パープルハート、パープルシスター、オレンジハートの3人はシェアリングフィールド内を飛び回りながらダークメガミを攻撃していく。
「『デルタスラッシュ』!」
パープルハートは斬撃が生み出したエネルギー波で敵を三角状に切り裂く新技でダークメガミから距離を取りつつも確実にダメージを与えていく。
(本当は最初にあの人に見せたかったんだけどね……)
「『M.P.B.L』!」
ダークメガミの意識がパープルハートに向いた隙をつき、パープルシスターは専用武器M.P.B.Lから照射ビームを放つ。
「(『咆哮夢叫』!) ほにゃああぁっ!」
それに続いてオレンジハートも自身の武器であるメガホンに声を入れ、そこから放たれる超音波を炸裂させる。
シェアリングフィールドにより、女神3人はパワーアップし、ダークメガミは弱体化している。決着は時間の問題であった。
「トドメはあなたに譲るわ、うずめ」
「ねぷっち……わかった! いくよ! 必殺! 『烈波夢双絶掌』!!」
超音波と打撃を織り交ぜたオレンジハートの必殺技。
「これで……終わり!」
最後の一撃が決まり、遂にダークメガミのダメージが限界を超え、消滅していく。
「やった……デカブツに勝てた! やったよ!」
「ええ、私たちの勝ちね」
「ほんと、ありがとう! ありがとうね、ねぷっち、ぎあっち!」
「礼には及ばないわ。それに……」
「マジェコンヌが残ってる……けど、向こうはギンガさんがいるからなんとかしてくれてるはずだよね」
「とりあえず、私たちも向かいましょう」
「うん! というわけで、シェアリングフィールド、解除ー!」
*
「消え去るがいい!」
マジェコンヌが魔法の衝撃波を放つ。
「……見切った!」
それを側転で回避しながら、カタールを二本射出。
「ふんっ!」
一本目は避けられ、二本目は槍で弾かれる。たが、関係ない。俺のカタールはオートで動かせる。飛んでいった二本のカタールを脳波制御で軌道を変え再びマジェコンヌに向けて飛ばす。
(なるほど……厄介な武器だ)
そのまま奴に突撃、俺とカタールで三方向から攻撃を仕掛ける……が、あいつそういえばビット兵器的なの前に使ってたから割と簡単に対応されそうだな。
「……くだらん!」
マジェコンヌはカタールを魔法陣の防壁でガードし、突っ込んできた俺を槍で弾き飛ばす。
「ちぃ……っ!」
以前からわかっていたことだが、このマジェコンヌはそれなりに強い。女神様に匹敵するほどのパワーとスピード、それに加え他人の技や能力をコピーできる力があり、女神様の技ですら使えやがる。
……というのが以前の話。見た感じ、今のこいつはそんな力に頼り切ってはいない。コピー能力で得たものよりも自身の得意とする戦い方の技量を伸ばしている。前までのこいつなら近接戦は俺の技量で圧倒できたけど、今は無理そうだな。
少し見直した。こいつ意外と鍛錬を積んでるんだな。
「やるじゃねえか。女神様の真似事をしていた頃よりも今のお前の方が俺は好きだぜ?」
「貴様にそう言われても何も嬉しくはない」
「照れるなよ、こっちまで恥ずかしくなる」
「誰が照れるか!」
……さて、無駄話はこの辺して、戦い方を変えよう。カタールとガンブレイドを連結させライフルモードに換装。
(武器が連結した……? ちっ、少し見ない間に変な武器を使うようになりおって!)
ライフルモードのビーム砲は主に四種類。通常のビーム砲、ビームマシンガン、大出力の照射ビーム、そして最後の一つは『ワイドカッタービーム』。ワイドカッタービームというのは、横幅のある刃状のビームを高弾速で射出するというもの。
そのワイドカッタービームを奴に向けて射出する。
「狙い撃つ!」
(避け……いや、見た目以上に範囲が広いと見た! ならば!)
