ラストスタリオン   作:水月一人

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パース会談②

 天使たちがこの世に誕生してから数千年、その間に一度として起こらなかった異常事態が起きた。三人の熾天使(セラフィム)に、ほぼ同時に天啓が訪れたのだ。天啓によれば、全ての天使は今すぐ神殿へ集結せよとのことだった。それが16年前、まず最初に起きた出来事だった。

 

 何が起きたかは分からないが、緊急事態であることだけは理解した三人は、すぐウリエルにパースにいる天使を招集するよう指示を飛ばして、自分たちは神の座する神殿へと向かった。そして彼らが目にしたのは……既にルシフェルにより破壊し尽くされた神の姿であった。

 

 何故ここにルシフェルがいるのか? 万全とは言い難いが、セキュリティシステムが張り巡らされたこの中枢で、多数の天使たちの目を掻い潜って、こんな奥まで侵入者が到達するなんてことはあり得ない。そのあり得ないことが起きたのもさることながら、数百年前に神によって処分されたはずの三人がいることもまた彼らには信じられなかった。

 

 サタンこと、かつて四大天使の長だったルシフェル。バアルこと、最強の名を(ほしいまま)にした智天使ザドキエル。アシュタロスこと、慈しみの熾天使イスラフィル。全員今でこそ悪魔の名を冠されているが、元々は神域でもトップクラスの大天使たちだった。

 

 しかしいつまでも驚いてばかりも居られないだろう。神を破壊されたからといって気落ちしている場合ではない。ミカエル、ガブリエル、ラファエルの三人はすぐに悪魔との交戦を開始した。

 

 一方、神殿の外では駆けつけた天使たちが、たった二人の人間を相手に足踏みを強いられていた。神を破壊されたことで、突如として力を失ってしまった下位天使たちは、ジャンヌとギヨームという、見たこともないような攻撃をする人間を前に為すすべがなかった。

 

 やがて、ウリエルを含む上位天使たちがやってきたことで押し返し始めたが、それでも神殿の入口を守る二人を排除するには至らなかった。

 

 こうして神殿への侵入を頑強に阻んでいるということは、中ではもっとまずいことが起きているに違いない……ウリエルはそう判断すると、他の天使たちの協力を得て、決死の覚悟で二人の間を突破し、どうにかこうにか神殿に転がり込んだ。

 

 するとまさに神殿内では、悪魔三人を相手にミカエルたちが苦戦を強いられていた。ルシフェルたちは強く、一対一で対峙する限り、ミカエルたちに勝ち目はないようだった。

 

 だが、ウリエルが来たことで数的有利に立った四大天使は、間もなく形勢を逆転しはじめた。そしてついに、ラファエルとウリエルの二人がかりで、敵の最強格であるザドキエルを倒すことに成功すると、勝敗は決定的となり……互いに2対1に持ち込まれたルシフェルとイスラフィルは、その後殆ど抵抗することもなく、あっけなく四大天使たちの前に敗れ去ったのであった。

 

 四大天使は侵入者の排除に成功すると、すぐに神の修復を開始した。神と言っても、それは死を宿命付けられた生命ではなく、21世紀に作られた機械なのだから、実は修理が可能なのだ。と言うか、そのために四大天使はいるようなものなので、彼らに負けた時点で、ルシフェルの計画は破綻していた……はずだった。

 

 なにはともあれ、大急ぎでバックアップの部品を集めて応急処置をしたことで、神は最低限の機能を取り戻し、そして天使たちに奇跡の力が戻ってきたことで、外で大暴れしていた二人は一気に形成が苦しくなって、間もなく捕らえられてしまった。

 

 人間に苦戦させられたことにショックを受けていた天使たちは、二人のことを処刑しようとしたが、神によって人間に危害を加えてはいけないという強い制約を受けていたために断念し、逮捕拘禁に留めた。

 

 そして二人は別々に刑罰を受け、ジャンヌは記憶を奪われた後、ドミニオンとして人間社会に放り込まれた。そんな経緯があるため、実はジャンヌは人間たちの間では英雄だが、天使たちには嫌われているらしく、だから左遷気味にマダガスカル方面軍に飛ばされていたらしい。

