ヤンデレ真秀ちゃんに死ぬほど愛される日常 作:コントラポストは全てを解決する
例によって昼休み。俺は昼食のカロリーメイトのチョコ味を食べながら、昨日あった事をむにに話していた。
「昨日さ、真秀が俺の家に泊まったんだ」
「へぇ、さすが幼なじみね」
「一緒に寝たんだ。同じベッドで体寄せあって」
「子供みたいね」
「それからしばらくしたらさ、真秀が俺の手を使ってオナニーしだしたんだ」
「…………は?」
ほんとにビックリした。真秀がいきなり手を握ってきたかと思えば、なにか生暖かくて湿ってる場所に手を持ってかれ、「まほろ……♡まほろ……♡」って艶やかな声がし始めたんだ。そのまま真秀が絶頂するまで手を貸しっぱだった。
「まさか真秀があんな事するとは……。そのうち俺の寝顔の上でオナニーしだすのかなー」
「あんた……もっと注意しなさいよ。ハレンチでしょ、そんな事」
「いやー、注意したぐらいじゃ止まらないって。真秀の愛は凄いから」
「あんたね……」
俺の右手にまだ真秀の中の感触が残ってる。一応今朝キレイキレイで5回ほど綺麗綺麗してきたけど、感触だけは落とせなかった。
「待てよ、今この手でオナニーすれば、実質真秀とセックスしたことになるのでは」
「やめときなさい。それをしたらあんたをグーでビンタするわよ」
「それは殴るというのでは?」
さすがの俺でもそんなキショいことはしない。勇気が出たら真秀と致すって決めたので、わざわざこんな遠回しなことをする意味もないだろう。
「はぁ……あの真秀って女ももう少し常識をわきまえて欲しいわね」
「真秀は俺が絡まなければ常識枠なんだ。俺が絡まなければ。……つまり俺がいなくなれば真秀は平穏な日々を送れるということに……。転校しようかな」
「……」
「むに?どうした黙って」
むにがだんまりしてしまった。どうしたのだろうか。
「……まあ、あんたが転校するのは勝手だけど、その時は大事な話があるから覚悟しておきなさい」
「覚悟の準備が必要か。肝に銘じておく」
一体なんの話だろうか。告白かな。むにはそんな素振り見せなかったけど。何を話すのわからなくて怖いなー。怖いなー怖いなー。旦那へのラブメールを間違えて職場の上司に送ってしまった。怖いですよねー。
「てか、あんたまたカロリーメイト?相変わらず量が少ないわね。だからヘタレで細いのよ」
「ヘタレは関係なくない?」
「私のハンバーグをあげるわ。食べなさい」
「いや、それ食ったらもうむにの弁当白米とレタスしか残らないじゃん。栄養が悪いわよ」
「まほろに言われたくないわ。良いから食べなさい」
「嫌です」
「食 べ な さ い」
「国際警察の権限において、拒否権を行使する!!!」
この後半分こして一緒に食べた。美味しかった。
「ねえ、むにちゃんせんせー」
「なによ」
「教室の入口にしのぶがいるんだけど」
「誰か待ってるんじゃない?」
「なんかこっち見てない?」
「じゃあ、あんた目当てね」
試しにしのぶと目を合わせてみると、嬉しそうな顔をしながら早歩きでこっちに向かって来た。何用だろうか。どうせピキピキのサポーターになれとか言うんだろうな。
「まほろ、アタシ達と一緒にご飯食べようよ」
「もう昼飯食っちゃった。ごめんね」
「そうか。でな、ピキピキのサポーターの件なんだが」
「話題転換が下手くそくそみそテクニック」
俺の前に現れた犬寄しのぶは、俺を昼食に誘う。まあ、そんなのついででメインはピキピキへの勧誘なんだと思うけど。
「ほら、アタシと一緒に来い。話はそれからだ」
「えー、ピキピキのみんなのところに行くのやだよ。響子はしのぶみたいに誘ってくるし、由香はジムに勧誘してくるし、絵空はなんか艶かしい視線送って来るし、真秀にバレたら怒られるし。メリットがない」
「モテモテでいいじゃんか。ほんとは嬉しいんだろ?」
「あんな野蛮な人達にモテても嬉しくない。いかんせん俺の周りは怪力ゴリラが多いからなー」
