男三人のデート。服を見て買い物したり、ゲームセンターに行ったり、昼食にラーメンを食べたり。流太も皐月もマコトもこういう経験は少なかった。だから、この初めてのデートを満喫していた。
「しっかし、野郎三人のデートってのもな……」
「いいではないか。愛し合っているのは代わらない」
「そうだよ、流太君!!」
「意味合いが違ぇよ!!」
「流太……まさか、気になる異性がいるのか!?」
「ええ!?いるの?いるの?」
戦いが終わってからの皐月は、それまでの威厳が無くなり、若干天然が入っている。そのためマコトとの組み合わせがハマっている。二人のペースに流太の調子も狂う。
その様子を建物の影から見る四つの影。
「蟇ちゃん、来たぞ」
カノンが声を押し殺して言う。
「満艦飾の私服姿か……なかなか新鮮だな」
「そんなことよりも、皐月様の私服!!レアだわ。盗撮しよ」
宝華は携帯端末のカメラを起動した。
「そんなことやってる場合か!?ほら、蟇ちゃん、いよいよ本番だ」
「当たって砕けて来な!!」
「盗撮完了。………砕けちゃダメでしょ?いい?男は重い女は避ける。だから、緊張し過ぎて、『貴方の子供がほしい』とか言っちゃダメよ!!」
しかし、当の苛はモニュメントのように動かない。顔も強ばって美人が台無しである。
「あ、あああ、脚が……脚が……」
動かないのは見てとれた。
「おい!!劣等生が来るぞ!?」
「蟇郡、覚悟を決めろ!!」
「ほら、さっさと動いて!!」
渦と宝華の二人がかりで固まった苛を動かし、路地から歩道へと押し出した。
「あれ?蟇郡先輩!?」
押し出された苛の目の前にはマコトの姿があった。押し出されてしまって、苛は変な体制をしていたが、慌てて直立した。
「き、奇遇だな、満艦飾!!」
「はい、奇遇ですね!今、流太君と皐月様とデート中です!!」
苛は視線をマコトの後ろの皐月達に向けて、膝まずこうとした。
「構うな、蟇郡。堅苦しい挨拶は無しだ」
皐月は横目で路地に隠れている他の四天王達にも合図を送る。
「先輩もデートですか?」
「あ、いや、私は……その……」
苛はマコトを前にすっかり上がってしまっていた。四天王に服を選んでもらい、皐月に見守られ、ここまでお膳立てされている。そのため、覚悟を決めて目的を達成しなくては、四天王にも皐月にも申し訳が立たないという思いが、彼女を追い詰めていた。
「で、デートではない……相手がいないからな……」
「そ、そうなんですか?なんだか今日はいつもと違って……綺麗だからてっきり……」
「き、綺麗……か?」
「はい!すごく似合ってます!!」
路地では四天王がガッツポーズをした。
「じ、実はな……この服は猿投山と犬牟田が選んでくれたんだ!!」
「普段は極制服を着ているんで、私服姿がすごく新鮮です!!」
「ま、満艦飾の私服もなかなかだな」
ここまでは宝華の想定内だが、時間を掛ければ言えなくなってしまう可能性もあった。それを察した皐月が苛に視線を送る。五年近くの付き合いがある皐月の視線にどんな意味があるか感じ取れない苛ではない。
「ま、満艦飾……じ、実はな、今日は……お前に用が……あったのだ……」
「ぼくに?」
「ああ……ま、満艦飾……」
「先輩、顔が赤いですよ?」
「え?あ、いや、そんなことはどうでもいい。それより、満艦飾!!」
「はい!」
苛は自分の体温が上がるのを感じていた。頭の中では『満艦飾のことが好きだ。私と付き合ってください』という無難な告白の台詞を復唱している。しかし、同時に宝華に言われた、言ってはいけない告白の言葉も復唱されていた。
「ま、満艦飾!!」
「なんですか、先輩!!」
「満艦飾!!」
「はい!」
その場にいる流太と皐月、そして四天王が固唾を飲んで見守る。
「満艦飾!!お、おま、お前の……こここ……子供がほしい!!」