ラストスタリオン   作:水月一人

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何かが気になる

 冒険者ギルドの中では、ルーシーに酷いことを言われて置いてけぼりを食らったサムソンがしょぼくれていた。彼が扉の前で呆然と立ち尽くしていると、すぐに二人を追い掛けるようにミーティアが横を通り抜けていったが、その後に続こうとしたら彼女は扉を開けるなりくるりと振り返り、

 

「あ、そういうの結構ですから」

 

 片手を胸の前に翳して、まるでキャッチセールスでも断るようなきっぱりとした仕草で、彼女は容赦なくサムソンを押し止めると、バタンと音を立てて出ていった。カランコロンと鳴り響くドアベルの音でさえ、今の彼ならノックアウトしそうだ。

 

 最近は慣れてきたから気にならないが、ここの女性陣はわりとああいうところがあるよなと思いつつ、流石に哀れに思った鳳は、自分の隣の席を指差し、ティーポットに残っていた紅茶をサムソンに勧めた。彼はドサッと体重を預けるようにソファに腰を埋めると、溜め息を吐きながら、スポーツ飲料みたいにそれをごくごく飲み干した。

 

「元気だしなよ、そのうち良いことあるから」

「ありがとう、勇者よ。お前、結構良いやつだな……」

 

 サムソンは空になったティーカップを弄びながら、

 

「俺はてっきり、お前に嫌われているのだと思っていた。あとから来て、ジャンヌに手を出そうとする不届き者だと」

「いや、そんなこと全然思わないよ……っつーか、あんた本当にジャンヌが好きなの? あれ、元おっさんだって知ってるだろ?」

 

 サムソンは、元々STR23時代のガチムチゴリマッチョのジャンヌを追っかけてここに来たのだ。正直、あのインパクトが強すぎて、とても恋愛感情なんて湧きそうもないものだが……

 

「もちろん知っている。だが、今は美女じゃないか」

「いやあ、普通はそこまで割り切れないと思うんだけど」

「そうか? 俺はそんなことはないぞ。それに、もしもジャンヌが男だとしても、やはり俺は惚れていただろう」

 

 鳳は驚いて目を丸くした。割り切る割り切らないレベルの話ではない。もしかして、あれか? バイなのか? 異世界にもバイがいるんだなと思いつつ、隣りに座った鳳が若干距離を取ろうとしていると、サムソンはそんな彼に気づかず続けた。

 

「惚れるとは言っても、その場合は子作りしたいとかいう感情ではなく、背中を預けるパートナーみたいな感じだろうか。こいつがいれば、俺はどこまでも強くなれる、そう思うから、そいつに自分の全てを預けられるのではないか。ジャンヌほど強い者なら、それが男だろうが女だろうが、俺には関係ない」

「背中をねえ」

 

 鳳は、裸のゴリマッチョたちがマウント合戦で背中を奪い合う姿を想像してげんなりした。オッスオッスという掛け声が聞こえてきそうだ。というか、今の美女になったジャンヌよりも、そっちの方が脈があったんじゃなかろうか。

 

「丁度、今までの勇者とジャンヌみたいな関係だろうか。俺にはそういう関係が羨ましいと思うんだ。ずっと一人でやってきたからな」

「おおお、恐ろしいこと言わないでくれる!?」

「……? 何か変なことを言ったか?」

 

 鳳は額に脂汗をかきながらサムソンの言葉を押し止めると、こんな不謹慎な話なんかしてないで、当初の予定通り、物資の運搬についての話をしようと提案した。

 

 それを受けてギルド長はテーブルの上に世界地図を広げると、例のガルガンチュアの集落が存在する北西の河川流域に丸をつけながら、

 

「ふむ……君の話によると、今回、討伐隊はこの流域からオークを一掃しようというのだな。そのために、まずは東の源流を確かめて、またガルガンチュアの村へと戻り、北へと向かう。悪くないアイディアだと思う」

「他に方法もないですしね。オルフェウス領へ流れる河川も気になりますが……」

「こっちは当面どうしようもないからな。ギルドからも注意しろと勧告を出しておくが、恐らくオルフェウス国自体が対応を表明しない限り、あっちに行きたがる冒険者はいないだろう」

