ヤンデレ真秀ちゃんに死ぬほど愛される日常 作:コントラポストは全てを解決する
「まー君!メロディーの作り方教えて!」
「自分の本能の赴くままに楽器を弾き、それを録音して編集ソフトでまとめて曲にする。以上」
「それじゃわかんないよ〜!」
3泊4日VJむに講習も無事に終わり、ピキピキのサポーターとして校内校外を縦横無尽に駆け回る俺。そんな俺にりんくからメロの作り方を教えて欲しいと頼まれた。とうのりんくは教えても分からないの一点張り。俺の教え方が悪いのだろうか。
「まほろ、むににVJ教えた時みたいにもっと噛み砕いて説明してあげたら?」
「そう言われましても……。コード進行とか作曲のやり方本とかあるけど、それも楽器やDTMソフトを扱える前提でだな。未経験者にいきなり作曲を教えろと言われましても。野生の猿に芸を教えるみたいな話だぞ」
「私は猿じゃないよ!」
「ティオティオ島で猿と暮らしてたんだし、実質猿クラスタの一員なのでは」
真秀もりんくも俺の気持ちをわかってくれない。作曲はガチでムズいんだよ。俺も数年かけてやっとまともなメロディーが作れるようになったんだ。
「りんくにメロ作らせるより、作曲できる人を探した方が良いんじゃないかと俺は思うぞ」
「真秀ちゃん誰かいい人知ってるー?」
「私はまほろしか。まほろは?」
「まあ、いるっちゃいるが」
どこのユニットにも所属してなくて、作曲できそうで、りんくに見合うキュートなガールが1人いますが。
「まー君教えて!私交渉してくる!」
「いやー言いたいのは山々なんだが、あんまりりんく達に肩入れするとピキピキのエコヒイキ防止担当大臣から苦情来るしなー……」
「大丈夫!まー君が教えてくれた事はここだけの秘密にするから!そうすればえこひーき担当大臣さんにもバレないよ!」
「バレるんだなぁ、それが。向こうには盗聴盗撮俺の身辺調査のプロフェッショナルがいるから。もうさ、本来ならここにいるだけで罰則ものなんだ。りんく達に会うために許可貰うの大変だった……」
ほんと、絵空はラブリーレッスンとか言って子作り始めようとするわ、しのぶは作曲の手伝いとか言って俺の上に座りお尻を執拗に俺の股間に擦り付けてくるわ、由香はダンベル何キロ持てる?をしてくるわ、マジで癒しが響子とのボーカル練習ぐらいしかなかった。もうあそこに戻りたくない。むにの家とピキピキ各面づらの家を転々としてたからここ2週間家に帰れてないんだ。助けて。
「俺、響子と駆け落ちする。もう癖強集団ピーキーピーキーに耐えられる俺の肉体がない」
「駆け落ちするなら私としようよ。もしかしたら響子さんも内なるまほろへの想いを持ってるかもよ?まほろが食べられちゃったり」
「マイラブリーエンジェル響子がそんな真秀みたいな変態拗らせサイコパスなわけないだろ。響子は天使なんだ」
「へぇ……言うようになったじゃん。帰ったらまほろにイタズラしちゃおっかな」
「ひえ……」
性的搾取される……。うぅ……真秀の身体には興奮はするけど罪悪感がすごくて……。もっと真秀を大切にしたいのに……。
「そんな事より!まー君、おすすめの人教えて!」
「そういえばそんな話もしてたな。しゃあない、ちょっとだけ力を貸してやる。アポ取るから待ってろ」
スマホで麗に連絡する。『大事な話があるから音楽室に来てくれ』っと。返事は………おぉ、麗にしては大分早く返って来た。普通に返事はOKだ。何故か『大事な話とは……その……2人きりでですか?』って文があったが、とりあえず『違うよ。でも、麗も気になってることだと思う』と返しておき、俺は『後は会ってから』と会話を切りスマホをしまった。
「よし、アポ取れた。行くぞ。音楽室だ」
「わーい!ありがとまー君!」
「このツケはりんくの身体で支払って──」
「まほろ?」
「ひぇ……」
ほんの可愛いまほろちゃんジョーク。助けてむにママ。あ、むには教室で絵描いてるんだった。逃げ場がない。ぴえん。
──────