「皆が怪力ゴリラなんじゃなくて、まほろが非力なだけだろ」
しのぶが言っちゃいけない事言った。今に見てろ。渡月製プロテインでムキムキになってやる。ゴウリキーになってやるからな。ガチムチだ。ガチムチパンツレスリングだ。
「どうせお前みたいな独り身の相手してくれるやつなんてアタシぐらいしかいないんだから、黙ってついて来いよ。そっちの方が楽しいぞ?」
「俺は独り身でもスーパーで特売された切り身でもない。陽キャだ」
「恋人もいないくせに」
はーん、そういう事言うんだ。良いだろう、目にもの見せてやる。
「実はしのぶには言ってなかったんだがな、俺、むにと付き合ってるんだ。同じ絵描きとして意気投合して、あっという間にデキ婚よ」
「……まほろ、何言って…………いえ、そうね。あたしとまほろは付き合ってる」
「は?お前はアタシのもんなんだから、他の女と付き合うとか許さないし。そんなぶりっ子ちんちくりんなんかと付き合ってないでアタシと付き合えよ」
「ぶりっ子ちんちくりんって何よ!あたしは唯一無二のむに様なのに!あんたみたいな淫乱ピンクに言われる筋合いはないわ!」
「よく吠えるチビだな。喧嘩なら買うが?」
「やってやろうじゃないの!」
ちっちゃい女の子同士のバトルファイトが始まってしまった。負けた方は封印ね。
「まほろに相応しいのはアタシだ。さっさと別れろ」
「ふん!まほろに選ばれなかったからって僻んじゃって。可愛そうね。あたしはもうまほろと一夜を共にしたわよ」
「アタシだってまほろと寝たことぐらいあるし。なんなら?まほろにセフレにならないかって誘われたことだってあるし?」
「ぷぷー!セフレなんて言う愛のない関係を自慢するなんて、自分の首を絞めてるわよ。そんなちっちゃい身体じゃ、まほろだって満足しないでしょうね」
「は?死ね」
なんか、どんどん俺がクズ男になってる。ありもしないことをよくそんなぽんぽん口から出せますね。むにと一夜を共にした記憶も、しのぶをセフレに誘った記憶もない。どこの世界線の記録だ。
「いいか、よく聞け。まほろはアタシの男だ。それに、まほろはこれからのDJ界とか音楽界隈を担う重要な存在なんだ。お前みたいなタブレットに落書き描いて遊んでるようなやつに渡す訳にはいかない」
「絵師おんリィ様をバカにしたわね。絶対許さないから。それと、まほろは絵師になるべきよ。まほろはとっても絵が上手いの。機材を揃えて、あたしが指導すればあっという間に神絵師よ。DJとかいうDQNの遊びにまほろを巻き込まないでくれる?」
「は?DJがDQNの遊び?は〜、これだから流行りを知らないガキは。DJ活動はな、今世界で流行ってんだ。わかるか?世界だぞ?絵を描いてる暇があったら普通DJするだろ」
「へん!流行りが何よ。あたしは中一の頃からずっとまほろと絵を描いて来たの。そんなまほろがDJなんかするはずないわ。まほろの絵を見てみなさい、才能の塊なんだから。まほろは絵師になるべきよ」
「お前こそ、まほろの作った音楽を聴いたことあんのか?それこそ才能の塊だぞ?まほろはDJになるべきだ」
むにとしのぶはお互いにスマホを出して、俺の描いた絵と俺が作曲した曲を見せあっている。最初はどちらが俺の恋人かを争っていたのに、気づけば俺を絵師にするかDJにするかに変わっていた。まあ、このままいけば絵も曲も載ってる俺のYouTubeチャンネルに行き着いて喧嘩は止むだろう。めでたしかんざし。
「まほろは絵師になるべきよ」
「まほろはDJになるべきだ」
お互い睨み合い、火花をバチバチ散らしていた。このまま眺めてるのもあれだし、真秀の教室にでも行こうかな。
「まほろー!」
「あ、真秀だ」
真秀の教室に行こうと思ったら、ちょうど真秀が来てしまった。この状況に真秀を投入したらどうなるか。小さい女の子2人を止められるのだろうか。拗れて俺が危うい目になるオチはCMの後!
