ラストスタリオン   作:水月一人

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更に魔王は現れる

 レオナルドの館から見たニューアムステルダムは文字通り火の海だった。あの美しい街並みが業火に巻かれ、至るところから何本もの黒煙が立ち上っている。そしてその中心にはとてつもなく巨大な影が蠢いていた。そんな生物は有り得ない、いるとしたら魔王だけだ。鳳たちはそんな信じられない光景を目の当たりにして、驚愕の叫び声を上げているカナンの下へと向かった。

 

 屋根から降りて玄関を駆け抜けると、ちょうど騒ぎを聞きつけてきたスカーサハとルーシーが応接室の方へと駆けていくところだった。鳳たちはまだ腰を抜かしている御者を飛び越えるようにして館の中に入ると、そんな彼女らと並走するように狭い廊下を走った。

 

「ルーシー! 爺さんは?」

「部屋でぐっすり寝てるよ。騒ぎが起きてるのに、ピクリとも動かないんだ。よっぽど疲れているのかな……」

 

 もしくはこの騒ぎと何か関係があるのか……鳳は嫌な予感を抱えながら応接室へと駆け込んだ。

 

 彼がそこにあったケーリュケイオンを鷲掴んで振り返ると、遅れてカナンが飛び込んできた。その手にはアロンの杖が握られており、既に旅装に着替えているところからして、恐らくあれを倒しに行くつもりだろう。

 

 鳳は彼と視線が合うと、もちろん自分もついていくと頷きながら、

 

「カナン先生! 先生の話じゃ、この世界が元に戻らない限り、魔王は現れないはずじゃなかったんですか? それともあれはオークキングみたいに自然発生したやつなんでしょうか?」

 

 カナンは青ざめながら、もちろん違うと首を振って、

 

「いいえ、あんな規模の魔王が現れたというのに、何の前兆もなかったのは考えられませんよ。オークキングだって、それ以前にオークの大発生がありましたよね。それにいくらなんでも前の魔王から、出現する間隔が短すぎます。あれが自然発生したものとは思えません」

「……でも、空間位相がずれてるこの世界には、魔王化情報は来ることがないんじゃないですか? 上から見えるのは、あくまで元の惑星アナザーヘブンでしょう? だからカナン先生も、爺さんに世界を元に戻してほしいって言いに来たわけですし」

「そのつもりだったのですが……」

「あんたがここにいるのがバレて、神の奴が強引に潰しに来たんじゃねえか? 案外、レオが不調なのもそのせいかも知れないぜ」

 

 ギヨームの言葉に根拠は無かったが、説得力はあった。なにより他に可能性が思いつかない限り、最悪の事態を想定しなければならないだろう。鳳たちが突然の事態にどうすればいいのかと困惑していると、カナンは苦々しそうに唇を噛み締めながら、

 

「もしそうであるなら、非常に厄介ですが……基本的な流れは何も変わりません。とにかく、まずは魔王を倒さなければ」

「そう……ですね。どっちにしろ、ニューアムステルダムがあんなことになってるのに放っておくわけにはいかない。今行ける俺たちでなんとか対処しなきゃ。ギヨーム、マニ、ルーシー、それでいいかな?」

 

 鳳の言葉にそれぞれが頷く。彼はそれを見てから応接セットの上に置かれていたオルフェウスの竪琴を持ち上げ、

 

「これはスカーサハ先生が持っててくれませんか?」

「私がですか……?」

「刈り取りが始まったらそれを使わなきゃいけません。俺もルーシーも自分の杖があるから、それは共振魔法(レゾナンス)が得意な先生に持ってて欲しいんです」

 

 スカーサハはほんの少し躊躇いを見せたが、すぐに思い直したように竪琴を受け取ると、

 

「わかりました。あなた方の使命に比べれば、私が尻込みしている場合ではありませんね。それでは、私もあなた方と共に参りましょう」

「お願いします。それじゃみんな、行こう!」

「いえ、ちょっと待ってください!」

 

