空から落ちてくる光の槌を食い止めていた堕天使は、ギヨームたちの撤退を見届けた後に力尽き、光の中へと飲み込まれていった。その体が蒸発して枷がなくなった槌は、まるで堤防が決壊したかの如く急激に速度を増し、地面へと落下した。
ギヨームの問いにたじろいで放心状態になった鳳を守るべく、彼の前に躍り出たアリスはアイギスを力強く天に掲げると、結界の密度を上げて衝撃に備えた。と、その時、彼女は自分たちのすぐ眼下に、銃撃を受けて傷ついた天使たちが倒れていることに気づき、咄嗟に結界を広げて彼らのことも守ろうとした。
そのせいでアイギスは衝撃を受け止めきれなかったのだろうか、ミョルニルの光の槌が地面に触れた瞬間、凄まじい爆発音と共に、結界もろとも船が傾き、堤防内に発生した津波に乗せられ、船はサーフィンをするかのごとく押し流されてしまった。
「きゃあああーーーっっっ!!!」
船の甲板に立っていた鳳たちは、その下から突き上げるような衝撃に跳ね上げられ、一瞬、甲板から投げ出されそうになった。すると殆どの者は咄嗟に手近な物に捕まって難を逃れたが、初動が遅れたドミニオンの楓が、一人だけ甲板を飛び出しそのまま海に放り出されてしまった。
伸ばしたジャンヌの手が空を切る。焦った彼女が海に飛び込もうとして駆け出すと、そんな彼女の横をすり抜けるようにサムソンが飛び出し、彼は勢いよく船からジャンプしては、放り出された楓の体を空中でキャッチした。
しかし、一度船から飛び出した二人がそのまま戻ってこれるわけもなく、勢いのままに落下する二人は桟橋に倒れていた天使たちをも飛び越えて、ミョルニルの上げる爆炎の中へと飛び込んでいってしまった。
サムソンが咄嗟に身を捩り、体を丸めて楓を庇う。爆炎はそんなサムソンの背中を容赦なく襲い、背中の毛が黒焦げ、ちりちりと炎が舞い上がった。爆風に押し返された二人は今度は逆向きに加速して、そしてまた天使たちの体を飛び越えて海へと落下していった。
「楓っ! サムソーーンッッ!!」
甲板の手すりから身を乗り出して二人の名前を叫ぶジャンヌの前で、巨大な水しぶきを上げて二人は海の底へと沈んでいった。
港の桟橋が吹き飛び、天使たちも次々海へと落下していく向こう側で、吹き上がる爆炎がきのこ雲を作っている。港の反対側まで波に押し流された船は、堤防のコンクリート壁に衝突すると、今度はダンスを踊るかのように右へ左へと交互に揺れ動いた。ジャンヌは手すりにつかまりながらそれに耐えると、ようやく収まってきたところで上着を脱ぎ捨て海へと飛び込んだ。
間もなく、彼女が向かう先で、海面に楓の顔が突き出てきて、彼女は周囲を一瞥することもなく息継ぎをすると、また海の底へと潜っていった。恐らく、そこにサムソンが沈んでいるのだろう。ジャンヌはそう判断すると、数メートル手前から潜水を始めて、海底でサムソンの体を持ち上げようとして藻掻いている楓に手を貸し、二人で彼の体を持ち上げた。
バシャッと水しぶきを上げて、三人の姿が海面に現れる。
「助けて! サムソンさんの意識がないの!」
そんな楓の声に応じて、船内に隠れていた船長と副船長が飛び出し、彼女らは慣れた手付きで素早く搭載されていたボートを下ろすと、オールを使ってスイスイと救助へ向かっていった。
鳳はそんな救助の様子を未だ放心状態のままぼんやり眺めていたが、
「ご主人さま。心中お察ししますが、今は呆けている場合じゃないかと……」
その声に目を向ければ、滅多なことでも無ければ主人に意見を述べることなどないアリスが、不安げな瞳で彼のことを見上げていた。その向こう側では既に救命胴衣を身に着けたミッシェルが、ロープと浮き輪を持って彼の様子を窺っていた。鳳ははっと我に返ると、
「す、すまない。俺もすぐに救助に向かおう。アリスは結界を作って、なんか上手いこと助けられないか試してみてくれない?」
「わかりました、やってみます」
