ヤンデレ真秀ちゃんに死ぬほど愛される日常 作:コントラポストは全てを解決する
「真秀ちゃん!まー君!私、パフォーマンスがしたい!」
それはなんの変哲もなく普通の天気だった昼休みに、唐突にりんくから告げられた。中庭に真秀と俺がりんくに呼び出されたかと思えば、いきなりそんな事を言われたのだ。
パフォーマンス。客の前で歌って踊ってDJプレイがしたいと。りんくもDJデビューする時が来たか。つまりこれからコントローラーを仕入れ曲をミックスし繋ぎ合わせ、観客を湧き上がらせると。
「いや、そんな急に言われても……曲とか会場とかの準備が……」
「これから俺たちで会場抑えに行く?いや、その前にりんくに曲の繋ぎ方教えなきゃな」
とうの昔にりんくの貝殻買収で懐柔されている俺たち。りんくの姿勢に反対する意思はなかった。真秀はだいぶ貝殻を支払われたらしく、りんくとかなり打ち解けている。
以前、盗聴で俺とりんくが婚約している事を突き止めていたのでどうなるかと冷や冷やしていたが、りんくが真秀を買収してくれたおかげで俺の不安も杞憂に終わっている。良かった良かった。
「とりあえず、ほら。このアプリでDJごっこしてみな」
「まー君、これなに?」
「DJコントローラーのゲームアプリ。+ボタンから曲を読み込んで、エフェクトかけたり次の曲に繋いだりするんだ。やってみんしゃい」
「分かった、やってみる!」
そうして、りんくが操作して曲で遊び始める。最初は適当な曲を繋いで遊んでいたが、次第にBPMが近い曲同士を合わせ始めたり、自分なりの盛り上がるタイミングでエフェクトをかけたりと、中々センスの良い遊びを見せてくれた。BPM合わせは完全に感覚でやってるようなのでちょっと不安だったが。
なるほど、りんくはリズム感が良いと。常人よりだいぶ優れている。これならちょっと指導すればすぐDJデビューできるだろう。
「よしよし、初めてでここまで出来たら上出来だ。じゃあ次は映像エフェクト作成体験版を──」
「ま、待ってまほろ。りんくにDJとVJ兼任させるつもり?」
「りんくがパフォーマンスするんだろ?だったらVJも教えとかなきゃ。場合によってはボーカルとダンスも全部やらせるけど。まあ、最悪ビデオは自動再生にすれば何とか」
「まほろ、この世界はまほろみたいにライブを全部1人で出来る人ばっかじゃないの。ここはDJとVJをそれぞれ集めてりんくにボーカルをやらせるべきだよ」
「なるほど」
やろうと思えばDJとボーカルとダンサーまでなら兼任できるが、ここはひとつ手心を加えてやれと、そういう事だろう。OK進ノ助、りんくに合う各パートの人材を探そう。
「じゃあとりあえず、DJは真秀ね」
「…………え?そこはまほろでしょ?まほろならVJだってできるし、ライブ経験もあるし……」
「バッカお前、女の子がライブするんだからメンバーも女の子じゃなきゃダメだろう。ピキピキだってガールズユニットなんだぞ。パクれパクれ」
「で、でも……」
「前にライブをしてみたいって言ってたじゃないか。あれは嘘だったのか?真秀がりんくとユニットを組まないのは勝手だ。だが真秀がDJをやらなかった場合、代わりにやるのは誰だと思う?」
「うっ……」
このまま万丈を犠牲にしてもええんか。りんくがDJをやったけど客を盛り上げられなくて傷ついてもええんか。真秀はもう答えを出しているはずだ。
「わ、分かった……やるよ……」
「よし、DJ確保。まあ、とりあえずVJは今度で良いか。DJがいれば大抵の事は何とかなるし。じゃあ、りんく。放課後にボーカルとダンスレッスンするからな。忘れるなよ」
「わかった!」
「よし、じゃあ今日は解散!俺、むにと絵を描く約束してるから。じゃ!」
りんくは音感良いし、指導に時間はかからないだろう。カバー曲使ってそれなりのダンスを覚えておけば大丈夫なはずだ。あとはりんくの歌唱力だが、音痴ではないと思う。元気の出るりんくの声で歌えば、会場が湧き上がる事間違いなし。
────
放課後ティータイム。りんくと真秀を音響室に集めて、りんくのレッスンを開始した。
「始めたは良いが、りんくはどの曲で歌いたいんだ?なんか好きな曲ある?」
「ミッキーマウスマーチ!」
「ライブがパレードになってしまうので別の曲に。ほら、チューチュートレインとかフォーチュンクッキーとか、そういうの」
「まー君のスマホに入ってたミラーガンRemixって言うのも好きだよ」
「あー、あれか。あれ系で攻めるなら気分上々とか良いかもな」
なるほど、りんくの好みがわかって来た。そういえば、今度のリミコンの課題曲が気分上々だったと放送部のリークで聞いたな。これはチャンスなのでは。真秀にリミコンを応募させ、それが入賞すれば良い宣伝になる。さらにそれをりんくに歌わせれば、りんくも自分に合う曲を歌えて上々だ。この波、乗るしかない。
