ラストスタリオン   作:水月一人

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はい。ハイポーションです

 ミーティアの幼馴染たちと別れた鳳は、その時になってようやく彼女から恋人のふりを頼まれた理由を知った。かつて恋に敗れたミーティアは、結果的に彼女から幼馴染(アントン)を奪ってしまった親友(エリーゼ)が気にしないように、身を引いて遠い異国まで流れていったのだ。

 

 そこで幼馴染よりもっと格好いい彼氏を作ると宣言していた彼女は、残念ながらまだ恋人を見つけておらず、それでつい、隣にいた鳳のことを彼氏だと言ってしまったようである。

 

 ともあれ、そんな役得デートを終えた二人は、流れで入ったカジノのレストランで一息ついたあと、村へ帰ることにした。結果的にもう十分というくらい遊べたし、首都へ来た目的も果たしていたので、これ以上長居する理由が無かったのだ。

 

 ところが、そうして村に帰ろうとした矢先に、鳳はとんでもないものを見つけてしまった。何気なく受け取った清涼飲料水の中に、なんとあのMPポーションの成分が含まれていたのである。

 

 しかし、未処理のMPポーションは単にドロドロした青汁でしかなく、こんな爽やかな飲料水になるはずがない。とすると、考えられるのはその成分だけを抽出してジュースに混ぜているわけだが……その方法は鳳しか知らない秘密のはずだった。

 

 なのに、どうしてこんなところに、MPポーションの高純度結晶があるんだ?

 

 不審に思った彼は、ミーティアにもうちょっとだけ付き合って欲しいと頼むと、フロアを巡回していたウェイターを捕まえて、この飲料のことを尋ねてみた。

 

 ウェイターは、詳しいことは知らないと言いながらも、流石客商売というかサービス業というか、フロアの責任者に話を通してくれ、それが厨房に伝わってジュースの出どころが判明した。

 

 なんでも、つい最近売り込みに来ていた商人から仕入れ、試しに店においたところ、評判が良かったのでそれから毎日卸してもらっているらしい。店の場所を教えてくれると言うからメモをし、感謝の言葉を述べて店を後にした。

 

「あのジュースが……鳳さんが作った商品なんですか?」

「そう。あの街の攻防戦の時に、主にMP消費する人たちが使ってただろ?」

「ああ……あの、なんか怪しげな薬」

「そう、あれ。あの成分が含まれているんだ」

 

 怪しい、は一言余計であるが、

 

「その製法は俺しか知らないはずなんだ。もちろん、俺以外のやつに作れないとは言わないけど、もしもその方法を知ってるやつが居たんなら、俺が作る前にとっくに流通していなきゃおかしいだろう。だから、これを作ったやつは、俺のMPポーションの高純度結晶を見たか、実際に使ったことのあるやつに違いない。それが誰だか気になってね」

 

 あの街の攻防戦には多くの冒険者達が参加していた。中にはスカーサハのような神人も居たから、そのうちの一人に違いない。

 

 そんな説明をしながら街を歩いていくと、問題の店が見えてきた。店は魔法具店の看板が掛けられており、入り口すぐ脇のショーウィンドウの中には、先程のジュースを瓶詰めにした商品が並んでいる。

 

 店にはひっきりなしに人が出入りしていて、客は中でキンキンに冷やされたジュースを買って帰っていくようだった。店の前には行列も出来ていて、ネットもない世界だというのに、口コミだけでこんなに繁盛するのかと驚かされた。

 

 鳳はすぐにでも中に入って誰がこの店を経営しているのか確かめたかったが、横入りして中に入るには他の客の視線が痛かった。仕方ないので鳳も行列に並び、順番を待って店内に入る。

 

 店内は魔法具屋というよりも、パン屋とかケーキ屋と言ったほうが良いようなレイアウトで、入り口から入ってすぐのカウンターの中で、メイド服のような制服を着た女性がジュースを売っていた。どこかで見たことがあるような気がしたのは、かつて国境の街でルーシーが着ていた制服に似ているからだろうか。

 

