紫の星を紡ぐ銀糸N   作:烊々

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 零次元編は後一話か二話ぐらいで終わると思います。



06. 邂逅する運命

-零次元-

 

「馬鹿野郎ぎあっち! お前自分が何したかわかってんのか! せっかく帰れるチャンスだったんだぞ!」

「だとしても、あそこでうずめさんを見捨てるなんてできません! 見捨てるぐらいなら帰れなくたって……!」

「そんなの……申し訳なさすぎるだろうが……っ」

「うずめさま、ここはおちついてください。まずはこのじょうきょうをなんとかするのがさきです」

「「…………⁉︎ ぎ、ギンガ(さん)がちっちゃくなってる〜〜!?」」

 

 ……まぁ、当然驚かれますよね。しかしそれについて詳しく説明できる状況ではありません。

 

「はなしはあとです。まずは……」

「あぁ、この状況を打開することからだね、ギンガ」

「うみおさんはモンスターたちのひなんゆうどうをおねがいします」

「わかった。うずめと有事の際の合流先はあらかじめ決めてあるんだ。そこで後で落ち合おう」

「りょうかいです」

 

 とりあえず、海男さんとモンスターたちを離脱させられました。マジェコンヌはそれを気にも留めない様子ですね。

 

「……随分と可愛らしい姿になったではないか」

「だれのせいだと……!」

「まぁ、これはこれで『奴』が喜びそうだから良しとするか」

「やつ……?」

 

 気になるワードが出てきましたが、その詳細を聞く余裕はなさそうです。奴の口ぶりからすると、私たちを始末しに来たというよりは、私を元の次元に帰さないために急いで邪魔しに来た……と考えられます。この場所が捕捉されてしまった原因は、次元を繋げるゲートを開いた際に発生する光の柱が目立ちすぎたからでしょうね。

 

 ネプテューヌ様は帰ってしまいましたが、私が半分残ったので、半分は目的を果たしたことにしてこの場は帰ってくれると良いのですが……

 

「……まぁ、さすがにそんなつごうよくはいきませんよねぇ」

「何をぶつぶつ言っている?」

「まじぇこんぬ」

「なんだ?」

「このばはひいていたたげませんかね? あなたもわたしたちをしまつしにきたわけではなさそうですし」

「良いだろう…………とでも言うと思ったか。元々私の仕事はそこの女神の始末だ。お前をこの次元に残すことは急遽入った別件に過ぎない」

「ですよねー……」

 

 なら……やるしかなさそうですね。まずはこの次元に残していた武器を装着。普段の姿で装備するのに比べると少し重いですがこの程度なら問題ないでしょう。どうやら攻め込んできたのはマジェコンヌ一人で他にモンスターを引き連れては来なかった様子。

 

「やる気か? そんなザマで?」

 

 武器を構えた私に対し、マジェコンヌが嘲笑うように問いかけてきます。奴の変身とやらを考慮すると、力の底が知れないので数では有利だとしても、正面から戦いたくはありません。実を言うと、今の私にはシェアリングフィールドの使用が不可能なのです。分身にはこういうデメリットもあるんですよね。

 

 そしてうずめ様もシェアリングフィールドが使えないと思います。私のものよりもうずめ様のものは規模が大きい分必要なシェアエネルギーの桁が違いますので、前回の使用からまだ再び使えるほどのシェアエネルギーが溜まっていないのです。

 

 しかし、敵にそれを悟らせるわけにはいかないのでとりあえず今はイキリ散らかしておきましょう。

 

「それはこちらのせりふです。こちらにはわたしだけでなくめがみさまがふたりもいるんです。おまえひとりでかてるとでも?」

「そうだな、ぎあっちへの説教は後だ。まずは紫ババァをぶっ倒す!」

「は、はい! 説教……うぅ……」

 

(……わたしがなんとかうずめさまをせっとくしますからあんしんしてください)

「……ありがとう、ギンガさん」

 

 うずめ様とネプギア様が変身し、マジェコンヌと対峙します。私はその斜め後ろで構えます。女神様の盾となる時以外に、女神様の前に立つなど不敬ですので。

 

「さぁて、年貢の納め時ってやつだよ、おばさん!」

「それはどうかな? 私にも貴様らと同じように変身ができる。そうすれば貴様ら如き簡単に蹴散らすことができるのさ」

「ふっふーん! そんなハッタリ、うずめには通用しないよー!」

「ふん、ハッタリかどうか……見せてやろう……!」

 