 

 まあ、その辺の話はおいておくとして、鳳はちょっと気になる点があって、訊いてみた。

 

「あんたら四大天使は、ルシフェルたちを倒したって言うけど、神が破壊されていた時、天使は力が使えなかったんだろう? なのに、どうやってあの人たちに勝てたってんだ?」

「力を使えなかったのは大多数の座天使(スローンズ)たちのことだ。天使には階級があって、第一位の熾天使(セラフィム)と第二位の智天使(ケルビム)は生まれつき、他の天使にはない固有のスキルを持っている。例えば、報告で貴様はゴスペル無しでエネルギー弾を作り出したとあるが、それくらいなら我々も出来る」

 

 そう言ってミカエルは自分の周囲に、ファンネルみたいにいくつかの光弾を作り出してみせた。正直、それは意外だったが……涼しい顔をしているところを見ると、どうやら他の三人も同じ芸当が出来るのだろう。

 

 思い返してもみれば、アナザーヘブン世界での魔王戦の時、カナンやベル神父は当たり前のように身体強化魔法や、他の神人たちが使わないような大魔法を使っていた。

 

 その事実に今のミカエルの言葉を加味すれば、つまり熾天使と智天使は、生まれつき無意識的に現代魔法も使える神人だった、ということなのだろう。

 

「勝利したとは言え、襲撃の爪痕は深く、神域はそれから数日間混乱状態に陥っていた。それがようやく落ち着いてきたのは、我々が不眠不休で神の修復を行い、終わりが見えてきてからだった。しかし日常が戻ってきてほっとしたのも束の間、我々はまた新たな問題に直面した。アズラエルが、『再生』が出来なくなっていることに気づいたのだ。

 

 それでも当初、我々はまだ事態を楽観視していた。神の修復は万事順調にいっており、再生の機能が失われたのは、単に急ピッチで作業を進めたせいで、どこかに手違いが生じているためだろう。そう考え、我々は注意深く作業を見直し始めたのだが……しかし、再生機能はそれから何をやっても元に戻らず、更には天啓まで来なくなってしまって、我々はどうすることも出来なくなってしまったのだ」

「天啓ってのは?」

「熾天使だけが受け取ることが出来る、神の啓示のことだ。要は神との交信記録のことだな。神はこの世の全ての天使と人間の願いを、祈りを通じて聞いているのだが、その全てに返事を返すことはない。必要なものだけをピックアップし、熾天使を通じて返してくる。我々はそれを天啓と呼んでいる。それは滅多にあるものではないが……流石に、全人類が困っているような状況で、全く来ないのはおかしいであろう」

「『再生』だけじゃなく、その『天啓』機能も壊れちゃったってことか……」

「いや、それがそうでもないらしい。実はつい最近、16年ぶりの天啓が訪れたのだ……まさかあると思わなかった突然の天啓に驚かされたが、それで我々はシステムが壊れていないことを知ったわけだ」

「ふーん……それはどんな内容だったの?」

 

 するとミカエルは不機嫌そうな表情を隠そうともせずに、

 

「何故、敵である貴様に教えなければならないのだ。少しは考えて物を言え」

「ああ、そう。そうですよね」

 

 鳳は面倒くさそうに肩を竦めてから、

 

「言う必要がないならそれでもいいよ。取りあえず、壊れたと思ってたものが実は壊れてなかったってことで良いんだな?」

「そうだ」

「それってつまり……神は16年間、その機能がありながら何もしなかったってことだよな?」

 

 鳳は眉を顰め、腕組みしながら続けた。

 

「さっきのあんたの話じゃ、神は祈りを通じて人類からフィードバックを受けている。なら、この16年間で何が人類を悩ませていたかも知っているはずなのに、敢えて無視していたことになる……つまり……実は神は全機能が回復しているんだけど、能動的に再生を拒否しているってことなんじゃないのか?」

 

 鳳としてはかなり大胆な予想をしたつもりだったが、それについては当然考慮していたのだろう。ミカエルは特に驚くこともなくこう返した。

 