 カウンターのショーウィンドウでは、他にもポテトやバーガーのような味の濃い食べ物も売っており、魔法具屋というよりも、ファストフード店のようだった。さっき、ジュースを飲んだ時にポテチが欲しいという感想を抱いたが、どうやら売ってる側もそのつもりでいたらしい。

 

 鳳は自分の順番が来るとジュースを注文し、ご一緒にポテトはいかがですか? という店員に断ってから尋ねてみた。

 

「こんばんわ。実はここのジュースの作り方が気になって、ちょっと聞きたいんだけど……」

「申し訳ございません、こちらの製法は企業秘密でして……」

「いや、作り方は知ってるんだ。そうじゃなくて、これを誰が作ったのかを知りたくって」

「……はあ? そんなわけないでしょう。これはうちの看板商品、この街で、いいえ、世界でも唯一うちでしか売ってない飲み物ですよ? ははあ……さては、あなた、他の店からやってきたスパイですね。私を騙して製法を聞き出そうとしてるんですね? そんな手には引っかかりませんよ! 残念でした! わかったら、さっさとお引取りください」

 

 店員は鳳のことをスパイと決めつけているようだった。もちろんそんなことはないし、ちゃんとした製法を知ってることを伝えることも出来るのだが、一店員相手にそんなことしても仕方ない。鳳は歯がゆさを噛み殺しながら、

 

「いや、そんなつもりは無いんだってば。困ったなあ……良かったら店長さんか誰かに話を聞かせて貰えないか」

「あなたもしつこい人ですね。うちが繁盛してるからって、嫌がらせですか? 他のお客さんもいるんで、買わないんならさっさと帰ってください」

「そこをなんとか……」

 

 鳳と店員がそうやって揉めていると、カウンターが騒がしいことに気づいた店主が、店の奥から出てきて、

 

「ちょっと、ちょっと、お客さん! うちの店員にちょっかいかけないで……」

 

 店員と揉めている鳳を見るや、追い返そうと怒鳴りかけたが……ところが、彼は口を開けたまま鳳の顔をまじまじと見つめると、目を丸くして、

 

「……デジャネイロの旦那?」

「……え?」

「デジャネイロ・飛鳥氏じゃないですか!」

 

 突然、昔のHNを呼ばれて鳳は驚いた。その名前を知っているのは、もうジャンヌしかいないはずだ。いや、もう一人いたっけと思った時、彼はそれが誰かピンと来て、

 

「あんたは……ああーっ!! 店主! 店主じゃないか! あの国境の街の魔法具屋の!」

「そうです、私です! いやあ~……お懐かしい! まさかこんなところで再会するとは! 一体全体、どういう風の吹き回しで、こちらに!?」

「それはこっちのセリフだよ! 店主こそ、ヘルメスに残ったんじゃなかったの? あっちの店はどうしたんだよ」

「いやあ~……話せば長くなりまして」

 

 さっきまでスパイだと思っていたのに、肩透かしをくらったウェイトレスがポカンと見つめていた。どうでもいいけど、買わないならさっさと出てけという、行列客の視線が突き刺さる中で、鳳と魔法具屋の店主は再会を祝して抱き合った。

 

***********************************

 

 再会を喜びあう鳳たちであったが、このままじゃ営業妨害になってしまうからと、店主に案内されて店の奥へと入っていった。ミーティアはせっかくの再会に水を差しては悪いからと言って、店の外で待っていると出ていった。

 

 そんなこと気にしないでいいのだが……彼女ですか? とニヤニヤ尋ねる店主になんて答えればいいか分からず、からかうなよと照れくさそうに躱した。

 

 店の奥は例のジュースの製造工場みたいになっていて、従業員達が黙々と空き瓶にジュースを注いで瓶詰めしていた。その製法は詳しいことは秘密だが、ソーダ水に砂糖といろいろな果物の果汁をブレンドし、最後に決め手のMPポーションの高純度結晶を、ほんのちょっぴり混ぜるそうである。

 

 何故こんなことをするのかと言えば、言うまでもなく、大麻の依存性を利用してリピーターを増やすためである。まあ、当の本人は売れてる理由をちゃんと理解しているかどうかは分からないが……

 