「りんく、気分上々を歌えるようにしてくれ。ミラーガンRemixが好きなら気に入ると思う」
「わかった!」
「真秀、次のリミコンの課題曲が気分上々だから今からRemixしといてくれ。入賞できるぐらいの出来で頼む。それで宣伝するから」
「そ、そんな難しい事言われても……」
「もし入賞したら俺になにしても良い権利あげる」
「!!!……頑張るよ!」
何しても良いとか何されるかわかんないけど、まあ真秀なら一緒のお風呂とかで勘弁してくれるだろう。とりあえず真秀のやる気を出すことに成功した。これで準備が整ったぞ。
「りんく、曲はどうだった?」
「うん。好き!」
「ならこの曲で決まりだな。次はダンスだ。と言っても、俺もネットに上がってる基礎ステップぐらいしか知らないけど。一緒に新しい振り付けを考えよう」
「わかった!」
俺はスマホ回線を墓地に送りYouTubeを召喚。ダンス講座の動画を開く。検索復歴にブレイクダンスがあってりんくの顔が一瞬不安色になったが、そんなアクロバットな事はさせないので安心して欲しい。そもそも、りんくは運動得意?アフリカにいたから運動神経は良いか。じゃあまずはボックスステップからね。
よしよし、りんくはリズム感良いから粗方のステップは覚えた。あとはオリジナル振り付けとアドリブを使えるようになれば半人前ぐらいにはなれる。ちなみに俺は3分の1人前。
「よし、ダンスも良いだろう。あとはボーカルレッスンを詰めに詰めるぞ。ダンスが良くても歌がダメだとお客さんが帰って行っちゃうからな。まあ、さっきのりんくの歌を聞いた限りだと、そこまで時間はかからないはずだ。じゃあ、Aパートからもう1回な」
「わかった!」
りんくは歌唱力もよく音程を外すことは滅多にない。教えればそのまま吸収してくれる。こんなに教育してて楽しいのは真秀以来だ。
うーん、りんくと真秀のマネージャーになっちゃおうかな。誰かを支える喜びと楽しさに目覚めてしまったかもしれない。メンバー集めとか課題もまだあるし、それに真秀と一緒にいられる時間も増えるし、結構良い案かも。そうと決まれば名刺を作って本格的に活動できるようにしよう。いずれは校外活動も視野に入れて。なんてな。俺は外野だ。そんな手助けはしない。
りんくと真秀の作るユニットはどこまで行くかな。ピキピキを超えてくれたら俺泣くかも。サンセットステージ優勝……目指しちゃう?夢がトップガム並に膨らんじゃう。
「ふぅ……まあ、こんな感じで良いだろ。あとはさっき教えた自主トレをやってれば大丈夫なはずだ」
「うん!ありがとうまー君!」
「じゃあ、今日は一旦解散にしようか。真秀もそれで良い?」
「ああ、うん。平気。家帰ったらリミックスした曲のアドバイスが欲しいんだけど、大丈夫?」
「おうおう。オッケティング」
リミコンで入賞しなきゃいけないからな。本当は真秀1人の力でやらせたいんだけど、真秀にあんまりプレッシャーとか責任とか背負わせたくないし、ストレスで胃に穴が空いたりしたら嫌だし。俺もあんまり才能ある方じゃないけど手をかそう。入賞したら俺を自由にできる権利が手に入ると知って真秀は真剣だ。こちらも相応の態度で返さねば無作法というもの。
それから俺たちは家に帰り、真秀と一緒に徹夜で曲をリミックスした。エナドリ5本飲んだ。やばたん。
────────
そうして数日が経った頃のお昼放送、リミックスコンテストの結果発表日だった。
「うぅ、緊張するなぁ……」
「真秀の全力をぶつけたんだ。大丈夫ビッグジョーズ」
「真秀ちゃん自信持って!」
真秀がガチガチに固まっている。お弁当にも全然手をつけてない。相当緊張しているようだ。これはこれで胃に穴があくのでは。真秀はどの世界線にいても胃に穴開通ルートが待っていると。可哀想に。
『いやー今回のリミコンは凄腕揃いでびっくりしたよ〜。早速10位から、10位──『あげ☆ししゃも』』
10位、9位と順に行って、6位まで来た。まだ真秀の名前は呼ばれてない。ここまで中々の名曲揃いだったが、俺と真秀の愛の共同作業で作ったリミックスの方がつよつよだ。共同作業と言っても、俺はちょっとアドバイスしただけでほとんど真秀が作ったのだが。
『5位!実はこの子のリミックス、私のお気に入りになったんだ〜。それでは『DJ MASH!』気分上々!』
「「「!!!」」」
DJ MASH……これは真秀のDJ名だ。5位……5位か……。もっと上かと思ってたがまあ、入賞というミッションはクリアした。これで宣伝ができるぞ。
「まほろ……やった……やったよ私!」
「おう、おめでとさん。よく頑張ったな」