 鳳たちが装備を整えて部屋を出ようとしたときだった。その機先を制するようにカナンが大声を上げて彼らを止めた。鳳がたたらを踏んで何事かと振り返ると、翼人は深刻そうな顔をしてこめかみに指を当てながら、何かブツブツ呟いている。

 

「まさか、そんな……そちらにも現れたというのですか? それでベル神父は……」

 

 意味不明な独り言をつぶやいているカナンが何をしているのか分からず、最初は不審な目を向けてそれを眺めていることしか出来なかったが、鳳はすぐに彼が念話をしているのだと気づいて、それが終わるのをじっと待った。恐らく、相手は孤児院の医師アスタルテだろう。彼女がこのタイミングで連絡を寄越したのは、どう考えても悪い知らせにしか思えなかった。

 

 カナンは話を終えると珍しく怒気を孕んだような上滑りな調子で、

 

「すみません。まいった。ああ、つまりですねえ? 今、アスタルテから連絡がありました。それによると、どうもヘルメスの方にも魔王が現れたらしいのです……」

「はあ!?」

 

 ギヨームがまるで狂人でも見るような目つきでカナンのことを見つめている。鳳もなにかの間違いじゃないかと思ってそう聞いてみたのだが、

 

「それが……話を聞く限り、どうも本当らしいのです。現在、ヘルメス国境では正規軍とロバートの反乱軍が対峙していたのですが、その戦闘の最中、突如として魔物の大群が現れて人々を襲い始めたのだとか。その中心には巨大な龍がいて、人間ではもう手がつけられない状況みたいなんです」

「そんな!? クレアや、ヴァルトシュタインは無事なんですか?」

「わかりません。今、ベル神父と共にアスタルテが現地に向かっているところです。その規模からして、もしかしてこっちの方が本命なのかも知れません……」

 

 鳳たちはさっき見たニューアムステルダムの光景を思いだした。火の海に沈む街の中で暴れる巨大な影……あれが魔王でなければ何だと言うのか。そしてそれと同等か、それ以上の規模の魔物の群れが、ヘルメス国境に現れたというのだ。

 

 どうする? どうすべきか? 本当にあっちの方が本命だというのなら、ニューアムステルダムを見捨ててヘルメスに注力すべきだろうか……とは言え、実際に見ていないものを恐れてこちらを疎かにするわけにもいくまい。

 

 結局、両方やるしか無いだろう。鳳は覚悟を決めるとカナンの目をまっすぐに見据えて言った。

 

「俺たちがニューアムステルダムの方を引き受けます。カナン先生は、仲間と合流して、ヘルメスの方を叩いてもらえませんか?」

「そう役割分担するのが無難でしょうか……わかりました。あちらの方はあなた方が到着するまで、我々だけで持ち堪えてみせましょう。ただし普通に考えれば戦力の分散は愚策です。もしもこちらの魔王が倒しきれなければ、再合流することを優先してください。その時の判断はそちらにお任せします」

「わかりました」

 

 鳳が承諾し、彼らはそれぞれの目的のために動き出した。

 

********************************

 

 ニューアムステルダムは火の海だった。冒険者ギルド本部にいたエリーゼは、窓口で勤務中に突然地震のような揺れに見舞われた。人々の悲鳴が轟く中で、彼女が慌てて机の下に身を隠していると、まるで巨大な何かが近づいてくるかのように、ドシンドシンとした音が響いてきた。やがてその振動はどんどん大きくなってきて、次の瞬間、ものすごい轟音と共に天井がガラガラと崩れて、受付は瓦礫の砂埃であっという間に真っ白になってしまった。

 

 その凄い煙の中で息も出来ずにエリーゼが涙を流しながら耐えいていると、やがて薄れゆく白煙の向こう側から異様な悪臭が漂ってきた。まるで腐肉を焼いたような酷い臭いに耐えきれず、逃げるように机の下から這い出してきた彼女は、その時、天井に空いた穴の向こうにぎょろりと光る巨大な目を見た。