「……一体、オルフェウス卿は何を考えてるんでしょうかね」

「さあ、わからん。案外、敵の手下である冒険者の手など借りないとか、そんなどうでもいいような理由かも知れんぞ。領民は堪ったもんじゃないだろうに」

 

 寧ろそれだったら良いのだが……それくらい、カリギュラに命じられたピサロの行動は話をややこしくしていた。

 

「とにかく、方針が決まってるなら、物資の調達は任せてくれ。まずは東の源流への遠征だが、これにはどのくらいの人数で、どのくらいの日数を予定しているんだ?」

「はい。こっちには獣人を連れて行かずに、冒険者だけで挑もうと思ってるんです」

「何故だ?」

「終点まで行ったら、帰りはポータルを使おうと思って。獣人は、ポータルが使えない連中が多いんですよ。だったら、最初から冒険者だけで行動した方が良いかなと」

「なるほど……じゃあ人数はこのくらいで、片道だけなら20日といったところだろうか。これくらいなら今すぐ手配しよう、時間はかからない」

「助かります。そんで、東をクリアリングしたら村に戻って、今度は獣人たちも連れて全員で北へ向かいます」

「そっちはかなりの物資が必要そうだな」

「はい。でも、獣人は冒険者と違って自分たちで獲物が狩れるから、ある程度融通は利くと思います。なので量よりも質というか、動きやすさを重視してくれた方がいいかも知れません」

「なるほど」

「そんで北の分岐点に着いたら、そこにまた拠点を構えようかと。でも今度はガルガンチュアの村みたいにポータルが使えないから、物資を運び入れるのに苦労しそうなんですよね」

「だったらポーターを雇ったらどうだろうか。ちょうど、大森林がこんな事になってしまっただろう? トカゲ商人たちが行き場を失って困っているから、仕事を斡旋してやれば喜ぶと思うぞ」

「あー、そりゃいい考えですね」

 

 ガルガンチュアの村へ行くまでに、散らばっていた獣人達を集めて何個か避難所を作ったのだが、そちらも物資不足で困っていたから、トカゲ商人の行商が復活してくれれば森全体としてもいいことだろう。

 

 そんな感じで段取りが決まれば、元々冒険者ギルドはこういった作業が得意なのだから、後は早かった。ギルド長は小一時間もあれば物資を集められるというから、鳳はそれを運ぶための人員確保に、この村で世話になっているレイヴンたちに会いに行くことにした。彼らは戦闘力はないが、何故かポータルには入れるので、頼めば聞いてくれるだろう。

 

 ギルドを出て広場を見渡してみたが、外に出ていったジャンヌたちの姿は見つからなかった。何も言わずに黙って行くのは悪い気がしたが、居ないものは仕方ない、サムソンを連れて、レイヴンたちがいるであろう牧場へと足を向ける。

 

 村の入口にある牧場へやってくると以前とは風景がガラリと変わっていた。前よりも馬の数が増えて、レイヴンの従業員たちが忙しそうに世話をしていた。二足歩行の獣人は、獣よりも人間に近いのであるが、それでもそんな彼らが馬にまたがっていると、おとぎ話から出てきたような、なんだか不思議な感じがした。

 

 牧場を取り巻くハロン棒によりかかり、見知った顔がないかキョロキョロしていると、牧場の脇にある鶏舎の横で、犬と戯れている長老とマニの母親を見つけた。長老は鳳に気がつくと、牧場の犬を引っ張って……と言うか、途中から引っ張られるようによたよたと駆け寄ってきて、

 

「ツクモー! 帰ったかー! みんな元気かー?」

「こんちは長老。元気だよ。つーか、ちょうど良かった。実は今、討伐隊はガルガンチュアの村まで辿り着いたんだ。暫く留守にしてたから、ちょっと荒れちゃってるけど、長老の家もそのまま残っていたから、そろそろ村に帰るかい?」

