見て! 束ちゃんが踊っているよ   作:かわいいね

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明日やろうは馬鹿野郎だって友人に抓られました。


クラス代表決定戦

 ××月××日

 一組に箒がいた。

 一夏は昨日、クラスメイトの女の子と早速揉め事を起こしたらしい。

 我ら二組は平和そのものだ。

 とても静かで、お隣の騒ぎがよく聞こえてくる。

 

 昼には一夏たちが二組まで来たので、学食に行ってお昼を一緒に食べた。

 今日見た感じ、一夏はまだこうなった事を気にしてるっぽい。

 箒もせっかく久しぶりに会ったのに、嫌なタイミングで邪魔が入ったみたいな顔するのは勘弁して。

 なんだか、ギスギスしてるよなぁ……。

 

 英国の代表候補生と、一夏が勝負するって話。

 一夏は昔から直情的なところがあるから、つい売り言葉に買い言葉で話が勝負にもつれ込んでしまったんだろう。

 もう上級生にまで話が広まってるらしいし、試合の様子が生徒に公開されるとか、アリーナの観客席を予約制にするとかしないとか。

 結構大事になってきてるな、と。

 

 上級生が一夏に個人指導の話を持ち掛けていたものの、一切合切の面倒は箒が見るつもりなんだとか。

 お前たちは手を出してくれるな、って目が本気だったなあれ。

 もれなく僕までハブられちゃったし。

 僕も一夏の幼なじみだし、箒とは親戚関係なんですが……ま、いいや。

 

 そんなこんなで放課後、風の噂によると一夏は剣道場で箒にボッコボコにされたらしい。

 なんでまた剣道場? てか、ISどこ行ったの? 基礎知識のお勉強は? 疑問は尽きない……。

 

 ××月××日

 今日も二組は静かだった。

 多少視線は気になるものの……女子校のクラスに男子がひとり居るんだからこれは仕方ない。

 姉さんのお陰で授業にも難なくついていけてるし、慣れない環境で生活する上での、精神的な疲労もあまり感じていないからモーマンタイ。

 

 ただ、こないだまで姉さんたちと生活していたからだろうか。

 ちょっとだけ寂しくもあったりして……。

 これじゃあ姉さんに甘えん坊なんて言えないな。

 

 こっそり様子を見に行った感じ、一夏たちは昨日と変わらず剣道場でバチバチやってるっぽい。

 剣道の稽古を通して基礎的な動きを体に覚えさせておけば、IS戦でもある程度は有利に働きはするだろうけれども、それをぶっつけ本番でどこまで生かせるのやら……ちょっと心配だ。

 

 ××月××日

 さっきそこで千冬さんに会った。

 一夏のお姉さんが学園で教師をやってるって話は、姉さん経由で知ってたから驚かない。

 ただ、昔まだ千冬さんが道場の門下生だった頃は、たまに軽い世間話をするくらいあったけど。

 改めてああしてばったり鉢合わせたりすると、なんだか気まずいものがある。

 

 長い沈黙の後、千冬さんに姉さんの様子を訊かれたから、相変わらずですよと率直な意見を述べておいた。

 相変わらず泣き虫で、甘えん坊で、けれど人一倍頑張り屋で頼りになる、とても強い人だ。

 僕の中の姉さんは、昔からあまり変わっていない。

 そしたら千冬さんは額に手を当てて、そうか相変わらずかって渋い顔をした。

 

 変わらないって、そんなに悪い事なんだろうか。僕はそうは思わない。

 あれがたまらなく可愛いんじゃないですかって言ったら、すごく変な顔をされた。なんだか釈然としないな……。

 

 ××月××日

 夕飯の後に暇してたら、姉さんが電話をくれた。

 相変わらずの涙声で、何を言ってるのか飲み込むのに時間がかかったものの……どうやら姉さんもクロエも、一応元気でやっているらしい。

 まあ、当然といえば当然か。少し前までは姉さんたちも僕抜きで生活していたわけだし……してたんだよな?