マジェコンヌは槍に魔力を纏わせ、ビームを弾いて消滅させる。
「そんな小細工、私には通用せんぞ!」
そんなことはわかっている。簡単に捌かれるのは想定内。ライフルモードをから再びカタールを分離させ両手で持ち二刀流で斬りかかる。
(今度は二刀流か! こうも一瞬で戦い方が変えてくる……面倒だな)
カタールを振る途中で腕から離して飛ばし、空いた手でガンブレイドに持ち変え、ビームマシンガンを連射。
「くっ……!」
マジェコンヌは槍を両手で回し、円形の盾のようにしてそれらを防ぐ。そして防がれた瞬間にガンブレイドを腰部に装着し、魔力を練って魔法を叩き込む。
「『魔界粧・轟炎』!」
俺の愛弟子、あいちゃんの技。使い勝手の良い炎魔法だから、俺も使わさせてもらってるんだよな。
「効かんっ!」
マジェコンヌが俺の魔法を奴の魔法防壁で防いた瞬間を狙い、背中の剣を抜いて斬りかかる。
そうやって俺は一つの戦法が通じなくなれば即座に別の戦法に変えて畳みかける。そうすることで常に敵の不意をつけるから、ステータスで劣る相手にもある程度は有利に立ち回れる。
(相変わらず女神よりも面倒な戦い方をする男だ……ならば視界を奪うか!)
「闇に堕ちろ!」
そう言ってマジェコンヌが手を前に出すと、黒い霧のようなものが発生し、それが俺にまとわりついて視界を奪う。状態異常『暗闇』ってやつか。
「…………」
そして音で場所を悟られないために声すら出さない。流石に用心深いな。けど、お前がどんな動きで来るかなんて見えなくてもわかる。俺は他者の魂の輪郭を知覚できるから戦闘において視覚がなくても問題ない。たとえ暗闇の中でも、お前の行動は手に取るように見える。
「……そこだっ! 『ギャラクティカエッジ』!」
「なっ⁉︎ ぐぅぅぁっ!」
技が入ったという確かな感覚が腕から伝わる。そして、『暗闇』が晴れ、吹っ飛ぶマジェコンヌが目に入った。
しかし、マジェコンヌはよろめきながらもすぐに立ち上がる。
「くっ……専用のプロセッサユニットを装備していなくてもそれか……やはり強いな、貴様は」
「戦闘スタイルを変えたのもあるし、単純に身体もアップデートされたからな」
「ふっ、そうか」
「お前も随分と腕を上げたようだな」
「私も修行というやつをしてみたのさ」
「修行……」
……おかしい。かなりのダメージが入っているはずのマジェコンヌだが、その表情には一切の焦りがない。それどころか余裕の表情を崩すことはない。
「後二回」
そう言ってマジェコンヌは指を二本立てる。
「私は後二回変身することができる」
「変身……だと?」
「私なりの修行の成果というものだ。女神が普段の姿から変身して更にパワーアップするように、私も変身して更にパワーアップできるようになったのさ」
変身……余裕の表情の正体はそれか……!
