此処は誰も知らないとある基地。
そこに、幼いクロウはいた。当時クロウは海軍に所属していた。
親はいない。その代わり、親代わりはいた。いや、親代わりと言うより、兄貴分と言ったほうが良いだろう。
名をDr.カディル。彼を知る者は彼をこう呼ぶ。
歴史に乗せる事が出来ない天才化学者と。
「おう、兄貴。今日は何の実験してんだよ」
クロウは齢10歳にして少将と呼ばれる地位にいた。クロウは歴代きっての天才少年と言われる程の強者であった。
クロウは暇な時、よくこうしてカディルの所に行く。クロウがカディルの事を兄貴と呼ぶのには理由がある。
当時のクロウは自分と同じ天才と言われる男に興味を持ち、会いに行った。その時、見たのだ。
男の浪漫とも言えるもの。即ち
───巨大ロボットを。
その日から、クロウはカディルを兄貴と呼ぶようになった。
「ん〜?今回は何と!悪魔の実を食べた者がカナヅチにならない方法だ!」
「は?」
何て言ったこの天才は?と、クロウはそう思う。
悪魔の実と言われる者を食べたものは海で溺れてしまう。これは鉄則にして絶対。その事実を覆そうと言うのか。
「まぁ、失敗したんだかな!ハッハッハー!」
「当たり前だ、天才化学者。そう簡単に事実が覆って堪るか」
クロウは中指を立てて馬鹿にする。
「その代わり、悪魔の実の能力を手にいれ、かつ、海楼石などの弱点の効果を効かなくする改造人間は造れる理論は出来たがな!」
「んなにぃぃぃぃいいいいっ!?」
(覆す處か悪魔の実を馬鹿にしやがった!)
クロウの顔が驚愕に染まった事に満足したのかカディルは満足気に頷く。
「いやぁ、見つかったのは偶々なんだがな」
ラッキーラッキーと言いながら笑うカディル。
「ハァー、相変わらずだな。んで、実験はどうすんだよ?」
「したいんだけど、これには条件があるんだよ」
いやぁ、残念。と、カディルは呟く。
「へぇ、その条件ってのは?」
クロウがそう聞くとカディルが待ってました!と言わんばかりに顔を輝かせる。
「条件は三つ。一つ目は悪魔の実を食べた事のない者。二つ目は精神力の強い者」
クロウは此処でふと気づいた。
(あれ?俺当てはまってる)
クロウは悪魔の実など食べた事がない。精神力の方は一度、クロウを疎ましく思った海兵によってインペルダウンにぶち込まれた事がある。それによって鍛えられた。
「そして、最後は13歳から10歳までの男」
此処まで聞いてクロウは理解した。
「なぁ、もしかしてだが、俺に実験体になれって言ってる?」
「うん!」
取り敢えず、顔面をぶん殴っといた。
「イテテ、酷いなぁ。報酬はちゃんと弾むってのに」
その言葉に少し耳がピクッとなるクロウ。
「因みに報酬は?」
因みにを強調して言うクロウ。そして、その様子を見てまだまだ子供だなと、思うカディルは言う。
「クロウ君専用の武器」
そして、クロウはこう言った。
──やります。
カディルはニンマリと笑った。
クロウがカディルの実験体になって二年が過ぎた。クロウは見事に能力者となっていた。悪魔の実に当てはめて言うならば『オニオニの実』を食べた鬼人間と言える。
『オニオニの実』の能力は以下の通りだ。と言っても一つしか分からないのだが。
・色鬼
この色鬼と言う能力は、色から連想させる事象を起こす事が出来る能力だ。例えば赤、これから連想されるのは熱いとか炎とかだろう。
つまり、色鬼は熱を発生させたり、炎を出したりする事が出来るという訳だ。
この能力のお蔭でクロウは海軍大将までになった。二つ名は"紫鬼(シキ)のクロウ"。これは死期とかけられていた。
そして、クロウが海軍大将になってから更に三年後。とある事件により、クロウは海軍を辞め、犯罪者となった。