ラストスタリオン   作:水月一人

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天使にふれたよ

 何の物資もなく大海原で漂流し続けて四日目、このムリゲーに一度は死にかけた鳳であったがどうにか生き残り、ついに念願叶って人類と遭遇したと思いきや、その相手は何故か魔族を引き連れた奇妙な天使だった。

 

 特徴的な片翼を持つ少女のような見た目をした天使は、少なくとも魔族をけしかけたりすることはなかったので、当面は信用してよさそうであった。しかし、元はと言えばカナンを助けに来た鳳にとって、天使は敵のはずである。もしも正体がバレれば、相手の態度がガラリと変わるかも知れない。そうならないよう、当面は相手の出方を窺ったほうがいいだろう。

 

 そんな風に警戒しつつ、鳳は彼女の筏に乗り込むと……とりあえず、おちんちんを隠したいから、やっぱちょっとタイムと言ってからまたポッドに戻り、数日間着た切りで変な臭いを発し始めている服に着替えてから、改めて彼女の筏へと戻った。

 

 こんな大海原のど真ん中を旅していたであろうその筏は、全長5メートルはあろうとても大きなものであったが、何というか非常に粗末なつくりをしていた。

 

 その製法は恐らく、単にまっすぐな木を選んで切り倒し、横に並べて雑にロープで縛っただけだ。ところどころに木の皮がそのまま残っていて、足が棘だらけになりそうだった。

 

 こんなもんが浮くのか? 嵐に遭遇したら一発でお陀仏じゃないか? と思いもしたが、彼女が涼しい顔をしてそこに立っているのだから平気なのだろう。筏の中央にはマストが立てられていたが、それは帆を張るためではなく、そこからロープを伸ばして屋根を作り、彼女を日光から守るシェルターにしているようだった。

 

 それじゃ推進力は何なんだと普通なら驚くところだろうが……鳳の見立てでは、たぶん周囲を泳ぎ回っている魚人たちに押したり引いたりしてもらってるのではなかろうか。

 

 そう考えると、本当にこの天使は何者なのか。鳳が知らないだけで、こっちの世界では天使と魔族は仲がいいのだろうか……?

 

 鳳は、その辺のことを相手に正体が勘づかれないように遠回しに聞いてみたが、

 

「それはこっちのセリフなのだが。君こそ一体何者なのか。数日前、空から火球が降ってくるのを見た。その火球の様子がほんの少し変わっているように見えたから、こうして落下地点を目指して来たのだが……あれは君が乗っていた船だったのか? 君は空から落ちてきたのか?」

「いや、それは……質問してるのはこっちだろうが。おまえこそ本当に誰なんだよ。俺の常識じゃ、天使と魔族が仲がいいなんてあり得ないんだが、どうしてあの連中はおまえの言うことを聞くんだ?」

「ふむ……」

 

 天使はその言葉には即答せず、少し考えるそぶりを見せてから、

 

「……どうやら、お互いに話せない事情があるようだ。このままでは話にならない。ならば、こうしたらどうだろうか。お互い、言いたくないことは言わない。相手も無理には聞かない。そうすれば、少しは実りのある会話が出来るだろう」

「まあ、とりあえずはそれが無難か。いいだろう」

「ならばまずは自己紹介からだ。私はアズラエル。神域で生物を研究していた天使(エンジェル)だ」

 

 神域という言葉は初耳であったが、名称の雰囲気からして、恐らくはカナンの元職場といったところじゃなかろうか。さっきから妙に堅苦しい口調だと思っていたが、それは彼女が研究者だったからだろう。見た目は幼い少女であるが、天使である以上、見た目通りの年齢ではないのだろう。

 

 鳳も、すぐに自分も自己紹介をしようと思ったが……先行してこっちの世界に来たカナンたちから、自分の名前が割れていたらどうしようと思い、偽名を使うべきか少し考えた。だが、それこそ自分の立場を知るいい機会だと思い、いつでも戦闘が出来るように気を引き締めつつ、ゆっくりと、それでいて相手にはっきり聞こえるように名前を告げた。

