見て! 束ちゃんが踊っているよ   作:かわいいね

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クラス対抗戦

 クラス対抗戦初日の朝。いつもの制服に着替えた僕は、学園の正面ゲート前にいた。

 ちょっと早めに目が覚めたから、ご飯の前に朝の散歩。傍には同じくらいに起きた鈴もいる。二人して夜は早く寝たもんな。

 

「今日も晴れそうね。いい事だわ」

「そうだね」

 

 対抗戦初日だし、なんなら一回戦から出場する鈴だけど、『頑張って』とか『いよいよだね』とか。そういう特別感のある話はもう昨日までに沢山してるから、今朝は僕たち二人とも普通の会話を楽しんでいた。

 

「今度の休み、二人で買い物にでも行かない?」

「買い物?」

「アンタの服を見に行くの。ついでにあたしも新作チェックしとこうかな……」

 

 女の子は買い物好き。それは、鈴でも変わらない。

 転校してきた時に見た、大きなボストンバッグひとつでどこにでも行けるフットワークの軽さを誇る鈴は、買うよりも見るのが好きなタイプの女子だ。荷物は増えないからその分普通の子より楽だと思う。

 まあ、あくまで弾たちと見た映画の女の子から学んだ感想だけど。あれ、付き合わされてる男の子が可哀想になる勢いだったからな……。僕は幼なじみが鈴でよかった。

 

「服ならあるよ」

「……それ、いつも着てる上下黒のシャツとチノパンの事?」

「駄目?」

「ダメではないけど、ちょっとくらい冒険してもバチは当たらないはずよ」

 

 腕組みをして、片目を閉じながら僕を見る鈴。うーん、そういうものなのかな。

 でもあのセット、安いから気に入ってるんだよね。洗濯機に放り込んでちゃちゃっと洗えるし。

 

「じゃ、週末は買い物に決定って事でいい?」

「うん。楽しみにしてる」

「あたしもよ」

 

 そんなわけで週末の予定が決まった。

 それはクラス対抗戦初日の、朝の事だった。

 

 

 

 

 

 一回戦、一組『織斑一夏』対二組『凰鈴音』。

 開始から既に十分。試合は二組、鈴音の優勢で進行していた。

 

「よくかわすじゃない。あたしの衝撃砲《龍咆》は砲身も砲弾も目に見えないのが特徴なのに」

 

 仕切り直しとなったタイミングで、鈴音が感心した様子で一夏に語りかけた。

 実際その通りだった。甲龍(鈴音)の衝撃砲は、対戦相手である白式(一夏)をたしかに苦しめている。

 が、しかしそれ以上に、鈴音の操縦者としての能力が想像していたよりも遥かに高い。操縦者と機体が想像以上に噛み合っているのだ。

 武器の相性、機体の性能というカンタンな言葉では、決して片付けられない格差が二人の間にあった。

 

「鈴」

「……なによ?」

「本気で行くからな」

 

 そんな状況の中、折れる事なく覚悟を決めた表情を浮かべる一夏。

 絶望的な戦況だが、気持ちでは負けていない。相手を見据える瞳には、そんな熱い思いが込められていた。

 

「はっ、当然でしょ。ここで手を抜くなんて絶対に許さないわ。全力でかかって来なさい。その上で叩き潰してあげる……」

 

 両刃の青龍刀をバトンのように一回転させ、言葉通りに迎え撃つべく構え直す鈴音。

 不敵な笑みに妖艶さを滲ませ、幼い容姿からは想像もつかないほど大人びた雰囲気を漂わせる。

 

「あたしにはね、背負いたいものがあるの。今のままじゃまだ全然、頼りないかもしれない」

「ああ、よく知ってるぜ」

「そうね……それにきっとこれは、あたしたちの独りよがりな望みね」

 

 それはオープン・チャネルの通信を聞いている、対戦相手や教師にしか聞こえない告白。

 きっとアリーナのどこかで自分たちを見ている想い人へ抱く気持ち、その再確認。

 日を追う毎に高まる“してあげたい”、“やってあげたい”気持ちに果てはない。

 

「──けど、その願いのためにあたしは強くなる。何にも、誰にも負けないほど強くなる……!」

 

 同時に己への発破でもある独白は鈴音の心を確実に、しかし冷静さを見失わない程度に昂らせた。

 

「行くわよ! 今は雪夫が、あいつが見てるんだ……勝ち負け以前に、こんなところで無様は晒せないっ!!」

「それなら俺だって、あいつの前でダサいとこは見せられねえよな!!」

 

 鈴音が吼え、一夏が加速姿勢に入る。

 先に動いたのは意外にも一夏。ここ一週間で身につけた『瞬時加速』という加速テクニックを利用し、この技能を一夏が使える事をまだ知らない鈴音に奇襲を仕掛けたのだ。

 繰り出されるのはシールドを無効化する必殺の一撃、名は『零落白夜』。

 

「うおおおおっ!」

 

 鈴音に一夏の刃が届く、その瞬間、

 

 ズドオオオオンッッ──!!!

