パワポケSS断片集 作:艶 紫苑
暴走するバッドエンドもあるし、多少はね
とはいえ、ヒーローたちをちょっと悪役にしすぎたかなと反省しています。
歴史的大勝をした翌日、
「大変だ、らっきょうがない!」
「なんだと!?」
「何者かが買い占めていったらしい」
「どうする?」
昨日の試合で大暴れしすぎた反動がきていた。
それだけにどうしても手にいれたかったのだ。
「誰かに買いにいかせるか?」
「いや、その必要はない。逆境を乗り越えてこそヒーロー。それに相手は名前だけのイロモノだ。問題ないだろう」
レッドは不敵に笑った。
(人には油断するな、とかいっておいて。追いつめられて本性が出たわね)
決勝戦。
「何度見てもすごい名前ね」
「フッ、そんなにすごいかな?」
「いや、誉めてないから。むしろバカにしてんのよ」
「なんだって……」
「皇くん、ワシが思うに――」
「フッ、そうだね統道くん。ぼくとしたことがヒツジに年代記を教え込むような愚かな行為をしてしまったよ」
「なんですってぇ!? 恥ずかしい名前の高校に通うあんたたちに、あたしたちが真の最強ってものを教えてあげるわ! ね、ブルー?」
「……」
「はぁ……これだから凡俗はいやになるでゴワス」
「凡俗ぅ!? なに言ってんのよあんたたち!?」
「我らの母校の名をよく見るでゴワス。我らの母校の名は超最強学園。文字通り最強すら超えるでゴワス」
「そうとも統道くん。ちなみに超最強と書いてグレイテストと読む。相手が最強だろうが真の最強だろうがぼくたちはそれを超越している。ぼくたちの勝利は揺るがない」
「ゴワス!」
「キーッ」
「……ピンク、とりあえず落ち着け」
「口ではなんとでも言える。だが試合はそうはいかない」
「レッドくん、キミの話は聞いているよ」
「……なんのことだ?」
「対戦した高校の女子生徒を手籠めにしているそうじゃないか」
「根も葉もない噂だ。誰がそんなデタラメを?」
「ある人物から聞いたんだ。ヒーローたちを倒してほしい。その人物から泣きながらお願いされてね。王土に涙をこぼしながら懇願した哀れな子羊の想いに応えるのも超エリートの務め。白き王が色に狂った英雄を成敗してあげよう」
横で聞いていたピンクがふきだした。
「白き王ぅ!? あははっ」
「皇くんの名前を漢字で書くと――」
統道がすかさず口を開く。
「それはわかってるわよ? わかった上で、白き王、ぷくくっ。白き王、フルネームはなんて読むのこれ、○うていさんはレッドに嫉妬してるだけでしょ? ダッサ」
「○うていだと!? ぼくの名前は○うていでも皇帝でもない。すめら みかどだ!」
「あー、はいはい。そこはどうでもいいから」
「よくない! 大切なことだ!」
「レッドは別に手籠めにはしてないからね。仲良くなっただけ。哀れな寝取られ男――負け犬からその話を聞いて、モテモテのレッドサマに嫉妬しちゃったんだ、○うてい君」
「すめら! みかど! だ!! 」
「図星だから焦ってる~、あははっ」
爆笑されて皇の顔が真っ赤に染まる。
「皇くん、ワシが思うに――」
フォローする統道。
「フッ、そうだね統道くん――」
「なんですってぇ――」
さっきと似たようなやりとりがくりひろげられる。
そのとなりでレッドは思案に耽っていた。
(誰だ? オレが相手校の少女を救ったという情報を誰がこの少年に伝えた?)