 

 二人とも三食しっかり食べてるか、ちゃんと夜に寝てるか……心配だ。

 特に姉さんなんて飲まず食わず寝ずで案外やってけちゃう人だから、平気で三食抜いちゃうし睡眠だってとらないし……昔、僕が寝なかった時に子守唄なんて歌って寝かしつけようとしてくれたのはどこの誰だったんですかね。

 

 通話を切る前に、明日も電話していいか訊いてきたのは、意外にも姉さんではなくクロエだった。

 話せたのは就寝までの短い時間だったが、いい息抜きになった気がする。

 自分で思っていたよりも、ストレスがそこそこ溜まっていたのかもしれない。

 

 ……子守唄か。

 声を聞いたらなんだか僕も姉さんたちに会いたくなってきた。ちょっぴりホームシック。

 

 

 

 

 

 入学初日から早くも一週間が経って、月曜日。

 放課後、僕はIS学園の第三アリーナにいた。

 

 アリーナの観客席は僕を含めて、生徒でいっぱいになっている。

 なんといっても今日は、一夏がセシリア・オルコットさんとクラス代表の座を賭けて勝負する日。

 

 この春に入学してきた代表候補生の実力や、噂の男子生徒の勇姿を一目見てみたい……。

 そんな生徒たちの期待と熱気で、満員の観客席は盛り上がっているのだ。

 かくいう僕も幼なじみの初陣という事もあり、なるべく見届けてやりたいという気持ちがあった。

 

 まあ、ね。せっかくだし、これを機にスポーツができる友だちが身近にいる気分を味わってみたいじゃない。

 一夏が篠ノ之道場の門下生をやっていた頃は、まだそこまで僕らも仲良くなかったし、そもそも試合を見に行けなかったから。

 そういう意味だと、親戚なのに箒の試合も見た事なかったんだよな……。

 

 ちなみに姉さんが語る一夏の評価は、やっぱり男の子だよね〜ってあまり参考にならない。

 ただ、僕も一夏が逆境に強いのは知ってる。

 文化祭の追い込みとか、凄かったし。

 今回も結局、一夏は昨日まで剣道の稽古以外何もやってなかったみたいだから、そこからどう試合を運んでいくのかちょっと楽しみだ……楽しみなんだけど。

 

(一夏、遅いな……)

 

 開かないピット・ゲートに視線を向ける。

 もう試合開始なのに、一夏がまだ出てきていなかった。

 対戦相手のオルコットさんが既に入場して、ステージの中央でスタンバっているのに対し、一夏のいるAピット側ではまだ何の動きも見られない。

 周りの席から、どうしたんだろうと心配する声がひそひそと聞こえてくる。本当にどうしたんだろうね。

 

 ひょっとしたら準備が出来てないのかもしれない。

 というのも、どこかの研究機関から専用機が用意されるって一夏本人から聞いてはいるんだけど、それがいつ届けられるかもわからないって話なのだ。

 試合当日には間に合うって言ってたのが、まさかまだ届いていないんじゃ……。

 

「見て、織斑くんが出てきたよ!」

「本当だ!」

「うわー、織斑くんの専用機真っ白で綺麗!」

 

 と、思っていたらピット・ゲートを抜けて一夏が出てきた。

 飾り気のない純白の機体をまとい、ステージ中央へ向かって飛翔する。

 

「白……騎士……」

 

 ぱちり、瞬きをする。

 あれおかしいな。今、変なのが見えたような……。

 

 白騎士は十年前、僕を病院から連れ出した姉さんが見せてくれたISの長女。

 一夏のISとは、似ても似つかないはずなんだけど。

 

 首を傾げていると、試合開始のブザーが鳴った。

 対峙する真っ白い機体と、鮮やかな青色の機体。

 二人ともすぐに動く事はなく、何か会話をしている。

 

 どんな話をしているのか、観客席にいる僕らにはわからない。

 けれど、どうやらお互いに譲れない結果に終わったみたいだ。

 

 キュイン──ッ!

