あばよ」

『……あぁ。じゃーな』

 

 ルギエルは長い付き合いだったクロワールにも最期の挨拶をするのだった。

 

「……愛してるぜ、うずめちゃん」

 

 そう囁いてからくろめを抱きしめ、その命をくろめに渡して消えていった。

 そして、くろめは命と身体を取り戻した。

 

「……どうして、オレに命なんてくれたんだ」

 

 しかし、念願の命と身体を手にしても、くろめの表情は暗かった。

 

「そのせいで……憎しみ以外の感情を思い出してしまったじゃないか……! キミがいなくなってから、キミにそばにいて欲しいと思ったって……キミのことを想ったって、もう遅いのに‼︎」

 

 浮かべるのは悲哀。

 

「うああああああっ‼︎」

 

 その叫びと共に再びダークオレンジへと姿を変えるくろめ。

 

「まだやろうっての……?」

「私たちも力を使い果たしたってのに……!」

「……待って、様子がおかしいわ!」

 

 ダークオレンジはその場から動くことなく、ひび割れて崩れていっていた。

 

「何が起こっているの……?」

「見て! 何か出てくるわ!」

 

 そしてダークオレンジの中から、守護女神のような者が姿を顕す。

 

「あれは……黒い……オレンジハート……?」

「……変身完了。名前をつけるとするなら、ダークオレンジを超えた……『アークオレンジ』ってとこかな。感じるよ。暴力的なまでに満ちた生命力、これがキミの命か、ルギエル」

 

 そう言ってくろめが正面に手を翳すだけで、衝撃波が発生し、女神たちを弾き飛ばす。

 

「きゃあああっ!」

「なんて力……っ!」

「そうだ、これがオレの……オレたちの力。そして、オレこそが天王星うずめだ。【俺】の力も存在も返してもらう」

「どういうことだ……? ……うわっ!」

 

 くろめが創り出した黒いもやが実体を持ち、うずめを縛りつけ、くろめの方に引き寄せていく。

 

「ぐ……こんなもの……!」

「抵抗は無意味だ。【俺】の力も吸収し、オレは真の完全体となる!」

「うわぁあああっ!」

 

 黒いもやがうずめの全身を覆い、そのもやはくろめに吸収されていった。

 

「そんな……うずめさんが……吸収された……!」

「さて、本当の最後の戦いといこうか。まぁ、キミたちにはもう抵抗する体力も残ってなさそうだけど」

 

 力の殆どを使い果たした女神たちは、もう為す術もないと思われた。

 

「ネプテューヌ様ーーーーーーッ!」

 

 その時、ギンガが心ノ最深部に全力疾走で駆けつける。

 

「あの感じ……やはりルギエルはうずめ様に命を渡したようですね」

「そうだよ。ギンガには全部わかってるんだね」

「昔の私なら、同じことをしたかもしれませんから」

 

 言いながら、アークオレンジとなったくろめに目を向ける。

 

「これはまた良い姿になられましたね、うずめ様」

「皮肉じゃなくて本心で言ってそうだなキミは。そうだよ。これはオレがルギエルからもらった命で得た力さ」

「あの男は、本当にあなたを愛していたんですね」

「……そういうことになるのかな。キミのことだから無策でここに来たわけじゃないだろう?」

「そうですね」

「ならやると良い。キミたちが何をしようが、オレたちの力でその全てを踏み潰してあげるよ」

 

 くろめはギンガを見据えたままその場を動くことはなく、全ての思惑を正面から捩じ伏せる、という意志を示す。

 

「時間をいただいたので早速やりましょう、ネプテューヌ様。私がシェアクリスタルになってネプテューヌ様を強化いたします」

「……っ、ダメ! それだけはやっちゃダメ! それをしたらギンガは……っ!」

「ご安心を。いつまでもあなたを悲しませるだけの私ではありません」

「どういうこと?」

「命をかけて生成するのではく、私自身がシェアクリスタルに変身するのです。つまり、私が死ぬことはありません。戦闘が終われば元の姿に戻ります」

「嘘じゃないよね?」

「当然です。それに、私はまだ死にたくありません。あなたのお側にいたいので」

「……その感じなら嘘じゃないっぽいね。ならお願い!」

「かしこまりました!」

 

 ギンガは返事と共に、掌サイズのシェアクリスタル『ギャラクティカシェアクリスタル』に変身する。

 『ギャラクティカシェアクリスタル』、ギンガが半人半人工生命体から完全な人工生命体に生まれ変わったことにより可能となった変身であり、二度とネプテューヌを泣かせぬよう自身の命を賭けずともネプテューヌの力になれるように、というギンガの想いが込められたものである。

 

「行こう、ギンガ」

 

 ギャラクティカシェアクリスタルを手にしたネプテューヌは軽く口づけし、変身する。

 

(お姉ちゃんが、クリスタルだからってどさくさに紛れてギンガさんにキスした……! それにギンガさんと一緒に戦えてすごく嬉しそう……!)

 

 ネプテューヌは『ネクストパープルギャラクティカグリッター』への変身を果たした。

 シルエットは変わらないが、手足や装甲に銀色のラインが入り、通常のネクストフォームをも超えた力と輝きを放つ。

 

「最後の勝負ね、くろめ。いえ、『天王星うずめ』! 私とギンガの力、見せてあげるわ!」

「……プラネテューヌの今と未来を象徴するねぷっちと、プラネテューヌの過去を象徴するギンガ。良いね。ゲイムギョウ界を滅ぼす際にキミたちを消し去ることが、オレにとって大きな意味を持つことになる。行こうルギエル。オレのキミの二人で全て壊してやろう……!」

 

 

 

 

 




ルギエル プロフィール
身長 182㎝
髪の色 銀
好きな食べ物 生肉 ナス 
趣味 対女神武具収集、製作
特技 戦闘行為


対女神武具ランク
S ゲハバーン
A+ アブソリュートダガー
A インターセプトスフィア アンチクリスタル
A- 神骨刀 神討の小刀
Bトラッカーチェーン 神誅手裏剣


次回、心次元編最終回です。
最後だからってオリジナル変身体増えすぎだろなんだこれ。


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