ラストスタリオン   作:水月一人

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私に戦争をしろっていうの?

 追い詰められたロバート派が東方で叛旗を翻していた頃、遠く離れた首都フェニックスの街はまだその知らせを聞いておらず、至って平穏な日々を送っていた。ヘルメス卿が大暴れした爪痕も、今やすっかり片付いてしまっており、街は何事もなかったかのように元通りになっていた。

 

 そのヘルメス卿は療養のために現在は首都を留守にして、噂では勇者領辺りでバカンスをしているそうだった。そのため彼の行ってきた改革が滞るのではないかと心配されたが……その穴を埋めるかのように、彼の部下である神人のペルメル・ディオゲネスが頑張っているお陰で、行政に支障が出ることも殆どなかった。

 

 ヘルメス卿は激務を嫌って辞めたがっているそうだが、彼が辞めてしまった後どうなるかと不安がっていた民衆たちも、それを見てある程度落ち着いたようだった。体制が変わってもこの国はもうちょっとやそっとじゃ揺らがない、真の実力を手に入れつつあるのだ。

 

 そんな中、ヘルメス卿の後継者候補の一人であるクレアは、東方問題を解決すべく、仲間の貴族たちを説得して回っていた。反オルフェウスで凝り固まっている彼らは、かつての宿敵に国境を開くことに難色を示していたが、クレアは改革の波が押し寄せている今こそ、東方が飛躍するチャンスであり、そのためにはオルフェウスのマンパワーが重要なのだと、その必要性を説いて回った。

 

 自分たちと同じ気持ちを共有していると思っていた東方貴族たちは、彼女の手のひら返しとも思える変わりように驚きが隠せなかったが、ヘルメス卿に感化させられたという彼女の明け透けな話を聞いてる内に、それも一理あると考えを改めざるを得なくなっていった。

 

 そもそも、戦争のせいで荒廃しきってしまった領地を、彼らは今までまともに経営しようなんて思ったことがなかったのだ。だが、戦争が終わった今、ヘルメス卿の言う通り、改めてその広大で肥沃な領土を活用出来ると考えてみれば……自分たちの領地が第二のニューアムステルダムになるというのも、夢じゃないかも知れないのだ。

 

 今までは辺境の貧乏貴族として肩身が狭かった自分たちが、この国の主役に躍り出られるかも知れないのだ!

 

 そう考えると、一時的な感情に流されるのは得策では無いのかも知れない。既にここフェニックスには、帝国各国の商人たちが集まってきており、かつて敵国同士だった両国間で、国交は現実に交わされているのだ。今後もその流れが止まらないなら、国境に領地を持っている自分たちが、ただ指をくわえて見ているのは馬鹿げた話ではないか。

 

 その事実を指摘され、国境解放の重要性を説かれ、当初は反対していた東方貴族たちも、やがて態度をあらため徐々に風向きが変わっていった。なんやかんやクレアは彼らの担ぐ神輿であり、その彼女が言うのであれば仕方ないと、彼らは渋々といった体でそれを受け入れはじめたのである。

 

 こうしてついに東方貴族たちを説得しきったクレアは、その感謝の意味も込めて、お互いの結束を確かめあう会合を開くことにした。例の鳳と密会した料亭に、東方貴族たちが集まってくる。彼らはこの大陸内部では珍しい海の幸に舌鼓を打ちながら、意気揚々とお酌して回っている自分たちのリーダーに、根負けしたかのように言った。

 

「それにしても、暫く見ぬ間に随分と雰囲気が変わりましたね、クレア。いつの間にか、ぐっと領主っぽくなりました。オルフェウスのことだって、あなたが一番嫌ってると思っていたのに、今回のような大局的な目線で物事を測れるようになっているとは、思いもよりませんでした」

「それはヘルメス卿に出会ったからですわ! あの方は私よりも年下なのに、いつも信じられないほど多くのことを教えて下さいます。実を言うと私があなた達を説得したあの言葉だって、全部彼の受け売りなのですよ。あの方は不世出の政治家なのです。だから絶対に手放してはなりませんわ。そのために、私も彼に見合う女にならなくては」