音楽室、到着。さあ、交渉を始めようか。
「まほろさん、こんにちは!」
「ああ、こんにちは。いきなり来てごめんね」
「いえいえ、まほろさんなら何時でもいらして大丈夫です」
「そう言って貰えるて嬉しいよ」
麗は相変わらず全身から癒しオーラが出ている。素晴らしい。パーフェクトだ。麗ちゃんせんせーはりんくユニットの癒し枠になるよ。
「それでまほろさん、大事な話って……」
「ああ、実はな──その前に、麗ってDJユニットに興味ある?」
「やってみたいとは何度か思いましたが、一緒にやる人を探すのが大変でしたのであんまり……」
「そっか。それはちょうど良かった」
麗もユニットに興味あり。それなら話が早い。
「麗、俺がメンバーを集めるからユニット組んでみないか?」
「そのメンバーというのは……」
「俺の後ろにいる2人。あとデザインセンスに長けた可愛い子が1人」
「片方は存じ上げませんが、その隣にいるのはまほろさんの幼なじみさんですよね……」
「私を見ながら嫌そうな顔するのやめてくれないかな。こっちだってまさか渡月さんが出て来るとは──」
「まーまー真秀、落ち着け」
また修羅場に入ってしまう。その前に俺が制御しなければ。頑張れ。俺もやればできるってとこ見せなきゃ。正直飛び火してきそうで怖いけど。ほんと、なんで皆俺が絡むと火花を散らし始めるんだ。俺は平穏を望んでると言うのに。
「麗、りんく達と一緒にユニット組んであげてくれないか?メロディー担当が見つからないんだ。頼む。必要なこととか全部俺に言ってくれれば片付けるから」
「その……私にできるでしょうか?」
「麗ならできる。そう信じてるから俺は麗を皆に紹介した」
麗には音楽の才がある。きっとりんく達の力になれるはずだ。皆、俺が絡まなきゃ完璧な女の子達。だから麗もできる。信じろ。
「…………ひとつ、条件を提示してもいいでしょうか」
「あ、給料制がいい?」
「いえ、そうではなく……。ただ、ちょっとしたお願い事に近いもので……」
「なんでも言って。麗のお願いなら全部聞くからさ」
「で、では……その……」
麗のお願いとはなんだろうか。ピアノコンクールに出てくれとかそういった類の願いか、カップラーメン1年分とかそういう……。麗がお金に困ってるところは見たことがないからお金絡みではないと思うけど。さてさて麗の願いとは──
「まほろさんの時間を私にください」
「ふぁっ」
「ふーん……渡月さんも越えちゃいけないラインを越えちゃったか」
「ま、真秀ちゃん落ち着いて……」
俺が、麗の彼氏……?そんな……いつから……。麗は恋愛事はからっきしだと思ってたのに。そんな素振り見せたことなかったじゃん。え、また修羅場?せめて真秀を退場させないと。
「麗さん、あの、俺の時間をくれとは」
「今日の放課後から明日の朝まで、まほろさんを私に貸してください」
「ああ、そういう……」
「だ、ダメでしたか?」
「まあ、それくらいなら」
要はただのお泊まり会だし。俺も麗にメンバー紹介とかしたかったからこの機会に済ませてしまおう。そうと決まれば放課後は即帰宅してお泊まりセット持って麗の家に行かなければ。とりあえず麗と作曲の相談でもしとくか。
「でも、俺が麗の家に泊まりに行くだけで良いのか?こんな機会なんだからもっと大きな願い事にした方が──」
「私にとっては十分大きな願い事ですから。それでいいんです」
「お泊まり会したかったなら言ってくれれば俺の家でしたのに」
「ほ、ほんとですか?じゃあ、機会があったら……ぜひ」
麗はそんなにお泊まり会がしたかったのか。そういうのに憧れてるのかな。
「じゃあ、これで一応交渉成立だな。俺もバッチしサポートするから。麗、よろしく」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「ほら、真秀もりんくも挨拶」
「不本意だけど、よろしく」
「よろしく!麗ちゃんせんせー!」
