ラストスタリオン   作:水月一人

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俺は異世界に種馬として召喚されたはずが、いつの間にかゲイと駆け落ちしていた

 冒険者ギルドが中心となって挑んだ街の攻防戦は、敵軍の将軍が出てきてようやく休戦の運びとなった。鳳たちは、後は金さえ支払えば、この窮地を乗り切れると思っていたのだが……ところが、帝国軍との交渉に臨んだギルド長が帰ってきたところ、彼は苦々しげに相手方に二つの要求を突きつけられたと語った。

 

 一つ目は、ジャンヌの引き渡し。

 

 城下町での攻防戦で一騎当千の活躍を見せた勇者と呼ばれる異世界人。その一人がこの街に逃げ込んだという情報を掴んでいた帝国軍は、この街の攻防でも一際目を引く活躍をしていた彼を差し出せと要求してきたのだ。

 

 曰く、帝国の今回の挙兵は、世界平和を維持するために、ヘルメス卿がその野心により呼び出した違法な勇者召喚者を排除するためのものだった。故に、この残党が残っている限り、彼らがこの街から手を引くことはあり得ないというのだ。

 

 この時、ギルドの面々は初めてジャンヌの正体を知り、特に相棒として何度も一緒に依頼を受けていたギヨームは驚き、

 

「ジャンヌ……帝国軍が言ってることは本当なのか?」

 

 ジャンヌは苦しげに答えた。

 

「……絶滅の危機に瀕している神人を保護するため、勇者召喚をした。呼び出された日、ヘルメス卿はそう言っていたわ。私達はそれを無邪気に信じていたんだけど、話はそんな単純なものじゃなかったみたいよ」

「どうして隠してたんだ」

 

 ギルド長が不満げに言う。これには鳳が答えた。

 

「城に仲間が残っていたからです。あそこから出てくる時、アイザックは俺たちに城での出来事を口止めした……実際、今回の戦が勇者召喚にあるなら、俺たちが自分達の素性を吹聴していたら、戦争はもっと早まったかも知れない」

「うーむ……信じられない。勇者召喚なんておとぎ話じゃなかったのか?」

「いや、事実じゃ」

 

 大君が横から口を挟む。

 

「勇者召喚が禁断の秘術とされているのには理由がある。勇者を呼び出すための代償に、神人の生贄が必要だったんじゃ。故に、神人の長である皇帝がおいそれと勇者召喚するわけにはいかんかった。神人を助けるために、神人を犠牲にしておっては元も子もないからのう……もう1つ、生贄は勇者の子孫であっても構わない。今回、こやつらを呼び出す時に使われたのはそっちの方じゃな」

 

 勇者派の中枢が帝国に鞍替えしようとしていた。ヘルメス卿が凶行に及んだのは、それを止めようとしたからだ。しかし、それだけの大物が消えれば当然騒ぎになる。大君が探りに来たように、帝国も密偵を送りあの城を調べていたのだろう。そして帝国は、カズヤ達、異世界から召喚された勇者がいることに気がついた。

 

 鳳は悔しそうに唸り声を上げた。

 

 それじゃ今回の戦争は、鳳たちを殺そうとして始まったのか。たったそれだけのことで、これだけ多くの犠牲が生まれてしまったと思うと、いくらなんでもやりきれない。

 

「いや、開戦理由はそれだけではなかろう。どちらかと言えば、もう一つの方が肝心じゃ」

「もう一つ?」

「敵の突きつけてきた要求は二つあったのじゃろう?」

 

 大君がそう促すと、それまで深刻そうな表情で机を見つめていたギルド長がハッと我を取り戻して、

 

「そうでした、敵軍の要求はもう一つ……メアリー・スーの捜索と引き渡しです」

「やはりな」

 

 その要求が意外すぎてミーティアや指揮者、当の本人すらも目をパチクリさせて首をひねっていた。しかし、例の結界の存在を知っている鳳たちは、彼らがメアリーを引き渡せという理由が分かる気がした。何しろメアリーは300年前の英雄、初代アイザックが密かに匿っていた人物だ。

 

 大君はギルド長に向かって、

 