 

「俺は(おおとり)(つくも)、人間だ。わけあって、ここで漂流していた。決して怪しいものではない……と言っても信じられないだろうから、まあ、とりあえずは危険な奴じゃないとだけ信じてもらえればそれでいい」

「ふーん……鳳……聞き覚えがない苗字だが、そんな家名が人類にいただろうか? 白という名前も珍しい響きだ」

 

 アズラエルは鳳の名前を聞いて少し不審がってはいたが、その様子からしてどうやら彼の名前はまだ天使たちには割れていないようだった。しかし、聞いたことが無い苗字とか珍しい名前とか、おっしゃる通りではあるが、もしかしてこいつはすべての人類の名前を記憶していたりするのだろうか……相手が天使だけに可能性はゼロではないから、今後はやっぱり少し気を付けた方が良いのかも知れない。

 

 鳳は、そんなアズラエルの気を逸らすかのように、急いで話をつづけた。

 

「そ、そんなことよりアズにゃん! 君はこんな大海原で何をしていたんだ? 見たところ、俺と同じで遭難している……ようには見えないが」

「あ、アズにゃん? アズにゃんとは私のことか? 初対面なのに、馴れ馴れしい人だな、君は。まあ、いい。何をしていたかと問われると少々難しい。わけがあってマダガスカルに向かっている最中なのだが……」

「マダガスカル!? マダガスカルってアフリカの島だよな……じゃあ、ここってインド洋?」

「ん? ああ、そうだが。ここはアフリカ大陸東方沖、マダガスカル島まで約50キロの海上だろうか」

「50キロ!? 意外と近いじゃねえか……」

 

 そのくらいなら、天気のいい昼間なら山のてっぺんくらいなら拝めたかも知れない。強い日差しを避けて夜に行動していたのが仇となったか……地球が丸いから仕方ないこととはいえ、鳳は落胆のため息を吐いた。

 

 アズラエルはそんな鳳の顔を覗き込みながら、

 

「その通り、近いんだよ。私が海を進んでいたら、夜空に火球が流れて、目的地の方角へと落ちていったのだ。気になるだろう? だから私はこうして様子を見に来たのだが……やはり、君はあの火球について何か知っているようだな?」

「それはまあ……まあまあ……っていうか、アズにゃんはどこから来たのよ! この辺の海には確か、めぼしい島はなかっただろう?」

「モーリシャス島があるが。私ならパースから来た。というか、天使なのだからそれが当たり前だろう?」

 

 アズラエルは何故そんなことを聞くの? といった感じの不審な目を向けている。もしかして、常識外れなことでも言ってしまったのだろうか。分からないから対処のしようもないのであるが……

 

 そんなことよりもっと気になることがあった。パースとは確かオーストラリアの都市の名前だが、オーストラリアからこんな粗末な筏で旅してきたというのは、どう考えても信じ難い。詳しい距離までは分からないが、多分、何千キロもあるはずだ。

 

 なんでそんな危険な旅をしているのだ? 何か事情があるのか? 鳳がその点を少し強めに突っ込んでみると、

 

「それはお互いに聞かない約束だったろう……それに、海流に乗れればそう危険なことでもないんだ……私にとっては……君こそどこから来たんだ? この辺には人は住んでいない。私と同じように、あれに乗って流れてきたのか?」

「いやあ~、さすがにそれはないでしょ」

「ならば、やはり、あの火球の正体はこれだったのか……それで、これはなんだ? 見たところ、飛行機には見えないが。ミカエルの作った秘密兵器かなにかだろうか」

 

 アズラエルは、鳳の乗っていた脱出ポッドを指さす。彼は首を振って、

 

