愛しい風紀部委員長   作:影山ザウルス

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愛しい風紀部委員長

蟇郡苛の声は大きい。風紀部で培った腹から出す声は校庭から本能字学園全体に響く。そんな声で叫んでしまったため、その場にいる老若男女全員の視線が苛に向けられ、流太と皐月、そして四天王は言ってはいけないことを言ってしまったことにショックを隠しきれない。何よりショックを受けていたのは、間違いなくマコトだった。まるで、魂を抜かれたようにきょとんとしている。

当の苛は自分が言ってしまった告白と周囲の痛々しい視線、何より方針状態のマコトを見た瞬間、その場から走り去った。

 

「お、おい、マコト?大丈夫か?」

 

流太が体を揺らしたりしても本当に魂が抜けたようにマコトは反応が無い。

 

「しっかりしろ!満艦飾!!」

 

皐月が方針状態のマコトを後ろから一喝した。さすがは本能字学園を支配していた皐月の一喝は格が違った。

 

「ハッ!!あ、あれ?蟇郡先輩は?ぼくはどうしてたの?」

 

「アイツならどっか行っちまった……」

 

「え……そんな……」

 

「満艦飾……貴様、蟇郡の覚悟を何だと思っている!?」

 

皐月は以前のように眉間にシワを寄せ、圧倒的な存在感を示しながら、マコトに怒号を飛ばした。

 

「おい、兄さん、そりゃあんな……」

 

「流太は黙っていろ!!いいか、満艦飾!!蟇郡は……」

 

「蟇郡先輩はどっちに行きましたか!?」

 

「マコト?」

 

「追います!だから、教えてください!蟇郡先輩はどっちに行きましたか!?」

 

さっきまで方針状態だったマコトの目には何か燃えるものが見えた。流太も皐月もその目を見て、安心した。

 

「犬牟田!!」

 

「ハッ!」

 

路地に隠れていた四天王が現れ、宝華は携帯端末を操作していた。

 

「いました。どうやら海岸に向かっているようです」

 

「犬牟田先輩ありがとうございます!!流太君、ごめん。用事できたから……」

 

「ああ、行ってこいよ」

 

「皐月様、四天王の皆さんもありがとうございます。満艦飾マコト!!行ってきます!!」

 

マコトは物凄い勢いで蟇郡の跡を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苛は本能字学園があった東京湾を見渡せる人気の無い海岸に来ていた。彼女はこれまでの人生で一番の醜態をさらしてしまったことを責めていた。決戦闘票の時に流太に負けた時以上の醜態だ。

 

「最低だ……」

 

周囲の痛々しい視線やお膳立てしてもらった皐月や四天王の反応もそうだが、何より方針状態になってしまったマコトの反応が辛かった。自業自得ではあるが、それを痛感している。

 

「ハァ、ハァ、蟇郡、先輩……」

 

どんなに落ち込んでいても、彼の声を聞くと心臓が高鳴った。そんな自分さえも恥ずかしくて、振り向くことができなかった。

 

「満艦飾か……先程はすまなかった」

 

「いえ、先輩の声が大きいのはいつものことですから……」

 

「その……言ったことは忘れてくれ……」

 

「あの、先輩?」

 

「すまん……一人にしてくれ」

 

「え?でも……」

 

「私のような重い女なんかより、お前にはもっと良い人が現れるはずだ」

 

「そんなことありません!!」

 

声が近くなっていた。

 

「いつもぼくを助けてくれて、ううん、ぼくだけじゃない。流太君や他の四天王の皆さん、皐月様、本能字学園に通う生徒を守る先輩は格好良いです!!

ぼくは、そんな蟇郡先輩のことが大好きになりました!!ぼくと恋人になってください!!」

 

マコトの言葉に耳を疑い、振り向いた。マコトは深々と頭を下げて手を差し出していた。

 

「満艦飾、今……いや、だが、お前はさっき……」

 

マコトが顔を上げて、苛を見つめた。

 

「さっき?……ああ、さっき蟇郡先輩が突然大声で叫んだから、ビックリしました」

 

「え?……ビックリしていた……だけ?」

 

「……はい」

 

マコトは不思議そうにきょとんとしている。

 

「え?あれ?えっと……ま、満艦飾!!」

 

苛は顔を真っ赤にさせて叫んだ。そして、マコトに飛び付いて、力一杯抱き締めた。

 

「満艦飾……満艦飾……」

 

「先輩……蟇郡先輩……く、苦しい」

 

「ハッ、すまん!」

 

苛はマコトを放して、改めて向かい合った。

 

「あ、あの、返事は……」

 

「あ、そ、そうだな。この蟇郡苛、喜んでお受けいたします」

 

「先輩、堅いです。気持ちを聞かせてください」

 

身長差がある二人が至近距離で向かい合うと、マコトはどうしても上目遣いで苛を見つめることになる。その表情が年下ということを差し引いても、苛には可愛くてたまらなかった。

 

「わ、私も満艦飾のことが……満艦飾のことが……好きだ!!」

 

瞬間、マコトは苛の首に腕を回して、自分の方に引き寄せると、彼女の唇を奪った。

何をされたかわからなかった苛だが、少しして何が起きたか理解した瞬間、頭から湯気が出るくらい顔を真っ赤にした。

 

「ま、ままま、満艦飾ぅぅぅぅ!!!!」

 

苛は自分の服の中に隠し持っていた鞭を取り出して、地面に叩きつけて鋭い音を響かせた。

 

「き、貴様の乱れた風紀、本能字学園風紀部委員長、蟇郡苛が叩き直してくれる!!」

 

「ひぇぇぇぇぇ!!」

 

マコトは慌てて逃げようとしたが、苛の鞭に捕まり、苛の目の前に引き戻されると苛のほうからマコトの唇を再び奪った。

 

「浮気なんかしたら、許さないんだからね」

 

「はい、先輩……」

 

二人はこれまで自分達が胸に閉まっていた思いを開放するように唇を重ねた。息継ぎをする度にお互いの思いを開放し続けた。

 

 

これが愛しい風紀部委員長との始まりだ。

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