(…………と言ったはいいものの、数日前の戦いでは失念していた、この男もしくはあの女神の『シェアリングフィールド』。変身という隙を晒せば、奴らにもフィールドの展開に充分な時間を与え、その範囲内へ引き摺り込まれることが確定する。たとえ変身してパワーアップしたとしても奴らのフィールド内で戦うとなると分が悪いだろう。とはいえ、あんな大技はそう易々と使えん筈、おそらく相当な量のシェアエネルギーが必要だ。……ならば、少し探ってみるとするか)

 

「そういえば、シェアリングフィールドとやらは使わんのか? あれを使えば変身した私にも有利に戦えると思うぞ?」

 

 やはりそれに気づきますか。そして我々の反応を見て行動を決めるつもりでしょうね。私は表情を崩さずに無視しますが、問題は……

 

「え⁉︎  えー、あー……つ、使えるけどぉ……? 余裕で使えちゃうけど……ええと……うん、お、温存してるんだよねーあえて!」

 

 くっ……! オレンジハート様、全然誤魔化せてなくてめっちゃ可愛いですね……! 正直に『使えない』と言わなかったとはいえ、あれではバレバレです! しょうがありません、私だけでもシェアリングフィールドが使える感を出しておきましょう。正直それがバレるのも時間の問題でしょうけど……

 

(……なるほど、今あの女神はフィールドの展開は不可能! そして問題はギンガの奴だが、奴は見た目通りにかなり弱体化していると見た。前のような覇気を感じられん。およそ普段の50%のスペックといったところだろう。そんな状態でシェアリングフィールドを使えるとは思えんし、使えたとしても大した効果ではないはずだ! ならば……)

 

 マジェコンヌのあの様子……もうバレたようです。我々に奴の変身への対抗策がないことを悟られましたか……っ! 

 

「くっくっく……女神ども! 見せてやろう……我が真の力を!」

 

 マジェコンヌはそう高らかに宣言し、禍々しきオーラを纏い、姿を変えていきます。

 

(奴らが何かする様子は見られない! 私の勝ちだな……!)

 

 そのオーラが消え、現れたのは人形ではなく巨大な異形のモンスター。なるほど、これがお前の変身ですか、マジェコンヌ。

 

「うげっ、きもっ⁉︎ ぎあっち、わたし、あいつとは戦いたくないかもー。触るのやだなー」

「え⁉︎ いきなり何を言い出すんですかうずめさん!」

「冗談だよ冗談。まぁ……キモいのは本当だけど」

 

 ……? 私的には中々良いフォルムだと思うんですけどね。どうやら私とオレンジハート様のセンスは違うようです。

 

「……ほぅ、なかなかいいへんしんじゃないですか。もしへんしんとかいいながらめがみかまのまねごとをしやがったらこんどこそぶっころすところでしたよ」

「くだらん強がりはよせ。今の貴様が私を殺すなど到底無理なことだ。いや、貴様らまとめてかかってきたとしても今の私には勝てん」

「ちっ……」

「女神諸共消え去るがいい!」

 

 そう言ってマジェコンヌの魔法攻撃を繰り出してきます。その範囲は広く、避けることができません。

 

「「きゃあああぁっ!」」

「ぐぅぅぅぅ……っ!」

 

 ……⁉︎ たった一発でこのダメージ……! 思った以上にマジェコンヌのパワーが上がっています……! 女神様と同等かそれ以上の強さです。私が半分にならなければなんとかなったかもしれませんが、今この状況では全滅する可能性すらあります……!

 

「嘘でしょ……」

「力が……入らない……」

 

 大剣モードを上手く盾に使った私はともかく、パープルシスター様もオレンジハート様も戦闘を継続するのが難しいほどのダメージを負ってしまった様子。こうなったら、私が命を懸けてネプギア様とうずめ様と海男さんたちが逃げる時間を稼ぐぐらいしか道はなさそうですね。この私が死んでももう半分の私が向こうの次元で生きているので完全に死ぬことはありません。小さい状態から戻れなくなってしまうのは嫌ですけどね……

 

「ぱーぷるしすたーさま」

「ダメです」

「わたしまだなにもいってませんよ?」

「一人で犠牲になるって言うつもりでしたよね? そんなのダメです!」

「しかし……」

「何か手があるはずです……何か……!」

「残念ながらそんなものなどない! さらばだ……!」

 

(『奴』には殺さんように言われたが……ここで殺しておく!)

 

 くそっ……ここまでか……っ! せめてパープルシスター様とオレンジハート様の盾になるしかありません! 私如きの肉壁で護れるかはわかりませんが…………!

 

 

 

 

 

「『レイジングラッシュ』!」

 

 

 

 

 

 マジェコンヌが攻撃する直前、その技名と共に振り下ろされた剣が炸裂し、土煙が舞います。

 

 いまの声は……まさか……!