 

 考えても見ればギルド本部は5階建ての建築物で、その一階にある受付の天井が崩れるなんてありえないのだ。なのにその天井が崩れて、そして目の前には冗談みたいに巨大な化け物の目が光っている。

 

 何がなんだかさっぱりだが、良くないことが起きていることだけはわかった。恐れおののいた彼女の体が自然に一歩二歩と後退っていくと……その時、彼女の靴の下にむにゅっとした物を踏みつける感触がした。

 

 天井の目から視線を逸らして恐る恐る足元を見回せば、そこには馴染みの冒険者や、さっきまで受付にいた客たちが血まみれになって倒れていた。その殆どがうめき声をあげていたが、中にはもうそれすら出来なくなった者たちもいた。多分、その中には死者も含まれていただろう。

 

「きゃあああああーーーーーーっっ!!!」

 

 彼女はあまりの恐怖に頭がついてこれず、悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。その声に気づいた巨大な目が彼女を捉える。エリーゼは内心まずいと思いつつも体が動かず、その場でへたり込んでいると、

 

「エリーゼっ!!!」

 

 遠くから誰かが駆け寄ってきて、そんな彼女の体を引っこ抜くように抱えて走り出した。

 

 次の瞬間、ズズンと地響きがして、また室内が真っ白になった。アントンは背後から追いかけてくる砂埃から逃れようと、彼女を肩に担ぎながら必死に走り、ついさっきまで玄関ホールだった瓦礫の山を乗り越えて、建物の外へと飛び出した。

 

 ギルドの中も外も、どこもかしこも悲鳴だらけだった。

 

 泣き声が波のように伝染していき、あちこちに血だらけの人々が倒れている。

 

 そして二人はそれを見た。

 

 5階建てのギルド本部よりも、まだずっと高い体高。そして5~60メートルはある2ブロック先まで続く巨大な全長。体はでっぷりと太って角ばっており、その巨大な口からはおびただしい数の牙が突き出して、ゴオゴオとまるで台風のような呼吸音が聞こえた。

 

 それは巨大なカバのような生物だった。いや、生物というのすらバカバカしい、おとぎ話にしか存在しないようなオブジェクトだ。何しろそれはあまりに巨大すぎて、その体を維持することが出来ずに、あちこちの肉が崩れ落ちていた。きっと体温が高すぎるせいで、常に全身から熱を放っており、その焼け焦げた肉片が地面に落下するたび、その衝撃で肉が脂を撒き散らし発火するのだ。

 

 そんな巨大カバは轟音のような雄叫びをあげると、たった今自分が壊したギルド本部の中に口を突っ込み、ガツガツと顎を上下に動かした。その瞬間、建物の中から悲鳴と泣き声とバキバキという何かが砕かれるような音が聞こえてきて、それと同時に汚物を撒き散らすようなとんでもない悪臭が漂ってきた。

 

 こいつ……人を食っているのか?

 

 アントンがそんな化け物の姿を呆然と見上げていると、その肩に乗っていたエリーゼの体がずしりと重くなった。あまりの出来事に、ついに彼女は意識を失ってしまったのだ。そんな彼女の重みが彼を冷静にさせた。

 

 アントンは何が何でも彼女だけは守らねばならないと決意すると、完全に弛緩して水袋みたいになった彼女の体を担いで、必死に街を駆け続けた。

 

 それは鈍重そうに見えて驚くほど機敏に動いた。その巨体から生み出される力はパワフルで、直線であれば爆発的な速度で加速していき、あっという間に時速100キロくらいに達してしまった。そのくせ、方向転換も器用でちょろちょろと動き回り、逃げ惑う人々を次々と捕食していく。その体が向きを変える度に飛び散る肉片が周囲にばらまかれて発火し、ニューアムステルダムはあっという間に火の海になった。

 