「あ、出たわね変態女!あたしのまほろに近づかないでくれる?」
「大鳴門さん、なに私のまほろと腕組んでくれてるのかな。こないだ上下関係をはっきりさせたよね」
「べー!あたしはまほろと付き合ってるの。まほろだって認めてるんだから」
「大鳴門さん、妄想も大概にしなよ」
むにが腕を組んで来て、むにのやわやわなむにむにが腕に当たる。ふむ、むにのパイパイも意外とあるな。揉みごたえがありそうだ。
「おい、大鳴門むに。アタシのまほろに近寄るな。まほろはアタシのものなんだぞ」
「ちょっと!あたしのまほろと腕組まないでよ!まほろと腕組んで良いのは恋人であるあたしだけなんだから!」
「私のまほろに手を出すなー!!!」
嗚呼、混沌だなー。麗に会いたいなー。あのおしとやかな雰囲気に癒されたい。真秀もむにもしのぶも、俺を巡って争い出してしまった。俺がいなけりゃ皆大人しいんだけど。真秀はしっかり者な常識枠。しのぶはダウナー気味なマイペース。むには絵描きぼっち。俺が引っ越せば皆平穏な日常を…………むには一人にしない方が良いな。一緒に連れていこう。
「明石真秀!あんたがまほろの手でオナニーしたのはリーク済みよ!その下品でハレンチで卑猥な身体で近寄って来ないで!」
「うっわ、キショいなお前。そんな事してたのか。さすがに引くわ」
「ふふっ。まほろの手、凄かったよ?たまに動いて、コツコツ当たって、とっても気持ち良いんだ。2人だってほんとは使ってみたいんだろ?」
「「ッ!!!」」
え、何。なんでむにもしのぶも顔赤らめるの。まさか真秀の言ってる事が本当だったりするのか?いや、そんな事言われてもちょっと。俺の手は大人のおもちゃじゃないし、体良く使われるのは嫌だな。あの、むにさんもしのぶさんも、なんで俺の右手見てるの?使わせないよ?
「おいまほろ、一緒にトイレ行こうよ」
「いや性別。俺男だし。てか、何真秀の口車に乗せられてんだ。俺はしのぶのオナニーに付き合う気は無い」
「そのままヤらせてやるからな、な?」
「ごめんなさい、無理ぽよです」
「ふふっ。まほろの手を使えるのは私だけってことだね」
「いや、真秀にも使わせる気ないけど」
「私のを触った手でオナニーすれば実質セックスだよ?」
「思考回路が俺と同じで草」
真秀までそんな事言い出したら収拾がつかなくなるだろ。もうむにしか頼れる人がいない。助けてむにママ。
「……まほろの手、確かに固くて骨が浮き出てコツコツしてて気持ちよさそうよね……」
「あの、むにさん?」
「ね、ねえ、まほろ、あたし達恋人同士なんだし、シてみてもいいんじゃないかしら……?」
「大鳴門さん、まだ妄想を引きずってるの?そろそろやめたら?まほろの迷惑だよ」
「いや、真秀。俺はむにと付き合ってる」
「は?」
おっと、真秀の目の色が変わった。ハイライトがないなった。怖。
しのぶにイキってむにと付き合ってるという嘘を吐いてしまったので、俺は嘘を突き通さなければならない。ごめん真秀。俺、むにと幸せになるよ。むにに寝取られちゃった。
「まほろ、どういうこと?まほろは私のものだって言ったよね。その首の傷は飾りなの?」
「実はむににもマーキングされてる」
「どこ。消すから教えて」
「毎日むにの隣に居座ることで染み付いたむにの匂い。そしてむににも俺の匂いが染み付いている。これがカップルの証、ペアスメル」
「アタシ、消臭スプレー持ってるぞ。その染み付いたぶりっ子絵描きの臭い、消してやるよ」
「やめて」
むにとの絆の証が。なんでそんな残酷な事できるの。この人でなし!