こうして、新メンバー加入交渉は成功に終わった。やれやれ、だいぶ手厚くサポートしちまったな。これは次ピキピキにあったら怒られてしまう。そろそろ胃に穴が空きそうだ。ほんま、真秀を連れて行けたらとっくに引っ越してるで。
────
放課後。俺は帰宅した後荷物をまとめて麗の家に来た。家を出る時真秀まで一緒に来ようとしたからびっくりしたよ。麗は多分、これからの不安とかを俺に夜通しで語りたいと思い家に呼んだんだと思う。だから、真秀がいたら話しにくいんじゃないかと俺は考えた。真秀はずっと「渡月さんはまほろを食べる気だよ」って言ってたが、麗が俺を襲うわけないだろと諭して置いてきた。麗はそんな性的なことする人じゃない。真秀や絵空じゃないんだし。
「まほろさん、いらっしゃいませ!」
「ああ、お邪魔します。麗の家に来るのは2回目だね」
インターホンを押して出てきた麗にお出迎えしてもらって、俺は家に上がった。やっぱり玄関広いな。俺の本家もこれくらい大きいのだろうか。
「麗のご両親に挨拶しなきゃ。随分静かだけど、寝てる?」
「母も父も仕事で明日のお昼まで帰って来ません。ですのでお気遣いなくくつろいでて大丈夫ですよ」
「そうなの?こないだ来た時もいなかったじゃん」
「多忙なんです。うちの両親」
「うちと同じだなー」
家に1人って寂しいよね。俺は真秀が来てくれるけど、麗はずっと1人。今日は俺が麗の寂しさを紛らわせられるように尽力しなければ。
「それにしても、麗の家っていいよね。懐かしい匂いがする」
「まほろさんならここに住んでも良いんですよ?」
「中々魅力的な提案」
麗の社交辞令は聞いた事がなかったので一瞬本気で言ってるのかと思ってしまった。俺が麗の家に永住するには、多分渡月家に嫁がなければならないよな。麗のお婿さんは魅力的だが、俺は真秀の婚約者なので。めんご。
「ここが私の部屋です。どうぞ」
「お邪魔しまーす」
麗の部屋に入ると、そこにはなんともシンプルイズベストな部屋があった。うわぁー、ものが少ねー。参考書とワークと活字とかならいっぱいある。お堅い部屋だ。俺みたいなチャラチャラしたやつが来ていい場所じゃない。そして1番目を引くのは、部屋の隅に畳まれて置いてある2組の布団。はて、この部屋は麗しか使わないはずでは。
「ねえ、麗。なんで布団が2組あるの?寝相悪くてひとつじゃ幅足りない系どすか?」
「片方はまほろさんの分ですが」
「……俺、この部屋で寝るの?」
「はい!」
うわ、いい笑顔。お友達が泊まる=一緒に寝るという考えで知識が止まっているのだろうか。俺が麗を襲う可能性を微塵のミジンコ程度も考えてない顔してる。いや、まさか麗はどさくさに紛れて俺を……まさかな。寂しいから一緒に寝て欲しいぐらいのものだろう。麗ったら可愛いんだから。
「まあ、麗だしな」
「私だって、やる時はやります」
「知ってる。麗は根性あるからな」
「そういうことではなく……」
麗は昔から両親に厳しく育てられた影響でだいぶ根気強い。俺も麗の根性にはだいぶ驚かされたものだ。でも、両親に厳しく育てられたせいで麗は自分を抑え込む……要は我慢をしてしまう癖ができてしまった。これからはそこを改善することを計画に入れなくては。DJは個性と個性のぶつかり合い。キャラが薄いとすぐ潰れてしまう。俺もキャラ薄いモブDJの引退を幾度となく見てきた。世知辛いね。
「さてと、せっかく2人きりだし。腹割って話そう。とりあえず、目標とかある」
「まほろさんの幼なじみさんに負けないことが目標です」
「お互い支え合いなおかつ競い合うのも成長の秘訣だ。良いと思うぞ」
なるほど。麗は真秀をライバル視してたのか。どうりでバチバチしてたわけだ。あれは俺が絡んだからじゃなかったんだな。まあ、麗の性格なら険悪なムードになることもないだろう。
「そういえばメンバー紹介してなかったな。まず、ユニットのリーダー的存在である愛本りんく。ボーカルだ。りんくがライブやりたいって言ったのがユニット結成の発端だよ」
「愛本さんとまほろさんはお友達なのですか?」
