主人公はあの人の娘!?苦難多き少女のヒーローアカデミア 作:ユリアンヌ
それからどれだけ経ったのか、目を覚ますと何やら話し声が聞こえてきた。
「全く、何考えてんだいアンタは!」
「し……っしかしあの子の親としてはやはり心配するのは当然のことかと…っ」
「限度ってもんがあるだろう!そんなんじゃあの子だって気が休まらないよ!」
「(あれ…この声…?)」
聞き覚えのある声がし、ベッドから降りるとリカバリーガールが閉めてくれたであろうカーテンを少し開けた。
「…!友里絵!」
「おや、目が覚めたかい。身体の具合はどうだい?」
「あ…は…はい。一眠りしたらすごく楽になりました…」
「本当に大丈夫なのか!?無理はしてないか!?」
「ほ…本当だよ。熱も下がったし本当にもう大丈夫だから……」
そこにはリカバリーガールとオールマイトの姿があり彼の存在に困惑しながらもリカバリーガールの質問に答える。
するとオールマイトが物凄い勢いで心配され友里絵は大丈夫であることを必死に伝えた。
「だからそうやってすぐ大袈裟に騒ぐんじゃないよ!」
「うっ……」
「…………」
似た者同士とでも言おうか。オールマイトまでもがリカバリーガールに叱られ、友里絵は呆然と見ていた。
「と……ところで何でトシおじさんがここに?」
「君が階段から落ちて保健室に運ばれたって聞いたからね。心配で様子を見に来たんだ。リカバリーガールから大体のことは聞いたが今日休まなかったのは私の昨日メールのせいで心配をかけまいと思ったからそうだね。気を使わせてしまい本当に済まなかった友里絵」
「い…いや、そりゃあ全く違うわけじゃないけど今日休まなかったのは、昨日より熱は下がってて普通に動けて行けると思ったし私自身あまり休みたくないって気持ちもあったから……。この足の怪我だって私の前方不注意が原因だし…」
一喝されたことで落ち着きを取り戻したオールマイトが事の成り行きを知りやって来たことを伝え、ついでに自分の行いに対する謝罪をした。
だが、こちらからしたらオールマイトの言うことに一理あるとしても大半が自己責任だと思っているので謝られて逆に困ってしまう。
何より相澤に"個性"を消してもらおうとして階段から落ちたとは言えなかった。
「君のそういう所は変わらないな。まぁ大事にならなかっただけ良かったよ。今後は気をつけような」
「う…うん」
本当に安心した様子でポンポンと頭を撫でて来るオールマイトに友里絵はまだ申し訳ない気持ちはあったもののとりあえず頷いて見せた。
「それで友里絵はこの後はどうするんだ?やっぱり授業に戻るのかい?」
「あ…そうだ授業……!リカバリーガール先生、私どのくらい寝ちゃってましたか?」
「今は2限目。終わるまであと15分ってところだね」
「え………っ私そんなに寝ちゃったんですか!?」
授業と聞いてハッとすると、もう時間の心配をし始めた。
リカバリーガールに尋ねると既に2限目の授業は始まっており、終わるまでの時間もほとんどないらしい。
どうやら完全に寝過ごしてしまったようだ。
「つまりアンタが思っていた以上に体調が悪かったってことさね。過ぎちまったもんは仕方ないよ。このまま終わるまでここで休んで行きな」
「そうだな。授業は3限目から出れば良い。緑谷少年なんて実践訓練の怪我のせいで残りの午後の授業丸々すっぽかしたことがあるくらいだ。そのくらい大丈夫さ」
「は…はぁ……。
(本当に大丈夫なのかな……。
ていうかトシおじさんそれ言っちゃって良いの…?プライバシーだよ?)」
複雑な思いと一抹の不安は残るもリカバリーガールの言うように過ぎてしまったものはどうしようもなく2限目が終わるまでは保健室で休ませてもらうことにした。
……とは言ってもやっぱり2限目まで休んじゃったのはキツいな…。
そこまで休むつもりなかったのに……。
そりゃあデクくんみたいに午後の授業丸々出られなかったのより良いかも知れないけど寝過ごしたせいで結局デクくんにメール返してないし……。
「あの………、リカバリーガール先生。少しだけメール打たせてもらっても良いですか?すぐ終わるので…」
「仕方ないね…。少しだけだよ」
「は…はい。ありがとうございます」
リカバリーガールの許可を得て友里絵はスマホを取り出しメールを打ち始めた。