「私の変身は、本格的に女神どもと戦闘する時のために取っておこうと思っていたんだがな。光栄に思うが良い、貴様の強さに敬意を表し、私の変身を見せてやろう……!」
マジェコンヌは禍々しいオーラを放ち始める。正直、変身してパワーアップされたらもう俺に勝ち目はなくなるだろう。
「女神様の変身の邪魔をするのは重罪だが、お前のは別だ。そんな余裕なんか与えるかよ」
「無駄だ。そんなこともあろうかと、変身中はバリアを展開できるようにしているのさ!」
「バリア……ね」
わかってねえな。今から俺がするのは攻撃じゃねえ。忘れたわけじゃねえだろ? 俺にも『アレ』が使えるってことを。まぁ余裕ぶっこいてるようだから、確実に引き摺り込めるだろう。
俺の
「はぁぁぁっ! 変し……」
「『シェアリングフィ……」
\ パリーーーン! /
俺たちがそれぞれの行動を始めた瞬間、女神様達とダークメガミを覆っていたオレンジハート様のシェアリングフィールドがひび割れて崩壊していく音がした。どうやら、向こうの戦いが終わったようだ。
「…………ちっ、ここまでのようだな」
それを見たマジェコンヌはそう言って変身を途中でやめる。俺も集中力が乱れたから、シェアリングフィールドが不発となる。
「興が削がれた。今回は退かせてもらおう」
「逃がすかよ、まだ聞きてえことが山ほどあるっつったろ」
「答える義理はない……今はな」
「あ?」
「ではさらばだ」
「っ! 待て!」
急いで追おうとするが、すぐにマジェコンヌはその場から消えた。
「……逃したか。まぁいいか。今は」
さっきまでマジェコンヌが立っていた場所を見つめながら立ち尽くしていると……
「ギンガ!」
……物凄い勢いでパープルハート様が飛んで来ました。
「申し訳ありませんパープルハート様。マジェコンヌに逃げられました。おそらく奴はあらかじめ魔法か何かで逃走経路を作っていたのでしょう」
「あなたが無事なら良いわ」
「あんな奴には負けませんよ。それよりも、ダークメガミを倒したようですね。お見事です」
「そうよ、私頑張ったわ。だから」
そう言ってパープルハート様が私に頭を向けてきます。
「パープルハート様、これは一体?」
「あら、言わなきゃわからない? 撫でて」
「はい?」
「二度も言わせないで頂戴。撫でて。ほら早く」
「わかりました……では」
「お姉ちゃーーん!」「ねぷっちー!」
私が手を伸ばそうとした瞬間、パープルシスター様とオレンジハート様がこちらに飛んで来ました。
「ギンガ、やっぱり今のなし」
「は、はい……」
「はぁ、せっかく急いで飛んで来たのに」
他の方には見られたくはない……ということですか。 私としてはせっかくパープルハート様を撫でられるチャンスが消えてしまい少し悲しいですね。
こうして、私たちはダークメガミを倒し、マジェコンヌを退け、
「よっしゃああああああ! ついにあのデカブツを倒したんだああああ‼︎」
といううずめ様の喜びの咆哮を聞いてから、 拠点へと戻り祝杯をあげるのでした。
*
それから数日後。
「ぐだぁー……」
「ぐだぁー……」
ネプテューヌ様とうずめ様は、前の戦いの疲れが取れていないようで、だらけきっていました。
「こら二人共。いつまでだらけているんだ? 少しは若者らしくシャキッとしないか」
そんな二人に説教をする海男さん。私はあまり女神様を叱りたくないので、海男さんがそうやって叱ってくれて助かっています。
「はぁ、全く今までの威勢はどこに行ったのやら……」
「まぁ、お二人ともとても頑張ってくれましたから……あば、あばばばば」
「ど、どうしたギンガ⁉︎」
「これって……!」
「知っているのかい、ぎあっち?」
これは、前にいーすんが別の次元のいーすんからの着信があった時と同じものです! そうか! 今の私は完全な人工生命体。次元を超えていーすんの着信を受けることができるのですね。それに気づくとは流石いーすん、我が相棒!