「ほんとう? 帰るよー! 村のみんなは元気ー?」

「えーっと、同行しているマニの部下たちはね。みんな自分の家に帰れてホッとしてる感じで、片付けしてたよ。残念ながら、長老の飼ってた豚はいなくなっちゃってたけど」

「そっかー……じゃあ、この犬を連れて帰るよ。増やすんだー」

「いや、それは牧場の人に聞かなきゃ駄目だと思うけど」

 

 犬はパタパタしっぽを振っている。ずっと長老の面倒を見てくれていたのだろうか、なかなか賢そうな犬である。鳳は苦笑いしながらマニの母親の方へ向き直ると、

 

「そんなわけで、お母さんも一緒に帰りましょう。マニの家は広いですから、お母さんも一緒に暮らせますよ。きっと彼も喜ぶでしょう」

 

 鳳がそういって話を向けると、マニの母親は混血だからか、獣人らしからぬ少し困った表情を作りつつ、

 

「いえ、私は一緒にはいけません」

 

 とか言い出した。まさか断わられるとは思わず、鳳が聞き返すと、

 

「実はレイヴンのみんなは大森林には帰らず新大陸へ向かうつもりなのです。私はそれについていこうかと」

「新大陸だって? 何でまたそんなことに」

「今回の騒動は、レイヴンが起こしたようなものですから。みんなどの面下げて帰れるかと思っているようで、責任を取るためにも大森林から出ていくつもりだったんですよ。それで、どうせ行くなら新天地を求めて新大陸へと……」

「なにもお母さんまで一緒に行くことないでしょう。あなたは何もしてないのに」

「いいえ、私は止められませんでした。仲間なのに」

 

 暴走を止められなかったことで彼女が責任を感じる必要などないと思うが、多分彼女にとって大事なのは、それが仲間だということの方だろう。なんやかんや、彼女は大森林に来てからずっとレイヴンの街で暮らしていたのだ。だから帰属意識が高い。

 

 かと言って、せっかく会えた親子がまた離れ離れになるのも忍びない。それに、マニはレイヴンたちにも仕事を与えようと頑張っていたようなので、こりゃ放っておけないぞと、鳳は説得をはじめた。

 

「責任を取ろうとする気持ちは分からなくもないけど、それで森から出て行くというのはどうなんでしょうか。残って、大森林のために尽くすという選択もあるのでは?」

「それは……私にはなんとも」

「今のリーダーって誰なんでしょうか。なんなら直接話したいんですけど」

 

 すると母親は頭を振って、

 

「いいえ、リーダーは居ないんですよ。ちょっと前、そのリーダーに振り回されてしまったから、みんなもうリーダーは決めずに何でも話し合いで解決しようと」

「そうだったんですか」

 

 力で選ばれたリーダーではなく、話し合いで解決するのは良い判断だと思うが、今は間が悪かった。流石に一人ひとりを説得して回るわけにもいかない。鳳はうーんと唸りながら、

 

「なら一度、みんなを集めてマニの話を聞いてもらえませんか。彼は落ち着いたらレイヴンの人たちにも役割を与えようと考えているようなんです。何も言わずに居なくなられては肩透かしになってしまう」

「マニが……?」

「今はあいつが族長です。散り散りになっていた森の獣人たちも、みんなあいつに従っています。獣人は根が単純なところがありますから、実力を示せば過去の諍いなど忘れてしまうんですよ。だからレイヴンも、彼の庇護下に入れば誰も文句なんか言いませんよ」

 

 母親は鳳の話を聞いて、強くなった息子のことを頼もしく思うような、様々な責任を押し付けられてしまって可哀想というような、複雑な表情をしていた。彼女は暫くそんな顔で黙考していたが、やがて諦めたようにため息をつくと、

 

「わかりました。みんなに伝えておきましょう」

「後で物資運びを手伝って欲しいと思ってたんです。その時、彼を連れてきますから」

 

 マニの母親は仲間たちに話をつけに去っていった。

 

 その後鳳は、犬を連れて帰ると言って聞かない長老を説得し、牧場主に子犬が産まれたら分けてもらうという約束を取り付け、早速物資の手配をしておいたというギルド長と共に、ギルドの前で検品を始めた。

 