鳳はアリスにそう指示すると、サムソンを引き上げているジャンヌたちを手伝いに向かった。
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乗っていたホバークラフトは、押し寄せる波で堤防まで流されてしまっていたから、現場には泳いでいくよりもその堤防の上を走っていった方が早かった。港をぐるりと回って壊れた桟橋にたどり着くと、ちょうど船に乗せられてサムソンがやってきたので、鳳が身体強化の魔法をかけて彼のことを引き上げた。
サムソンの傷は酷く、海水にも濡れていたから、すぐに応急手当をしなければならなかったが、うっかり救急箱を船から持ってくるのを忘れてしまい、鳳は舌打ちした。そんなことにも気が回らないくらい、自分はショックを受けていたのだろうか? 彼は慌てて船まで取って返した。
戻ってくると海に落ちていた天使が数人、意識を取り戻して自力で岸壁にたどり着いていた。すぐに他の人たちも助けなきゃと言ったら、天使はこの程度で死んだりしないから、怪我人がいるならそっちを優先しろと逆に気遣われた。
その他人を慮る優しい顔と、堕天使を攻撃していた時の顔が、あまりにも対照的で別人としか思えず、なんだかちょっと脳がバグった。彼らが言うには、刑務官の詰め所がこの港のすぐ近くにあるらしく、怪我人を手当するならそこへ運んだほうがいいと言われ、案内されるままサムソンを運んだ。
堕天使たちが利用していたのか無人の詰め所には生活感があり、暖房がつけっぱなしになっていたので有り難かった。早速、救護室にサムソンを運ぶと、うつ伏せにベッドに寝かせた。背中一面の皮膚が焼け焦げ、グロテスクな水ぶくれに覆われていて、見ているのも苦痛な状態だった。
ベッドのシーツがあっという間にびしょ濡れになってしまい、彼の体毛で覆われた体を出来ればドライヤーで乾かしたかったが、火傷に障るといけないので使えず、とにかくタオルでギュッと搾り取るしか方法が無かった。
楓がその根気のいる作業を買って出てくれたが、自分のせいでサムソンが傷を負った責任を感じているのだろうか、真っ青な彼女の顔はとても強張って見えた。あまり思いつめなければ良いのだが。
その後はまた港に戻り、沈んでいる天使の捜索に当たったが、しばらくすると殆どの天使が自力で浮き上がってきて、間もなく捜索は終了してしまった。先程の天使も言っていた通り、彼らには超回復力があるから、銃弾で撃ち抜かれようが、火に焼かれようが、命さえあれば後はなんとかなってしまうようである。
となると結局、今回一番の被害者はサムソンのようで、あの傷の具合では復活まで相当時間が必要だろう。彼も魔族だから、人間よりは回復が早いかも知れないが、それまで最大の戦力が抜けてしまうのは痛手だった。
とはいえ、最大戦力と言っても、今、一体何と戦うと言うのだろうか? 堕天使だろうか、ギヨームだろうか、それとも……? あの時、目が血走った天使たちの姿を思い出すと、正直どちらと戦った方がいいか分からなくなった。
……一段落して落ち着いた後、その天使たちには、どうして約束を守らずに勝手に堕天使と戦い始めたのかを問い詰めた。すると彼らは困ったことに、この島に来てからのことをよく覚えていないと言い出した。
彼らだって反乱を鎮圧するために交渉を望んでいたのだ。だから鳳が堕天使たちと会話を始めた時は、ちゃんと船内に隠れてその様子を窺っていた。ところが、そうして遠巻きに囚人の姿を見ていたら、彼らは段々ムカムカしてきてどうしようもなくなってきたらしい。
怒りで我を忘れるという言葉があるが、そのムカムカはまさにそんな感じで、彼らは間もなく耐えきれない程の憎悪に見舞われると、視界が真っ赤に染まり、ついには意識が吹き飛び、その後は自分たちが何をやっているのか、記憶が曖昧になってしまっているようだった。