「それで、お主はご丁寧にメアリーがここにいることを教えてしまったのか?」

「御冗談を。そんな名前の人など知らないと、しらばっくれておきましたよ。かなりしつこく聞かれましたが、最終的に引いたところを見ると、敵はまだ彼女の行方を知らないようですな。私達に要求したのは、たまたまここにいたら儲けものだと……その程度のことじゃないかと思われます」

「そうか。それは重畳じゃった」

「……多分、知らんぷりしておいたほうがいいだろうと判断したのですが……それで一体、彼女は何者なんですか?」

 

 ギルド長がそう言うと、同じ疑問を持っていた鳳たちの視線が大君に集中した。彼はその浴びせかけられる視線を無視するように、手にしていた杖に顎を乗せながら、

 

「それを知れば面倒事に巻き込まれることになる。話せば長くなるし、お主らはまだ知らないほうが良い。今はそんなことをしている場合でも無いじゃろうて」

 

 大君がそう言うと、壁に寄りかかっていたギヨームが不快げな表情を隠そうともせずに、少々ドスの利いた声で、

 

「今更隠すこともねえだろ。巻き込まれるってんなら、こちとらとっくに巻き込まれてんだよ。まあ、爺さんが俺たちのことをどうしても信用出来ないってんなら仕方ねえが……どうなんだ、おい!?」

「やれやれ……」

 

 ギヨームの辛辣な言葉を受けて、鋭い視線が更に白髪の老人に集中した。大君は苦笑気味に溜息をつくと、喧嘩でも始まるのかとおっかなびっくり周りを見回していたメアリーの方をチラリと見てから、

 

「本人も知らぬから……本当なら、落ち着いてから話そうと思っておったのじゃが」

 

 彼はそう前置きすると、

 

「実は簡単な話なんじゃよ。メアリーは勇者の娘……その最後の生き残りじゃ」

 

 その事実は意外な物だった。大君が執拗に隠そうとした理由もうなずける。だが、一体どんなとんでもない秘密が飛び出してくるのかと思っていたギヨームにとっては、意外と大したことのない事実に思えた。もちろん、勇者の娘というのは凄いことではあるが……

 

「へえ! こいつ、勇者の子供だったのか……道理で、ヘルメス卿がコソコソ匿っていたわけだな。勇者派にとって、彼女はお姫様みたいなものか」

 

 ギヨームがそんな小学生並みの感想を述べるが、鳳はそんな風に無邪気に笑っては居られなかった。彼はまだ気づいていないのだ。勇者の娘という、その意味を。

 

「ギヨーム、これはそんな単純な話じゃないぞ」

「あん?」

「勇者の娘ってことは、あれだ……彼女は神人の子供を産む可能性がある」

「……ああ」

 

 ギヨームはその言葉がすぐには飲み込めず、一瞬だけポカンとした表情をしてみせたが、やがてその意味を理解すると、徐々に深刻な表情に変わっていき、

 

「そうか……こいつは、金の卵を産むガチョウってわけか」

 

 勇者の子供は全てが神人だった。鳳たちも、その勇者の能力を受け継いでいると言われていたが、それは嘘だった。

 

 だが、メアリーは本物だ。勇者の子供から生まれる子供……つまり勇者の孫は全てが神人ではなかったが、それでもかなりの数が生まれてきた。その条件は単純明快、勇者の子供は、伴侶の種族遺伝子を孫の世代に伝えるのだ。

 

 つまり、メアリーが神人と子供を作れば、それは必ず神人になる。

 

「帝国はその繁殖能力を恐れて、勇者の子孫を根絶やしにした。しかし、現実に神人が絶滅の危機に瀕している今、その能力は帝国こそが喉から手が出るほど欲しいのじゃ。対する勇者派は、今や勇者への恩は忘れ、経済的な利益だけを追求するようになっておる。帝国と敵対するよりも、交易相手として付き合ったほうがいいと考えるようになっていたわけじゃ」

 

 ここに双方の利害が一致した。

 