 20日間の物資と言っても、詰めてしまえば背負える程度のものであるが、それでも冒険者の数は50人を下らないので、それを全て調べるのは相当手間がかかった。こんな時のためにジャンヌやルーシーを連れてきたのに、あの連中は何をやっているのだろうか。

 

 サムソンも、未だにぼーっとしていて役に立たず、いっそもうレオナルドの館に行って、スーパー執事でも助っ人に呼んでこようかと迷っていた時だった。

 

 ギルドの玄関からすぐのところにある仕立て屋から、カランコロンと音を立てて、綺羅びやかな服を着飾ったジャンヌたちがぞろぞろと現れた。

 

 こんな田舎の村にはそぐわない格好に、道行く人がはっと振返る。元々、ルーシーもミーティアも素材が良いのは知っていたが、そこに神人となったジャンヌまで加われば、どこの王宮からお忍びでやってきたのだろうかと言いたくなるくらいの壮麗さであった。

 

 しかし、本当にこの連中は何をやっているのだろうか。このクソ忙しい時に勘弁してくれと、少々ムッとしていると、そんな狭量な鳳とは打って変わってサムソンが三人の前にピューと飛び出していき、

 

「おお、なんと美しい。みんな絵画から飛び出してきたようだぞ! おまえ(ルーシー)は草原に咲き誇る可愛らしい花のようだ。おまえ(ミーティア)は一見冷たく見えるが、さしずめ氷の花のように透き通る美しさがある、流石勇者の恋人だ。そしてジャンヌよ。おまえは高嶺に咲く美しいバラだ。真っ赤に咲き誇る、気高い女王の風格だ!」

 

 サムソンは鼻の下をだらしなく伸ばしながら、そんな言葉をつっかえることなく捲し立てた。見た目に反してナンパなハゲである。さっき冷たくされたから、挽回しようと必死になっているのだろうか? 女性は褒められると弱いと言うが、三人も満更でもない様子だった。

 

 鳳がそんな4人を遠巻きに眺めていると、それに気づいたルーシーがパタパタと近づいてきて、彼の前でくるりと一回転し、

 

「鳳くん、どう? 似合うかな?」

「お、おう……」

 

 正直なところ何やってんだと思いもしたが、考えても見ればジャンヌはともかく、ルーシーは冒険者というより一般人に近かった。なのに鳳と関わってからは、ジャングルの中を歩き回ったり戦争に参加させられたりと、散々な目に遭っていたから、たまにはこういう息抜きも必要なのかも知れない。

 

 大体、鳳だって冒険の最中に大麻を吸ったり阿片を吸ったり、好き勝手やって来たのだ。これくらいのことで腹をたてるのはお門違いと言うものだろう。彼はそう思うとなんだか自分が情けなくなってしまい、サムソンを見習って彼女らに話しかけた。

 

「そうだな。見違えたよ。ルーシーもこういう格好してると、凄いお嬢様っぽいのな。レオナルドの財産を受け継ぐ日も近いかも知れん」

「鳳くんは褒め方が雑だよね! もう……私のことより、ジャンヌさんはどうかな? あれを見て、なんか思わない?」

「ジャンヌ……?」

 

 言われてジャンヌの方を見ると、薄手のドレスを着た彼女はスカートの裾を握ってもじもじしている。田園風景には似合わないが、その格好自体はかなりいかしていた。サムソンみたいに高嶺の花とまでは思わなかったが、そのまま舞踏会に出てもおかしくないくらいである。

 

「そうだね、似合ってるね」

「そうでしょう? そう思うよね? 見ててムラムラしてくるよね?」

「ムラムラて……」

「ジャンヌさん、女の子になったのに、今まで全然こういう格好させてもらえなかったじゃない。ずっと厚手のダサい服ばかり着せられてさ」

 

 そりゃまあ、モンスターと戦う前衛職だから仕方ないだろう。ビキニアーマーみたいなものがあるならともかく、残念ながらこの世にそんなものは存在しない。

 