宛先はもちろん緑谷だ。
「誰にメールを打ってるんだい?」
「デクくん。ここに来て寝ちゃう前にワン・フォー・オールのコツを掴んだってメールが来たんだけど返してなかったから」
「え、本当かい?私のところには来てなかったが……。
というか君いつからその呼び方に?」
…昨日。デクくんがそう呼んで良いって言うから。メールは多分デクくんにちょっとしたアドバイスしたからかな。でも結局自分でコツ掴んだみたいだから謝罪文も兼ねて送ってくれたみたい」
オールマイトの問いかけにメールを打ちながら答える。
一方、オールマイトにはメールは来ていなかったようで、ワン・フォー・オールのコツを掴んだらしいと聞いてオールマイトは少し驚いていたが緑谷の呼び方が変わっていたことも意外そうにしていた。
「そうか。それは戻って来た時が楽しみだな。ちなみにどんなアドバイスを?」
『ワン・フォー・オールを水道の蛇口と思えって』
「ブフッ……!」
興味本位で聞いたオールマイト。水道の蛇口と言う回答に吹き出してしまう。
「ちょ…っ何で笑うの!?」
「い…いや…君も案外ユニークな発想をするなと……っ
(しかも発想が緑谷少年と同じ!!)」
「……??」
オールマイトも友里絵の言葉の意味をすぐに理解したようだが、どうやら水道の蛇口というたとえにツボったらしい。なんとか笑いを堪えようとする。逆に友里絵は何がなんだかよくわからず首を傾げていた。
「…よし、これでオッケーっと……」
「メールは送れたかい?」
「うん。
ていうかトシおじさん戻らなくて平気?」
メールを打ち終えたところで未だ戻ろうとしないオールマイトに友里絵はいつ戻るのかをそれとなく尋ねた。
「ああ、友里絵が戻るまではそばについていようと思ってね」
「別に良いのに…」
「オイオイつれないな。こういう時ぐらいは私も最後まで付き合うよ。それにちょっと聞きたいこともあるしね」
「私に?」
キョトンとする友里絵にオールマイトは静かに口を開いた。
「君……相澤くんに何を言ったんだい?」
「え…っ」
まさかオールマイトからそんな質問がくるとは思っていなかった友里絵は動揺してスマホを落とした。
な……何でトシおじさんがそれを…!?
まさか相澤先生がバラした!?
「な……なんで……」
「少し前に職員室で相澤くんとミッドナイトが話しているのを偶然聞いてしまってね……。君が保健室に運ばれたのを知ったのもその時だよ」
落ちたスマホを拾い上げ友里絵に手渡しながら説明をするオールマイト。
実は友里絵が保健室に運ばれて眠りについた後───………
「……」
成切友里絵…。今年の春に普通科を受験し入学…。
資料を見る限り、ヒーロー科を受けることも出来たはすだが、それをしなかったのはやっぱり"個性 "を嫌っているのが理由か……。
あれだけ自分の"個性"を嫌って消そうとまで考えてりゃ当然と言えば当然なんだが、"個性"に特に妙な点もなければ消したがる要素もない…。むしろ敵に対して有利と言って良い能力だ……。
それを何であいつは自分の"個性"をヒーローにはなれないなんて言ったんだ…?
そうまでして嫌う理由は一体…?
職員室に戻った相澤はやはり友里絵の言っていたことが気になり資料を取り寄せ調べていたのだ。
と、そんな相澤の元にミッドナイトがやって来て声をかけた。
「あら相澤くん。ずいぶん難しい顔してるけど何を見てるの?」
「ミッドナイトさん…」
「成切友里絵って……それ普通科の生徒の資料じゃない。珍しいわね、相澤くんが他の科の資料を見てるなんて。その子がどうかしたの?」
「……!」
この時、オールマイトもその場にいた。初めは何かを調べている相澤に気に止めていなかったが彼の持つ資料をミッドナイトが覗き込みながらそう尋ねたのを聞いてすぐさま反応した。
友里絵の資料!!?何で相澤くんがそんなものを…!?
「ええまぁ…。先程その生徒を保健室に運んだんですがその際にちょっと気になる相談を受けまして……」
「保健室に運んだって…具合でも悪かったの?」
「階段から落ちたんですよ。幸い怪我は足を捻った程度で済んだんですが体調も崩していたようだったので一応連れてったんです」
「………っ!?」
友里絵が階段から!?