不思議なことはそれだけではなく、コカビエルが最後に行ったあの攻撃は、オリジナルゴスペル・ミョルニルによるものだった。しかし、元々彼にはオリジナルを使える適正はなく、そもそもミョルニルは反乱が起こった時にそのまま刑務所に取り残されており、彼らがアイスランドから持ってきた物ではなかったのだ。
となると、あの時、ギヨームの必殺技にやられて意識が吹き飛び、絶体絶命のピンチの天使たちの下に、あれがどこからともなく現れたということになる。そしてコカビエルは意識がないままそれを使用し、堕天使たちは撤退を余儀なくされた。
これを神の奇跡と呼ばずしてなんと呼べば良いのだろうか……
……海に沈んだ天使たちの捜索と、サムソンの手当てであっという間に時は過ぎ、気がつけば夜になっていた。
その後、サムソンは意識を取り戻したが容態は重く、応急処置ではどうにもならなさそうなので、レイキャビク港に残してきたドミニオンの衛生兵を急遽呼び寄せることになった。
天使たちも刑務所の奪還を知ると、またこっちに戻ってくるつもりらしく、結局、非戦闘員であるタンカーの船長と副船長と入れ替わりに、殆どの天使とドミニオンがこっちに来ることになった。
医者が来ればサムソンももう少し楽になるだろうが、移動には一日かかるから、それまで何も出来ずに彼が苦しんでいる姿を見ているしかないのは、本当に辛かった。
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翌朝、鳳は一人、朝焼けに染まる堤防の上で、ぼーっと海を眺めながらギヨームに言われたことを考えていた。
昨日、散々考えたことだが、気になる点はまだ一つあった。仲間を助けるため、ミョルニルの攻撃に立ち向かった堕天使は、最期の瞬間に人類救済を叫んでいた。
彼らが本当に堕天使ならば、戦っている相手は神で間違いないだろう。しかし神の敵対者である彼らが人類救済を望んでいるのだとしたら、じゃあ神は何を望んでいるのだろうか。
思い返せば、鳳たちがこちらの世界に渡ってくる切っ掛けも、堕天使ルシファーがこの世界の人類を救いたいと願ったためだった。そして神を放置していたら、このままでは宇宙が消滅してしまうというから、鳳たちは手伝いを買って出たわけだが……根本的な目的は、人類の救済だったはずだ。
そんな堕天使たちの行動を阻むことは、世界を滅ぼす行為に加担していることと同義である。しかし、それは本当なのだろうか?
少なくとも、天使たちにそのつもりがないのは間違いないだろうが、昨日のあの様子を見る限り彼らの意思は関係ない。どうやら天使たちは神に操られて無意識に堕天使を攻撃するらしく、そして、これがギヨームが執拗に一人だけで来いと言っていた理由だった。
堕天使たちの言葉をそのまま受け取れば、神は天使を操って、世界を……ひいては宇宙を滅ぼそうとしている。そしてその神とは、ギヨームが言うには、鳳白……自分かも知れないのだ。
おまえが神だ。
昨日のギヨームの言葉が耳から離れなかった。
本来なら敵対勢力のドミニオンを篭絡し、四大天使とは協力関係を築き、全人類からはいつの間にか羨望の眼差しを受けている。そして愛する妻を野放図に呼び寄せ、襲い来る魔王を次々と倒し、極めつけは昨日の天使たちの肉壁だ。仮に鳳が神ではなくても、少なくとも神が鳳に執着してるのは、もはや間違いないだろう。
あまりにも自分に都合のいいことが起きすぎている。鳳には全く自覚は無いのだが、これが全て意図的に引き起こされたことだとしたら、確かに鳳が神なんじゃないかと疑われても仕方ないだろう。誰だって、こうあって欲しいという願望はある。神である鳳が、無自覚にそれを引き起こしているというわけだ。
もしも、本当に自分が神だとしたら、世界を救うためには、自分を殺さなければならないだろう。しかし、頭を撃ち抜かれても死なないのなら……またアナザーヘブン世界みたいに自動的に何度でも復活してしまうと言うなら、こんなのどうすればいいと言うのだろうか?