 

「まだどんな状況かよくわからないけど、見た感じこっちが悪者って感じだよね!」

 

 ……土煙が晴れて姿を表したその人物は、やはりあの時のネプテューヌ様に似た女でした。この零次元に飛ばされていたようですね。

 

「…………ふむふむ」

 

 彼女は周りを見渡すと……

 

「うんうん、可愛い子の味方な私としてはやっぱりこっちの助太刀をするよ!」

 

 と言い、私たちの方に駆け寄り、パープルシスター様に声をかけます。

 

「ねえ、そこの桃色の髪の可愛い子」

「え、私ですか?」

「そうそう、私私。名前なんていうの?」

「え、えと、ネプギアです」

「わーっ! 名前にネプがつくなんて奇遇だね! 海王星のわたしとしてはセンチメンタリズムな運命を感じずにはいられないよ!」

「ネプ……?」

「あ、自己紹介が遅れてたね! わたしの名前はネプテューヌ! 何を隠そう、次元を股にかける通りすがりの昆虫ハンターだよ!」

 

「「「「……!」」」

 

 その名前を聞いて、私たちは衝撃を隠せませんでした。少し固まる私たちの様子を見て心配そうにネプテューヌ様が話しかけてきます。

 

「あれ……? わたし何か変なこと言っちゃった?」

 

 しかしそれと同時に納得もいきました。おそらくこの人は別の次元のネプテューヌ様なのでしょう。

 

 ……やっべぇ……私が仕えているネプテューヌ様とは別のネプテューヌ様とはいえ、殺……拘束してしまうところでした。

 

「んー、まぁいいや……おっ! あなたの腕についているその機械、かっこいいね!」

「カッコイイ⁉︎ これのカッコよさがわかるなんて、大きくてもねぷっちはわかってるねー!」

「ねぷっち? あはは、可愛いニックネームありがとー!」

 

 オレンジハート様とも一瞬で打ち解けるコミュ力……やはり、次元は違ってもネプテューヌ様はネプテューヌ様なのですね。

 

 しかし、このネプテューヌ様からはやはり女神様特有の気配を感じない……

 

「ん? 君、どこかで会ったことある……?」

「……いえ」

「君もなかなかカッコいい装備つけてるね。後で触ってもいい?」

「まぁ……かまいませんけど」

 

 どうやら私のことには気づいていない様子。外見年齢が半分になるという分身のデメリットが逆に活かされましたね。流石にネプテューヌ様といえど、自分を殺……拘束しようとした奴の味方にはなってくれなかったかもしれませんし。

 

「話は済んだか?」

「あれ? さっきので倒されてなかったんだ」

「ふん、あの程度の攻撃でやられると思うな」

「それに、わたしたちが話し終わるのを待っててくれてたんだね。見た目によらず優しいね!」

 

(ちっ……見た目は異なっていてもうざったいところはあの女神にそっくりだな。とはいえ、どうやらこの女は女神ではなさそうだな。女神特有の気配を感じない。私の計画を乱すような力は無さそうだし……有益な情報も持ってはいなさそうだな……ここで消しておくか)

 

「一人増えたところで無駄だ。貴様も死ぬがいい」

「あ、待って待って」

「……はぁ、調子が狂うな。少しだけだぞ?」

「ありがとね!」

 

 マジェコンヌの奴……やけに聞き分けが良いですね。それだけでなく、今までの奴の行動は違和感まみれなんですよね。何が狙いなんでしょうか……?

 

 『これ』も『あれ』の一環ということなのでしょうか.…?

 

「戦闘前の回復はRPGのお約束だからね! 今回は私の作った特製のネプビタンVⅡをプレゼントしちゃうよ!」

 

 そう言ってネプテューヌ様は私たちにえげつない色と匂いの液体が入った瓶を手渡してきました。良薬口に苦しというやつなのでしょう、ぐいっと飲み干します…………うん、不味い。

 

「……苦い」

「けどすごい……傷が癒えていく」

 

 オレンジハート様もパープルシスター様も全快し、再びマジェコンヌに対峙します。このネプテューヌ様の強さが未知数とはいえ、これならなんとかなりそうです。

 

「よし、それじゃあ張り切って、ボス戦いってみよー!」

 

 

 

 

 




 『ゲイムギョウ界こそこそ裏話』
・ギンガのメインウェポンの剣の名は「星晶剣・銀牙」。その昔、初代プラネテューヌの女神がギンガに贈ったもので、絶対に朽ちることのない(加工はできる)鉱石でできている女神用の武器以上の業物です。しかし、ギンガとイストワール以外の者には持つことすらできないという初代プラネテューヌの女神からの呪いともいえる加護がかかっています。
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