ヤンデレ真秀ちゃんに死ぬほど愛される日常 作:コントラポストは全てを解決する
幼い頃の記憶。未熟な子供の夢。ひらりひらり舞い落ちる幻想。そんな朧気に脳に残った過去の情報。俺は思い出を振り返る。あいつ──明石真秀との思い出を。
1番思い出に残ってるのはなんだろう。そうだな……年長の夏、真秀が両親と喧嘩して家出してきた時が鮮明で印象に残る思い出かな。
『まほろ……』
『まほ、どうしたの?こんな時間に……』
『いえでしてきた……』
『えっ』
涙で顔をぐしゃぐしゃにした真秀が、夜遅くに俺の家にやってきた。確か夜中の11時を回っていたと思う。家出と言っていたもんだが、俺と真秀の家は隣同士。近い。目と鼻の先だ。
俺は急いで真秀を家に入れ自分の部屋に招いた。真秀はその間ずっと俺の服の裾を掴んでいて可愛かったのを覚えてる。
それから真秀に事情を聞いたら両親が家事を手伝わせてくれないとかで言い合いになり、勢いで飛び出してきたと。幼女真秀ちゃんが包丁を握るにはいささか早いような気がしたが、真秀も女の子だから家事とかしたいよねと擁護した覚えがある。それからその場のノリで真秀を家に泊める事になり、狭い1人用布団に一緒に寝た。
その時だったかな、真秀が布団の中で不安そうに呟いてたんだ。
『まほろ……わたし、お家にかえれなくなったらどうしよう……』
『そしたら、うちにおいでよ。けっこんすればまほも家族だよ』
『……けっこん……してくれる……?』
『うん。するする。約束するよ』
『うん……約束……えへへ』
まあ、こんな約束をしたが、結局次の日に真秀が両親と仲直りして、そのまま何事もなかったかのように笑顔で明石ハウスに帰って行ったけど。やっぱり家族仲は睦まじいのが1番だよね。めでたしおひたし。
確か、この時期からだったかな。真秀が俺にベッタリになったの。
真秀は可愛いね。きっと、いつまでも一緒にいるんだろうな。
────
陽葉学園でDJ活動が流行ってるらしい。陽葉学園でというか、世界中で流行ってるらしい。乗るしかない、このビッグウェーブに。
まあ、かく言う俺も小一からずっと音楽&お絵描きを続け、ネットで多少イキれるほどには腕がついた。作詞作曲編曲描画DJパーリナイの日々。同じ姿勢で作業してるせいか、こないだヘルニア診断受けたね。まいってぃんぐ。
YouTubeチャンネル『泡沫まほろば』を開設して早3年と数ヶ月。俺、境まほろはそれなりの自由を桜花していた。
「まほろ、あんたまた資料レイヤーにラフ描いてるじゃない」
「やっべ。でも写真消してまた貼り直せばオッケー」
「手間がかかるじゃないの。あんたもいい加減クリスタ使ったら?アイビスじゃ限界があるでしょ」
「アイビスなめんなよ。クリスタには劣るけど豊富は機能がたくさん──」
「クリスタの透明色使いたいって言ってたのどこの誰よ」
「過去の俺がそんな事言ってたなー」
楽しい楽しいお昼休み、俺は同じクラス&席が隣で絵描き仲間の大鳴門むにとお絵描きを楽しんでいた。ちなみにむにはネットでオンリィという名を使いSNSをブイブイ言わせている。すごいよむにちゃんせんせー。
「あんたも機材さえ揃えればもっと光ると思うのに」
「資材ケチってどこまで行けるか見てみたいんだ」
「貧乏性ねー。スケブでもやったら?」
「俺に来るかなー」
YouTubeの広告収益でそこら辺のバイトよりかは稼いでいるが、何かと縛りを設けてこの世を楽しみたい俺。今までも必要なものを揃えずその場の勢いで何とかしてきた。アナログイラストはえんぴつ1本、デジタルはアイビス指描き。作曲編曲は誕生日に買ってもらった8000円の電子ピアノとお下がりパソコン&無料のDTMソフト。約8000円でここまで来た。十分すぎでは。
「そういえば、今日はあの子が来ないじゃない。えっと、あか……あかいし?だったかしら」
「あー、真秀?今日は放送部でDJ活動してる。そろそろ流れるんじゃないかな」
俺がそう言い終える頃、教室のスピーカーからお昼の校内放送が始まった。真秀は確か、DJ MASHでやってたっけ。小さい頃一緒に見たD4fesに感銘を受け、お互いにDJを目指した。真秀も着々と理想のDJ道を歩めてるようで安心である。
「DJねー。あたしも流行りに乗った方がいいのかしら」
「むには色彩とデザインセンス良いし、VJとかいいかもな」
「ぶいじぇー?」
「DJの音楽に合わせて、映像エフェクトかける人。何なら俺とやってみる?お試しでパフォーマンスしてみるとか」