「ヘルメス国と勇者領は何しろ長い付き合いじゃ。上層部は婚姻関係を結ぶなど、家族ぐるみの付き合いをしておる。故に、勇者派の重鎮の一部は、メアリーの存在を知っておったのじゃよ。彼らはそれを手土産に帝国に近づいた。そして、その野心がバレているとも知らず、ヘルメス国に不用意に近づき殺された……」

 

 帝国は、約束をしていた勇者派の裏切り者たちが消え、代わりにヘルメス国に勇者が現れたことで、それをヘルメス卿の帝国に対する挑戦と捉え、今回の開戦となった。だが、その本当の目的は、メアリーを捕らえることだったのだ。

 

「そういうわけじゃ。帝国は、メアリーを引き渡せばそれで退くじゃろう。じゃが、儂にこの子を渡す気は毛頭ない。もし引き渡せば、この子がどうなるか、誰でも簡単に想像できるじゃろう?」

 

 恐らく彼女は帝国のどこかに幽閉されて、延々と好きでもない男たちに孕まされ続けることになるだろう。それも一回二回じゃ済まない。何しろ彼女は神人だ。何百年だって生き続けることが出来る。

 

 たかが、年間1人の神人を増やすためだけに、この幼馴染に似た少女がそんな酷い目に遭わされるなんて……

 

 鳳の中でチリチリと炎のような何かが燃えだした。炎は彼の内で燃え広がり、今や一つの大火となりつつあった。その炎は決して外に漏れることはなく、彼の内だけで燃え続けている。考えろ……考えろ……何か手はあるはずだ。

 

「なら……私が出頭するわ」

 

 その時、沈黙を破ってジャンヌがそう呟いた。何を言い出すのだろうか? と、ギルド長たちの視線が集まる中で、彼は苦渋に眉をひそめながら吐き捨てるように言った。

 

「相手の目的の一つが私なら、私が出ていけばそれで済むはずだわ。メアリーちゃんのことは向こうにだってまだ知らないわけだし、私を捕まえたことに満足して兵を退くはずよ……メアリーちゃんは、その後で、難民に混じってここから逃げ出せばいい」

「馬鹿を言え。おまえにだけババを引かせるなんてこと出来るかよ!?」

 

 ギヨームが不満たらたらに反対する。しかしジャンヌは彼の言葉を遮って、

 

「思い出して? この街は今、一万人以上の難民を匿っているのよ。私一人がごね続けている間も、彼らはずっと帝国軍の銃口に晒されている。もし交渉が決裂して戦闘再開なんてことになったら、今度こそ彼らの命の保証はないわ。なにせ、相手は10万人……寄せ集めとは言え、その全てが兵隊だっていうのに、こっちで戦えるのはせいぜい千人にも満たないわ。到底勝ち目なんかない。

 

 だったら……一万人を救うために、たった一人の犠牲で済むならそれを選ぶべきよ。本当は、私だって嫌よ。死ぬのは誰だって怖いわよ……でもね、もう疲れたのよ。この、不思議な世界に来て、最初はファンタジー最高なんて喜んでいたわ。でも今起きてるこれは何? どこかの誰かの思惑のために、勝手に呼び出されて、繁殖馬みたいに扱われて、仲間は惨殺され、挙句の果てに私は人殺しになった。

 

 何も楽しくない。来るんじゃなかったって後悔しかない。どこかの誰かの恨みを買ってまで、こんな世界で生きていたいとは思えないのよ。死んだほうがマシよ! ……ならいっそ、私の命なんかもうを差し出して、一万人の命を救った方がいいじゃない。それがきっと一番冴えたやり方だわ」

 

 そういうジャンヌの顔は青ざめて、本当に疲れ切っていた。目は落ちくぼみ充血していて、鼻の穴がピクピクと動いている。誰ともなく啖呵を切った声は弱々しく、殆ど生気が感じられない。どこか他人事みたいに響いていた。覚悟が決まっている……そんな感じだ。

 

 だが……それでいいのか? ジャンヌ一人が犠牲になることで、確かに1万人の命は救われるだろう。それで万事解決、全ての幕を引いてしまって……そんな終わり方でいいのか? カズヤたちみたいに、また目の前で友達が死んでいくのを、ただ黙ってみているだけで、本当にそんなんでいいのか?