「あぁー……まあ、そんな感じ」
「怪しいです」
オウ、そんな顔しないでくれ。りんくとは何もないんだ。ただ、友達で幼なじみで婚約者なだけ。俺は何も悪くない。受け身でいたらこんな事態になっていただけだ。
「次に明石真秀。DJ担当。作った曲は真秀に頼むといい感じにMIXしてくれるよ。ライブデビューしてから校内での人気がDJ的にも女の子的にも高まって来てる。ヤバいですね」
「明石さんは可愛いですもんね」
「麗、なんで怒ってるの?」
「知りません」
ほっぺた膨らまして怒る人とか絶滅したと思ってたけど、ここにいた。原因はなんだ。ライバルの話したから嫌だった?ごめんて。許してクレメンス。
「つ、次に、大鳴門むに。絵が描ける。VJ担当だ。ちっこくて可愛いよ。意外と世話焼きなところがある。ちょっと臆病なところもあるから麗も支えてあげて欲しい」
「まほろさんとの関係は」
「俺との関係性情報いる?」
「1番大切です」
1番大切なのか……。まあ、マネージャーとユニットメンバーの信頼と交友関係は大切だよね。俺はマネージャーというよりちょっとちょっかいかけてる厄介者だけど。まあ、麗もメンバーに入ったし、活動が軌道に乗ったぐらいが俺の離れ時かな。
「私からもひとつ良いでしょうか」
「良いよ。なんでも聞いて」
「ライブってどんな感じなんですか?」
「まあ、端的に言えば演奏会だよ。自分の頑張りを客に見せて盛り上げるんだ。感覚的なことが多いから、実戦で経験してくれ。脳汁いっぱい出てくるよ」
ライブの楽しさは言葉じゃ表現できない。まじでライブやってる時は麻薬がいっぱい出て気持ちいいんだ。たまにアヘ顔晒してないか心配になる。
「もうひとつ良いですか?」
「おう。ドンと来い」
「──まほろさんは私たちの中で、誰が1番好きですか?」
「……うぇ?」
何その質問。え、麗って答えた方が良いやつ?キモがられたらどうしよう。無難にりんくを選んでおこうかな。それとも正直に真秀って言った方がいい?難しい質問すぎる。麗が傷つかない答えを教えて。
「ま、まあ、俺は全員が好きだよ。あんまり優劣はつけたくないし」
「では、まほろさんの1番になれるよう頑張りますね」
「お、おう。頑張って」
良かった。麗が傷いついた様子は見られない。答えを間違えたわけでは無さそうだ。俺の1番になってどうする気なんだろう。何もメリットがない気がする。うーん、わからん。
「まあ、麗もユニット参入に前向きでいてくれて助かったよ。麗がいなかったら、今頃りんくが不響のワルツを奏でてるところだった」
「まほろさんに頼まれましたので。でも、まほろさんが愛本さんのユニットに入ってあげた方が早かったのでは?」
「りんくが女の子だからさ、メンバーも女の子の方が安心してできるんじゃないかと思った。まあ結局は、俺が1人でやっていきたいって考えを優先しただけなんだけど」
「1人より2人、2人より3人の方が良いと思いますが……」
麗の言うこともご最もだが。しのぶにも誰かと一緒に何かをする喜びを学ばなかったのかとも言われたが。それでも俺は1人が良いんだ。孤独なシルエットは孤独だからこそ美しい。そういう様式美だと思う。
「俺は1人。それでいい。でも、麗達が安定軌道に乗るまではサポートするからさ。そういうことでお願い」
「安定軌道に乗った後はどうするんですか?」
「さあ、どうするかな」
バレない程度に退いて、俺は1人で出来る限界までチャレンジする。きっと、誰にも頼らずに頑張った人だけが見れる景色があるはずだ。俺はそれが見たい。ついでにこの機会に真秀の俺離れも視野に入れたいんだ。
「さ、俺がいつまで麗達に協力するかは置いておいて、麗の思ってることをもっと聞かせておくれ。不安とか何がしたいとか、色々あるだろう?」
「その前に夕ご飯にしませんか?母に頼んでお弁当を注文してもらったので」
「ああ、じゃあそうするとしよう」