「あ、あんたと?まあ、悪くない、わね……」
割と好感触だった。むにちゃんせんせーがステージデビューするのも近いかもしれない。その時は全力で追っかけをしよう。グッズ出るかな。
むにのライブデビュー日には寿司でも奢ろう。俺は机にお昼を出しながらそんな事を思った。真秀もDJを頑張ってることだし、校内放送に癒されながらご飯でも食べますかね。
『ねえねえ!その音楽あなたが流してるの!?』
『うえ!?誰?』
何やら放送室が荒れている。聞いた感じ凸られてると見た。真秀も大変だなぁ(他人事)
美味しいおにぎりを食べながら、俺は校内放送のトラブルをBGMに絵を描いた。
「まほろ、ご飯食べながら描かないの。行儀悪いでしょ」
「むにだってポテチ食べながら描いてることあるじゃん」
「う、うっさいわね!あたしは良いのよ」
「ポテチの方が重罪だと思いまーす」
そろそろむにがポテチの食いすぎで体重が増える時期だが、もし言ったら頑張って描いた線画のデータを消されてしまうのでお口はチャック。俺はご飯食べるので忙しい。
「ていうかあんた、またおにぎり2個だけじゃない。身体に良くないわよ」
「胃袋が小さくてこれしか入らないの。許してママ」
「誰がママよ」
小学校のあだ名が「がいこつ」と言われるほどにはやせ細ってる俺。ちなみに真秀に力負けする。可愛いね。いや仕方ないじゃん。食細い上に家に篭ってクリエイティブな作業してるんだから。筋肉なんてつくわけない。許してママ。
「むにはあれかい?健康的な美ボディーな男が好きなの?」
「あたしが好きなのは、そうね……一緒に絵を描いてくれて、あと付き合いの長い人がいいわ。見知らぬ男は嫌ね」
「俺も知らない女は嫌だなぁ」
俺が付き合うとしたら……そうだねー、やっぱ真秀かなー。多分真秀は忘れてると思うけど、小さい時に結婚する約束してるし。真秀を幸せにする人が現れなかったら俺が幸せにしなきゃね。
「……ていうか、むにのタイプの人、もろ俺じゃね?」
「は、はぁ!?べ、別にそんなんじゃないし!思い違いよ!」
「でも、絵描き仲間で付き合い長いじゃん俺たち。もしかして遠回しな告白だった?」
「こく──!?違うわよ!絶対に!…………まあ、でも……あんたがどうしてもって言うなら、付き合ってあげても良いけど……」
「最後なんて?」
むにが顔を赤くしてゴニョニョ言っている。たまにあるんだよ。むにのゴニョニョタイム。こうなったらそっとしておくのが1番なんだ。ここで話しかけると殴られる。俺はラーニングして賢くなってるからね。二度と同じ失敗は繰り返さない。
さてと、そろそろ真秀が放送を終えて帰ってくる時間だ。急いで弁当箱をしまって、スマホもポケットに入れて、真秀が来る準備をする。今日はどんな土産話をしてくれるだろうか。
「まほろー!」
「おー真秀ー──」
放送を終えた真秀が俺のいるクラスにやってきて、むぎゅっと俺を抱きしめる。うんうん。いい感じにおっぱいも育ってるな。
「まほろ聞いてよ、放送でさ、愛本りんくって人が凸って来てね」
「おうおう、全部聞いてたぞ。大変だったな」
「変わった子だったよ。スンスン」
「まあ、凸って来るぐらいだしな」
真秀は先程放送室であった事を俺に伝えると同時に、俺の匂いを嗅いでいた。なんだろう。臭うのだろうか。男子高校生は臭うらしいし、俺もシーブリーズくらいは買った方がいいだろうか。
「まほろ、大鳴門さんと密着してたでしょ」
「まあ、一緒にイラスト描いてたからな」
「まほろは私のものなんだよ?そうやってすぐ他の女の子とくっつくのはどうかと思うな」
「むににしかこういう事はしないよ。むには特別だから──」
「は?」
「!」
特別……ちょっと言い過ぎだろうか。いやでも、むにとは特別仲がいい。俺の言ったことは間違いではないはず。だからむにさんはそんな赤くならいで。真秀もそんな怖い顔しないで?可愛いお顔が台無しよ。
「私というものがありながら、浮気するんだ。へぇ〜」
「浮気……浮気?だってむにとは絵師仲間で他の人より断然仲良いから、特別になっちゃうのも仕方がなく──」
「まほろ、それ以上言い訳するなら、その口を私の口で塞ぐよ」
「キスしてくれるのうれぴー」
真秀とキスができるぞ。やったねたえちゃん家族が増えるよ。こんな公の場でなんて真秀も大胆だね。お兄さん緊張しちゃいますわ。
「真秀さんや、キスは好きな人とするもんですよ。俺にあげちゃ勿体ないと思いませんこと?」
「なんで?私はまほろが好きなんだよ?キスするのは当然じゃん」