「こっちに越してきた時、最初は高純度結晶を普通に売ってたんですが、中々売れ行きが芳しく無くて。ほら、こっちは神人が少ないでしょう? 普通の人は、MPが枯渇するなんてことがまずないから……そこで新しい商材が必要になって、試行錯誤していたところ、こいつがヒットしまして」

「へえ、そうなんだ」

「私はこれをコカ・コ○ラと名付けて売りに出そうとしたんですが、その名前はまずいと、多方面からお叱りをうけて……仕方ないんで、それじゃ、一口飲んだだけでやる気が漲ってくるから、スーパーヤリヤリサワーと名付けて売りに出したんですが……」

「いや、そっちの方がまずいよ!?」

「え、ええ……そうですね。こちらも何故か評判悪かったから、最終的に従業員のみんなと相談して、クライスと名付けました! どうです、格好いいでしょう!?」

「いや、それもどうかと思うが……まあ、いいや」

 

 なんだかマグロの一本釣りでも出来そうな名前である。それはともかく、

 

「商品開発の経緯は分かったよ。でも、どうして勇者領なんかにいるんだい? あんたはヘルメスの国境の街に残ったはずだろう。今、自分でも言った通り、こっちにはMPを消費する神人が少ないから、せっかくの商材も宝の持ち腐れだ」

「ええ、ええ、その通りなんですが……寧ろ、私たちの商品が強力すぎたことが災いしまして……」

「どういうこと?」

「それがですね……戦争が終わった後、私たちのクスリの評判を聞きつけて、街には神人たちが買付にくるようになりました。それこそ飛ぶように売れて、最初の頃はそれに気を良くしていたんですが……あまりに売れるものだから、ある時、帝国軍が私たちの商品に目をつけて、その製法を教えろって言ってきたんですよ。

 

 もちろん、みすみす飯の種を渡すような真似はしません、断りました。すると嫌がらせが始まって……帝国軍の総司令官がヴァルトシュタインだった頃は、それでもまだなんとか耐えられたのですが、新司令官が就任すると歯止めがきかなくなってきて、ついには身の危険を感じるようになり……

 

 このままでは製法をただで奪われるどころか、命の危険まであると思った私は、ある日覚悟を決めて、帝国軍の目をかいくぐって逃げ出してきたってわけです」

 

 鳳は奥歯をギリギリ鳴らして地団駄を踏んだ。

 

「ちくしょう! 帝国の奴ら、許せねえ! 俺たちの夢の結晶をタダで手に入れようだなんて……店主、苦労したんだなあ……なのに俺、何も知らずに力になれなくって、すまなかった」

「いえいえ、そっちこそ帝国に追われてて、大丈夫でしたか? あれから、どうしていたんですか?」

 

 鳳が近況を伝えると、

 

「なんと! 大森林に潜伏していたんですか? あんな人智の及ばぬ秘境によくもまあ……さぞかし苦労したでしょう」

「いやそうでもないんだ。住めば都とも言うし、ちょっとしたトラブルが起こるまでは、わりと快適に暮らせていたんだ……そうそう、面白いものも見つけたしね。是非、あんたに見せたいって思ってたんだ」

「面白いもの?」

 

 鳳はニヤリと笑うと、持っていた鞄の中から乾燥キノコをぽんと取り出して、

 

「これは、大森林のとある部族のシャーマンが、神との交信の際に使う特別なキノコなんだ。こいつを一口飲めば、たちどころに宇宙の深淵にたどり着けるという、幻のマジックマッシュルームさ」

「ま、幻のマジックマッシュルーム……是非! 私にも一つ恵んでください!」

「もちろんだとも! ただ、残念なことに、こいつの栽培条件は特殊すぎて、量産は出来そうもないんだ。手持ちが尽きたら、今度いつまた手に出来るかは、正直なところわからない。だから、自分で楽しむ以外は諦めてくれ」

「そうなんですかあ……残念です。でも、いいんです。私にはもう、クライスがありますからね」

「あ、本当にその名前で行くんだ」

 

 鳳は若干顔を引きつらせながら、

 