いや、そもそも、なんで自分が死ななきゃならないのか。誰だって死にたくなんかないはずだ。当たり前だ。例えそれで世界が滅びたとしても、自分だけは死にたくない……
「おはよう、タイクーン。随分とお悩みのようだね」
鳳がそんなことをウジウジと考えていたら、いつの間にか背後にミッシェルが立っていた。別に認識阻害を使っていたわけではなく、考え事に夢中で気づかなかったらしい。手にはサンドイッチを乗せた皿を持っていて、どうやら朝食を運んできてくれたようだった。
鳳は
「ミッシェルさんの占い……当たりましたね」
「占い? なんの?」
「ほら、だいぶ前に、ケアンズに行く前に、俺のことを占ってくれたじゃないですか」
「ああ、ホロスコープだね」
ミッシェルはその時のことを思い出し、うんうんと頷きながら、
「ほら、僕が言った通り、終わってみれば確かにその通りだったけど、知っていたところでどうしようもなかったでしょう」
「……そうですね。それどころか、ここに来るまで思い出しもしなかった。俺はそんなことが起きるなんて、端から信じちゃいませんでした」
「それでいいんだよ。仮に信じていて、ギヨーム君に会いに来る前からものすごく警戒していたとしても、やれることなんて何も無かったでしょう。占いってのはあくまで指針さ。例え君が未来を変えたくて、君自身が行動を変えたとしても、他人の行動までは変えられないからね」
「……運命は変えられないってことでしょうか」
ミッシェルは首を振って、
「違う違う。未来は不確定で、運命なんてただの後付なのさ。ギヨーム君は確かに魔族を率いて君の前に現れた。それで君は天使を率いて、彼と戦うの?」
「え……?」
「君が天使を率いて戦えば、確かに予言通りかも知れない。でも、例えば今すぐ尻尾巻いて逃げ出したり、一人で彼を説得しにいったりすれば、予言は簡単に外れるじゃないか。もう一度言うけど、占いってのはただの指針で、君を縛り付けるものじゃない。君の未来は、君自身が決めるものなんだよ」
「そうか……戦わないって選択肢もあるのか……」
そうすればミッシェルの言う通り予言は外れるわけだが、ただその場合、その後はどうなるのだろうか。
ギヨームは、鳳のことを神だと思っているらしい。そして彼の目的は神を倒すこと……この世界を救うために、自分の命を捨てる覚悟なんて出来るだろうか? 鳳にはまだ分からなかった。
「……ミッシェルさん。ギヨームの言う通り、俺は神なんでしょうか?」
するとミッシェルはその言葉を予期していたかのように、苦笑いしながら首を振って、
「違う違う。そんなことは絶対にないよ」
「どうして、そう言い切れるんですか?」
「うん、それはだね……僕はここへ来るまでに起こった一連の出来事を吟味してて、神の居場所が分かった気がするんだよ。そしてそれが間違いないなら、君が神である、なんてことはあり得ない」
まるで当たり前のことのように、しれっとそんな重大事を口にするミッシェルに対し、鳳は目をひん剥いて前のめりに聞いた。
「神の居場所が分かった……それは本当ですか!? 一体、どこなんです?」
するとミッシェルはまた、そう聞かれると思っていた、と言わんばかりに苦笑しながら、
「それを僕の口から言うのは簡単だけど、言ってしまえば君はそれが本当のことか分からないまま、僕の答えに依拠することになる。それは僕の占いの結果を、盲目的に信じるのと同じことで、危険なことだよ。ギヨーム君も言っていた通り、君は相当頭が切れる人だから、自分でその答えにたどり着くべきだ。状況証拠は出揃っている。なに、僕が気づけたんだから、すぐに君にも分かるでしょう」
「なんでそんな意地悪するんですか? いいから教えて下さいよ」