 

 突然、大きな衝撃がアリーナ全体を揺らした。

 

「な、何だ? 何が起こって……」

 

 困惑する一夏の目の前で、もくもくと濃い煙がたち上る。

 アリーナの遮断シールドを貫通し、“何か”がステージに飛び込んできた。

 

「雪夫……っ」

 

 煙の中に熱源、それは所属不明のIS。ISと同じ性質の遮断シールドを貫通する攻撃力を有した不明機が乱入してきたのだ。

 咄嗟にハイパーセンサーを使い、想い人の所在を探る鈴音。どう動くにしても彼の位置を知っておきたい。

 

『一夏、試合は中止よ。ピットに戻って早く!』

 

 同時に混乱する一夏へ、冷静にプライベート・チャネルを飛ばす。

 

「なっ──お前はどうするんだよ!?」

 

 返ってきたのはオープン・チャネルによる通信。一夏はプライベート・チャネルの開き方がわからなかったのだ。

 

「あたしがあれをどうにか──時間を稼ぐから、その間に逃げなさい!」

「逃げるって……。女を置いてそんな事できるか!」

「馬鹿、わからない事言わないの! アンタの方が弱いんだからしょうがないでしょうが!」

 

 ステージ中央から目を離さず、鈴が諭すように突き飛ばした物言いをする。

 

「別に、あたしも最後までやり合うつもりはないわよ。こんな異常事態、すぐに学園の先生たちがやってきて事態を──っ」

 

 途中、言葉を切った鈴が上空に緊急回避する。

 その直後、煙の中から空間にかけて熱線が走る。ビームの砲撃だ。

 

「思ったより出力が高い……っ。一夏、早く!」

 

 セシリアのレーザーライフルよりも破壊力のある攻撃……。

 ハイパーセンサーの解析結果を確認し、軽く歯軋りをした鈴音だが、すぐに体勢を立て直して衝撃砲を構える。

 

「アンタに何かあったら雪夫が悲しむでしょうが!」

「それは……! 来るぞ!」

「──ああっ、もう!」

 

 次の瞬間、煙を晴らすようにビームが連射され、所属不明のISがふわりと浮かび上がってきた。

 

「なんなんだ、こいつ……」

 

 姿を目視した一夏。不明機は手が異常に長く、そのシルエットはまさに異形のそれだった。

 まず『全身装甲』が目を引き、次にその大きさ、肩と頭が一体化し首のない上半身、各部オプションが歪さを演出している。

 

「お前、何者だよ」

「…………」

 

 一夏が呼びかけるが、当然ながら不明機は応答しない。

 警戒する二人を剥き出しのセンサーレンズに捉え、不気味に沈黙を貫く。

 

『織斑くん! 凰さん! 今すぐアリーナから脱出してください! すぐに先生たちがISで制圧に向かいます!』

 

 そう通信を入れたのは管制室にいる副担任の真耶だが、足止めを提案した鈴音よりも先に首を横に振ったのは一夏だった。

 

「──いや、先生が来るまで俺たちで食い止めます」

 

 鈴音の言葉を借りるわけではないが、時間を稼ぐ。

 シールドを突き破るほどの火力があるISが乱入してきたのだ。それこそ自分たちが相手をしなければ、観客席にいる人間──鈴音に言わせれば彼に被害が及ぶ可能性がある。そう判断しての返事だった。

 それに、一夏にはある思いもあった。

 

「鈴、俺に何かあったら雪夫が悲しむって言ったよな」

「……言ったけど。当然でしょ。つらい時も楽しい時も一緒にいた、幼なじみなのよ?」

「馬鹿だな。それ、お前も同じだぜ? 鈴に何かあったら、雪夫はきっと悲しむ。そんなの許せねぇよな?」

「それは……」

「──だから、俺はお前に背中を預ける。お前は俺に背中を預けろ」

 

 二人で仕留めるぞ。暗にそう言い、一夏は雪片を構える。

 

『だ、ダメですよ織斑くん!? 生徒さんにもしもの事があったら──』

 

 二人が続きを聞く事はなかった。不明機──敵ISの突進を回避し、横並びに位置取りをする。

 

「一夏、やると言ったからには最後まで付き合ってもらうわよ。あたしが衝撃砲で援護するから、合わせて突っ込みなさい。他に武器、ないんでしょ?」

「その通りだ。じゃあ、それでいくか」

 

 互いの武器の切っ先を当て、作戦通りに飛び出す。

 

 ドオオオオンッッ──!!!