「そう言えば、そいつの材料調達はどうしてるんだ? 帝国からMPポーションを輸入しているの?」

「いやいや、旦那。そんなことしたら帝国に居場所がバレてしまう……だもんで、私一念発起してやってやりましたよ。ちょっと着いてきてください」

 

 店主はそう言うと、鳳を店の更に奥へと導いた。一体何があるんだろう? とワクテカしながら彼の後をついていくと……たどり着いた場所は、エメラルドに輝くパライソだったのである。

 

「ふぉおおおーーーっっ!! こいつは凄い! 一面の大麻……げふんげふん……MPポーション畑じゃないか!」

 

 そこは大麻の水耕栽培所だった。天井には何かの魔法道具を使用しているのだろうか、ハロゲンランプのように明るい照明が輝いていて、その下に広がる大麻畑を青々と照らしている。

 

 回転寿司というか、流しそうめんみたいに、水槽が部屋いっぱいに連なって置かれており、その中を水が循環するように流れている。ポンプからは水がひっきりなしに流れ、小川のせせらぎのような音が響いているが、あの動力はなんなんだろうか。

 

 大麻の生育状態は良く、いくつかは花が咲いているようだった。そろそろ収穫の時期らしい。店主は、どうです? 凄いでしょう? と言わんばかりに胸を張っている。鳳は、これだけのものをよく短期間に作り上げたなと、素直に感心した。

 

「俺もいつか栽培しようと思っていたのに……先を越されちゃったなあ」

「いやあ、苦労しましたよ。商材を手に入れるためとは言え、慣れない植物の栽培なんて……初めは中々花が咲かずに枯らしてしまっていたから、ある日、このままじゃいけないと思って、植生地域まで足を運んで栽培農家に助言を頂いたんです」

「そんなことまでしてたのか……生活かかってるもんな。ところで、植生地域って?」

 

 すると店主はぽんと手を叩いてから、

 

「そうなんですよ! 実はMPポーションって、四季のある地域じゃないと育たない植物だったんですね」

「え!? そうなんだ」

「元々は冷涼な四季のある地域に自生していた植物だそうで、勇者領……特にニューアムステルダムのような熱帯地域では中々花を咲かせないんですよ。ですが、その四季があるというのがポイントで、こうして光の量を調整して、四季があるように見せかけてやると、一年中花を咲かせるんです」

「へえ~……知らなかった」

 

 大麻を栽培していると、電気代が異様にかかってしまうせいですぐバレると言うが、こういうカラクリらしい。

 

「そんなわけで、今はこうして株を増やしている最中なんです。ゆくゆくはこれを世界中に広めて、天下を取ってやるつもりですよ!」

 

 店主は目をキラキラと輝かせている。鳳はそんな彼を見て、暫く見ないうちに圧倒的な差をつけられてしまったと、自分の不甲斐なさを呪った。

 

「ふう~……羨ましいよ。夢を語り合ったあの日から、店主はずっと走り続けていたんだな。それに比べて俺ときたら、大森林なんて植物の宝庫にいながら、結局何も見つけられなかった……」

「そんな! マジックマッシュルームがあるじゃないですか」

「それを店主みたいに栽培出来ていたら胸も張れただろうが、自分で楽しむだけじゃな……Aランク冒険者になって浮かれていたけど、それと引き換えに俺は何か大事なものを見失っていたようだ」

 

 鳳が落胆してため息交じりに呟くと、それを聞いた店主は目を丸くして、

 

「え!? Aランク冒険者になったんですか? 旦那が? 凄いじゃないですか!」

「ん? ああ……殆どジャンヌとギヨームのお陰だけど。ほら、俺らがトリップしてたらよく殴り込みに来たちっちゃいの、覚えているだろう?」

「ええ、覚えてますとも、よく旦那の尻を引っ叩きに来てた坊っちゃんですね……そうかあ……彼ともまだ一緒なんですね」

「他にも仲間が増えたんだけどね。そのメンバーと一緒に大森林を旅していたら、いつの間にランクが上がっていたんだ」

「そうだったんですか……あの大森林を股にかけて……大冒険ですね」

 