 

 鳳はジャンヌの前に歩み寄ると、思いっきりグーで引っ叩いた。

 

「アホたれ」

 

 ガツンッ! っと乾いた音が部屋に鳴り響いて、すぐさまジャンヌの悲鳴が上がった。

 

「痛っ! いったあ~い~~!!」

「痛いもんか、このVITお化けめ」

 

 鳳はジンジンとする拳をさすりながら、涙目で彼のことを見上げているマッチョのおっさんのことを睨みつけた。

 

「おまえの悲壮な決意はわかったよ。だが先走るな。いいか? 俺たちは別に負けたわけじゃない。今はまだ交渉の最中なんだよ。おまえのそれはただの譲歩で、交渉じゃない。大体……相手がおまえのことを出せと言ってるのは、おまえが勇者だからじゃないぞ。単におまえが怖いからなんだよ」

「……え?」

「考えても見ろ? 敵はおまえのことを勇者だと言ってるが、どこにそんな証拠があるんだ? この話を持って帰ってきたギルド長でさえ、たった今知ったばかりなんだぞ」

「言われてみれば確かに」

 

 そのギルド長がポンと手を叩いた。鳳は苦々しげに続けた。

 

「敵は単にカマをかけてきただけなんだよ。おまえのことは滅法強いただの冒険者だって突っ張れば、それで通る話なんだ。要するに、敵は今この状況で、どのくらいこっちが消耗しているのか探ってるんだ。なのに、はいどうぞって勲功第一のおまえを差し出してみろ。こっちが相当弱気だと踏んで、相手は更に難癖つけてくるぞ」

 

 鳳が苛立たしげにそうまくしたてると、執務室に集まっていた人々は動揺してお互いに顔を見合わせた。彼の言ってることは妥当なのかどうか……そんな中、黙って彼の話を聞いていた指揮者スカーサハが、

 

「確かに、あなたの言うとおりね」

 

 と同意すると、一同はホッとした表情を見せた。鳳は悔しそうに、

 

「ちくしょう! 俺の意見じゃ不安なのかよ……」

「でも、ツクモ。そうしてジャンヌを差し出すことを拒んで交渉を続けたとしても、どこに落とし所を見つけるのかしら? なにせ、相手は10万よ。その気になれば話し合いなどせず、私達など一捻りに出来る。あまり交渉を長引かせすぎると、最悪の場合、力づくという結果を招いてしまうかも知れない」

「そうですね」

「なのに、ジャンヌは渡さない、メアリーはいないじゃ、向こうに引くメリットは何もないわ。冷たい言い方かも知れないけれど、ジャンヌを引き渡さずに済む方法があるかどうか、私にはわからないわ。もしかして、あなたに何かアイディアがあるのかしら?」

 

 すると鳳は二人のやり取りをぼんやりと見ていたギルド長に向かって、

 

「相手はジャンヌの引き渡しに応じれば兵を退くって言ってるんですね?」

「え!? ……ああ、そうだが」

「なら、引き渡しに応じよう」

 

 鳳の熱い手のひら返しに、堪らずギヨームがツッコミを入れる。

 

「おいこらっ! おまえ、さっきと言ってることが真逆じゃねえか!」

「まあ聞け」

 

 しかし、鳳はそんなギヨームを手で制すと、

 

「敵はこっちに勇者が居るか半信半疑だ。ジャンヌのことを疑っているが、確証はない。なら、こいつは正真正銘、本物の勇者だと教えてやれ。しかも、STR23の化け物で、その強さは城にいた連中の比ではないと言えば、敵はこれを絶対に無視出来なくなる」

「……それじゃ逆効果じゃないか?」

「寧ろそれが狙いだ。ここにあの化け物みたいな勇者の仲間が居ると知ったら、敵は驚いて他のことなんて考えられなくなるぞ。何しろ、皇帝に命じられた目標の一つなんだから、確実に排除しなければならない。なら、そいつを逆手にとって高く売りつけてやればいい。こっちがジャンヌという街の救世主を差し出す代わりに、帝国は何をしてくれるのか? じゃんじゃん譲歩を引き出してやれ」

 

 鳳はポカンとしているギルド長に向かって、

 

