ヤンデレ真秀ちゃんに死ぬほど愛される日常   作:コントラポストは全てを解決する

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渡月麗はケジメを見せようとしている。

 麗に家に来いと言われた。正直今女の子と2人きりになるのはとても不安だったが、麗はそんなことしないと信じ、麗の両親が家にいると信じ、俺は勇気を出して誘いに乗った。

 家には誰もいなかった。これは寝室に連行か……と思ったら茶室に案内され、しばらく待てと言われた。

 

「まほろさん、お待たせしました」

 

 麗が戻って来た。手には……なんだあれ、木の太い棒を持っている。それを俺の前に置いて、太い木の棒を両手で持って片方を引っ張った。そしたら刃が出てきた。え、嘘……小太刀?なんのために?

 

「麗?なにしてんの?」

「……私は、心のどこかでまほろさんなら私を選んでくれると決めつけていました」

「は、はぁ、なるほど」

「ですが、まほろさんは事実上真秀さんのものになってしまった。私は無意識でも油断していた自分が許せません」

「い、いや、そこまで気負わなくていいんじゃない?俺と真秀がまぐわっちゃったのは半分事故だし……」

 

 小太刀を一心に見ながら語る麗は、覚悟の決まった目をしていた。

 

「私はまほろさんを愛しています。ですが、あのお泊まり以来アピールは何もせず、しかし私はまほろさんを勝ち取った気でいた。接吻と婚約ごときで思い上がっていました」

「そ、そうか……でも、麗の事も結構意識してたよ?」

「慰めはいりません。私は、心に決めたのです」

 

 麗は小太刀を自分の腹に当てる。嘘でしょ、それ切腹ってやつじゃね?

 

「──まほろさんと結ばれない人生なんて無意味です。何も出来なかった、何もしなかった自分にケジメをつけます」

 

 そこまで言う?そこまでする?失恋がショックなのはわかるけど、また新しい男探せばいいじゃん。切腹はやりすぎだって。さては俺に介錯させる気でここに呼んだな?小太刀没収して逃げよ。

 

「せめて……せめて愛するまほろさんの前で腹を切り、愛するまほろさんに最後を託したいのです……。愛する人に介錯されるなら私は本望」

「負け武者みたいな事言ってないでその小太刀をこっちに寄越せ。麗の死なんて誰も望んでない」

「余計な女が減るという意味で、真秀さんだけは喜ぶかと」

「そんなことで喜ぶようなやつなら俺は真秀を嫌いになるよ。大人しく麗と幸せになる」

「私が死んでも、どうせまほろさんは真秀さんと結ばれます。結果なんて変わりません」

 

 なんでそんなこと言うん。やさぐれたのか拗ねたのか知らないけど、そんなことで死のうとすんな。俺も真秀に振られたらショックだけど、さすがに命を捨てようとまでは思わない。

 

「せっかくハピアラの皆と仲良くなったじゃんか。やりたかったDJユニットもできたじゃん。それを捨ててまで命を絶つ意味があるんですか」

「名残惜しいですがこれはもう確定事項なのです。誰も止められないんです」

「好きな男を取られていじけてるだけのやつの介錯なんかしたくない」

「な!?私の覚悟をそんな軽い言葉で形容しないでください!」

「じゃあ、間違ってるとでも?」

「それは……」

 

 やっぱりやさぐれていじけただけか。良かった。覚悟とかケジメとか言ってたけどグズねた子供の駄々だ。まだ説得できる。愛する人が目の前で死ぬ怖さを教えてあげればやり直せる。

 

「……まほろさん、何してるんですか……?」

 

 俺はカバンからカッターナイフを取り出し、刃をフルMAXで出して喉を動脈に当てた。

 

「麗が腹を切るって言うなら、俺はその前に喉を切って死んでやる。麗が死ぬなら俺も死ぬ」

「そ、そんなハッタリ……」

「ハッタリだと思うのは勝手だが、俺は本気だぞ」

 