「おお、あなたは本当に彼に惚れ込んでいるようですね。失礼だが、私はてっきり、あなたが出世のために彼を利用しているだけだと思っていましたが……」

「もちろん、それもありますわ!」

 

 クレアが胸を張ってぶっちゃけると、室内に笑いが沸き起こった。彼女はニコニコしながら笑いが収まるのを待つと、

 

「ですがそれだけではありません。私には測りかねますが、あの方の頭の中にはもっと様々なアイディアが詰まっておいでなのです。それを実現することが出来れば、ヘルメスの将来は約束されたようなものでしょう……だから本音を言えば、私はこのまま彼がヘルメス卿を続けてくださればいいのにと思っておりますが、あの方はどうしてもその地位を辞めたいとおっしゃっているのです」

「おお、なんと嘆かわしい。どうして彼は頑なに地位を手放そうとするのですか?」

「それはあの方が勇者としての過酷な使命を背負っているからですわ。それが何かは言えませんが、彼はその使命に立ち向かうべく、後顧の憂いを絶つために後継者を探していたのです。それを知った時、私は打ち震えました……だから私は生涯の伴侶として、そんな彼の支えになりたいと思っているのです。そして行く行くは二人の愛の結晶が、この国を治めてくれると信じているのですわ!」

「ああ、素晴らしい! そんなあなたに想われている勇者様が羨ましい! お二人がいらっしゃれば、この国はもう永久に安泰ですな!」

 

 わははわははと、気分の良さそうな笑い声が料亭に響き渡る。彼女がオルフェウス国境を開いて欲しいと言ってきた時は気でも違ったかと思ったが……今となっては出席者はみんな、クレアがこの国を変えてくれることを信じて疑わなかった。

 

 と、そんな時だった、

 

「お楽しみのところ、大変失礼致します!」

 

 酒の席にクレアの秘書をしている男が血相を変えて飛び込んできた。みんなが気持ちよく飲んでいるところに、空気も読まずに入ってきた彼のことを、クレアは一瞬ムスッとした表情で追い返そうとしたが、すぐにちょっと様子が違うことを感じ取ると、

 

「一体何です? 急でないなら、後にしてくれないかしら」

「それが……急ぎお耳にお入れしたいことがございまして……」

「仕方ないわね。何かしら?」

「出来れば、クレア様お一人で……みなさまのお耳を煩わせるのもどうかと……」

 

 秘書は何故か歯切れが悪い、焦れったく思ったクレアはむっとしながら、

 

「東方貴族の絆は何があっても揺らぎませんわ。私たちは一心同体。何一つ隠すものなどありません。いいからそこでおっしゃいなさい」

「はあ……それでは、申し上げます。先程、ペルメル様よりお使いが参りまして、それによりますと……ロバート派がプリムローズ領内に駐留中のヘルメス軍を乗っ取り、ヘルメス卿に叛旗を翻したとの情報が入ってきたとのこと」

「な、なんですって!? どうしてそんなことに!?」

 

 その情報に室内の貴族たちの間にも動揺が走る。プリムローズ領は、自分たちの領地にも近いのだ。更に秘書の口からは、信じられないような言葉が飛び出してきた。

 

「それが……どうやら彼らは、クレア様がヘルメス卿が不在なことを良いことに、国を乗っ取ろうとしていると主張しているようです……実はヘルメス卿が療養なんて嘘で、彼はこの国を見限って出ていってしまったのだと。クレア様と神人二人は不誠実にもそれを隠して、彼の後釜に座るべく、急いで足場がためをしているのだとロバート派は言っているようです」

「クレア、まさか……それは本当なのですか……?」

 

 秘書の言葉を真に受けて、出席者がクレアに不審な目を向ける。クレアはとんでもないと首を振って、

 

「冗談じゃありませんわ! 先程も申しました通り、私は彼の伴侶としてこの国を治めていきたいのですわ! そこに鳳様がいらっしゃらないのであれば、ヘルメス卿になど何の価値も感じません。何なら領民の前でそう宣言してもいいですわ! 彼らの主張はでっち上げです!!」