「そう考えることも可能だろう。だが、何のために?」

「それは……人類を滅ぼすつもりで? いや、まさかなあ……」

 

 ミカエルは厳かに頷いて、

 

「もしもそのつもりなら、すべての機能を停止するほうが理に適っているだろう。しかし、神はそうはなさらず、他の全ての奇跡は今まで通り使える。故に、再生機能だけが何らかの事情で回復出来なかったと考えたほうが辻褄が合うだろう」

「そうだなあ……」

 

 鳳は納得せざるを得ず、消極的に頷いた。ミカエルはそんな鳳の顔を無表情に見つめながら続けた。

 

「……襲撃後、天啓が来なくなると我々天使たちは段々バラバラになり始めた。アズラエルのように、神の啓示を待っていられないからと、人類救済のため独自な方法を模索したり、人間だけに任せてはおけないと、禁忌と知りながら戦いに赴く天使たちも出はじめた。

 

 元々、天使ははじめに天啓があって、神のために働くのが使命だった。故に、実は人間に対する慈愛を持たぬ天使も当たり前に存在する。そういった連中は、天啓が来なくなると自らの殻に閉じこもり、中枢(アクシズ)にすら来なくなってしまった。今では使命を果たさず、ひたすら享楽に耽る者までいる……そういう天使の態度に、人類の中には我々を見限る者が出てきている始末だ。

 

 襲撃を境に、天使と人間との間にまで亀裂が入ってしまった。それもこれも全部貴様らプロテスタントのせいだ。一体、貴様らは何なんだ! あの悪魔(ルシフェル)は、何がしたかったんだ!?」

 

 鳳は慌てて釈明した。

 

「誤解しないで欲しい。先生は……ルシフェルは寧ろこの世界を救いたがっていたんだ。実はゴスペルを使い続けると、この宇宙はいずれ崩壊してしまう。彼はそれに気づいて、その使用を止めようとしていただけなんだよ」

「そんなことは知っている!!」

 

 ところが驚いたことに、ミカエルはそう返してきた。鳳が寝耳に水な返答に言葉を失っていると、彼は苛立たしそうに続けて、

 

「私はルシフェルの仕事を受け継いだのだぞ。そんなことにはとっくに気づいている」

「な、なら、どうして先生の気持ちをわかってやれないんだ?」

 

 するとミカエルはますます不機嫌そうに顔を歪めて、

 

「ゴスペルを使ってもすぐに宇宙が壊れるというわけじゃない。だが、使わなければ人類はすぐにでも滅んでしまうだろう。なのに、今すぐ利用をやめられるわけがないではないか。やつは順序を間違えていたのだ。もしもゴスペルの使用をやめさせたいなら、魔族を駆逐することが先決だろうが」

 

 鳳はミカエルのその言葉に何も言い返せなかった。言われてみれば確かにそうだ。アナザーヘブン世界でカナンに説得された時は、所詮別の世界の話だからとあまり深刻に捕らえてはいなかった。だが、こうしてこの世界に来てみて、実際に魔族に苦しめられている人々を見て、改めて思った。

 

 今、救済すべきは宇宙ではない。人類の方だ。

 

「なるほど……つまりゴスペルは核兵器のようなものだというわけだな。それなら、あんたの言ってることも少しは理解できるよ。でも、魔族を駆逐するのに、あとどのくらいゴスペルを使用しなければならないんだろうか?

 

 それに、天啓が無ければ、あんたらは動くことすら出来なかったんだろう? 何故、神はそんな制限をしたんだろうか……? 本気で魔族を駆逐するつもりがあるのなら、敢えて人間だけを戦わせるより、天使と協力して戦ったほうが遥かにマシだろう。

 

 ガブリエルと話した限りでは、人類が天使を頼りすぎると、永劫回帰のようなものが起きてしまう可能性があるからってことだけど……そんな虚無主義(ニヒリズム)を持ち出さずとも、人類は歴史を学ぶことで進歩していくことが出来る生き物じゃないのか。

 