 喉に少し強く刃を当てる。俺の皮膚は薄いからそれだけで簡単に血が出てきた。マーキングで喉から血が出る痛さには慣れてるから痛くない。俺のヤクザ魂見せてやる。

 

 

「やめてください!!!」

 

 

 麗が小太刀を捨て、俺の腕を押さつけて押し倒した。パワーが強い。押さえつけられた手が動かせない。これ、麗があなたを殺して私も死ぬタイプだったら俺終わってたな。

 

「どうして……どうしてそんなことをするんですか……。誰もまほろさんの死なんて望んでいません……!」

 

 そんな悲しそうな顔をしないでおくれ。俺も麗が腹切するって言い出した時は同じ気持ちだったよ。

 

「大切な人が目の前でいなくなろうとする気持ちわかったか?俺も今の麗と同じ気持ちをついさっき味わった」

「ですが!自分の体に……首に刃を立てるなど!首は本当に死んでしまうんですよ!?親から貰った体に傷をつけるだけでなく、死のうとするなんて……。まほろさんは何を考えてるんですか!?」

「その言葉、そっくりそのまま麗に返すよ」

 

 特大ブーメランで笑っちゃうぞ。腹切も首切りも似たようなもんだろ。

 

「麗、これでわかっただろ?大切な人が死ぬのがどれだけ辛いか。俺がいなくなった未来を想像してどうだった。理由が自分のせいだって思って何を感じた」

「……嫌、でした。まほろさんがいなくなるなんて想像しただけで……震えが止まりません……」

「だろ?好きな人が死ぬのは基本受け付けないんだよ。分かったら二度とこんなことはするな。いいな?」

「……はい」

 

 

 麗の説得に成功した。ほんと、いきなり武者みたいなこと言い出すからびっくりしたよ。これで俺も安心して眠れる。

 

 

 

 ────────

 

 

 

 騒動も一段落し、俺は麗と一緒に縁側でお茶を啜っていた。気まずそうな顔を麗はしている。予定では今頃、俺に首を落とされていたんだろうけどイレギュラーが起こって生き延びちゃったもんな。

 

「……まほろさんは、本当に真秀さんを好きになってしまったのですか?」

「ああ、なったよ。心の底から大好きで、愛してる」

 

 真秀にセックスで分からされたからって言う情けなさしかない理由だけど。

 

「私はまほろさんと初めて連弾をしたあの日から、ずっとまほろさんが好きでした。ピアノを弾くのってこんなに楽しかったんだって教えてくれて。単純な理由ですが、それでも私にとってはかけがえのないものだったんです。でも、こんなことになってしまった」

「今の麗には自分の思うままにピアノを弾ける場所も、共有する仲間もいるだろ?俺離れする時が来たんだよ。きっと」

 

 中等部2年の5月だったな。麗と初めて連弾したのは。出会ったのは中等部1年の1月。俺も麗とピアノ弾くの好きだよ。1人でも2人でも、ピアノは楽しい。

 

「私はまほろさんと幸せになりたかった。初恋でした。結ばれないなら人魚姫みたいになっても良いとさえ思っていました」

「切腹は人魚姫というより武者なんよ」

 

 ロマンチックに失恋語ってるところ悪いけど、めっちゃ和風な家で小太刀を持って腹切りフジヤマしようとしてたじゃん。俺が止めなきゃ今頃どうなっていたか。首から血を流した甲斐があるというもの。

 

「まほろさん、実は私のことが好きという事はありませんか?あんなに親身になって自傷行為までして私を止めるなんて、並大抵の覚悟ではできないと思うのですが」

「いや、ぶっちゃけ死に逃げれるなら逃げたいなって学校で思ってさ。それだけ。死は救済なんじゃないかって」

「死は救済ではありません。地獄の入口です」

「今の状況より地獄な場所ってないと思うよ」

 

