主人公はあの人の娘!?苦難多き少女のヒーローアカデミア 作:ユリアンヌ
保須事件をすっ飛ばして第25話です。
友里絵が休むと言って部屋に行ってからしばらく経ったがオールマイトはまだ休まずに起きていた。
「……友里絵は大丈夫だろうか…。ちゃんと眠れていれば良いが……」
慣れないパソコンと向き合って仕事をしていたオールマイト。しかし友里絵のことが心配なあまり、全く手につかない。
「……一度様子を見て来るか……」
「きゃ…っ」
「…!
(友里絵の声!?)」
立ち上がり、寝室に向かおうと思った矢先、友里絵の小さな叫び声が聞こえ慌てて彼女の所へと駆けつける。
「友里絵!?」
「いたたた……。
あ…トシおじさん…?」
目に飛び込んできたのは床に倒れ込んでいる友里絵の姿だった。
すぐに駆け寄り体を支える。
「どうしたんだ友里絵……っ!?大丈夫かい!?」
「だ……大丈夫何でもないよ…。ちょっとベッドから落ちちゃっただけ……」
「ベッドから落ちただけって……足をぶつけたり負荷がかかったりはしなかったのかい?」
「それも大丈夫……。頭からのダイブだったし足には一切負担はかかってないよ」
ただベッドから落ちただけと答える友里絵。
落下の際頭をぶつけたらしくさすっていたが、幸いその怪我をした足は大丈夫のようだ。
「……それはそれで問題あると思うが、何事もなかったのなら良かった。しかし何でまたベッドから落ちたんだい?」
「あ、水を飲もうと思って降りようとしたら手を滑らせちゃって……」
「水か……それなら水は私が持って来るから君は座って待っていなさい」
「え…あ…う…うん…」
怪我がないことにひとまずホッとするオールマイト。ベッドから落ちた理由を聞いた後、自分が持って来ると言って寝室から出て行った。
……またおじさんに手間かけさせちゃった……。たかが水を飲みに行くことさえトシおじさんの手を借りなきゃダメなんて私は本当にダメだな………。
一方の友里絵は水を取りに行ってくれたオールマイトを、逆に負担をかけていると感じているようでまた落ち込んでしまう。
「──はい水…」
「あ…ありがとう…」
オールマイトから氷水の入ったコップを受け取りお礼をいいながらゆっくりと飲んでいく。
「あ…あの、ごめんね…?この程度のこともおじさんにやらせて……」
喉が潤った所でコップを口から離し申し訳なさそうに小さな声で謝った。
「やらせただなんて、そんな風に言わないでくれ。私は君にずっと何もしてあげられなかったから出来ることは何でもしてあげたいんだ」
「うわ……何か恋人に言うようなベタな台詞…」
「はいそこ。水を差す発言しない。
しかもうわって……」
せっかくちょっと良いことを言っているのに台無しされ、これにはオールマイトも即座にツッコんだ。
「…それはそうと友里絵。ひょっとしてあれから眠れていないんじゃないか?」
「う…うん……。もう寝るって言っておきながらベッド占領してるだけなんて……。ごめんなさい……」
「また君は……。何でそうすぐに謝るんだ。その程度のことで私が怒ると思うのかい?君が休むと言った時からなんとなく予想はしていたし、そもそも君がベッドを使用すること自体気にしなくて良いと言ってあっただろう」
「だって……」
わずかに肩をビクッとさせ再度申し訳なさそうに謝罪する友里絵にオールマイトはため息混じりに呟いた。
「君は少し……いや、いつも悪い方向に考えすぎなんだ。いつも謝らなくて良い時にばかり謝っているし、もっと我が儘になったっていいくらいだ。何も気に病むことなんてないんだよ。だからもうすぐに謝ろうとしないようにするんだ。いいね?」
「う…うん…」
頭を撫でながら頭を撫で続けるオールマイトに友里絵は戸惑いつつも頷いた。
「…とはいえ、眠れないのをそのままにはしておけないな……。何とか君が安心して眠れる方法を考えないと……」
「あ…あの……」
「ん?どうしたんだい友里絵?」
「……ううん、やっぱり何でもない…」
うーん…とオールマイトが考え込んでいると友里絵は何か言いたげな顔をしながら声を発した。しかしオールマイトが反応をすると急に首を振り言うのを止めてしまった。
「何だ、気になるじゃないか。言いたい事があるなら構わず言ってごらん?」
「えっと…その…良い方法かはわからないけど私が眠るまでおじさんに側についててもらいたいなって…。それなら安心出来るから……」
一度は口を閉ざしたものの、少し迷ってから友里絵は再び開き話し始めた。わがままを言おうか迷っていたらしい。
するとそれを聞いたオールマイトがキョトンとする。
「え、そんなことかい?」
「や…やっぱりダメだよね。おじさんだっていろいろ大変だし、まずそれで眠れるかもわからないのにそんな我が儘……」
「いや…側にいるのは全然構わないんだが、それは"我が儘"と言うより"甘える"じゃないか?