「なんで真秀もしのぶも俺とむにの仲を引き裂こうとするんだ。俺はこんなにむにを愛してると言うのに……。お前らに人の心はないんか!」
「まほろはアタシの男だから、奪うのは当然」
「おいピンク頭、まほろは私のだよ。勝手に所有権主張しないでくれるかな」
「あ?なんだよぽっと出。アタシは中3の頃からまほろと一緒にいるんだぞ。邪魔すんなよ」
「私は小さい頃からまほろと一緒にいるよ。お風呂だって一緒に入ったことあるし。なんなら昨日も一緒に入ったしね」
「嘘乙」
真秀の言うことを頑なに信じないしのぶ。俺が一言真秀の言うことは本当だと言えば信じて貰えそうだが、余計荒れそうなので言わない。まほろ君はバカな真似はしないのだ。へけっ!
「ていうか、中3って去年じゃないの。たった1年の付き合いごときでまほろの所有権主張するなんて、おめでたい頭を持ってるのね」
「は?ぶりっ子絵描きだって大してまほろと一緒にいないじゃんか」
「まあ、確かに。でも、出会った瞬間に意気投合したから、実質幼なじみみたいなものよね」
「お前、何言ってんだ?」
なるほど、俺とむには幼なじみだったと。まあ、幼なじみ並に距離が近いのは認めよう。つまり俺は真秀に加えむにも幸せにしないと行けないと。無理やん。日本の法律が邪魔をする。
そもそもの話、なんでむには俺の嘘に付き合ってるんだ?嫌がろうよ。ヘタレは嫌いって言ってたじゃないか。まさか、むにって俺の事が好きなのか?いやいや、そんなまさか。
「しのぶも真秀も俺を好きなのは分かるが、残念ながら俺は1人しかいない上にむにと付き合ってる。あとは……どうすれば良いか分かるな?」
「奪う」
「寝取る」
「野蛮過ぎてチキン南蛮になっちゃう」
どうしてしのぶも真秀もそんな荒れ果てた荒野のような思想しか持てないの。まほろちゃん悲しいよ。友達がこんな醜悪極まる人達だなんて思わなかった。
「ていうか、真秀もしのぶもそろそろ教室戻ったら?俺、むにと絵描きたいんだけど」
「なに、私が邪魔って事?へー、そんな事言うんだ」
「あ、いえ、そういう訳ではなくてですね。俺はこれ以上修羅の場にいたくないんだ。ほら、周りの目を見てみなよ。皆、俺を股がけしたクズ男を見る目で見てる。男の周りに女の子が集まるとこうなるんだ。だから、俺の心の平穏のために──」
「なら、私と2人きりになれるところ行こうよ。こんなチビ2人の相手してないでさ」
「チビって何よ!少なくともあたしはこの淫乱ピンクよりかは身長があるわ!」
「は?アタシの方が身長あるし」
「どんぐりの背比べだね」
むにとしのぶはお互いに睨み合っていた。こうして2人並んでみると、大して身長の差はない。
「まほろの隣に立つには2人の身長は低すぎる。やっぱり、私が1番まほろにふさわしいね」
「は?身長と乳が少しばかりデカいからって調子乗んなし。まほろはロリコンだからアタシみたいな小さい女が好きなんだ」
「まほろは巨乳フェチだよ。残念だったね」
「嘘乙」
「昨日まほろを襲った時、私のおっぱい揉ませたらまほろのちんちんが勃ったよ。あー惜しかったなー、昨日はまほろとセックスできそうだったのに」
「嘘乙」
しのぶ、さっきから自分に都合の悪い情報は嘘乙で済ませてない?ダメだよ、ちゃんと現実は受け入れなきゃ。俺も女の子3人に迫られて周囲にクズ男認定されてる現実から目を背けたいけど、しっかり向き合ってる。泣けるで。
「良いか、デカ乳女。まほろはずっとアタシが狙ってたんだ。手ぇ出すな」
「残念だったね。私は10年前からまほろを狙ってるよ」
「どうせその幼なじみ設定だって妄想だろ?アタシは信じないからな」
「信じる信じないは勝手だけど、まほろに迷惑かけないでね。もしまほろに何かするようなら、私はお前を消さなきゃいけない」