「そ、そうですよね……失礼しました。しかし、クーデターとは穏やかでない……彼らが軍をフェニックスに向けたら、この国はどうなってしまうのだろうか……」

「クレア様! 急ぎ、ヘルメス卿と連絡は取れないのですか? ああ、この緊急事態に、彼は何をしてるんだ……」

 

 出席者の間に動揺が走る。クレアはそんな仲間たちに、とにかく自分がなんとかするからと言って安心させると、急ぎ神人二人と協議するために、主が不在の政庁舎へと向かった。

 

*********************************

 

 クレアが政庁者にやってくると、執務室にはもう関係者が全員集まっていた。ヘルメス卿の側近、ペルメルとディオゲネス、ヘルメス軍総司令官ヴァルトシュタイン、そして臨時行政官の千利休。現在、トップの鳳に変わり、国を治めている四人が、難しい顔を突き合わせて、机に広げた地図を見ながら何かを話し合っている。その表情はいつになく真剣で、張り詰めた空気の中に入っていくのはかなり勇気が必要だった。

 

 クレアが遅ればせながら室内に入ってきたのに気づくと、ヴァルトシュタインが腕組みしながら言ってきた、

 

「やっと来たか……秘書から話は聞いてるだろうな?」

「ここに来るまでにある程度ですけど……ロバートが挙兵をしたって本当なの?」

「どうやら本気らしい。国境警備のテリーから連絡が途絶えたからどうしたのかと思えば、軍を乗っ取られて一時的に連絡手段を失っていたようだ」

 

 クレアは青ざめながら、信じられないと言った感じに首を振った。

 

「……彼は一体何を考えてるの? 内戦なんか起こして、この国を壊すつもりなのかしら。とても、この国の為政者になろうとしていた人の考えることとは思えないわ」

 

 そんな彼女の疑問に、ペルメルが淡々と答えた。

 

「どうも、その為政者になれる目が潰えたことに彼は気づいたようだ。ヘルメス卿が後継者にクレアを指名し姿を隠したことを、どこかで聞いてしまったらしい。それで、自分がなれないのであれば、いっそこの国を乗っ取ってしまおうと考えたのだろう。テリーの密書にはそう書かれている」

「そんな……! ヘルメス卿が私を指名したのは、万が一戻ってこれなかった場合の仮定の話よ? 彼は必ず帰ってくると約束してくれたのだから、そんなのまだ決まってないに等しいでしょうに。どうしてこんな早まった真似を……いいえ、それよりも、ヘルメス卿の手紙は私たちが厳重に保管したはず。どこからその情報が漏れたというのよ!」

「さあ、我々にもさっぱり……」

「……彼の手紙は、まだちゃんと金庫の中にしまってあるのかしら?」

「確かめてみよう」

 

 クレアの疑問に答えるべく、5人は銘々に頷きあうと、執務室の金庫の鍵を取り出して来てそれを開けた。その中には、およそ一ヶ月前に、彼らがしまった手紙がそのままの状態で残されており、誰かが触ったような形跡は全くなかった。

 

「誰かがこれを持ち出したということはなさそうだな……」

「それじゃあ、この中の誰かがあいつに情報を漏らしたというの……? それは考えられないわ!」

 

 あの手紙のことを知っているのは、ここにいる5人の他には、クレアのライバルであるミーティアとアリス、勇者パーティーの仲間たちと、それからお世話になった孤児院の神父くらいしかいない。この中の誰かが大事な秘密を漏らすなんて、クレアには到底考えられなかった。

 

 そんなクレアが頭を抱えていると、ディオゲネスが今は悩んでる場合ではないと急かしてきた。

 

「とは言え、情報が漏れてしまったのは事実だ。そしてロバート様がクーデターを起こしたことも……クレア、おまえが後継者として、これを鎮圧しなければならないのはわかっているな?」

「私が……?」

 

 彼は顔を強張らせて見上げているクレアの目を真っ直ぐ見ながら、

 

「ヘルメス卿が不在な今、公務は我々が引き継いでいるが、重要な決断を求められるものは、後継者であるおまえとロバート様が合議で決めることになっている。その片割れであるロバート様がこうして挙兵してしまったのだから、これを止めるのはおまえしかいないだろう」