 もちろん、人々はただ逃げ回るだけではなかった。冒険者ギルドの冒険者達は仲間が殺られたのを見るや、すぐに対抗しようと結束し、あらゆる手段を用いてそれを攻撃したが、まるで歯が立たなかった。

 

 一応、攻撃は当たるし、相手は殆ど避けようとしないのだが、仮に剣や銃弾がその体に当たったところで、ダメージにならないのだ。何しろそれはあまりにも巨大で、当たってもせいぜい皮膚を掠める程度のことでしかない。おまけに、その表面の肉を自分で撒き散らしているくらいなのだから、外部から攻撃しても殆ど意味がないのだ。

 

 しかし、考えようによっては、自分の体を撒き散らしながら動き回っているのだから、そんなのは暫くしたら自滅しそうにも思える。ところが、そいつは人を食うたびにその体を修復し、補っているようなのだ。

 

 寧ろ、それは自分の体を維持するために、この人口密集地で大暴れしているように思えた。ここは正にその巨大カバの食卓だったのだ。

 

 人を食い続ける限り体力を回復し続けるのであれば、対抗する手段は一つしか無いだろう。とにかくそいつに捕まらないように逃げ回るだけだ。冒険者も、連邦議会の憲兵も、すぐにそれに気がついた。だから彼らの次の行動は、逃げ惑う人々を誘導することだった。

 

 だが、逃げると言っても一体どこへ逃げればいいのか? 地震なら広い場所に逃げればいいが、あれが相手では取皿にごちそうを並べるようなものだった。かと言って建物の中に避難しても、あれは平気で建物を破壊して死肉を漁るだろう。街から出ても同じだ。埋立地であるこの周辺は開けていて、逃げ出そうとする人々の行列を見つけたら、あれは喜んで飛んでくるはずだ。

 

 今もそうして人々が密集した場所を見つけては、そいつは機敏に方向転換してその集団を食い尽くすのだ。人間が動物であることも仇になった。人間の本能は集団になると落ち着くのだが、今はそれじゃ逆効果なのだ。

 

 かと言って、みんな散り散りになって逃げろと叫んでも、恐怖している人々はそれが出来ない。結局、みんなが逃げるのと同じ方向に逃げようとして、そして巨大なカバの餌食になっていった。

 

 一体、どうすればいいんだ? 逃げ場がない……アントンは気絶するエリーゼを抱えながら、そいつの捕食から逃げ惑い、冒険者仲間と助け合いながら悲嘆に暮れていた。

 

 と、その時だった。

 

 突如、雨雲も無いのに空から複数の閃光が迸り、ビシャン! っと耳をつんざく音が響いて、その巨大な生物の背中に雷が落ちた。さしもの化け物もこれには堪らず、悲鳴のような雄叫びをあげると悶絶するようにその巨体を横たえた。ズズンと砂煙が舞って、またいくつかの建物が倒壊する……

 

 空を見上げれば、それはまだ豆粒のような大きさであったが、ニューアムステルダムの上空に、確かに人の影が浮かんでいた。5つの影の中央が杖を振るように動いたと思ったら、また雷鳴が轟きカバの巨体が跳ね上がった。怪物がそれを嫌って走り出すと、今度はまた別の影が、ゆっくりと降下しながら逃げ惑うカバに追い打ちをかけた。

 

 ギヨームは空中で巨大な対物ライフルを次々作り出すと、そいつの四肢に狙いを定めて銃撃をお見舞いした。それは怪物の関節を的確に捕らえており、逃げようとするそいつの動きを止めた。

 

 彼が一撃すると銃身が壊れてしまうライフルを放り投げると、それはすぐに光の礫を発して虚空へ消えていった。それがまるで流星のように、黒煙に染まる空に流れて、人々の目を奪った。

 

「勇者様だ! 勇者様が助けに来てくださった!」

 