「最低でも、難民の安全保障、賠償金の減額、それからこの街での徴発の回避は絶対引き出して下さい。後はこちらの武装解除と引き換えに憲兵を要求しましょうか。大体、その辺を基本線にして、思いつく限り搾れるだけ搾り取ってやりましょう。相手は渋るかも知れませんが、無傷で勇者を捕まえることが出来るというなら、お安い御用だ」

「あ、ああ……やるだけやってみるが……しかし、鳳くん。それで実際にジャンヌ君を引き渡すことになったら、どうすりゃいいんだね?」

「そしたら街に火をつけます」

「はあ?」

 

 ギルド長は素っ頓狂な声を上げた。たった今、必死に守ろうとしていた街に、火をつける……? その場にいた全員が、気でも狂ったのかと言いたげに鳳のことを見つめていた。

 

 しかし、彼は自信満々に、

 

「街を守った英雄を引き渡すっていうんですからね、そりゃムカつきますよね? 中には、彼を助けようとする輩が出てくるかも知れない。つまり、俺です。ジャンヌも死にたくないから暴れます。

 

 何も知らない難民たちは、突然の大火に驚いて街から逃げ出すでしょう。すると、外にいる帝国兵はどうします? 今は交渉の最中で、手出しは無用と言われている。そんな相手から助けを求められたら……? 恐らく彼らは難民を保護するでしょう。

 

 そして一度守ると決めたら人間ってものはそう簡単に態度を覆すことはないんですよ。人間ってのは意外と名誉を重んじます。ついさっきまで、相手から略奪してやろうと思ってたはずなのにね。

 

 きっと彼らは騒ぎの中心になってる俺たちを制圧しようとするでしょう。英雄なんてとんでもない、あいつらは悪人だ。ぶっ殺せ。そして、俺たちはそのどさくさに紛れて逃げ出すって寸法です。これなら、ジャンヌを逃したのは帝国の責任でしょう? 街のせいじゃない」

 

 あっけらかんとそう言い放つ鳳に対して、一同は声を失っていた。彼はそんな人々の反応など見向きもせずに、

 

「問題はそうなった時、ジャンヌ一人で敵の包囲を突破できるかどうかだけど……どうせ死のうと思ってたんだ。もちろん、それくらいやれるよなあ?」

 

 鳳が煽るようにそう言ってジャンヌを見ると、彼は呆気にとられた様子で固まっていたが、すぐに気を取り直して笑顔を作り、

 

「もちろん、やれるわよ。人を殺すことに比べれば、造作もないことだわ」

 

 さっきまで悲壮感に満ちていた表情は、今は希望の色に染まっていた。

 

 そんな二人のやり取りを見ていた大君が二人の間に歩み出る。

 

「なら、儂も手伝おう。悪者も大勢のほうが様になろう」

「いいのか? 爺さん」

「敵の要求はメアリーもじゃ。儂らも一緒に行くのが筋じゃろうて」

 

 老人の服の裾を掴んでいたメアリーもおずおずと頷く。

 

「もちろん、俺も乗るぜ」

 

 とギヨームが続く。ジャンヌが慌てて、

 

「いいの? 一緒に来れば、きっとお尋ね者になるわよ?」

「大したことじゃねえよ。そんなことより、ここでお前らを見捨てることの方がよっぽど屈辱的だ」

 

 彼が加わり、悪巧みには5人が乗ることに決まった。鳳、ジャンヌ、ギヨーム、大君、そしてメアリー。ギルド長と指揮者が話し合い、そんな彼らをサポートすることを約束する。

 

 こうして一世一代の大博打が始まった。

 

 ジャンヌ一人を守るために、街を一つ犠牲にして、鳳たちはきっと世紀の大悪人として人々の記憶に残るだろう。冗談抜きで、一生お尋ね者になるかも知れない。こんな右も左もわからない異世界で、ただ生きていくだけでも困難だと言うのに、今度は更に追っ手までつくのだ。

 

 だが、きっとなんとかなるだろうと、誰一人として悲壮感の欠片も持ち合わせてはいなかった。それぞれの役割を果たすべく、そして彼らは動き出した。

 

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