「飛行機とは違うよ……っていうか、ああ~、ミカエルさんって方、やっぱりいらっしゃるのね? もしかしてガブリエルさんなんて方も?」

「?? 当たり前だろう。なんだか君は言ってることがすべておかしい。まるで違う世界から迷い込んできたかのようだ」

 

 正解! 100ポイント! 鳳は、もういっそのこと、そう叫んでしまいたかったが、まだ目の前にいる天使のことを信用しきれずに口を閉ざしていた。彼女が最初に言っていたお互い様という言葉通り、隠し事をしているのはあちらも一緒なのだ。彼女の目的が分からない以上は、こっちの事情もまだ話せない。もどかしいが、今しばらくはそうするしかないだろう。

 

 鳳がそんなもやもやした気持ちを抱えながら黙っていると、同じようにもやっとした表情でアズラエルが続けた。

 

「私を騙しているように見えなかったが……もしや、君は私を追いかけてきたドミニオンなのだろうか?」

「ドミニオン!」

 

 その名称は、この世界に落ちてきてからずっと引っかかっていた。エミリアが今すぐ逃げてと言っていたが、結局、こいつらは何者なんだろうか。鳳は慌ててぶんぶん首を振ると、

 

「いや、全然違うよ。寧ろ、そのドミニオンってのは何なのか知りたかったんだ。ドミニオンってなんなんだ? もしかして、アズにゃんもその仲間なの?」

「は? 私は天使だぞ? 何故そんな発想が生まれる」

「違ったか。そういや、自分を追いかけてきたって言ってたな。そうか……天使はドミニオンになれないんだな?」

「いよいよ怪しいな、君は。お互いに、言いたくないことは言わないでいいと言ったが……」

 

 アズラエルはほんの少し距離を取る。鳳はそんな彼女に向かって敵意はないといった感じのジェスチャーをしながら、

 

「待ってくれ。常識がないのは自分でも分かってるし、本当に申し訳なく思っている。出来れば事情を話したいとも。でも、もう少し情報を仕入れてからじゃないと、その判断がしづらくて……」

「何を判断するというのか。私を拘束するつもりか?」

「しないしない! ……って、拘束? さっきからなんか態度が変だけど、あんた実際何やったんだ?」

 

 アズラエルはもちろんその質問には答えず、じりじりとにじり寄ってくると、

 

「最初からおかしいと思っていたのだ。見たところ君は丸腰だが、魔族と素手で戦える人間なんているわけがない。さっき、君の船から光球が放たれたのは、見間違いじゃなかったんだな。ゴスペルをどこに隠している? 船内か?」

「ゴスペル? いや、そんなもん持ってないよ。つーか、ゴスペルってケーリュケイオンの亜種のことだろ。持ってたらこんな苦労してないっつーの」

「嘘をつけ!」

 

 アズラエルはそう叫ぶと、問答無用で体当たりをしてきた。見た目は幼女でしかない彼女を相手に、完全に油断しきっていた鳳はそのタックルをまともに受けてしまい、筏の上から落っこちてしまった。すると、それまで周囲をスイーっと泳いでいた魚人たちが寄ってきて、今度は筏に這い上がろうとしている鳳の邪魔をし始めた。

 

「うわ! こら! ギー太! やめないか!」

 

 ギィギィと鳴き声を上げながらまとわりついてきた魚人たちは、鳳を水の中にまでは引きずり込もうとはせずに、手加減してくれているようだった。多分、それもアズラエルの命令なのだろう。どうして魔族が天使の言うことを聞いているのかはわからなかったが、とりあえず、彼女はまだ鳳を完全に敵視しているわけではなさそうだった。

 

 彼女は筏にしがみついている鳳の横から舞い上がるようにジャンプすると、まるで義経の八艘飛びみたいに脱出ポッドの上にひらりと着地した。その身のこなしは実に軽やかで、やはり天使だけあってか、見た目とは全然違って身体能力は相当高いようである。

 

「船内を改めさせてもらう」

「ああ、もう……好きにしてくれよ」

 