そして友里絵が階段から落ちたという相澤の言葉で動揺し机の上に置いてあった本や書類なんかを落としてしまう。
「……何をしてるんですかオールマイトさん」
「あ…ああ。済まない…」
苦笑いを浮かべ、気持ちを落ち着かせながら急いで落ちた書類等を広い集める。
落ち着け……!相澤くんは足を捻った程度だと言っていた。体調を崩していたのは昨日の熱が続いていたんだろう。
まだ回復していないのに学校に来るなんて、なんという無茶を……!
しかし気になる相談事いうのは一体…?
相澤くんが資料まで取り寄せて調べるほどのこと…。
まさか……!!
………いや、今は友里絵の様子を確認するのが先決だ……!
急いで保健室に行かなければ…!
──というやりとりがあり、オールマイトは何かを察しながらも保健室に向かい駆けつけたと言うわけだ。
「まぁ相澤くんも君のことを考えてかそれ以上は詳しく言わなかったけどね……」
「………っ」
迂闊だった……!
"個性"を消したいだなんて相談…!
そんなの不審がられて調べられるに決まってる…!
だから相澤先生も私が消したがってる"個性"がどんなものか確かめようとしたんだ……!たとえ相澤先生が他言しずにいてくれてもトシおじさんに知られたら意味がない!
他の先生と違ってトシおじさんは私の義父なんだから……!
絶対に知られたくなかったのに……!
「──で、彼に何を相談したんだい?」
「………別に大したことじゃないよ…」
「大したことじゃないなら私にも言えるだろう?そもそも何で担任でもない相澤くんわざわざ相談する必要があったんだい?」
「そ……それは…………」
絶えず質問をしてくるオールマイトに対し答えられずにいると2限目終了のチャイムが鳴った。
「あ…授業終わったみたい……。私もう戻るね…!」
「待ちなさい。まだ話は終わってないよ。ちゃんと答えなさい友里絵」
逃げるように出て行こうとする友里絵の手を掴み引き止めるオールマイト。
だがそれが良くなかったのか友里絵はオールマイトの手を振り払い震えた声で叫び出す。
「…っいい加減にしてよ!どうせ聞かなくても全部わかってるくせに…!知ってるでしょ…!私に誤魔化しや嘘は通用しないって!」
「友里絵……」
「ここに来たのも本当は事実確認に来ただけなんでしょ…っ。何が「心配して来た」よ嘘つき……!わかってて私に言わせようとしないで!いくらトシおじさんでも話せないことはあるし、仮に相談したとしてもトシおじさんに話したところで解決なんか出来やしない…!触れて欲しくもないのにズカズカと踏み込んで来ないでよ!トシおじさんのバカ…っ!!」
そう吐き捨てて友里絵は足の怪我も気にせずカバンを持って保健室から飛び出して行った。
「……オールマイト。アンタバカなのかい?」
「…面目ない…」
それまで黙って聞いていたリカバリーガールが呆れるように呟き、オールマイト自身後悔の念に捕らわれた。
友里絵……。やはり君はまだ
「…確かに彼女の言うとおり、相澤くんに相談したという時点で私には大体の予想がついていました……。恐らく"個性"を消してもらおうとしたんでしょう……。あの子はあの日も"個性"のことで特にひどく悩んでいた……。6年も経っているし普段のあの子を見てもう克服したとばかり…」
「そりゃあ簡単にはいかないだろう。あの子にとっては思い出したくもない出来事だったんだ。一度負った心の傷ってのは一生消えることはないんだよ。そうでなくてもあの子の"個性"じゃ克服することさえ難しいんだろう。極力触れてやらないのが賢明さね……。なのに一番気にかけてやらなきゃいけないアンタが追い詰めてどうすんだい」
「そう………ですね。すみません」
リカバリーガールに諭され後悔したままオールマイトは小さな声で謝った。
「私に謝ってどうすんだい。後であの子にちゃんと謝ることだね」
「はい……」
友里絵に謝ることを約束しオールマイトも保健室を出て行った。
いかがでしたでしょうか。
オールマイトと喧嘩をしてしまった主人公。
オールマイトは和解出来るのか。
閲覧ありがとうございました。