 

「何がっ!!?」

「──っ雪夫!」

 

 落雷のような音と共に降り注いだのは、絶望。上空からアリーナ目掛けてビームの砲撃が落ちてきた。

 不明機は二人の目の前にいる。だが今の攻撃は、()()()()()()()()()()()()行われていた。

 つまり、それらが意味する事は、

 

「新手! それも数が多い!」

「あいつだけじゃなかったのか……!」

 

 ゆっくりと降りてくる複数の不明機。数は四、最初の機体を含めて五。

 いずれも似たようなデザインだが、中には一部形状の違う機体も混ざっている。

 一機でも厄介だというのに、まさかの増援……。

 

「鈴、一機抜けた!」

 

 一夏の焦った声が、鈴音の冷静さをかき乱す。

 

「こなくそ、どこへ……っ!?」

 

 咄嗟にハイパーセンサーを使って機影を追う鈴音だが、その行き先に目を疑った。

 さっき自分が確認した、雪夫の席がある位置だ。

 頭部が歪に肥大化した不明機が、気味の悪いレンズで雪夫をじっと見ていた。

 

「雪夫、雪夫がっ!」

「鈴、あぶねぇ!」

 

 意識がそちらに向いた瞬間、襲い来る光の砲弾。

 神がかり的な反応速度で回避する鈴音だが、既に平静を失いつつあった。寧ろ僅かにでも冷静な思考が出来ている方がすごい。

 

「やってくれるじゃない……。どこの誰だかは知らないけど、あいつを狙うなんて目だけは利くみたいね……」

 

 ふつふつと湧き上がる怒り、焦り。

 目の前の障害を排除しなければ──。そう考え、鈴音が鋭く切り込む。

 次の瞬間、

 

 ガギン゛ッッッ──!!

 

 鈴音の背後から物凄い勢いで黒い塊が飛来し、立ち塞がる不明機の内、一機を諸共吹き飛ばす。

 

「……何?」

 

 塊の正体は、あの頭でっかちな不明機だった。

 同士討ち? いや、違う。それでは直前の凄まじい質量が機体にぶつかるような音の説明がつかない。

 意識をめぐらせる鈴音。と、視線が止まる。

 その先にいたのは──

 

「あれは……」

 

 目を見張るような純白の全身装甲に、毒々しい真っ赤な光を放つライン。足がない、見る限り腕もない。

 

 巨大かつ、縦にスラリと伸びるボディ。

 広い胸のような部位に、単眼のレンズセンサーを備えた頭らしきユニット。

 

 肩の位置にはスラスターや砲口を備えた大きなバインダーがあり、ボディの両サイドを隠すように閉じている。腕がない。

 

 スカートのような装甲から生えた腰から下はミノムシのようで、改めてそれに足がない事を物語る。

 

 さらにその上から、花弁のようにも見えるがそんな可愛らしいものではない五機の巨大な非固定ユニットが、盾のようにゆっくりと旋回を続けている。

 

 全体的に、乱入してきた不明機らとはまた違うシルエット。

 しかしおおよそISとは思えない機体が、そこにはいた。









後書き


さくしゃはウソつきではないのです。まちがいをするだけなのです……。

鈴株が急上昇? 自給自足のためにヒロインにするって決めた以上、手を抜いたりはしないよ。可愛くて熱いヒロインだよ。そして贔屓してるから原作より強いよ。
束ちゃんには後で鈴ちゃん株を上げたぶん頑張ってもらうよ。部門別だからね。今はロリおかん部門のパート。

これを投稿した時点ではまだ感想の返信が終わってないと思われます。というか終わってないね、きっと。
皆さんの感想を待ちながら、前回の感想の返信をしていくので、なにとぞよろしくお願いします。

前回も沢山の感想と誤字報告、ありがとうございました。



最後に一言。

作者が好きなタイプのメカは次回発表します。
それか、感想の返信かですな。

……あ、これ一言じゃねぇや。
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