 俺は、神のやってることには矛盾があるように思える。とても人類を救おうとしているとは思えない」

 

 今度はミカエルが黙る番だった。実際、彼は一度神が破壊されるまで、何の疑問も抱かずにいたのだから。

 

 鳳はそんな主天使に向かって改めて問いただした。

 

「つい最近、天啓があったってさっき言っていたが、その内容はどうしても話せないのか?」

「それは絶対に不可能だ。何を言われても教えるわけにはいかない」

「……あんたらはそれに従うつもりか?」

「そのつもりであるが……正直、意見は割れている。私は反対派だ」

 

 ミカエルがへそを曲げるようにそっぽを向くと、ガブリエルとウリエルがとりなすように、彼に向かって愛想笑いを向けていた。それを見るからに二人は賛成派、何の反応も示さないラファエルは中立といったところだろうか。

 

「……今回ばかりは、従わないほうがいいんじゃないか?」

 

 鳳が窺うようにそう言うと、ミカエルが悪魔のように目を吊り上げ、

 

「そんなこと貴様に言われたくはないわ! 大体、本当にそうしたら、貴様も後悔することになるんだぞ? いいんだな!?」

「いや、内容がわからないんだから、良いも悪いもないんだけど……」

 

 どうやら、なんやかんや言ってミカエルも天啓に従うつもりでいるらしい。鳳は少々疑問に思い、

 

「しかし、どうしてなんだ? さっきのゴスペル核兵器論みたいに、あんたにだって考える頭があるんだろう? なのに、神の矛盾に気づいていながら粛々と従っているのは……あんたらにとって創造主の言葉は絶対だからってだけなのか?」

「無論、それもあるが、天啓は100%だからだ」

「……100%?」

 

 その言葉には四大天使全員が頷き、

 

「天啓で預言されることは、100%的中するのだ。かつて、オーストラリアに魔王が侵入し、人類に危機が訪れた時も、天啓によって滞りなく押し返すことに成功した。それも何度も、何度もだ。マダガスカル獲得も神の啓示によるものだった。尤も、そのマダガスカルは後に天使達のスタンドプレーで失ってしまったわけだが……つまり、我々が考えるよりも、天啓に従っていたほうが、よほどいい結果に繋がるのだ」

「ふーん……だから従い続けてるわけか」

「いや、それはおかしいんじゃないの?」

 

 鳳はミカエルの言葉に納得しかけたが、思わぬ方向から待ったがかかった。振り返るとそれまで黙っていたミッシェルが愛想笑いを浮かべていて、いつものように肩を竦めながら話し始めた。

 

「タイクーンには何度も言っているけど、100%の予言なんてものはあり得ないんだよ。この宇宙に物理法則が存在する限り、現在過去未来は不確定なものなんだ。それが100%的中するってことは、人為的な操作が行われているとしか考えられない」

「どういうことです……?」

「そうなるように仕組まれてるってこと。つまり、人類も魔族もそうするように誘導されているんじゃないかな」

「馬鹿な! それではまるで神は魔族にも通じているということになるではないか!」

 

 ミッシェルの言葉に、流石に黙っていられなかったのか、ミカエルが不快そうに横槍を入れる。

 

「でも、そう考えないと辻褄が合わないよ。100%の予言なんてものはないんだ」

「それは貴様が神のように万能ではないからではないか」

「そう考えるのは君の自由だけどね」

 

 ミッシェルは天使長相手にも動じることなく言い切った。鳳は二人のやり取りを聞いて、ふと思いついたことを口にした。

 

「神って何なんだ……?」

 

 その言葉に、不快そうに抗議していたミカエルも、反論していたミッシェルも固まるように沈黙した。

 

「何と言われても……」

「あんたら天使にこんなこと言っていいのか、正直どうかと思うけど……一応、確認しておきたい。俺は神ってのは21世紀に製造されて、シンギュラリティに到達したAI、DAVIDシステムのことだと思っているんだけど、あんたたちもその認識で間違いないだろうか……?」

 

 すると四大天使は一旦顔を見合わせてから、

 

