澄んだ日の模擬戦
猛争事変の事故処理の全てが完了され、ゲイムギョウ界の平穏を取り戻されてから数ヶ月。
事変を乗り越え、更に成長したその力を試すため、ネプテューヌはギンガに戦闘訓練を頼んだのだった。
「こうしてあなたと戦うのも、心次元での戦い以来ですね、パープルハート様」
「……あの時のことは忘れてちょうだい」
喋りながら、武器を構える二人。
「剣、新しくしたのね」
「はい。あの剣は少し……使いづらくなってしまったので」
以前のギンガの愛剣『星晶剣銀牙』はルギエルとの戦いで砕かれたのち『創世剣サーガ』として生まれ変わった。
ギンガの願いを力に変えることができる創世剣サーガは、普段使いするにはあまりにも過ぎた力であったため、ゲイムギョウ界の平穏と安寧への祈りとして、歴代プラネテューヌの名が刻まれた例の石碑の横に刺して封印されているのである。
ギンガが今使用してる剣は『機械剣ネプテューヌ:Galaxtica Expansion』というもの。これは、パープルハートの武器を模して作られた『機械剣ネプテューヌ』を、イストワールが集めて分析したギンガの戦闘データをフィードバックし、ギンガ専用の新たな武器として作り上げたものであり、星晶剣銀牙以上にギンガにとって使い勝手が良くなっている。
「……そういえば、前はトゲトゲしてたのに、結局剣一本に戻ったの?」
「直しても直してもすぐに戦いで壊すからと、いーすんが作ってくれなくなりまして……」
「あら」
ギンガが度々使っていた『NPカタール』と『NPガンブレイド』は、予算の関係もあってイストワールに修復してもらうことができなかったようである。
「さて、始めましょうか」
「ええ、行くわよ! ……『32式エクスブレイド』!」
ネプテューヌは試合開始と同時に大技を放つ。
脆弱な相手ならば、これだけで勝負が決するほどの一撃。
「甘い……ッ!」
しかしギンガは、迫り来る32式エクスブレイドを、技も使わずに斬り砕いた。
「……ギンガ……あなた、前より強くなった?」
「そうですね……私は自身の限界には既に至ったものだと思っていました。しかし、どうやら私もまだまだ強くなれるらしいです」
別次元の同一体であり自身の"力"の極地とも言えるルギエルとの戦いが、ギンガに大きな影響を与えたようで、自身の力や限界を見つめ直す良い機会となっていたのだ。
「ネプテューヌ様もネプギア様も、今よりもっともっと強くなっていくでしょう。ですから、私ももっと強くなってみせます。あなた方と共に戦い続けるために」
「そう。良い心がけね……!」
言いながらギンガに接近して剣を振るうネプテューヌ。
STRもMOVも守護女神であるネプテューヌの方が上である。しかし、ギンガのAGIは守護女神をも凌駕するほど高く、また、彼の戦闘経験値から来る予測も合わせ、ネプテューヌの動きを先取りすることで、互角の戦いを繰り広げることを可能にしている。
(有効打は出す前に潰してくるし、適当なフェイントは看破される……思うように戦えないわね……)
(私も強くなれたとはいえ、パープルハート様も以前より強くなっていますね。なんとか食らいついていますが、気を抜いた瞬間に敗北してしまうでしょう……)
互いに得意な攻撃範囲であるものの、やりにくさを感じているようで、互いの剣を弾き合い、一旦距離を取る二人。
「『クロスコンビネーション』ッ!」
「『ギャラクティカエッジ』!」
そして、前進する勢いと共に技を繰り出す。
威力はクロスコンビネーションの方が上。しかし、ギャラクティカエッジの特筆すべきは威力ではなく技の出の速さ。ただでさえAGIの高いギンガから繰り出されるギャラクティカエッジは、技の初動が見えないほど。
威力が速度によって相殺され、先程の切り結びと同じように、互角のぶつかり合い…………
「あなたのその技、私がどれだけ見て来たと思ってるの?」
「……っ⁉︎」
…………のように見えたが、ネプテューヌはギャラクティカエッジの見えないはずの初動をきちんと捉えており、ギャラクティカエッジを受け切った後、クロスコンビネーションを通す。
「ぐぅぅっ!」
咄嗟に防御に徹し、ダメージを安く抑えたものの、均衡が崩れたことにより、ギンガは敗北を悟る。
「参りま……」
「何言ってるのよ? まだ全然動けるでしょう?」
「え?」
「せっかく身体が温まってきたのに、こんなところで降参されたらつまらないわ」
まさかの降参拒否にギンガは困惑していたが、ネプテューヌからしたら、女神にとって全力を振るえる機会は少ないため不完全燃焼で終わらせたくない、というのも無理もない話だった。
「というわけで、あなたにこれを贈呈しちゃうわ」
「これは……『ネプテューヌリング』……!」
「また作ったの。前のは壊れちゃったらしいからね」