「野蛮だこと。そんなんだとまほろに捨てられちゃうかもな」
「まほろは私の事が大好きだからそんな事しないよ」
俺は皆が大好きだし、真秀も好きだから捨てたりなんかしないけど、真秀の言う好きは多分恋愛的な意味だろうなぁ。俺は真秀をそういう意味で好いてるのだろうか。確かに、真秀を幸せにしたいという感情はある。愛している自信もある。でもそれを恋愛感情と言われると些か語弊がある気がしてくるのだ。ならば、俺の中にあるこの感情はなんだ。分からない。自分の感情なのに分からない。これは山に篭って1ヶ月ぐらい考える必要がありそうだ。
「まほろ、まほろはあたしの彼氏よね」
「まあ、一応……今日だけっていうか……」
「なら、キスしましょ」
「はぇ?」
「「は?」」
キス?マウストゥーマウス?接吻?なんで俺と?やめとけ、俺みたいやつにファーストキスをあげるのは…………まさか、むにはもうファーストキスは捨てている?だから誰とでもこういう事をして……。
「まほろが誰のものかはっきりさせましょ。言っとくけどファーストキスだからね」
「なぜに。ヘタレは嫌いだと言っていたじゃないか」
「どこの誰かも分からないヘタレ男だったらそりゃ嫌よ。でも、まほろだから」
「俺が好きと?」
「そうかもしれないわね」
なんだその煮え切らない答え。俺を焦らす気か。
「大鳴門さん、ついに踏み込んじゃいけない領域に踏み込んだね。もう、生かしてはおけなくなった」
「あら、悔しいなら明石真秀もすれば?大方、そんな度胸ないんでしょうけど。べー!」
「屋上へ行こうぜ……久しぶりに……キレちまったよ」
真秀、昨日もむにに煽られてキレてなかった?ひょっとして煽り耐性0ですかい?ダメだよ、そんなんじゃ2chで生きていけない。もっとデカ釣り針に引っかからないようにしなきゃ。
「だいたい、まほろの幼なじみでまほろが好きなくせに、全然それらしい進展がないじゃない。それに、まほろはあんたの事が眼中になさそうだけど?」
「まほろは表に出さないだけで私の事大好きだよ。昨日だって、勇気が出たら私とセックスしてくれるって約束してくれたからね」
「見事にあしらわれてるわね。本当は避けられてるんじゃないの?」
「まほろはそんな事しないよ。皆に優しいもん。だから、誰かを避けたりなんかしない」
「結局、あんたもまほろが優しくする『皆』に入っちゃってるじゃない。そんなんじゃまほろ争奪戦には勝てないわよ」
むにの言う俺の争奪戦ってなんだろう。真秀って俺の事好きなの?よく俺の所有権は主張してくるけど。もしかして真秀が欲しいのはペットなんじゃ……酷いよ真秀、俺の事そんな風に見るなんて。俺は由緒正しき境家の人間なのに。俺の家に伝統も身分もないけど。
「まあ見てなさい。あたしはまほろとキスしてまほろをこの手に収めてみせるから。あんたはこれから負けヒロインになるのよ」
「まほろのファーストキスは私のものって10年前から決まってるんだ。まほろ、私にキスして!」
「まほろ、あたしを選んでくれるわよね?」
「ぶりっ子絵描きにデカ乳女も狂ってるなぁ。まっ、まほろはアタシが貰うけど」
むにと真秀としのぶが迫って来る。おっと、√分岐ですか。ここでキスした方の√に入ると。はぇーまほろ君びっくり。現実でギャルゲーをやるはめになるとは思わなかったハメ。びっくりだパコ。
俺も腹を括るしかないようだな
「わかった。俺が付き合いたいと思った方にキスする。目つむってじっとしてて」
「まほろ、信じてるからね」
「ふふ、むに様が勝ってみせるわ」
「ま、しょうがないからまほろのものになってやるよ」
3人が目をつむって俺の方に迫って来る。しのぶが若干薄目を開けてる気がするが気にしない。俺はもう取るべき行動をしっかり脳内に計画してある。
さあ、行くぜ!