 1000°の釜で茹でられる方がましというか。針千本飲んで現状況をどうにかできるなら、俺は喜んで熱鉄板の上で針千本飲んだ後閻魔大王に全財産寄付する。俺1人でどうにかできる状況じゃない。でも俺1人でどうにかしなきゃいけない。

 

「まほろさんはどうしてそう女性を惹き付けてしまうんですか」

「そういう能力持った人間だからとしか。ほら、俺新人類だし」

「……私はちゃんとまほろさんの中身を知って惚れたのですからね」

「わかってるよ」

 

 ぶっちゃけ俺のフェロモンに惑わされてるのってみいこくらいしかいないんじゃないかと最近は勘ぐっている。なんだかんだ皆理由があるし……真秀はなんで俺を好きになったんだ?まさか真秀も……。

 

「麗はどう?俺の事踏ん切りつきそう?」

「諦める気はないですが、もう死ぬ気はないです。まほろさんと命の交配をしましたから」

 

 命の交配……それ聞き方によってはセックスって聞こえない?俺の考えすぎ?

 

「よくよく考えれば、今ここでまほろさんと性交渉をするのが1番話が早かったですね」

「例え麗とヤったとしても、俺は真秀と付き合うからな」

「いえ、まほろさんなら絶対責任感で二股してくれます」

「しないしない」

 

 二股なんてしたら真秀に殺される。だから俺は二股はしない。そもそも真秀以外を愛せるほどの器量が俺にはないし。むにとみいこはなんだかんだほっとけない所があるけど、恋愛的にはアウトオブ眼中。養子……がいいのかなぁ。

 

「そういえば、今学校ではむにさんと付き合ってるって噂が流れてましたね。私もそういう情報操作をするべきでしょうか?」

「女子の間では俺は誠実ってことになってるから、多分二股の噂を流すのは無理じゃない」

「早い者勝ちでしたか」

「まあ、むにはそもそも情報操作が目的じゃないからな」

 

 俺の事を欲しすぎて、その溢れる情熱を行動で示してたら変な噂が流れちゃったっていう副産物だし。いつ俺のファーストキスを求めて来るかと思うと冷や冷やしちゃう。

 

「真秀とセックスしたらむにが死ぬって思うと、おちおち真秀と2人きりになることもできない。今日は真秀と会話さえしてないし」

「真秀さんは性欲の怪物になってしまいましたからね。まほろさんとの性交渉が余程気持ちよかったみたいで。よく私達に話して来ます」

「真秀も昔はもう少し控えめな子だったんだが」

「愛が重い女になってしまいましたね」

 

 重さで言えば麗も大概だが、なんだかんだ真秀が1番重い気がする。

 

「今日は真秀と話してないし、家に様子見に行くかぁ」

「電話すれば良いのでは」

「怖くて携帯の電源落としてる」

 

 今日は絵もアナログで描いてたし、スマホを1回も見てない。きっと真秀から鬼電鬼LINEが来てることだろう。念の為みいこも呼んで3人で話し合おうと思う。レトルトカレーでも食べながら話せばエッチな雰囲気にはならないはずだ。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 相馬君に買い物に付き合って欲しいと言われ、仕方なくショッピングモールに付き合った。買い物は服らしくて、相馬君がついでにと私の服を見繕うとして何とか断った。距離感が近い。さすが、学園1のモテ男は違いますね。まほろの方が断然良いや。相馬君、3秒に1回私の胸を見てくる。そういう所だよ。

 まほろの方が私を大事にしてくれるし、今までも大事にされてたんだなってわかった。ありがと、相馬君。大事な事に気づけた。まほろとヤってからまほろを性的な目でしか見てなかったって気づいた。今日は久しぶりに一緒にご飯を食べよう。

 早く帰りたいなぁ。




評価ゲージ青色ってどうやったら取れるんだ。
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