「ごごご心配なく海男さんんん。わわわ私の次元かからの通信ですのでで…………いーすん、私です」
『ギンガさん! ようやく繋がりました! ネプテューヌさんとネプギアさんは一緒ですか?』
「はい」
『そうですか、安心しました。それより、ギンガさんはもうわかっていると思いますが、あなたたちは今別の次元にいることがわかりました』
「わかっています。そして今からいーすんが帰り方を教えてくれることも」
『話が早くて助かります。以前、私と別の次元の私が世界を繋げるゲートを開いたことはご存知ですよね?』
「私といーすんでも開ける……ということですか?」
『はい。今から準備をするので、それが完了したらまた通信しますね』
「わかりました、では」
そう言って通話を終了します。
「ネプテューヌ様、ネプギア様」
「なにー?」 「何ですか?」
「なんか帰れそうです」
「ねぷ⁉︎ うーん、早く帰りたいと思ってたけど、いざ帰れるとなったらなんか名残惜しいよ」
「何言ってんだよ。帰れるうちに帰った方がいいに決まってるぜ、ねぷっち」
「うずめ……」
(……そっか、私たちが帰ったら、うずめさんはまた一人で戦うことになっちゃう……)
「何度も言うけど、本当にありがとうな。それにこの数日間、お前たちと一緒にいれて本当に楽しかったぜ」
「うずめさん……私たちと一緒に来ませんか?」
「ぎあっち……ふっ、ありがとう」
「じゃあ!」
「けど、それはできない。こんな世界だけど、俺たちの世界を捨てたくはないんだ」
「うずめさん……」
国を……世界を背負う者しての見事な覚悟。私はあなたのことを忘れません、天王星うずめ様。
「……あばばば、き来ましたか。もしもしいーすん」
『準備ができました』
「了解、早くて助かります。では」
『「ゲートを開きます!」』
そうすると、光の柱が出現し、私たちを包んでいきます。
「わたし、うずめのことは絶対に忘れない!」
「ああ、俺もねぷっちたちのことは絶対に忘れない!」
\ 大変だうずめさん! /
しかしその時、何やらとても焦った様子で、うずめ様のお仲間のモンスターたちがやってきました。
「……どうしたお前ら⁉︎」
\ この前のマジェコンヌとかいうおばさんがこっちに向かってきてるんだ! /
あいつ……っ! タイミング悪すぎだろ何なんだあいつマジでぶっ殺すぞ‼︎⁇
「見つけたぞ女神共!」
「くっ、もうこんなとこまで来やがったのか⁉︎」
「その光、どうやら貴様らは次元を超えて戻るつもりだな。貴様らを……特にギンガ、貴様を超次元に帰すわけにはいかん! 邪魔をさせてもらう!」
「させるかよ!」
「邪魔だ、死ね!」
「……っ⁉︎ うずめさん、危ない!」
「ネプギア⁉︎」 「ネプギア様⁉︎」
不味い! ゲートはそろそろ閉じて転送が開始されるというのに、ネプギア様が転送ゲートから出てしまいました! ネプギア様を残してこの次元を去るなど、女神補佐官として愚の骨頂! しかし、私が向こうに戻らないわけにもいかないのです! なぜなら、このゲートを開くのはイストワールに相当な負荷がかかっており、ゲート終了後に絶対イストワールはオーバーヒートしてダウンします。そんな時のためのイストワール修理パッチの場所は私しか知らないのです! くっ、ならば……この秘術を使うしかありませんね! (この間約0.01秒)
「『ギャラクティカイリュージョン』!」
ギャラクティカイリュージョン。それは、所謂『分身魔法』で、私が前の身体を捨て、完全な人工生命体となることで身につけた秘術です。これにより私は二人に分身し、片方はゲートから出てネプギア様と零次元に残り、もう片方はネプテューヌ様と共に超次元に戻ることにします。 (この間約0.01秒)
そして、ネプテューヌ様と一人の私はそのままゲートの光に包まれ超次元に帰還しました。
*
「わたし、超次元にとうちゃーっく! ……じゃなくて、色々と展開についていけないよ! ネプギアが零次元に残ったのもだけど、いきなりギンガが変なことやって分裂したことも衝撃だよ! ……あれ、ギンガ?」
私がギャラクティカイリュージョンをあまり使いたくない理由は二つ、一つは分身すると当然それぞれ戦闘力が半分になること。戦闘力が半減しても二人に増えることの利点も勿論ありますけど、単純に私がそうなりたくないという拘りです。
そしてもう一つ……二つの理由のうち、より嫌な方が……
「わたしはここです、ねぷてゅーぬさま」
「下から声……? それになんか舌足らず? …………ねぷぅ‼︎⁇」
分散することで半分になるのは戦闘力だけではありません。外見年齢も半分になってしまうのです。私の普段の外見年齢は二十歳ぐらいの青年なのですが、つまりその半分……
「ギンガが……ギンガがちっちゃくなっちゃったーーーーー‼︎⁇」
……そう、今の私は十歳ぐらいの見た目になってしまっているのです。