 どこからともなくそんな叫び声が街に響いて、小波のようにあっという間に歓声が街を埋め尽くしていった。上空から飛来する5つの影は街に降り立つと、すかさずギヨームが高所に陣取り、マニが暴れる巨大カバのヘイトを稼ぐべく、その顔の周りをうろうろと飛び回る。

 

「鳳!」

 

 鳳がルーシーとスカーサハを連れて地面に降りると、その着地点を目掛けて助けを求める人々が殺到してきた。鳳は彼らを気の毒に思いつつも、今は構ってられないのでポータルを作り出すと、これをくぐってさっさと逃げろと怒鳴るように指示した。人々は涙を流し、お礼を言って次々と潜り抜けている。

 

 そんな中にはアントンの姿もあり、鳳はその肩に担がれているエリーゼの姿を見つけると、

 

「アントン! 彼女は大丈夫なのか?」

「ああ、大丈夫だ。今は気を失ってるだけだ」

「そうか。なら良かった。ポータルの先はヴィンチ村に繋がってる。ミーティアさんがいるから、彼女に会ったら安心するだろう。早く連れてってやんな」

 

 鳳がそう言って彼の背中を押すと、アントンはほんの少し涙目になりながらそれに感謝しつつも、

 

「ありがとう。だが、こんなこと俺が言っても無意味かも知れないが……俺にも何かやれることは無いか? ここに来るまで、大勢の仲間が犠牲になったんだ……!」

 

 アントンは目を真っ赤にしながら真剣な表情で鳳のことを見つめている。見れば彼の背後にも見知った顔がちらほら見えた。数十人の冒険者達が決意を秘めた表情でそこに立っていた。鳳は、彼らの気持ちはわかるが、恐らくやれることは何も無いと、後ろめたい気持ちを抱えながら、そう伝えようとした時……ふと、自分の持っている杖を見て、

 

「そう言えば……みんなのMPを分けてくれないか? 俺の武器に貯めておくことが出来るらしいんだ」

「MP? そんなもんで良ければいくらでも取ってってくれて構わないが……どうやって渡せばいいんだ?」

「えーっと、どうすんだろ……物を吸い込むのとはわけが違うよな」

 

 鳳が杖を矯めつ眇めつしていると、後ろの方からルーシーの焦れったそうな声が聞こえてきて、

 

「イメージすればいいんだよ。そうしたら杖が勝手にやってくれる」

「イメージ……?」

「ゴスペルは神の兵器だから、神に奇跡を祈るように、杖にお願いすればいいんだって。ミッシェルさんがそう言ってた。私はそれはイメージすることだと思ってるよ。杖はアストラル界と通じているから、イメージが大事なんだ」

 

 鳳は、彼女が急に小難しいことを言い出したので面食らったが、このゴスペルを使うことには彼女に一日の長がある。そう思い直すと彼女の言う通りにしてみようと、杖を握りしめながら目をつぶった。

 

 とは言え、MPを吸い取るイメージってどんな感じなのだろうか? いまだかつてそんなこと、やったことも無ければ、見たことも聞いたこともない。彼はどうしたものかとほとほと困り果てたが、その時、ふと昔読んでいた漫画を思い出して、

 

「オ……オラにみんなのMPを分けてくれ!」

 

 何でこいつ急にカッペみたいになってんだ……? そんなみんなの冷たい視線を浴びながら鳳がそれを口にすると、次の瞬間、冒険者たちの体がぼやっとした光に包まれて、

 

「お?」「……なんか吸われてる気がする」「ちゃんとMP減ってるぞ」「マジか」

 

 彼らは口々に不思議な体験に驚いている。鳳はそんな彼らにお礼を言うと、

 

「それじゃあ、本当にここは危ないから、もう行ってくれ。あれを倒せるか分からないけど、生きていたらまた会おう」

「頼んだぞ、鳳。いや、勇者様! おまえだけが頼りだ!!」

 

 アントンはそう言って鳳の肩を抱くと、不安そうに何度も振り返りながら、ポータルの向こうに消えていった。

 


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