「うん……!」
「真秀ちゃんやったね!」
真秀の喜んだ顔可愛い。ああ、こうやって皆で切磋琢磨して何かを目指すって良いな。俺も世界線が違えば誰かとユニット組んでたのだろうか。絵はむにと描いてるが家に帰れば1人だし、音楽はずっと1人で作ってたし、誰かと作曲をするのも楽しいのかもしれない。
「さてと、掲示板にフライヤーは貼ったし。後は本番まで英気を養うだけだ。2人とも頑張れよ」
「……ねえ、まー君。やっぱりまー君も一緒に──」
「りんく。俺は泡沫まほろば、りんく達は未来輝く新人ユニット。2人は1歩を踏み出すんだ。俺がやるのは手助けだけ。交わってはいけない。それで良いんだ」
「でも……」
「はい、この話はお終い。じゃ、俺はむにをライブに誘って来るから。真秀とりんくはしっかり休むんだぞ」
りんくは俺も一緒にステージに立って欲しそうだったけど、俺は孤高のDJ泡沫まほろば。女の子ユニットに入るにはいささかビジュアルが足りない。あ〜おとこの娘になりて〜。
教室に戻ってからむにを誘った。返事はOKを貰えたが「ライブデートに誘ってくれるなんて嬉しいわ♪」ってお目目ハートにしてた。むにさん、変わっちゃったなぁ……。出会った頃はあんなにツンツンしてたのに。今じゃ完全に俺の彼氏ムーブキメて来るじゃん。断らない俺も俺なんだろうなぁ。
──────
放課後。むにを連れてライブフロアに来た。お昼の放送が効いたのか、フロアはいっぱいだった。うんうん、俺も頑張ってフライヤー作ったかいがあったよ。次回からはむにに作って貰おう。
『みんなー!こんにちはー!!!』
来てそうそうりんくの挨拶が始まった。さすがに衣装は作れなくて制服だけど、まあ、りんくも真秀も顔いいしごまかせるだろう。
うーん久々に客席スペースからステージを眺めるなぁ。りんくと真秀がキラキラして見える。バックスクリーンに流れるビデオがいい味出してるね。
「うんうん、さすが俺の真秀。輝いてる」
「後方彼氏面オタクやめなさいよ」
「俺は将来真秀の彼氏になるかもしれないオタクだぞ」
「まほろはあたしの彼氏でしょ」
「うーんこの俺の所有権をむにが握ってる現状、何とかしなければ」
むにさんは恋愛事になるとめっちゃ積極的になるからなー……。一旦麗辺りと付き合ってることにしてむにを説得するか(クズ男)。麗に迷惑がかかるからやめよう。
「ほら、りんくのライブデビューだぞ。りんくの幼なじみとして、新生りんくユニットVJ担当として、しっかり目に焼き付けて置くんだぞ」
「わかってる──りんくユニットのVJ担当?何よそれ、聞いてないんだけど」
「今初めて言ったからな。いやー、いい感じのVJ探したんだけどいなくてさー。むににしか頼めないんだよ。お願い」
「VJなんてやったことないわよ」
「絵描くよりかは簡単だよ。俺が短期習得コースでみっちりトライさんしてやるからな」
「……それって一日中まほろが一緒にいてくれるってこと?」
多分3日4日泊まり込みで教えることになる──そう伝えたらむにがVJをやると言ってくれた。良かった、これでVJ確保だ。泊まり込みと聞いてむにの目がギラついていたが、まあ大丈夫だろう。むにのことだからキスで止まってくれるはずだ。
『Hey DJ!──』
りんくの歌を聞きながらむにの交渉も終わり、俺はDJの真秀を見た。緊張して少しぎこちないが十分働けている。初めてのライブでここまで出来たなら上出来だ。花丸満点をあげよう。帰ったらいっぱい褒めてあげなきゃね。帰ったらで思い出したけど、俺に何してもいい権利って今日使われちゃうのかな。俺まだ心の準備ができてないんだけど。また既成事実作ろとか言われたらどうしよ。今度は絶対逃げられない気がする。さて、どうするか…………
…………
………………俺は会場の盛り上がりに一緒にノッて思考放棄した。ライブ楽しかった。まる。
──────
ライブが終わった。帰宅、圧倒的帰宅。はぁ、ライブって見る側も体力使うのね。程よく心地よい倦怠感だ。
「ん?りんくからLINEだ」
こないだ交換したりんくのLINEからメッセージが入って来ていた。内容は『パフォーマンス楽しかった!またやりたい!今度はまー君も一緒に!』と言った感じだ。りんくはどうしても俺とライブがやりたいらしい。まあ、奥の手抜け道として泡沫まほろばコラボという形でなら誰の反感も買わずに一緒にパフォーマンスができると思うけど。でもなんか百合の間に入るようで気分悪いんだよな。こればっかりは俺の感性の問題だ。
「『機会があったらやろうな』っと。さてと、ご飯食べるか。今日のご飯はカロリーメイトのニンニクカレー味〜」
りんくにメッセージを返した後、夕ご飯を食べた。ニンニクカレー味、悪くない。