ネプテューヌがギンガに渡したアイテムとは、『ネプテューヌリング』。
特異体質により女神の加護が受け取れないギンガのために、女神の加護がこもったアイテムを渡そうと、ネプテューヌとイストワールで開発したアイテム。
先の大戦にて、破損してしまっていたものを、ネプテューヌは作り直していたのである、
「酷い話よね〜。私がせっかくあげた指輪を私以外の女神の想いで壊しちゃうなんてね〜」
「うぐ……そ、それは……」
「冗談よ。さて、次はそれ付けて戦ってちょうだい。第二ラウンドよ」
「良いのですか……? おそらくこれを使用すれば、パープルハート様よりも強くなってしまいますよ……?」
「だから良いのよ。自分より強い相手と戦える機会なんてそうそう無いから、そういう意味でも楽しみだわ。それに、あなたの変身を直接見たことないから」
「かしこまりました。では……!」
ギンガはネプテューヌリングを起動し、貯められていた女神の加護を解放。
そして『ギンガネプテューヌ』へと変身した。
「なんか、少し私に似てるわね」
「あなたの加護ですので」
お互いに一息つき、武器を構え、仕切り直して再び剣を交える。
先程まではパワーが劣っていたギンガだが、変身によって底上げされたステータスは、女神であるパープルハートにも届くほど。
(……今までより疾く、重い! さっき『私より強い』って言っていたのを、ギンガにしては大きく出たと思ったけど……紛れもない事実だったようね……っ!)
「『魔粧・煉獄』ッ!」
「……っ」
掌から魔力の炎弾を解き放ち、ネプテューヌに向かって射出するギンガ。
「……『クロスコンビネーション』ッ!」
ギンガネプテューヌは、自身の技に加えてネプテューヌの技も使用可能になる。
魔法に意識を向けさせた隙に、一気に距離を詰めたギンガは、まず『クロスコンビネーション』でネプテューヌの防御を崩し。
「『デュエルエッジ』!」
空いたところに、重い一撃を叩き込んだ。
「ぐ……ぅっ」
「パープルハート様……」
「気遣いは要らないわ。今は勝負中よ」
「……はい」
今まではギンガ側が劣るステータスを、反射神経と経験からの予測によって埋めていた。
ならば、ギンガ側のステータスが劣らなくなれば戦況はどうなるか。
(このままでは、負けてしまうわね……っ!)
ギンガネプテューヌはパープルハートを圧倒していた。
(……けど! 楽しくて堪らない!)
しかし、不利な状況だというのに、ネプテューヌの表情は明るかった。
その理由は、先程ネプテューヌが言った『自分より強い相手と戦える機会なんてそうそう無い』ことに加え、もう一つある。
「ごめんなさいギンガ。私もう自分を抑えられないわ。ねぇ、良い……?」
「……私は構わないんですけど、いーすんになんて言われるか……」
ギンガはこれだけの発言からネプテューヌの意図を理解していた。
ネプテューヌは『ネクストフォーム』の使用許可を求めていたのだ。
先程のもう一つの理由とは、ネプテューヌはまだネクストフォームという本気を残していて、ギンガネプテューヌは自身の本気をぶつけるに相応しい相手だったこと。
しかし問題がある。ネクストフォームへの変身は、多大なシェアが消費されてしまう。ゲイムギョウ界の脅威に立ち向かうならまだしも、模擬戦で多大なシェアを消費してしまえば確実にイストワールから説教されることになるのだ。
「……後で一緒に謝ってくれる?」
「勿論」
「ありがとうギンガ。じゃあ……変身するわね!」
ギンガもギンガで、ギンガネプテューヌの全力で果たしてどれだけネクストフォームと戦えるかが気になっていた。
「『ネクストプログラム』、起動、変身完了。この姿になるのは久しぶりだわ」
「それだけ平和だったということです」
「さぁ、早く構え直して。時間が勿体ないわ」
「かしこまりました」
ネプテューヌがネクストパープルへ変身し、戦闘が再開される。
守護女神の極限進化、ネクストフォーム。
これまでのものとは隔絶された質の戦闘が繰り広げられる。
「『ギャラクティカエッジ』!」
様子見は必要なく、通常の斬撃ではダメージを与えられないと判断したギンガは、最初から技を使って攻め立てる。
「見えているわ」
しかし、ギンガの技は、ネプテューヌに容易く捌かれてしまった。
ネクストフォームは、単純にステータスが上昇するだけでなく、女神化している時以上に思考が澄んで、戦闘技量すら底上げされる。
「『テラ・ドライブ』」
「……っ、ぐぁっ!」
ネプテューヌにとっては小技程度のものでも、ギンガは避ける隙を見出せず、防ぐことしかできない。
最早ギンガネプテューヌですら、ついていくのが精一杯な程両者の力の差が開いてしまっていた。
(……だとしても! 女神様の本気を受け止めることができず、何が女神補佐官かっ!)