逃げよ。
愉快痛快まほろ君は、全力ダッシュで逃走だい。
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澄み渡る空、美味しい空気、俺はあの湿度と想いが重い空間から脱出したのだ。今日は放課後までここでサボろ。5、6時間目は出席日数も成績も足りてる科目だし大丈夫だろう。
「ふぅ。にしても、なんで皆俺を取り合うかねー。俺よりいい男なんて沢山いるのに。隣のクラスの相馬とかイケメンでサッカー部のキャプテンで独身なのに。なんでだろーなんでだろー」
「まほろはもう少し自分の魅力について考えた方がいいと思うぞ」
「なんでしのぶがここにいるの?今は教室でキス待いフットしてるはずでしょ。え、なに、ドッペルゲンガー?怖……」
「まほろが逃げたから後追ってきた。ずっと後ろにいたけど、気づかなかったか?ちなみに2人は今も教室でまほろのキスを待ってるぞ。アホだよな」
「逃げるのに必死で気づかんかった。2人には悪いことをしたな」
俺が給水塔の日陰に寄りかかっていると、隣にしのぶがいた。素晴らしい隠密スキルだ。しのびの名は伊達じゃない。
「いやー助かったよ。まほろが1人になってくれたから、これで遠慮なくお前を攻略できる」
「もしかしてあそこで誰かを選んだ方がハッピーエンドだったのかなー。選択ミス洗濯ミス。ポッケにティッシュ入れたまま洗濯機かけたことある?」
「お得意の茶化しか。緊張しちゃって。可愛いな」
「あはは、俺はまだ死ぬ訳にはいかない」
しのぶの顔がヤる気モードになってる。どうやらヤる気スイッチが入ってしまったらしい。俺、このまま食われちゃうのかなー。大切な幼なじみ1人幸せにできず、このまま一生を終えてしまうのだろうか。
「あのぶりっ子絵描きと付き合ってるってのも嘘なんだろ?」
「まあ、そうだな。何故かむにが俺の嘘に乗っかってくれたんだ」
「それでアタシと幼なじみを騙そうとしてたのか。お前は幼なじみを好きだと思ってたが、そうじゃないのか?」
「真秀の事は愛してるよ。でも、好きかどうかは分からない」
「まだ自分の気持ちに確信がついてないんだな。ま、その方がアタシにとっちゃ都合良いけど。ほら、目ぇつむれよ。キスしてやる」
俺は自分の口を手で塞いだ。マウスガードして接吻ガードだ。俺はまだ初めてを失う訳には行かない。出来れば真秀にあげたいと思っているから。夕日が沈む屋上か教室で雰囲気に包まれながら接吻したい。シチュエーションって大事だと思うの。
「……はぁ、しょうがないからまほろに選択肢をやるよ」
「へーへーほーほーしゅこーしゅこー」
「キスしないから手ぇ外して良いぞ」
「選択肢ー接続詞ーお前はガーベッジー」
「ふざけてるとキスするぞ」
「許して無惨様」
いけない。俺の茶化したくなるくせが出てきてしまった。選択の先延ばしを試みる悪い行い。反省。
「で、選択肢とは。屋上から飛び降りて生還したら見逃してやるとか」
「あたしと付き合うか、ピキピキのサポーターになるか、その両方か、どれか選べ。そしたら今日はもう付きまとわないし、あの2人から逃げるのを手伝ってやる」
「難しい選択肢だなー」
ピキピキのサポーターかー。ろくなことにならなそう。由香の筋トレに付き合わされて死ぬ未来が見える。いや、渡月製プロテインがあるからワンチャンムキムキに……ゴリゴリマッチョマーベラスになれば皆も距離をおいてくれるのかな。
「ピキピキのサポーターねぇー。俺がいても大して役に立たない気がするけど」
「お前がいればピキピキはもっと上を目指せるんだ」
「根拠は?」
「半年前のリミコン。そこでお前の全てを知った」
「あー……あれか」
中等部卒業手前、しのぶの家の機材を借りて編曲した曲がリミックスコンテストで2位になったんだっけ。ちなみに1位はしのぶ。
あの時は自分のYouTubeチャンネル宣伝のためにチャンネル名で応募して……ここは別にどうでもいいか。そういえばあの頃からだったな、しのぶと響子が俺に付きまとうようになったの。