もう6時半だ。俺が来るの遅かったからな。あんまり話せなかったな。ご飯の時に話せば良いか。夕ご飯ってなんだろう。麗の両親が弁当を頼んだらしいけど、カロリーメイトとかに変更できないかな。まあ、高い料理って量少ないし、俺でも食べれるだろ。
夕ご飯、高級料亭の出前弁当が出てきた。もう匂いがお上品だ。でも、量がちょっと多い。ギリギリ食べ切れるかぐらいの量だ。お残しは許されないので頑張って全部食べよう。
「テレビつけないの?」
「食事の時はつけません。家の決まりです」
「今日くらい大丈夫だろ。両親がいない時にはっちゃけるのも子供の仕事だよ」
「そんなお行儀の悪いこと……」
相変わらず麗はお堅いなぁ。ご飯中のテレビ禁止はアナログ時代の考えだ。捨てるべき文化だと思う。こんな大画面テレビを置いてるのに。使うべき時に使わないと宝の持ち腐れじゃないか。テレビつけちゃえ。
「おぉ、Photon Maidenとかいうユニットが歌流してる──……これ咲姫じゃね?こっちはノア先輩?そういえば芸能事務所に所属してるとか言ってたな。ふぁー、びっくり鈍器」
「お知り合いですか?」
「おう。俺の運命の人とそれを邪魔する人」
「まほろさんの運命の人!?」
そこまで驚く?運命の人って言っても恋愛的な意味はナッシングよ?
「そんな……幼なじみさんだけだと思ってたのに……」
「なぜ真秀の名が」
麗がとても焦った顔をしている。真秀だけとはどういう意味だろうか。ライバル増えた感じ?頑張ってね。チーム内ライバルも良いけど、チーム外ライバルも必要だとちょうど考えてたところだ。
「この卵焼き美味しいね」
「まほろさんを手に入れるには、一体どうすれば……。敵が多すぎる……」
「麗ー?」
麗が急にブツブツ話し出してしまった。これはかなり高度な計算をしてる顔だ。俺には分かる。でもなぜ今。ご飯食べようよ。
「まほろさん!」
「あい」
「私、負けませんから!」
「おう。応援してる」
ぜひライバル達を全員負かしててっぺんをとって欲しい。そうやってガムシャラに努力したやつだけが極の領域にたどり着けるんだ。俺も神経刺激されるライバルが欲しい。しのぶ辺りにライバル申請しようかな。
「まあ、ライバルをぶっ倒すのに1番有効なのは、相手にマウント取ることだよ。精神攻撃を仕掛けて皆をひるませるんだ」
「そのためにはまほろさんが必要です。力を貸してください」
「俺でマウント取れるの?」
真秀は行けるけど、真秀以外に通用する相手が見当たらない。しのぶと絵空はまあ、確実に効くと思うが。
「麗も意外と敵を抱え込んでいるんだねぇ。色々と」
「まほろさんが誰か1人を選んでくれれば戦いは終わるのですが」
「あー……俺、好きな人いないんだよねー」
「はぁ、なるほど。ならまだチャンスはありますね」
ほんと、早く真秀を好きな理由を見つけなくては。
「あ、そうだ。まほろさん、後でお風呂に案内しますね」
麗の家の風呂、絶対木製の風呂だと思う。それで大きいんだろうなぁ。人ん家のお風呂とか真秀とむにの家以外経験ない。ちなみに真秀もむにも俺が風呂入ってくると一緒に入ってくる。真秀は昔のノリだとして、むには完全に女を俺に意識させるためにやってる。怖いなー。
「ふぅ、ご馳走様でした。麗、美味しかったよ。ありがとう」
「い、いえ、私が用意した訳ではないので……。母に伝えておきます……」
さ、ご飯も食べたし風呂に入ろう。麗も食べ終わったようだ。どっちから先に入る?俺はどっちでも──
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──どうしてこうなった。
「まほろさん、痛くないですか?」
「あ、ああ、ちょうどいいよ」
「良かったです」
なぜ俺は麗と一緒に風呂に入っているんだ。おかしい。何故か既にお湯が張ってあって、脱衣所で服を脱いでたら麗も服を脱ぎ始めて、そのまま一緒に風呂に入って背中を流されてる。なんだか麗の勢いにも流されてる気がしてならない。え、いや、なんで?