「そんな……私に戦争をしろっていうの?」

 

 まさか鳳の不在時にこんなとんでもない決断を迫られるとは……クレアが青ざめていると、ヴァルトシュタインが横から、

 

「心配するな、俺が勝たせてやるよ。その代わり、おまえは士気高揚のためにも、鎮圧軍に同行しろ。なあに、戦場と言ったって、後ろの方でふんぞり返っていればいいのさ。流れ弾も飛んでこない」

「でも怖いわ。どうしてもやらなきゃ駄目なの?」

 

 クレアが弱気な姿を見せるも、ヴァルトシュタインはまるで意に介さないと言った感じで首を振った。そんな有無を言わさぬ彼に変わって、苦笑交じりに利休が言った。

 

「クレア様、決断のときですよ。今あなたが立たなければ、ヘルメス卿が帰っくる国がなくなってしまうかも知れません」

「それは困るわ!」

 

 鳳が帰ってこれなくなる……その言葉が、思いの外すんなりと彼女の胸に入ってきた。ミーティアもアリスも、彼を追いかけてネウロイに向かったのだ。勇者でもなんでもない彼女らが、あんなに思い切った行動をしたというのに、ヘルメスに残った自分が恐れを為して隠れていたのでは、彼女らに示しがつかないだろう。

 

 彼女らに出し抜かれ、鳳に失望されてしまう……それだけは御免だ。彼女はフンッと鼻息を荒くして気合を入れると、

 

「わかったわ。国を預かるというのはこういうことなのね。私は彼が帰ってくる場所を守らねばなりません。ヴァルトシュタイン様、どうか私に力を貸してください」

 

 クレアが貴族らしく恭しいお辞儀をしてみせると、ヴァルトシュタインは当たり前だと言わんばかりに、無言で頷き手を差し出した。彼女はそんな彼の手をギュッと握り返し、肩を怒らせると、

 

「そうと決まれば、すぐに戦支度よ。甲冑ってどこで買えば良いのかしら?」

「おまえは戦うわけじゃないんだから、そんなものは要らん。せいぜい動きやすい服と、急所を守る革の防具があればいいだろう。そっちは俺が用意してやるよ」

「わかったわ。動きやすい服ね。早速、新調しましょう」

「せいぜい派手なのを選んでくれ、大将がみすぼらしい格好をしていたら、兵士の士気に関わる。おまえさんの場合、いっそ茶会用のドレスでもいいくらいだ。まあ、それじゃあ動きにくいだろうが」

「難しい注文だけど、とにかく着飾ればいいのね……いくつか見繕ってくるから、あなた達、後で意見を聞かせてちょうだい」

 

 クレアは周りで話しを聞いていた三人にそう言い放つと、まるで遠足が待ちきれない子供みたいに、弾むような足取りで執務室から出ていった。

 

 バタンとドアが閉まって、彼女が廊下を駆けていく足音が段々小さくなっていく……ヴァルトシュタインはその足音が完全に消えるまで待ってから、左右の肩を交互に上げ首の骨をポキポキ鳴らしながら、一段低いトーンで言った。

 

「……行ったか。お嬢さんが気丈に振る舞ってくれて助かるよ」

「まったくですね。戦争と聞いたら、もう少し渋るかと思いましたが」

「流石、勇者の伴侶などと大言壮語するだけあるな……さて」

 

 彼は利休の相槌に返事をしながら、ぐるりと残った3人の顔を見回すと、

 

「クレアはああ言っていたが……今回の件をリークしたやつが、どうやらこの中にいるようだな。機密は厳重に管理されていた。職員の誰一人にも漏らしていない。なのにロバート派にコソコソ告げ口をした野郎は誰だ?」

 

 強面であるヴァルトシュタインのじろりとした睨みを受けても、3人は顔色一つ変えずに涼しい顔をしていた。3人とも自分は関係ないと言いたいのだろうが、こんな疑いをぶつけられたら、普通ならもう少し慌てなければおかしいだろう。彼らは明らかに何かを隠しているのだ。