「お前の音楽を初めて聞いた時は、時々ノイズが入ってて音質も悪い、けどどこかハマる変わった曲を作るやつだと思ってた。それで、もしかしたらって思ってアタシの家の機材貸したら、想像通り……いや、想像以上の結果を見せてくれたんだ」
「しのぶに勝ててないから、結局しのぶがいればピキピキは安泰で良いのでは」
「お前はアタシにないものを持ってる。それが必要なんだ。だから、ピキピキと一緒に──アタシの隣にいて欲しい」
「結局、しのぶが好きなのって俺の音楽でしょ。サポーターは良いけど、付き合うのは大袈裟じゃない?」
「いい事教えてやる。恋は本能だ。『こいつだ』って思ったやつは何がなんでも手に入れた方が良いぞ」
「でもしのぶの一番は響子でしょ?」
今のセリフめっちゃメンヘラっぽい。
「お前はアタシのクラスにいる女子が友情育んでればなんでもかんでも百合にするオタク1号か?」
「こないだ陽葉学園同人クラブのネット通販に響しの百合エッチ同人誌が売ってたぞ。日間ランキング1位だった。世間体は響しのを求めているらしいね。このままでは俺は百合の間に挟まる男になっちゃう。ガイアされちゃう」
「創作は言っちゃえば妄想、体のいい嘘だ。気にすんな。さ、早くアタシと付き合おうよ」
「サポーターの話は何処禰豆子」
おかしい。しのぶがなぜピキピキのサポーターに俺を任命しようとしているのかを話していたはずなのに、いつの間にかしのぶと付き合う付き合わないの話になってる。いや、そもそも最初の選択肢自体おかしい。
「教室に戻って今度こそ誰か1人を選ぶという選択肢はないでしょうかしのぶ様」
「お前がアタシと付き合うまでここに籠城する方が都合いいから却下。お前はもう、アタシから逃げられない」
「ふっ、それはどうかな」
「強がったって意味ないぞ」
仕方ない。この手段だけは使いたくなかったが、非常事態だ。俺には文明の利器、スマートフォンがある。助けを呼ぶんだ。ここのGPSモードをONにするとスマホを同期しているあいつの下に俺の現在位置情報が転送される。これで助けは呼んだ。助けて響子!
「はい、スマホ没収」
「あ、返して!返してよ俺のザビーゼクター!」
「お前、スマホに名前つけてんの?」
俺のホッパーゼクターが手からキャストオフしてしまった。プットオンして。
電源をつけっぱなしだった俺のスマホをしのぶは眺め始めた。
「うっわ、女の子の連絡先ばっか。お前の家族とアタシの連絡先以外全部消すからな」
「やめて。俺と皆の絆の証が。なんでそんな酷いことするの。この人でなし!くノ一でなし!淫乱ピンク!」
「あー手が滑って連絡先消しちゃいそうだなー」
うっわ、こいつマジだ。マジで俺の交友関係絶とうとしてやがる。鬼!悪魔!ちひろ!
俺の交友関係消して何する気だ。監禁か?それとも夜逃げか?俺は絶対しのぶには屈しないぞ。こうなったら最終手段だ。
「あーはいはいわかった。ピキピキのサポーターになるよ。それで満足だろ」
「アタシと付き合ってくれなきゃやだ」
「選択したじゃないか。話が違うぞ」
「現実の選択肢ってのはな、時間と共に変わっていくんだ。もうお前に残された選択肢はアタシと付き合う以外にないんだよ」
「うっわゲスい」
しのぶと付き合う……でも俺には真秀が…………いや、俺は真秀が好きなのか?真秀が幸せになれなかった時の保険である俺が幸せになっていいのか?分からない、俺には……分かりませんよ。
「まほろはアタシと付き合う。これ決定事項な。おっしゃセックスだ」
「ふぁ?」
「えい」
「ふぁ──」
迷っていたらしのぶに押し倒されてしまった。昨日も見たぞこの光景。ネタの使い回しはいけないってあれほど…………いや待って、なんでしのぶは目をつむったまま俺の顔に近づいているんだ。
「まほろ、好きだぞ。愛してる。優しくするからな」
「え、待って。それはシャレにならん。助けて……助けて真秀!」
「他の女の名前を呼ぶなんて、悪い飼い犬だ。わからせてやるよ」
しのぶの顔が卑しくなってる。やばい。しのぶは真秀の時みたいに怖がってもやめてもくれない。助けて……助けて……。
俺はまだ初めてを失う訳には行かないんだ。純血でいないと真秀に嫌われちゃう。早く来て来て王子様。あたしはもうすぐ搾精される。