「でも着せたらこんなに似合うのに、もったいないよね。誰も指摘してあげなかったら、ずっとあのままだったんだと思うとぞっとするよ。鳳くんもリーダーなら、ちゃんとフォローしてあげてよね。ほら、鳳くんが何も言わないから、モジモジしちゃって可愛そうじゃない。ジャンヌさんのことも、ちゃんと女の子として扱ってあげなきゃ!」

「あ、ああ、似合ってる似合ってる」

 

 ルーシーは何故だかうざ絡みしてきた。冒険者には女性が少ないからフラストレーションが溜まっているのだろうか。鳳は極力逆らわないようにしてジャンヌの前まで進み出ると、まだサムソンの美辞麗句を受け続けていた彼女に似合っていると言った。

 

 と言うか、似合ってて当然なのだ。

 

 鳳は、彼女がこういう格好をすることを知っていた。今はルーシーの見立てなのか、大人っぽいドレスを無難に着ていたが、もっとゴスロリみたいなフリフリの衣装を着こなしている姿だって見たことがあった。彼女が綺羅びやかな衣装で着飾っている姿なんて、実は飽きるほど見慣れていたのだ。

 

 と言うのも、今のジャンヌの姿とは、ゲーム時代のアバターそのまんまなのだ。その頃、鳳は彼女の中身がおっさんであることを知らず、新しい衣装を着てるのを見る度に、お世辞でもなく普通に褒めていた。だから何というか、今更過ぎたのだ。

 

 それにしても……ゲームと同じ姿だから、今まであまり気にしていなかったが、実際問題、ジャンヌのDNAとかはどうなっているのだろうか。以前のゴリマッチョのおっさんと、今目の前にいるエルフ耳の美女が同じDNAとはとても思えなかった。

 

 性別が変わっているから、少なくとも染色体の一部は確実に変わってしまってそうだが、鳳の予想ではDNAと記憶は連動するはずだから、もしもDNAが変わってしまったら、ジャンヌは記憶を維持できないはずだ。

 

 ……いや、それだって本当にどうなってるかはわからない。鳳の生きた時代には、整形技術はかなり上がっていたようだし、性転換手術というものもあった。だから案外、DNAを変えずに見た目だけをいじることは可能なのかも知れない。

 

 もしくは見た目を司る遺伝子と、精神を司る遺伝子が違うから、見た目をいくら変えても平気と言うことだろうか……

 

「あの……白ちゃん?」

 

 鳳がそんなことを考えていると、彼にじっと見つめられていたジャンヌが困ったようにモジモジしていた。それを見惚れていると判断したのか、ルーシーが何故かドヤ顔で見ていた。鳳ははっと我に返ると、

 

「ああ、ごめんごめん。ちょっと考え事をしていて。ジャンヌ、それ、似合ってるよ。見違えた。ミーティアさんも綺麗だね」

 

 鳳は取ってつけたように傍らに居たミーティアの服も褒めると、そのままルーシーとサムソンを交えて、彼女らの服の品評会みたいなことを始めた。こういうことがあまり得意でないミーティアが、般若のような顔をしながら固まっている。

 

 ジャンヌはそんな仲間の姿を見ながら、なるほど、これがミーティアの感じた違和感かと痛感していた。ルーシーは、彼が見惚れていると思っていたようだが、本人だからわかる雰囲気というものがある。

 

 あれはフラットな目つきでただ何かを考察していたのだ。恐らく彼は、今の自分の姿の向こうに、以前の男の姿を見つめていたのだろう。もしくは、更に昔の自分だろうか。今目の前にいるジャンヌにはまるで関心が無かったのだ。似合っていると言いながら、興味なさそうな口ぶりでそれが分かった。

 

 ミーティアの言う通り、それは彼に恋愛感情というものが欠けているからだろうか。それとも、性欲が? ……しかし、こっちの世界に来たときの仲間たちとの会話や、ミーティアに対するいやらしい目つきを見るからに、女性に全く興味がないわけではないはずだ。

 

 何かが気になる……

 

 ジャンヌは何かの違和感を感じたが、それが何かはついに分からず……綺羅びやかな服を纏う仲間たちに手招きされたので、今はもうそれ以上は考えずに、その輪の中に入っていった。

 

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