 彼女の疑いの視線が突き刺さる。鳳はそんな彼女のジト目を口をとがらせて受けつつ、諦めたように手の平をプラプラとさせてみせた。

 

 アズラエルはそんな鳳のジェスチャーを見てからハッチの中に入っていこうとし、一瞬、そこから漂ってくる強烈な男臭さに辟易した表情を作って見せてから、改めて気合を入れなおしてポッドの中へと降りて行った。

 

 しかし、すぐにまた外に出てくると、

 

「なんだこの機械は。壊れているじゃないか」

「ああ、そうだよ。じゃなきゃ、こんなところで遭難なんかしてないだろうよ」

「本当に、通信もせずこの大海原で漂流してのか……よく一人で生きていられたな」

「いやあ、実際、一度死にかけたんだけどね……」

 

 そう言いかけた鳳はポンと手を叩いて、

 

「ああ、そうだった! なあ、もしかしてあの時のパンって、君がくれたの?」

「パン? なんのことだ?」

「ほら、さっき。起きたらパンを握ってたんだけど……」

 

 アズラエルは首を捻っている。その様子からして、彼女がとぼけているようには思えなかった。だとしたら、あのパンは本当にどこから出てきたのだろうか? まさか、魚人たちが施してくれるとは思えない。もしそうなら、滅茶苦茶しけってそうだし……

 

 鳳がそんなことを考えていると、アズラエルはうんざりと言った表情でため息をつきながら、

 

「とにかく、こう散らかっていては捜索は困難だが、やるしかないか。もう少し待っていたまえ」

 

 彼女はそうぼやくように呟いて、また船内に戻ろうとしている。鳳はそんな彼女を慌てて呼び止め、

 

「あー、ちょっと待て。あんたが言ってるゴスペルって、多分、これのことだろう?」

 

 鳳はそう言うと、意識を手のひらに集中させて、MPをエネルギーに変換し、光の球を自分の手のひらに浮かべて見せた。

 

 そして驚いているアズラエルに良く見えるように、ゆっくりと筏の周りを一周させてから、最後は空に向かって射撃するように飛ばしてみせた。エネルギーを使い果たした光球は、何もない空中でパンと弾けて消えた。

 

 アズラエルは、暫し呆然とその光球が消えた辺りを見上げた後、まじまじと鳳の方へ視線を向けて、

 

「……今のは、何をどうやったんだ?」

「どうって言われても、感覚的なもんだから困るんだけど……」

 

 鳳は後頭部を搔きむしりながらそう言うと、彼のことを羽交い絞めしている魚人ごと、海から引きずり上げるようにして筏の上に無理やり這い上がった。そして、それを阻もうと躍起になっている魚人たちを振りほどくと、さっきアズラエルがやってみせたように、くるりと空中で一回転してから脱出ポッドの上へひとっ飛びに着地した。

 

 彼女にすれば、それはあまりにも想定外だったろう。一瞬にして間合いを詰められ、すぐ目の前に着地した鳳のことを、アズラエルは身動き一つ取れずに呆然と見上げていた。彼から遅れてやってきた水滴がパラパラと雨のように降り注ぎ、彼女の顔を少し濡らした。

 

 アズラエルはその刺激でハッと我に返ると、隣に並ぶ鳳の背中をペタペタと触りながら、

 

「驚いたな……君はもしかして、天使だったのか? それにしては羽がないようだが……」

「いや、普通の人間だよ。触っても羽なんかどこにも生えていないぜ」

「……それじゃあ、何故、君は奇跡を使えるんだ? そんな人間いるわけがない」

「奇跡? 奇跡ねえ……」

 

 鳳は彼女の反応を見て渋面を作った。どうやらアズラエルは、自分の使っている力の正体を詳しくは知らないらしい。カナンも言っていたことだが、この世界の天使は神への依存心が強すぎるのだ。故に自分たちの使う力を、神の奇跡と信じて疑わない。

 

