主人公はあの人の娘!?苦難多き少女のヒーローアカデミア 作:ユリアンヌ
そして翌日の朝────。
「あ、デクくんおはよう」
「お…おはよう………って、何してるの成切さん!?」
「何って朝食の準備だよ。もう終わったからトリノおじさんと食べてね」
緑谷が起きて来ると友里絵が朝食の準備を済ませていた。
「それはわかるけど朝食の準備は僕がやるから良いって言ったのに…」
「それは私が体調不良だったからでしょ?もう元気になったし、また朝食がたい焼きなんてことになったらいけないでしょ?下手したら職場体験中ずっとたい焼きって可能性だってあるし」
「そ…それは確かにちょっと嫌かな…。
けどさすがにそんなことはないんじゃないかな…?
そもそも体調不良だったからじゃないし……」
「あるから言ってるの。あの人、基本たい焼きばっかり食べてるから」
「えぇ~…………」
いくらグラントリノがたい焼き好きだと言ってもさすがに一週間も続けてはないだろうと思ったがキッパリと否定されてしまった。
そうなると、本当に一週間たい焼き地獄となるかもしれなかった。
『そういうわけだからもしトリノおじさんがたい焼きが食べたいって言ったら絶対食前には出さないこと。出すなら食べた後のデザートかおやつの時ね』
「わ…わかった」
「本当に絶対だよ。今度こそ約束だからね」
「う…うん……」
しっかりと緑谷に念を押す。
前回はグラントリノに押しきられ、たい焼きを出してしまっているので今度こそは約束を守らなければと心にかたく誓う緑谷だった。
「そ…それであの…」
「……大丈夫だよ。ちょっと怖いしちゃんと話せるか不安だけど、ちゃんとトシおじさんと話するから」
「そっか…。オールマイトならきっとわかってくれるよ。頑張って」
「…ありがとう。行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
オールマイトのことを考えると少し不安になるが緑谷に励まされ友里絵はまた笑みを浮かべ出て行くと緑谷も優しい眼差しで見送った。
大丈夫……。成切さんならきっと……。
「──大丈夫だと言ったものの……やっぱり会うの怖いな……」
意を決して雄英に来たはいいが、いざ実行しようと思うと勇気が出ず友里絵は弱気になっていた。
気が重いと感じながらゆっくりと足を進めていく。
「……でも私も頑張るってデクくんと約束しちゃったし、有言実行しなきゃね…」
そう言って立ち止まるとスマホを取り出しメールを打ち始めた。
相手はもちろんオールマイトだ。
そのオールマイトも浮かない顔でデスクの前にいた。
………結局昨日は友里絵と話せなかったな…。電話も繋がらないしメールも返信がない……。
やはり嫌われてしまったか………。
《メールが来たー!メールが来たー!》
「ん…?メールか…」
そう思ったその時、独特な着信音が鳴りオールマイトはスマホを取り出す。
「…!
(友里絵から!?)」
"トシおじさんへ
ちゃんと話をしたいからお昼に仮眠室で待ってる"
友里絵が送って来たメールにはそう書かれていた。これにはオールマイトも安堵の表情を浮かべた。
会ってくれるんだな友里絵………。良かった……。
「……っと、早く返信しないとな」
心からそう思いつつ、直ぐに返信した。
ピロリン♪
「あ…トシおじさんから返信来た…」
オールマイトからの返信を受け取る頃、友里絵は昨日足を踏み外した階段まで来ていた。
怪我のこともあり足を庇いながらゆっくりと階段を上る友里絵。途中で立ち止まりメールを見た。
"メールありがとう。私もずっと話したいと思っていたよ。君が来るのを私も待ってるよ"
「…よし、あとはお昼になるのを待つだけだ……。それまではいつも通りにするとして、とりあえず今はこの階段を無事に上り切って教室に……
っ痛!?」
スマホをしまい再び階段を上ろうと一歩踏み出したその時、突然怪我を負った足に痛みが走り、友里絵はまたバランスを崩してしまった。
──嘘でしょ、また!?
二日続けて落ちるとか私バカじゃないの!?
けど幸い今日は誰もいないし私だってそう素直に落ちたりしないんだから!
「………っよっと!」
友里絵はまるで跳び箱で倒立回転するかのように階段に両手をつき、一回転すると怪我をしていない足から見事に着地した。
「…よし!今回はセーフ!」
「どこがだ…?」
「へ…?」
ガッツポーズをした瞬間、聞き覚えのある声がし、振り向くとまたしても相澤の姿がそこにはあった。
今一番会いたくない人物No.1だ。
「げっ相澤先生……」
「成切……お前怪我した足で一回転着地とかふざけてんのか?
しかも「げ」とはなんだ……。強調までしやがって…」
「す…すみません…。
(み……見られてたのか……)」
「大体、何でまた階段から落ちてんだ。二日続けてってバカなのか?学習能力のないバカなのかお前は?」
「ご…ごめんなさい……急に足に痛みが走って……。
(相澤先生…怖い……)」
一部始終を見ていた様子の相澤。鬼のような形相で説教を始めた。
うぅ~……まさかまた相澤先生がいるなんて…。
しかもお説教まで………。
いや、悪いのは私だからお説教されるいいんだけど…………。
とにかく早くここから離れたい…!
昨日のこともあり"個性"について聞かれる前にこの場から立ち去りたかった。
何か良い方法はないか考える。
「ったく……。だったら今すぐ保健室に行って来い。今日はまだ時間があるから余裕で行って来れるだろ」
「え…」
が、相澤の意外な言葉に友里絵は驚いた様子で見上げた。
「何だ?」
「あ…あの…問い詰めないんですか、私のこと…?」
「あ…?問い詰められたかったのか?だったら聞きたいことは山ほどあるからお望みなら叶えてやるぞ?」
「い…いえ!聞かれたくないです!聞かないで下さい…!」
てっきり聞かれると思っていたので、拍子抜けしていると逆に聞いて欲しかったのかと返されて慌てて拒んだ。
「全力拒否か…。いかにも秘密抱えてますって反応だな」
「あ…っえっと………っ」
しまったと言わんばかりにハッとする。
何かに怯えるかのようにカタカタと震えだした友里絵を見た相澤は小さくため息をついた。
「そんな顔しなくても無理に聞いたりしないから安心しろ」
「は…はい……」
「わかったんならもう行け。今度はドジるなよ」
「も…っもうドジりません……!
…じゃなくて、それじゃあえっと…失礼します…」
オドオドしつつも相澤に一礼し友里絵は保健室に向かって歩き出した。
……ちょっと揺さぶりをかけただけであの反応か。やはり何かしらの事情がありそうだな…。
しかもさっきのあの動き……。
やり方はともかく、あの身体能力は並みじゃない……。体育祭では見なかったが、あんな動きが出来たのか……。
ってことは、昨日もやろうと思えば出来たってわけか。やらなかったのは俺がいたからなのか……。
どうも周りには隠しているって感じだったしな……。
……どちらにしろ、あいつが何かしらの事情を抱えていることはこれでハッキリした………。
今のところ危険性は感じないが万が一ってこともある。本来ならあいつの言うように問い詰めるべきなんだが、今そうするのは得策じゃない……。あの様子じゃこれ以上聞いたところであいつは喋らないだろうしな……。
ただの時間の無駄だ……。
「とりあえず様子を見ながら探って行くか……」
相澤は去っていく友里絵の後ろ姿を見つめながら密かに探ることを決めた。
中々良い絡ませ方が思い付かず、だんだん無理矢理感が出てきました…(^^;
閲覧ありがとうございました。