「あの……麗?なんで俺たち一緒に風呂入ってるの?」
「まほろさん、明石さんとお風呂入りますよね」
「入るけど」
「つまり、そういうことです」
どういうことだってばよ。え、なに。麗も俺の幼なじみムーブかましたいってこと?これ以上幼なじみモドキが増えたら俺が幼なじみ好き疑惑をかけられてしまう。しのぶと絵空がムーブかまして来そうだな。あんなキャラ濃い幼なじみいらない。幼なじみは真秀で完成されてるんだ。
「では、次は前を洗いますね」
「前は自分で洗えるのです。麗は自分の体を洗ってなさいな」
「男根を見られるのがお嫌でしたか?」
「いや、そういう訳じゃ……いやそれもあるけど。麗にはまだ早い。お父さんそういうのには厳しいよ」
俺がそういうと、麗はムッとした表情をしながら俺の向かいに座ってきた。俺の身体を見ながら、恥ずかしがる様子もなく胸から洗い始める。いや、普通にダメだろ。こういうのは恋仲同士がやるべきだ。
「私だって、やればできるんです」
「やればできるのは俺も知ってる。でもやり方が違うと思うんだ」
「こうしないと勝てないのは明白です」
「他の道を探そうぜ。やっぱり麗にはまだ早いと思う」
麗は潔白純血であるべきだ。それも麗の魅力だと思う。いや、いつか麗にもそういう人ができて、初めてを捨てるんだろうけど、それまでこの魅力を守っててもいいんじゃないだろうか。
「まほろさんだって、明石さんと性交しようとしたじゃないですか」
「あれは不可抗力でな?俺はただベッドに寝そべってただけなんだ。全部真秀が終わらせようとして」
「では、私もそうしますね」
「麗にそういうのは似合わないであります」
麗の手が俺のちんこに伸びた。やめて。麗までそっち側に行かないで。俺の癒しが。何が麗をそこまでさせるの。真秀に勝ちたい気持ちはわかるが、こんな下のとこまで張り合わなくても。
「……まほろさんも、私を傷物扱いするんですか?」
「いや、傷物というか、俺は麗とするなら由緒正しくお付き合いしてその後にしたいなって。順序は守ろう?」
「明石さんには襲われたのに?」
「未遂だから」
やめてよ。俺が情けない男みたいじゃないか。
「まほろさんに満足いただけるよう精一杯ご奉仕します。だから、私にまほろさんの初めてをください」
「そんなこと急に言われても……。告白とかデートとかキスとか色々やらなきゃいけないことが」
「私はまほろさんを慕っております」
「もしかして告白デートetcをここで終わらせようとしてる?」
そんなウルトラ超特急で進められても俺がついていけない。もっとこう手心と真心を込めて欲しい。俺は順序に厳しいんだ。真秀に襲われかけたけどさ。
「どうしてもまほろさんは私と性交をしてくれないんですか?」
「今はできない」
「私の魅力不足ですか?」
「いや、俺の心の問題。ほら、俺チキンハートだから」
ヘタレ魂は今なお健在。これが他の男だったらかっこよく抱いてあげるんだろうな。でも俺は好きでもない女の子を抱けるほどできた心を持っていない。抱きたい女の子も、好きな女の子もいない。真秀がいなかったらきっと枯れていただろう。
「……わかりました。今は諦めます」
「ありがとう。わかってくれて嬉しい」
「その代わりと言ってはなんですが、少しの間目を閉じて貰ってもいいでしょうか?」
「?……それくらいなら別にいいけど。はい」