 

 オルコットさんが動く。

 瞬く間もなく閃光が走り、一夏の体を貫いた。

 二メートルを超す銃による、エネルギー弾の射撃。

 

 辛うじて回避しようと体を捻り、空中で姿勢制御を行う一夏だが、左肩の装甲を撃ち抜かれていた。

 ダメージの処理が行われ、電子掲示板に表示されている一夏のゲージが減る。

 

 ISには操縦者を守るバリアーがあって、ダメージを受けるとシールドエネルギーが消耗される。

 大抵の攻撃はバリアーが防いでくれるんだけど、さっきの一夏みたいに、バリアーを貫通する攻撃を受けると機体そのものにダメージが入ってしまう。

 このバリアーを貫通してしまう攻撃を受けてしまった時、特に当たり所が悪くて操縦者が死んでしまいかねない場合は、膨大なシールドエネルギーと引き換えにあらゆる攻撃を無効化する、絶対防御というISの能力が発動するんだって。

 

 ただ今回の場合は、攻撃がバリアーを貫通してダメージを受けてしまっても問題ないとシステムが判断したに違いない。

 バリアーによる防御を貫通したエネルギー弾は無効化されず、命中した左肩の装甲は吹き飛び破損した。

 

 先手を取ったオルコットさんは勢い付き、狙いの絞られた攻撃に次ぐ攻撃を一夏へと繰り出す。

 降り止まないレーザーの集中豪雨を前に、あっという間にシールドエネルギーを消耗していく一夏。

 ちなみにISの試合は、基本的に相手のシールドエネルギーを先に0にした方が勝ちというシンプルなルールだ。

 つまりこのままだと一夏は負ける。

 

(どうするのさ、一夏?)

 

 僕らが見守る中、ようやく攻勢に出ようとする一夏。

 オルコットさんの激しい攻撃を回避しつつ、専用機の拡張領域から呼び出したのは、

 

「……刀?」

 

 片刃の近接ブレード、たった一本だった。

 

 

 

 

 

 ××月××日

 今日は一夏とオルコットさんの試合。

 結果から書くと、一夏は負けた。

 

 オルコットさんが使う大型のレーザーライフルで序盤にかなり削られて、試合の途中に展開してきたビット兵器でもっと削られて……。

 さっすが、代表候補生に選ばれるだけあるなぁオルコットさんはって感じ。素直に尊敬。

 

 一夏の真っ白な専用機も格好イイけど、僕はオルコットさんの青い専用機の方が好きだ。

 でもどうして一夏は刀みたいなデザインのブレード、それも一本しか使わなかったんだろうか?

 

 オルコットさんは色々と出てたし、詰め寄られた時に切り札として使った隠し武器も格好よかった。あれはミサイルだな。ISにミサイルがいるのかどうかっていう疑問はさておき……。

 

 一応、ブレード一本でオルコットさんのビット兵器を撃破したり、形態移行から不意打ちをしてみたりと頑張ってたんだが……そこで発動したワンオフ・アビリティの仕様をイマイチ理解していなかったみたいで、あっという間にシールドエネルギーが尽きてしまった。

 

 ギューン、ギュイーン、バーン、ドーンッ──て。

 うおー、こっから逆転勝ちだぁ! みたいな、少年漫画なら完璧な流れだっただけに……本当に残念。

 観戦してた皆、何が起こったんだろうってぽかーんとしてたけど、あれって自滅じゃないかな。自滅でしょ。

 

 一夏が使った単一仕様能力なら僕も知ってる。

 姉さんが教えてくれたんだけど、あれは千冬さんが昔使っていた専用機のものだ。

 本来、別々の専用機が同じ単一仕様能力を発動させる事はないんだけど、どういうわけか一夏たちは姉弟で同じ能力が発動したらしい。

 

 ちなみに能力名は零落白夜。バリアーを無効化する攻撃、文字通りの必殺技。

 代わりにエネルギーをバカみたいに消耗するので、連続使用するとすぐガス欠になってしまう、名実共に諸刃の剣なのだ。

 つまり一夏は光の刃を垂れ流しにしてガス欠、試合終了という流れ……。

 

 まあこればっかりは仕方ない。ぶっつけ本番だったんだし、最適化も出来てない状態で戦ってたわけだし。

 結果的に不完全燃焼になってしまっただけで、試合運びや演出は最高だったと思う。

 

 特にあのミサイルで迎撃された時、そこからの形態移行、形勢逆転の流れは完璧だった。

 あの瞬間のアリーナの歓声といったらもう、これって世界大会の決勝戦だったかな? って感じだったし。

 

 一夏もオルコットさんも凄かった。

 勝ち負けとかもう、どうでもいいんじゃない。

 

 あ、駄目か。あれってクラス代表の座を賭けた試合だったんだよな……。

 

 ××月××日

 鈴が来た。




げえっ張飛!?
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