愛しい風紀部委員長   作:影山ザウルス

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デート

「おい、マコト……」

 

「何、流太くん?」

 

スカジャンに赤いマフラーを巻いた少年が、自分と同い年の小柄な少年に話しかけた。スカジャンの少年は纒流太。小柄な少年は満艦飾マコト。二人は本能字学園に通う同級生だ。

本能字学園及び本能町は生命戦維との激戦の末に、壊滅的な被害を被り、再建は不可能となってしまった。元あった本能字学園と本能町は解体され、その代わりとして、現在急ピッチで本能字学園新校舎の建築が進められている。本能町の住民も鬼龍院財閥が所有するマンションへと引っ越しが完了している。無論、制服の星の数に応じて対応を変えるようなことはしていない。

 

「いや……男同士でデートって言うのも変だな」

 

「何を言うんだ、流太くん!!」

 

マコトは頭上で手を交差させた。

 

「デートは互いに思い会う二人が行うことであって、性別なんて関係ないよ!!

僕達の思いは通じあっている!そんな僕達は今!デートをしているぅぅぅぅ!!」

 

「わかったわかった!!道のど真ん中で変なこと大声で叫ぶな!!

いや、デートが嫌とかじゃなくて、他にデートに誘いたいやつがいたんじゃないかな~って思っただけだ」

 

「流太くん、他にデートしたい人がいるの!?もしかして皐月様?」

 

「いや、違えって。お前だよ、お前。お前、他にデート誘いたいやつがいなかったのかなって思ったんだ」

 

流太の言葉に少し前のマコトならキョトンとしていたかも知れない。でも、今は心当たりがある。

そんなことを思いながら坂道を見上げると、艶のある黒髪を風になびかせる美少年がいた。ジーンズにジャケットというシンプルな格好だが、誰よりもその服を着こなしている美少年だ。

 

「あれ?流太くん、あそこにいるのって……」

 

「んん?……あ」

 

二人はニヤニヤしながら坂の上に立つ美少年へと歩み寄った。

 

「おや~?おやおや?そこに居られるのは……鬼龍院皐月様ではございませんか」

 

「むっ……き、奇遇だな」

 

皐月は偶然を装ったつもりだろうが、完全に二人が歩いて来るのを待っていた。大方、犬牟田辺りが二人の現在位置を特定し、皐月に情報を流したんだろう。

 

「わあ、皐月様、髪切ったんですね」

 

「あ、ああ……」

 

「そっちのほうが似合ってんじゃんか」

 

以前までは長い黒髪を結んでいたが、彼自身、生命戦維との戦いが終わったことで肩の荷が降りたようだ。散髪はその現れだろう。

 

「そうだ!!写真撮ろうよ!!記念写真!!カメラも持ってきたんだよ!!」

 

マコトは背負っていたリュックからカメラを取り出して、皐月を撮影したり、自分たちを撮影した。若干、皐月は照れていたが、次第に笑顔が増えた。

 

「二人とも、デートを楽しんで来い」

 

「何、言ってんだよ。一緒に行こうぜ、兄さん」

 

「そうですよ、皐月様!!」

 

「ま、野郎三人でデートって言うのも変だな」

 

三人は笑った。誰かに操られた日常の上に立つのではなく、今、こうして自分たちで作り上げた日常の上に立っていることを噛みしめながら笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、まだなのかよ?」

 

「ちょっとうるさいよ」

 

「そうだぞ。女子のお洒落は時間がかかるんだ」

 

「でも、早くしないと追い付かれるぞ?」

 

「大丈夫よ。二人、いや、今、皐月様と合流したようだから三人か。三人の動きは把握してるし、こちらのタイムスケジュールに遅れはない。十分に間に合うよ」

 

青いレンズの眼鏡を中指で元の位置に戻した少女が言った。本能字学園生徒会会計及び情報戦略部委員長、犬牟田宝華だ。

 

「一世一代の大勝負に出るんだ!ハンパなお洒落だったら、振り向いてもらえないだろ?」

 

緑色のボリュームのある髪をポニーテールにした少女が言った。運動部統括委員長、猿投山渦。渦の手には"本日の主役"のために用意した服を抱えていた。そこから宝華がコーディネートを考え、次々と'"主役"に合わせた。

外では女性陣の着替えを待つ小柄な少年がいる。文化部統括委員長の蛇崩カノンだ。

 

「もっと大胆に露出したほうがいいんじゃないか?胸とか」

 

「胸で釣れるのは中学生までよ。ここは大人の女性らしさをだね……」

 

「お、おい、お前たち……」

 

「「"主役"は黙ってろ!!」なさい!!」

 

「はいっ!!」

 

そして、本日の主役。金髪に褐色の肌の美女。美少女ではなく、美女だ。彼女は本能字学園風紀部委員長、蟇郡苛。今年二十歳を迎えた彼女は、今、必死に自分の服を決めている二人より少し大人びている。だから、美女なのだ。

 

「そうだぞ、蟇ちゃん。もとはと言えば、蟇ちゃんがあの劣等生との関係を縮められていないのが問題なんだぞ?」

 

「すまん」

 

いつもならば、校内の風紀を取り締まるために威圧的で、厳格な態度を取っているが、今は完全に宝華と渦に圧倒されて畏縮している。

 

「いや、別に僕が楽しいからやってるだけなんだけどね」

 

「犬牟田、アンタそんな理由で?」

 

「いいんじゃないか?それくらいの気持ちのほうが楽だろ。相変わらず北関東の雌猿は頭が堅いな」

 

「蛇崩の坊っちゃん、アンタ、北関東をバカにすると竹刀の錆にするぞ?」

 

「別に北関東をバカにしてないぜ?お前はバカにしてるけど」

 

「貴様~!!」

 

「喧嘩は他所でやってくれる?まあ、そんなことしている内にできたけど」

 

宝華は苛の前に鏡を持ってきて、自分がコーディネートした姿を見せた。

 

「君は長身でスタイルが良い。それに僕たちには無い大人の魅力がある。それを上手く活用したコーディネートにしたよ。これで満艦飾君もイチコロ」

 

「おお!!蟇郡、可愛い!!」

 

「ま、蟇にも衣装か」

 

「蛇崩、アンタ!!」

 

渦とカノンが争っている間、苛は宝華がコーディネートしてくれた自分を見つめた。普段は制服を着ていて、自宅では寝るとき以外ジャージ姿だ。私服は持っているが、いわゆる勝負服が無い。そんな苛のためにコーディネートしてくれた勝負服に苛は感動を抑えられなかった。

 

「お、お前たち……ありがとう!!」

 

「礼なら終わってから言いなよ」

 

「そうよ!勝負はこっからだ!!」

 

「終わったんなら、さっさと行くぞ」

 

「何もやってない奴が仕切るな」

 

終始、渦とカノンが喧嘩をしていたが、いよいよ勝負の時を迎える。宝華は携帯端末を使って、三人の位置を確認した。

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