 

 ヴァルトシュタインはフンと鼻を鳴らすと面倒臭げに、

 

「正直に名乗り出る気はないか……? ならば、こういうのはどうだ? お前ら全員、ちょっと目を瞑れ。いいか? 俺が良いと言うまで、絶対に目を開けるんじゃないぞ?」

 

 3人は言われた通りに目をつぶった。ヴァルトシュタインはそれを確認すると、

 

「よし、じゃあ改めて質問しよう。情報をリークした奴は正直に手を挙げろ。今度は俺しか見てないし、俺は誰にも言わないから安心して手を挙げるんだ」

 

 彼はみんなに目を瞑らせると、そんな茶番としか思えない質問を繰り返した。

 

 普通に考えればこんな質問、バカ正直に答える者などいないだろうが……ところがこの茶番が功を奏したとでも言うのだろうか、その後、思いのほかあっさりと犯人は名乗り出た。

 

 ヴァルトシュタインのその馬鹿げた質問に、なんと、その場にいた4人(・・)4人(・・)とも手を挙げたのだ。

 

 彼らは各々手を挙げながら、ちらりと薄目を開けてはニヤリと笑った。ヴァルトシュタインも手を挙げながら、クククッと愉快そうに忍び笑いを漏らすと、

 

「おまえら……揃いも揃って、いい性格してやがんなあ。俺はてっきり、こういう汚い真似をするのは、そこの軍師様くらいのものかと思っていたが」

「心外ですね。私はそれこそ、閣下に相談されたから策を弄したまでのこと……寧ろ、先代の腹心であったあなた達神人が裏切ってるとは思いませんでしたよ」

 

 利休の問いかけに、ペルメルとディオゲネスが複雑な表情で答える。

 

「裏切りと言われるのは釈然としないが……我々の仕えるべき方は、今となってははっきりしているからな」

「鳳様がクレアを後継者と指名するなら、それに従うまでのこと。いつまでもロバート様にのさばっていられては困るのです。さっさとご退場願わねば」

 

 利休は二人の答えを聞いて、さもありなんと頷きながら、

 

「考えることは皆同じという事ですか。今後、ヘルメス卿が正式な手続きを踏んで後継者を指名すれば、候補であったロバート様に対しても、その地位を安堵しなければなりません。このままでは国内に争いの火種が残るのは必定。ですから何かとイチャモンをつけてでも、彼を排除しておかねばならないのですが……こういうことは、あの若い二人にはまだ難しいでしょうからね。我々、大人が手を汚さねば」

「俺たちは首都を離れ独立した軍を率いているテリーを使って、ロバートを陥れるつもりだったんだが……渋るあいつを説得している最中に、何故か孤児院の神父がのこのこやってきて、ロバートを焚き付けたって言うじゃないか。それでテリーも腹が決まったようだから、万事オッケーなんだが……あの神父が率先して情報リークするなんて思えねえ。裏で操ってるのは誰だ? って話してたんだが……」

 

 ヴァルトシュタインが不思議そうに尋ねると、ペルメルが応えて、

 

「クーデターを起こすとなると、孤児院にも戦火が及ぶ危険があったからな。ベル神父に話をつけておかないわけにはいかなかったんだ。事情を話すと、彼はそれならばと、メッセンジャーを買って出てくれた」

「鳳様がいる内は、ロバート様は何も出来ないだろうが、その鳳様が不在と知れば、きっと今がチャンスとばかりに動き出すと踏んだんだ……予想通りそうなったよ。後は反乱の鎮圧だけだが、既に国内の神人の支持は取り付けてある。我々が人間ごときに負けるはずがない」

「はっ! なるほどな。お前らも、なかなか根性が腐ってやがんな。さて、それじゃ改めて……」

 

 ヴァルトシュタインと利休が手を差し出すと、神人二人はお互いに顔を見合わせてからその手を握り返し、

 

「これから俺たちは一心同体だ。鳳が帰ってきて新体制が整うまでに、俺たちでクレアをこの国の王にしてやろう」

 

 彼のその宣言を合図に、四人は交互に握手を交わした。

 

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