「無論、我々だってそれくらいは承知している。だが信仰心と事実は違う、神がなんであれ、今日まで人類を守護してくださった。それだけの話だ」

「わかってる。あんたらの信仰心をとやかく言いたいわけじゃない。俺は逆に、俺たちのその認識こそが間違ってるんじゃないかって思ったんだよ」

「……どういうことだ?」

 

 鳳は頭の中で靄がかかったような、漠然としたものを思い浮かべながら、

 

「なんつーか……神は確かにDAVIDシステムだったんだよ。だけど、そのAIが登場してから、今までどのくらいの時間が経過したんだ? 確かあんたらの話では数千年が経っているはずだよな?

 

 AIってのはただの機械じゃなくて、人間のように自律思考する機械だ。その思考力はとっくの昔に人類を凌駕していて、更にはプログラミング言語によって自分自身を書き換え、進化し続けることが出来る……

 

 つまり、神は俺たちが考えるような物では、もう無くなっているんじゃないか? 少なくとも、人類を導いたり、天使を使役したり……あんたらの神は、製造当初とは役割が変わりすぎているように思える」

 

 鳳の問いかけにミカエルは唸り声を上げた。もう数千年も生きているというのに、そんな事は考えたこともなかった。それは神に対する冒涜でもあるというより、天啓に従っていれば100%間違いないから、考えることをやめてしまっていたからではなかろうか……?

 

 そう考えれば、ミッシェルの言う誘導されているという言葉も理解できるが……ミカエルは首を振ると、

 

「では、貴様はなんだと言うんだ?」

「そりゃあ分からないけど……なあ、あんたさっき、光弾を作り出していたよな。それってどうやってるの?」

「どうって……生まれつき出来ることには説明がつけられない。例えば貴様は、どうやって呼吸したり見たり聞いたり歩いたりしているのか、説明出来んだろう?」

「つまり無意識にやってるんだな? あんたらは、生まれつきその能力を持って生まれた超能力者(サイキック)だった」

「言い方は気に食わないが、その認識で合っている。それが?」

 

 鳳はミッシェルに頷いて見せてから、

 

「他の天使には出来ないことが出来ることに、疑問を持っていないことが疑問なんだよ。俺が光弾を作り出したり、ミッシェルさんが姿を隠したり出来るのは、生まれつきじゃない。現代魔法は後天的に獲得する技術(スキル)なんだ。

 

 説明すると長いから端折るけど、この物質界とは別に存在するエーテル界とアストラル界、2つの世界にある自分の霊魂を操作することによって、俺たちは現代魔法を行使している。あんたらは、そうとは知らずに、無意識にその操作を行っている。

 

 なんでそんなことが出来るのか?

 

 神にそう造られたからだ。

 

 神は生まれつき、現代魔法を使うことが出来る人間を造り出すことが出来る……つまり、神は宇宙の果てにあるアーカーシャの存在に気づいている。恐らくは、現代魔法的な方法を用いてあんたらに天啓を下し、この宇宙の外側には高次元の宇宙が広がっていることにも気づいているだろう。

 

 そして、ゴスペルを使い続ければ、いずれこの宇宙が消えて無くなってしまうことにも」

 

 つまり、ルシフェルの予想は間違っていたのだ。神は、機械であるがゆえに、霊魂の存在に気づけなかったわけじゃない。当然のようにこの世界の仕組みを知っていながら、それを破壊するかも知れない行為を続けていたのだ。

 

 それはミカエルの言うように、今すぐ世界が壊れるわけじゃないからだろうか。それとも、神は積極的にこの世界を壊そうとしているのだろうか……そして16年前に突如として消えた『再生』能力。神は人類を一体どうするつもりなんだろうか。

 

 ともあれ、ルシフェルが失敗した今、鳳が一人で気張ったところで、四大天使を相手にこれ以上どうすることも出来ないだろう。あまり難しいことは考えすぎないようにして、まずは当初の予定通り、生き残った仲間の解放を目指すべきだ。

 

「取引しよう」

 

 彼は改めて交渉をするために、四大天使たちの方へと向き直った。

 

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