 現実は、彼らのいう奇跡とは、高次元方向からやって来る第5粒子エネルギーを利用して、P99のような機械が起こしている現象に過ぎない。だから、その仕組みを理解さえすれば、もはやそれは奇跡でも何でもない、制御可能な力になるのだ。

 

 もっとも、じゃあどうやって使うの? と言われてしまうと、今度は結構な前提条件が必要だから、おいそれと説明するのは困難なのだが……そんなことをアズラエルに言っても、今の彼女の好奇心に満ちた瞳が許してくれないだろう。

 

 だから、ここは適当に会話を合わせて、誤魔化しておいた方が無難かも知れない……鳳がそんな風に悩んでいる時だった。

 

 ゴオオオオオオオオォォォォーーーーーーーー………………

 

 という、地響きのような耳障りな音が、突然遠くの方から聞こえてきた。音の方を振り返っても、波に隠れて今は何も見えなかったが、何かがこちらに向かってきているようなのは確かだった。

 

 一体なんだろうか? 鳳が首を捻っていると、隣に佇むアズラエルの方は、その音が何なのかが分かったようで、

 

「しまった! 今すぐにここを離れた方が良い」

「なんでだよ?」

「あれはきっと、ドミニオンの乗る船の音だ。こんな海のど真ん中で、あんな騒音を立てる連中など他にはいまい」

「ドミニオンだって!?」

 

 何故かアズラエルが避けたがっていたり、エミリアが警戒しろと言っていた連中のことである。その正体は未だに判明していないが、ここは彼女の言う通り、逃げた方が良いのだろうか?

 

 とはいえ、どうやって逃げろというのだろうか。鳳がおろおろしていると、アズラエルは舌打ちし、

 

「何故、見つかったんだ……やはり、君が仲間を呼んだということなのか?」

「そんなことしてないって!」

「どっちにしろ、私には逃げるという選択肢しかない」

 

 彼女はそう言うや否や、脱出ポッドからまたひらりと飛び降りて、自分の筏へと帰っていった。主が戻ると、それまで散らばっていた魚人たちが舞い戻ってきて、筏を取り囲んで引っ張り始める……

 

 どうやら、本当に彼女はこんな方法で何千キロも旅してきたようだ。とても信じられないが、そこまでして向かおうとしているマダガスカルに、一体何があるというのだろうか……?

 

 魚人の曳航する筏は、思いのほか速く進んでいく。このままここに留まるか、彼女についていった方が良いのだろうか……鳳はほんの少し迷ったが、結局のところ彼女についていくしかないと、えいやっと助走をつけて筏に飛び乗った。

 

 しかし、そんな決断も無駄になってしまったようだった。

 

 ゴオオオオオオォォォォーーーーーー!!

 

 という耳障りな音はいよいよ大きくなり、その音を発しているものが肉眼で確認出来るくらい近づいていた。

 

 それは、大型のホバークラフトだった。風の力で海の上に船体を浮かばせ、後方に並べた巨大なプロペラで推進力を得ている。水の上を走りながら、非常に速度を出しやすい構造の船である。

 

 そんなホバークラフトが、今、二人が乗る筏を阻むかのように、旋回しながら前方へ躍り出ようとしていた。

 

 筏を引っ張っていた魚人たちは、それを見て一斉に海の中へと潜っていった。アズラエルはホバークラフトを苦々しげな表情で睨みつけている。鳳は筏の隅っこで、事態の成り行きを見守る以外にやれることは何もなかった。

 

 アズラエルに逃亡の意思がないと判断したのか、やがて船が船速を落とすと、甲板から上陸艇が下ろされ、ゆっくりこっちの方へと近づいてきた。

 

 ホバークラフトは海に消えた魚人たちを警戒してか、停船することなく絶えず動き続けている。鳳はその大きな船の艦橋を見上げながら、もはや捕まるのは仕方ないとして、果たしてどっちについた方が得なんだろうかと、漠然と皮算用していた。

 


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