SOS信号を出したからそろそろ来てくれるはずなんだけど、あの褐色の悪魔が──
「まほろはここかー!!!よくも逃げたな!!!!!」
「ま、真秀!」
「げっ、デカ乳女」
大変怒ってらっしゃるが、俺の救世主である真秀が来てくれた。いや、バーサーカーって呼んだ方が良い?てか、ドアの蹴破り方が男なんよ。
「あ、いた!まほろ、なんで逃げたの──犬寄しのぶ、何私のまほろを押し倒してくれてるのかな」
「早い者勝ちだ。まほろはもうアタシが貰ったから。一足遅かったようだな」
「……ヤったの?」
「ヤったが?」
「テメェは触れちゃいけない領域に触れた。ちょうど屋上だ。女らしく
「上等。笹子の指導は伊達じゃない。1発で決めてやる」
真秀としのぶが決闘を始めてしまった。最近の女の子は随分と武力血気が盛んなんだなぁ。今のうちに逃げるか。今度はどこ行こう。
「まほろ、審判やって!」
「決闘に審判はいらないだろ」
「いいの?犬寄さんが死んじゃうよ?」
「あ、はい。やります」
「アタシは弱くない!乳と身長がデカいからって調子のんなし!」
お互いピリピリとひりついた空気が流れている。何故そこまで俺にこだわるのかは分からないが、まあ、譲れないものがあるんだろう。
真秀はなんかの武術の構えをしてて、しのぶは利き腕にパワーを貯めている。真秀は技、しのぶは純粋なパワーで勝負するようだ。これは白熱した試合になりそうだね。
「それじゃあ行くぞー。レディー……ファイ」
『ッ!!!!!』
両者一斉に走り出しクロスカウンター。しのぶのパンチは……当たってない?で、真秀のパンチが……おお、見事しのぶに当たってる。これは勝者は真秀かな。
「ま、まだだ……こんなデカ乳女に……まほろを渡すもんか……まほろは……やっと出会えた……アタシの、アタシの隣にいてくれる人……なんだ……」
「もう……遅い!!!」
「ぅ゛グッ゛!゛?゛!゛?゛」
真秀の正拳突きがしのぶの鳩尾に入る。2m後ろに吹き飛んだ後、しのぶはうずくまったまま動かなくなってしまった。真秀つっよ。小さいヤツにも容赦ない。やっぱ怪力ゴリラなだけあるなー。
「勝者、真秀ー」
「やったね。これでまほろは私のもの。あ、まほろ、ちょっとこっち来て」
「はいはいなんでしょうか──」
真秀に呼ばれた。何用だろう。
「──ちゅっ♡」
「──んむ!?」
ふぁっ──え、なんで俺真秀にキスされてるの?真秀の唇柔らか……じゃなくて、長い。長くない?もう5秒もキスしてるけど。てかなんでキス。もっとシチュエーションあったでしょ。嗚呼……放課後の夕日の見える屋上で初めてを失うという俺の夢が。
「──ぷは♡まほろのファーストキス、貰っちゃった♡私とキスしたって事は、私を選んだってことだよね。勝負は私の勝ちだね」
「いやー……その理論が通じるんだったら、他の2人もキスしてくるんじゃ……」
「大丈夫。私が守るから」
強制的に真秀ちゃん√に突入させる俺の幼なじみ怖……。真秀とキスしたことがバレたら、多分しのぶは俺を襲うと躍起になって、むには泣いて……むにを1人にはさせられない。何とかしてむに真秀√に入れるようにしておこう。
「じゃ、まほろ。行こっか。昼休み終わっちゃうし」
「倒れたしのぶを保健室に運ばなきゃ。しのぶー、生きてるかー……気絶してる……」
「まほろは触らないで。淫乱ピンクの匂いが感染ったら大変だもん。私が運ぶ」
「まさかの肩抱き……」
こうして、俺のヒロイン√突入大激戦は真秀√未遂に終わった。
しのぶは放課後まで目を覚まさなかったが、目覚めた後は現実を受け入れてなんとも絶望的な顔をしていたという。噂では泣いてたらしい。まあ、しのぶのパンチもパンチがあったよ。ただ、真秀にはちょっと及ばなかっただけ。功績を称えてしのぶの本を作ろう。
数ヶ月後に猿飛しのぶ伝ブックと音忍剣玖乃一が発売され社会ブームが起こったのはまた別のお話。
教室に帰ったら激おこプリリン丸になったむにがいた。可愛かったなって思う。むにの隣は安心するなぁ。あれ、真秀どうしたのそんな怖い顔しtうわ何をするやめ──