それでも尚、死に物狂いでネプテューヌに追い縋ろうとするギンガの姿は、更にネプテューヌを高揚させる。
「ギンガ、手加減できそうにないわ。耐えて」
「ええ、思い切りやってください」
「なら……行くわよ! 『クリティカルエッジ』‼︎」
ネクストパープルの刃が振り下ろされた。
ギンガはその一撃を避け切ることも防ぎ切ることもできないことも悟っていた。
「……っ⁉︎」
しかし、その刃がギンガを捉えることはなかった。
「これは……!」
ネプテューヌとギンガの間を、飛んできた"あるもの"が遮ったからだ。
「……全く、困った方々です」
ギンガはそれを見て、嬉しそうながらも呆れたような表情を見せる、
その"あるもの"とは、歴代の女神の加護が込められた希望の聖剣『創世剣サーガ』。
それがギンガの危機に反応し、勝手に飛んできて、ギンガの身を守っていた。
「ねぇギンガ」
「……はい」
「ちゃんと言っててくれない? 今のギンガの女神はこの私だって。あなたたちじゃなくて、こ・の・わ・た・しだって」
「次会ったら強く言っておきます、はい……」
ネプテューヌは頬を膨らませ、いじけたような口調で話す。
ネプテューヌ的には、過去の女神のギンガへの祈りがこもった創世剣サーガはあまり好きではないらしい。
「けど、今ので終わらなくて良かったわ。続けましょう。その剣に持ち替えても構わないから」
それはそうと、ギンガの更なるパワーアップを促す創世剣サーガの装備はもっと戦いたいネプテューヌにとっては好都合だった。
「かしこまりました」
こうして、二人の戦いは続いていった。
*
「はぁーっ、つっかれたーっ!」
「お疲れ様です。ネプテューヌ様」
長きにわたる模擬戦を終え、ゆっくり歩きながら教会に戻る二人。
「ギンガは疲れてないのー?」
「いえ、ガチで疲れてます。あんなに長時間戦ったのなんて久しぶりでしたので」
「わたしも猛争事変以来に全力を出したなぁ。けど、わたしたちが全力で戦わなくちゃいけないぐらいの大事件なんて、起こらなくていいもんね。ちょっと平和ボケするぐらいが丁度いいんだよ」
「そうですね。これからは、変わらず平和なゲイムギョウ界でいてほしいものです」
ようやく手に入れた平和がいつまでも続くことを祈りながら、笑い合う二人なのだった。
「……そういえばさ、その剣どうするの?」
ギンガが手に持っている創世剣サーガを指差してネプテューヌが言った。
「そうですねぇ……正直こんな簡単に飛んでこられるとゲイムギョウ界のバランス的にも良くないので、もう少し強めに封印した方がいいのかもしれません」
「そうしなよ」
「皆様には悪いのですが、これも今のゲイムギョウ界のためですから」
そうしてギンガは後日、石碑の前で「そんなに心配しなくていい」と祈りを込め、創世剣サーガを再度封印したのだった。
また、模擬戦でのシェア大量消費の件で、ネプテューヌとギンガは揃ってイストワールから説教されたとか。
……平和は続かなかった。
そう遠くない未来、ゲイムギョウ界には新たな危機が訪れることになる。
来るそれは"妹たち"の戦い。
絶望から希望の未来へ切り開く、女神による女神のための破壊と再生の物語。
その中で、彼は何を思い、どう戦うのか。
『紫の星を紡ぐ銀糸S』
シスターズvsシスターズをクリア後、多分連載開始。
完結から数ヶ月経ち、新作の話題を出しといてアレですけど、銀糸Nのあとがきを残そうと思います。
新作を書くにおいて、旧作で書き残したことをなくすためのものというのが一番の意味ですね。
ちなみに、自分のあとがきは後で見るに耐えなくなって消す可能性が高いので多分期間限定です。
・零次元編
謎を散りばめ違和感まみれの内容にすることで伏線を用意するという試みを初めてやりました。
その際、作者(私)が知っている情報、読者の皆様が把握しているであろう情報、キャラが把握している情報がごっちゃになってないかおそるおそる物語を書き続けていました。
零次元編の途中、ネプテューヌルートとネプギアルートに分かれる部分があるのですが、どちらのルートにもギンガを行かせたいという思いから分身魔法『ギャラクティカイリュージョン』が生まれました。これ自体は我ながらイカれながらも良いアイデア(自画自賛)だと思ったのですが、その際幼くなったギンガの発言を全てひらがなにしたのはマジで読みづらくて失敗だったと思います。この場でも謝罪します。ごめんね。