 店主は感心した素振りで目をパチクリさせていたが、その時、ふと思い出したかのように、

 

「ん……? Aランクって言うと、危険地帯の探索なんかもやっちゃう感じですか?」

「ああ、探索は得意にしてる分野だよ。俺がAランクになれたのも、多分、ネウロイの近くまで胡椒を探しに行ったのが効いてるんだろうから」

「ネウロイ! そんなとこまで……なら、戦地だろうがどこだろうが、お茶の子さいさいですね……!?」

「かも知れないが……何か探して欲しいものでもあるのか?」

 

 すると店主は少し迷うような素振りを見せたが、

 

「……実は、自分で確かめたわけじゃないから黙っていたんですが、MPポーションのことを聞きに行ったとき、そちらの農家に面白い話を聞きまして……なんでも大昔には、私たちの使ってるMPポーションの更に上位のポーション、ハイポーションが存在したらしいんです」

「ハイポーション?」

「はい。ハイポーションです」

 

 それはきっと、ハイになるクスリに違いない。鳳が頭の中でぼんやりとそんなことを考えていると、言葉だけで説明してても駄目だと思ったのか、店主が栽培所のすぐ隣りにある、なにやら実験台みたいなところから、ひょいととある一つの植物の実を取り出してきた。

 

「これがその植物の実なのですが……その農家の方が栽培しようとしても中々根付かないようでして、自分は諦めたからって、譲ってくれたんです。それで私はこれを持ち帰って、意気揚々と育てようとしたのですが、やはりというか、さっぱりでして……」

 

 鳳は店主が持ってきたその果実を見るなり、素っ頓狂な声を上げた。

 

「それは、間違いない! 芥子坊主だ!!」

「け、芥子坊主……??」

 

 店主は目をパチクリさせて、

 

「さ、流石デジャネイロの旦那! これがなんだか分かるんですか!?」

「ああ、わかるとも! 俺もそいつを探して大森林の中をさまよい歩いたこともあったんだ……どうやっても見つからないから、もしかしたらこの世界には無いんじゃないかと諦めていたんだが……それを一体どこで?」

 

 鳳は勢い込んで、店主の肩を揺すった。迫られた店主は頭をガクガクしながら、

 

「ボヘミアです!」

「ボヘミア……?」

 

 鳳から解放された店主は頷いて、

 

「はい……なんでも、ボヘミアのどこかに仙人みたいな人たちが住んでる山があるらしくって、そこで大昔の秘伝のハイポーションを生産しているそうなんですよ。農家の方は、たまたまその山を訪れたという行商人からこの実を手に入れて、是非、自分でも栽培してみたいと試したのですが、さっきも言った通り挫折してしまったそうです。彼はその後、問題の村を探しに行こうとしたそうですが、折り悪く戦争が始まってしまい……」

「なるほど……その農家の人はどの辺に住んでらっしゃるの?」

「アルマ国です。戦争が始まってすぐに帝国軍が駐留した国ですから、今頃どうしているのか……心配です。目的の仙人の山も、多分、アルマ国のすぐ近くでしょう。そこには今、ヴァルトシュタインの砦が築かれているんです……」

 

 つまり今、戦争でドンパチやっているその真っ只中に、問題のケシを栽培している村があるかも知れないわけだ。

 

 店主はその村を探しに行きたいが、冒険者でもない彼では、そんな危険地帯には足を踏み入れられない。それで仕方なく、戦争が終わるのを待っていたのであるが……そんなところに、冒険者として成長した鳳がふらりと現れたわけである。

 

「幻の村は、恐らくヴァルトシュタインの砦の近くにあるでしょう。私ではとても近づけませんが、Aランク冒険者である旦那なら、もしかして探しに行けるんじゃないですか? もちろん、無理にとは言いません。お礼だってさせていただきます。もし必要であるならば、ギルドを通して手数料を支払っても構いません。それでも私は、一日でも早く、ハイポーションを手に入れたいんです……どうでしょう、旦那、ここは一つ私の頼みを聞いてはくれないでしょうか?」

 

 鳳は店主の手をがっしりと握ると、一も二もなく頷くのであった。

 

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