「ほら、そうやって焦っているのが良い証拠じゃないか。ギヨーム君に言われたことを気にして、今君は精神的に不安定なんだ。だから今はまだ結論を急がないほうがいい。まずは状況をよく見極めて、何をすべきか方針を決めるんだ。ギヨーム君や堕天使たちと戦うのか、それとも、別の方法を探るのか」
「それは……ギヨームと戦うなんて考えられないじゃないですか。と言うか、力づくで解決しようにも、サムソンが怪我をしている今はどうしようもないですよ。昨日の様子じゃ、天使の力を借りるのも危険すぎるし……向こうが話し合いに応じてくれるなら、そうした方がいいでしょうね」
「なら君は一人で彼らに会いに行くつもり?」
「それなんですよねえ……もし彼らが本気で俺のことを神だと信じているなら、その目的は俺の死ということになる。そんなところに一人で行くのは自殺行為としか思えないし……」
「まあ、時間指定されてるわけじゃないんだから、そんなに急いで決めなくてもいいんじゃない。もっとゆっくり考えればさ」
「失礼いたします、ご主人さま」
鳳たちが話をしていると、背中の大盾をガシャガシャと鳴らしながら、アリスが駆け寄ってきた。彼女は二人の数メートル手前で立ち止まり、呼吸を整えながら近づいてくると、恭しくお辞儀をしてから、
「たった今、レイキャビク港から通信があり、ウリエル様からご主人さま宛に連絡が入ったとのことです。ご主人さまがこちらに居られることをお伝えすると、それならば直接こちらに連絡するからと言って切られたそうです」
「ウリエルさんが? なんだろう……って言うか、どうやって通信して来たんだ? この悪天候だと言うのに」
「なんでもプリマスから連絡をしているとおっしゃっていたそうです。ご主人さまにそう言えば分かるとのことで……」
「プリマス……プリマスだって!? それってイギリスの都市だろう? どういうこっちゃろうか。とにかく、こっちに連絡してくるんだね?」
鳳はそう言うと、ミッシェルに先に戻ると告げて、アリスを連れて忙しそうに去っていった。
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ミッシェルはその背中を見送った後、いつものようにやれやれといった感じに肩を竦めてから、二人に聞こえないように、ふーっと、長い長い溜息を漏らした。
だいぶ落ち込んでいるようだったから励ましに来たつもりだったが、少しは気分転換になっただろうか。ウリエルが何故イングランドに来ているのかは分からなかったが、頼れる仲間が増えることで、彼の気が紛れればいいのだが……そう、ミッシェルは願った。
というのも、鳳にはどうしても毅然としていて貰わねばならなかったのだ。彼が落ち着いて、いつものように力強く運命に立ち向かってくれなければ、どうにも困った事態がこれから起きてしまうらしい。
ミッシェルはその辺に落ちていた石ころを拾うと、コンクリートの堤防の上に何か魔法陣のような模様を描き始めた。それは一見すると落書きにしか見えなかったが、見る人が見れば占星術に使うホロスコープであることが分かっただろう。
昨日の天使の暴走を見た後、かつて鳳の星を占ったことを思い出したミッシェルは、実は鳳に黙ってこっそりまた彼の未来を占っていたのだ。するとそこにはとんでもない結末が導き出されており……彼は驚いて占いをやり直し、それでも覆らない結果を不安に思い、鳳の様子を見に来ていたのだ。
その占い結果とはこんなものだった。
既に神の裁きは下され間もなく終末が訪れるだろう。
恐怖の大王が天より降り立ち、全ての生命が食い尽くされる。
空間は光で満たされ時間は止まり、
そしてこの宇宙は終焉を迎えるであろう。