「嬉しい冗談だ」
「冗談じゃないよ」
俺が好きなんて、真秀も物好きだね。でも、キスしても良いって言ってくれたのは嬉しかった。冗談だったとしても嬉しい。
「まあ、キスはおいおいするとして。むにちゃんせんせー、そろそろ再起動してくださいなー」
さっきから赤くなったままのむにをゆっさゆっさと揺すってみる。むにはまた1人でゴニョゴニョ言っていた。なぜまたこの状態に……真秀が魔法でもかけたのかな。激うまギャグ。
「まほろ、あたしが特別なんだ……」
「むにー?おーい?」
「はっ──!な、何まほろ。えっと何話してたっけ」
むにが再起動した。
「俺と真秀がキスするところだった」
「ハレンチよ!」
「ハレンチかもな」
「ハレンチじゃないよ!」
キスはハレンチかハレンチじゃないか。答えを求めるため我々はジャングルの奥地に向かった。ソフトならセーフ、ディープならアウトと言ったところだろうか。難しいね。
「むにもキスする?俺はウェルカムだぞ」
「は、はぁ!?き、きすなんて、あたしは別に……。でも、まほろがそこまで求めるなら──」
「ジ-」
「殺気……!?」
おうおうどうしたむにさんや。急に顔を青ざめさせて。真秀もそんな獲物を殺す目でむにを見ないの。
「大鳴門さん、まほろは私のものなんだよ。もしキスなんてしたら──わかるよね?」
「……まだ付き合ってないじゃない」
「へぇ、いい度胸だね」
「もしかしてなんか張り合っていらっしゃる?」
むにも真秀もお互いに火花を散らしている。スパーキング。何を巡って争ってるんだ。身体の闘争でアーマードコア新作の欲しさをアピールしているのか。俺はダイパリメイクが欲しい。でもあの時間は帰ってこない。
「大鳴門さんにはまほろが誰のものか教えてあげなきゃいけないようだね」
「別に、あたしにだってチャンスはあるでしょ。それに、まほろとずっと一緒にいながら何もしてこなかったあんたなんかに、あたし負けないから。べー!」
「なんだァ……テメェ……」
明石、キレた!止めよう(危機感)
「まあまあおふた方、争うのもそこら辺にして。争いは何も生まないんだよ。ここは2人仲良く手を取り合って──」
「まほろは私と大鳴門さん、どっちが好きなの?」
「え、なに急に。俺は真秀もむにも好きだよ?」
「まほろがどちらか選べば、争いは止むよ」
俺が争いのキーだったと。俺を巡って争ってたんだ。やめて!私のために争わないで!
「ちなみにむにを選ぶとどうなるの?」
「まほろを私の家に監禁して、私という存在を刻む込む」
「真秀を選ぶと?」
「そしたらあたしが泣くわよ。ここで」
「どっちもBADENDやんけ」
むにに泣かれるのは嫌だし、真秀の家に監禁されたら学校に通えなくなる……。真秀を幸せにするためにせめて高卒の資格は欲しい。
「俺は2人が好きということでこの話はお終い。むにー、お絵描きしようぜー」
「まほろ、逃がさないよ」
「あたしも、まほろがどっちか答え出すまではドローイングは遠慮するわ」
「おっほ、皆俺を殺したいようで」
逃げ道がねぇ。2人が俺を期待の眼差しで見てくる。いや、真秀に至っては瞳孔が開いて光がない眼差しだ。こっわ。おしっこチビりそう。誰か救いを。救済を。
「ねえ、まほろ、答えて。私と大鳴門さん、どっちが好き?」
「まほろ、ヘタレは嫌われるわよ?楽になった方が良いんじゃない?」
「ひぇ」
真秀が怖い。むにも怖くなった。別にどっちが好きでもいいじゃん。仮に、今むにが好きでもいつか真秀を好きになるかもしれないし、その逆だってある。もしかしたら第三勢力が俺の好感度をかっさらって行くかもしれない。そんな俺にどっちが好きかなんて答えるのは……。
『キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン』
あ、昼休み終了のチャイムだ!救われた!
「俺次移動教室だから!じゃあね!!!」
「あ、待てまほろ!逃げるな!」
「あたしも移動じゃない!真秀、話は放課後にね。じゃあね!」
次は生物Aで実験室に集まってウシガエルの解剖をやると先生が言っていたので、俺は教材を持ってダッシュで教室を出た(逃げた)
真秀には申し訳ないが、帰ったらいっぱい甘やかすので許して欲しい。優柔不断な男でごめんね。俺は昔からこういうやつなんだ。
次の生物Aの授業でかえるさんを解剖した。隣のむにの顔がずっと引きつってたのが面白かった。話は変わるが、カエル肉って鶏肉に味が似てるらしいね。ハイボールのツマミにしよう。