零次元編の最終戦、ダークメガミと化したマジェコンヌ戦で巨大戦を書くのが嫌になってしまったことも今となってはいい思い出です。マジでめんどくさいんですよ巨大戦。
最後の最後でこの物語のアナザー主人公であるルギエルが登場しました。彼については後に詳しく書きます。
・超次元編
大人ネプテューヌvsギンガ(ネプテューヌ)のマッチアップがしたかったので、ギンガがベールルートへ向かわせるのは確定事項でした。その際ギンガ不在のネプテューヌルート、ノワールルート、ブランルートではどう足掻いても原作との相違点を作れないと判断したため、原作通りにしてほぼカットすることになりましたが。
超次元編の名の通り、守護女神が活躍する章なので、ギンガネプテューヌお披露目以外ではギンガの活躍する場を上手く作れませんでした。零次元編ほど伏線を貼ることもできなかったため、ギンガネプテューヌ登場以外は全体的に割と地味な章になってしまったと思われます。
・心次元編
最終章、全ての清算です。
マジェコンヌ戦を経てようやく伏線回収ができて、胸の支えが取れたような気分でした。ネタばらしって気持ちいいぜ。
もうこれが最後なので、やりたいことを全て詰め込みました。シスシス発売決定したので最後ではなくなりましたが。
当たり前ですが、原作とは少し違った結末となりました。どうしても自分には作中でくろめとの決着をつけさせられなかったのです。くろめを敵として倒してしまってはギンガにとってハッピーエンドにならない。かといって、くろめとの和解はできない(強引にしたらキャラの解釈がズレる)わけで、撃破も和解もしないエンドになってしまいました。けど、自分はアレで良かったと思っています。誰だって自分の気持ちに即折り合いをつけることなんてできませんから。
・ルギエルについて
本編ラスボスであるくろめに対し、オリ主であるギンガのラスボスとして登場してもらいました。
本編キャラに配色しないレベルで大暴れしたりと、おそらくこの作品の評価に関わるレベルの劇薬だと思ってますし、このキャラのせいでこの作品が好きじゃなくなった人もいると思います。
傍若無人で平和と秩序と守護女神を嫌うギンガの対極をなすキャラとして設定しましたが、実を言うとギンガという存在の根は『悪』であり、ギンガという存在の本質はギンガではなくルギエルの方が近いのです。ギンガが女神と出会うことなくそのまま育つとルギエルみたいな感じになります。
そもそもギンガはキャラは善人ではありません。本質が『悪』な守護女神に仕えてるからかろうじて善側にいた男が、守護女神のその影響を受け世界の見方を変えて真の善側になる、というのがこの作品の一つのテーマなのです。
だからこそ、自身の真の(悪の)道を突き進んだルギエルこそ、ギンガにとってラスボスに相応しい存在となったわけです。
くろめに惹かれた理由は、自分と同じように『何も持っていない』からです。世界から見放された存在としてシンパシーを感じていたことや、それでも足掻きながら復讐という歪なやり方であっても世界と向き合うことをやめないくろめの健気さに、自信が失った『何か』を見出し、惹かれたわけです。
正直彼には死んでもらうつもりでしたが、くろめの結末をああいう感じにするために生き返りました。くろめにとって、どんな自分でも無条件で愛してくれる人がいる、という救いを与えるためみたいな感じです。大人ネプテューヌではどうしても善側に偏ってしまってそこらへん難しそうだったので。
ちなみに名前の由来はウルトラマンギンガのラスボス『ダークルギエル』からです。
・最終的な強さランク
サーガ
>アークオレンジ(うずめ吸収)≧ネクストパープルギャラクティカグリッター≧アークオレンジ
>ダークオレンジ、ルギエル(ゲハバーン装備)>暗黒星くろめ、四女神ネクストフォーム、ルギエル(対女神武具フル装備)
>真マジェコンヌ、ギンガネプテューヌ>四女神≧天王星うずめ>ギンガ、大人ネプテューヌ、マジェコンヌ≧候補生>アイエフ、コンパ
※銀糸Nではあまり出番のなかったゴールドサァドなどのキャラたちは除外、またギンガイストワール関係も除外
・最後に
ここまで読んでくれた方々へ、本当にありがとうございました。
次回作『紫の星を紡ぐ銀糸S』もよろしくお願いします。