俺は目を瞑ってじっとしていた。何するんだろう。お風呂で目を閉じるのは頭からシャワーを浴びる時だが、これから俺の頭を洗ってくれるのだろうか。いいね。そういう思い出作りは大切だよ。俺は小さい頃から1人でお風呂入ってたから記憶にある限りじゃ家族とお風呂に入ったことない。だから頭を洗ってもらうって言うのは新鮮。さあ、ドンと来い。まだかな。まだかな。
「──ちゅっ……」
おぉっと。
「……麗さん、何してるので?」
「接吻……というものをしてみました」
「なぜに」
「私はまほろさんをお慕えしてると言ったじゃないですか」
「あー……本気だったんだ」
「私はいつだって本気です」
薄々、一緒にお風呂に入ったぐらいから気づいたが、どうやら麗は俺のことを好意的に見ているらしい。むにとかしのぶタイプだったか。一体いつから。今までそんな素振り見せなかったじゃないか。
「告白はしました。接吻もしました。あとはお出かけをすればまほろさんの言っていた順序は満たしたことになります」
「それは俺が麗を好きになった後にすることだぞ」
「ではここで、麗が好きだと言ってください」
「そこに愛はあるんか?」
そんな口先だけで思いを伝えたところでそれは薄っぺらい皮と同じ。天ぷらの衣みたいなものだ。皮だけあっても意味が無い。中身がないと。
「まほろさんが今ここで私に告白してもらわないと、私はまほろさんに乱暴をしなくてはいけなくなります」
「具体的には」
「無理やり惚れ薬を飲ませます。最も効果が強いものを。その後既成事実を作るつもりです」
「エッチはさっき諦めてくれたんじゃないの?それに、そこまでして手に入るのが俺みたいなやつだぞ?やめとけ。麗には許嫁とかそういう高貴な相手が似合うと思う」
許嫁……許嫁かぁ。
「親が勝手に決めた相手と結婚なんて絶対嫌です。まほろさんには分からないと思いますが、許嫁って子供の間では不評なんですよ?」
「分かる。分かるよ。分かりみが深すぎてマリアナ海溝だわ。俺にもいるもん、許嫁」
「………………今、なんと?」
「分かりみが深すぎてマリアナ海溝」
「その後です」
「許嫁がいる」
ほんとね、いきなり現れて俺と真秀の間を掻き乱したロリコンに好かれるロリが来てさ、俺もびっくりだよ。俺は真秀と結婚したいのに両親はほんと勝手なんだから。プレゼントは相手の欲しいものを選べって義務教育で習わなかったのだろうか。
「まほろさん、私と婚約してください」
「急にどうした」
「敵が多すぎるので、少し牽制をと思いまして」
「婚約は真秀としてるのでちょっと」
「仕方ありません。惚れ薬を投与します」
「おい待てその注射器どっから出した」
麗がお注射を取り出した。怖……。あ、俺の癒し枠が崩れ去った音がする。麗は今までここまで強い内なる俺への思いを隠していたというのか。もう誰が俺を好きで誰が俺を好きじゃないのか分からない。誰も信じられない。
「あーわかった。俺が麗と婚約したって他所に流して良いから惚れ薬はやめてくれ。こんなところで使われたら麗に何するかわからん」
「別にここで襲って貰ってもいいんですよ?」
「女の子がそんなこと言っちゃ行けません。ほら、洗い終わったし湯船入ろ。体が冷えるぞ」
「誤魔化さないでください」
湯船に入ってからも、麗は俺に執拗に体を押し付けて誘惑してきた。麗はこんな子じゃなかったはずなんだが。俺への好意が膨れ上がってこうなったのか、元々素質があったのかは分からない。ああ、また真秀が怖くなる。でも、これで真秀とりんくのユニットがレベルアップできるなら安いものなのかもしれない──
「まほろさん、他の女の事を考えないでください」
「悟れと」
ほんと、なんでこうなったのかなぁ……(しじみ)