レッドはこれまで救済した少女たちと寝取られ男たちの顔を思い出す。
記憶を遡り、ある人物に行き当たる。
(まさか……とすると、らっきょうの買い占めも……)
「嫉妬してんの? してないの?」
思案を巡らせるレッドのとなりではまだ言い合いが続いていた。
「嫉妬などしていないよ。使命感には燃えているけどね。今日は超最強学園の名はもちろん、ヒーローの横暴に苦しめられた者たちの想いも背負っている。絶対に負けられない」
「彼女を満足させられなかった寝取られ男どもと、レッドに嫉妬する○うてい君の想いねぇ……吐き気がするほどイカ臭そう。近寄らないでくれる?」
「ど○ていじゃない! す・め・ら み・か・ど!」
試合、開始。
前評判を覆し意外な展開になる。
「強大な力を持ち外敵を寄せ付けなくなった帝国も決して磐石ではない。内部からの反乱によって崩れていくのさ。歴史書をひもとけば簡単にわかることだ」
「キミたちの敗因は力をつけすぎ横暴になったこと。それに外だけでなく内にも目を向けるべきだったね」
「やはり情報を流したのは……」
「彼だけじゃない。」
「悔いることはないよ。超エリートのこのぼくがキミたちを導いてあげるよ。迷える子羊たちのクロニクルは今日この場所から紡がれていくんだ」
ゲームセット。
「……バカな、オレたちが負けるなんて」
「こんなイロモノなんかに……」
「イロモノはキミたちの方だろう?」
「ゴワス!」
『史上最悪のバッドエンド……なんということだ……』
「実況!?」
四方八方から地鳴りのような大ブーイングが飛んでくる。
人々の目はうつろで、あきらかに異常な雰囲気だが、ピュアな超最強学園の面々は異変に気づかない。
「まるでぼくたちが倒されるべき悪だったみたいな扱いはやめろ!!」
「皇くん、これはエリートの宿命でゴワス」
「なんだって……そ、そうか、そついつことか。いつの時代も優れた者は妬まれる運命か、ハハハ……しかし優勝したのにこの反応は堪えるな……」
「頭が高いでゴワス、ひれ伏すでゴワス凡俗ども!!」
BOOOOOOOOO!!
「ええい、こうなったらやけくそだ! 甲子園球場全体を震わせるこのブーイング! これこそ、ぼくたちがエリートである証だ! いいぞ、もっとブーイングを! もっと、もっとだ! みんなが大好きなヒーローを倒したぼくたちが憎いだろう? 世界一憎いと言ってくれ!! クフフ、クハハッ……ハハッアハハハハハハハハハッ!」
地球の裏側まで届きそうなほどの大ブーイングの中心で皇は泣き笑いの表情。
高笑いを響かせて崩れ落ちた。
「なんだ、精神崩壊を起こすかと思ったのに楽しそう。どこまでもつまんない連中だわ」
「楽しそう?」
「……」
翌日。会見。
会見の場にレッドもいた。
「オレたちはまだ負けていない。甲子園はプレーオフ制度だからな」
「どういうことでゴワス?」
「レッドくん、気持ちはわかるよ。ぼくもキミの立場になったら狼狽してそんなことを口走っていたかもしれないな。けれど……ん?」
「プレーオフ制度の導入が決定しました」
偉い人がやってきて、そう告げた。
皇は目を丸くする。
「へえ。それじゃ次の大会から戦い方を考えないといけないね。忘れないよう心に刻みつけておかないと」
「今大会からです」
「は?」
皇と統道は固まった。
レッドが勝ち誇ったように笑う。
統道が声を荒らげる。
「そこまでして花丸高校を勝たせたいでゴワスか!」
「統道くん。ダメだよ」
すさまじい勢いで立ち上がった統道を皇が手で制した。
統道と向き合う。
澄んだ目でのぞきこまれ統道は冷静になる。
「皇くん?」
「ちょうどいいじゃないか」
「ぼくたちはある人物からもたらされた情報により、ヒーローたちの力の源を買い占めた。それを知ったヒーローの支持者たちがぼくたちのことを卑怯者だなんだと罵っているようなんだ。だからちょうどいい。今度は小細工なしでヒーローたちに勝利しよう」
「で、でも……」
「連勝して完全勝利、超エリートの証である大ブーイングのただなかで深紅の優勝旗をいただこうじゃないか。」
皇とレッドがにらみあう。
甲子園決勝第2戦の火蓋が切って落とされた。
R18SS的に失うもののない超最強学園の勝利、
2試合目以降の結果はどうあれパワポケ10に続く、みたいな妄想です。