と言うか、そんな我が儘だったら世の中のお父さんは泣いて喜びそうだな」
「そうかな…?でもありがとう……」
「ああ。さぁ、布団に入りなさい」
思ってもみなかったことにオールマイトは一瞬意表をつかれていたものの、あっさり了承してくれた。
断られると思っていた友里絵は少し安心した様子で頷き空になったコップを置き再びベッドに橫になった。
「大丈夫。ちゃんと側にいるよ」
「うん……」
優しく頭を撫でられ友里絵は目を瞑った。
次に目を開けた時には朝を迎えていた。
「…朝だ……。急いであの二人のご飯作らなきゃ………ん…?」
そう呟いて体を起こそうとすると腕に何か違和感を感じた。視線を向けるとその先には手を握りベッドにうつ伏せて眠るオールマイトの姿があった。
「え……っあれ、トシおじさん…っ?」
大声を出しそうになるのを何とか抑えるも、状況がわからず困惑する。
「……あ、そうだった…。昨日からトリノおじさんもデクくんもいないからトシおじさんの家に来てたんだった……。
完全にトリノおじさんの家にいるかのような感じになってた……」
どうやらグラントリノの家と勘違いしていたようで、職場体験の関係でしばらくオールマイトの自宅で過ごすことになったことを思い出す。
ていうか、二人の朝食を作る気満々だったとか…。
慣れって怖…。ハズい………。
普段グラントリノの家で毎朝早起きし朝食を作っていたこともあって、いつも通りの行動をしようとした友里絵。日常だったとはいえ、今この場で勘違いした自分に少し恥ずかしくなった。
「だけど何でトシおじさんがここで寝てるの……?まさか私が眠ってからもずっとこうして手を握ってくれてたの…?」
そして一番気になるのは、やはりオールマイト。
側にいて欲しいとお願いしたのはこちらだが、眠るまでの間だけで眠った後までは頼んでいない。それが今も手を握り眠っているということは、ずっと側いてくれたとしか考えられなかった。
「……友里絵?」
「あ……」
ここでオールマイトが目を覚ました。
「おはよう友里絵。どうやらちゃんと眠れたみたいだな」
「う…うん……。あの…どうしておじさんがここに…?もしかしてあれからずっと側にいてくれたの…?」
「ああ。途中でまた目を覚ましてしまうかもしれないからずっとついていたんだ。けどその心配いらなかったみたいだね、良かった」
「………」
相変わらず優しい笑顔で答えるオールマイト。彼の口からは思った通りの返事が返ってくる。
「私…トシおじさんの邪魔しかしてないよね……。ごめ……」
「はい、ストップ」
「……?」
俯き謝ろうとしたその瞬間、オールマイトがそれを遮った。
「忘れたのかい友里絵?そうやってすぐに謝ろうとするのは止めにしようって昨日言ったばかりじゃないか」
「あ……」
「君は私を朝まで付き合わせたとか思っているんだろうけど、全て私の勝手であり邪魔をされたとも思っていない。親が子供のことを優先するのは当然のことなんだから何も心配しなくて大丈夫だ」
「う……うん……ごめんなさ……
あ…!』
「やれやれ…かなり重症だな」
再度言い聞かせられ返事はするも、癖は簡単には治らない。また謝ってしまい慌てて口を押さえた。そんな友里絵にオールマイトは苦笑しながらも頭をポンポンと撫でた。
……でも確かに私の中にはトシおじさんに対して申し訳ないって気持ちが強く残ってていつも遠慮がちになったりついマイナス思考で考えてしまう……。
それは私の心が弱いからだ……。
あの男のことで悩んで中々寝られなかったのも、それらを気にしてマイナス思考になってしまうのも全て私の心の弱さが起因している……。トシおじさんはそんなことはないってまた言うだろうけど、やっぱり負担と心配だけはかけたくない……。
その為にはいつまでもウジウジなんてしていられない。
強くならなきゃ………!
パンッ!
「…っよし!頑張ろう!」
「!?ゆ…友里絵?どうしたんだい?」
突然挟むように自分の両頬を叩く友里絵にオールマイトはビクッと驚き声をかけた。
「気持ちの切り替えだよ。喝を入れたり気合いを入れる時によくやるでしょ?いつまでも気にして暗い顔してたらトシおじさんもずっと心配させたままにさせちゃうからさ」
「そうは言ってもな……。無理してるんじゃないか…?」
「大丈夫、無理な時はまた頼るから」
「ならいいが……本当に無理だけはするんじゃないぞ…?」
「うん」
気持ちを切り替えたと友里絵は言うが、昨日の今日で気持ちの切り替えがそう簡単に出来るとは思えず大丈夫そうにも見えない。
とはいえ、友里絵が必死に乗り越えようとしているのに、横槍を入れるわけにもいかず絶対に無理をしないというのを条件に聞き入れた。
「さてと……この後どうしよう…。ちょっと早いけど朝ご飯の準備する?」
「ご飯の準備って…それも昨日しなくて良いと言っておいたハズだが……」
「ただお世話になるだけなんて嫌なの。トリノおじさんのとこではいつもやってたし」
「え、先生の所では毎朝そうしてたのかい?」
「毎朝だけじゃないよ?大体の家事は全部私がやってる。トリノおじさんに任せてたらたい焼きばっかりになるもん。職場体験が始まってからはデクくんの分も作ってた」
「えぇ!?」
オールマイトが知りたかったことの一つである、グラントリノの元での友里絵の私生活。その暮らしぶりに普通に驚いた。
「そんなに驚くこと?一人暮らししてる人とやってることは同じでしょ?」
「それはそうなんだが……。
前から言おうと思っていたんだが先生の所から毎日雄英に通うのは大変じゃないのかい?ここからならまだ近いし友里絵さえ良ければこっちで過ごしてくれて良いんだよ?」
「んー…けどもう慣れたから平気だよ」
通学の不便さや友里絵の負担を考え改めて自分の所へ来ないかと促してみるも、まだ当面の間はその気はないようで今回も断られてしまう。
「…そうか。しかし普段君が大変なことに変わりない。せめてここにいる間だけでもゆっくりしててくれ。朝食も私が準備するよ」
「ん……わかった。
けど私の分はいいや。お腹空いてないし」
「いらないって…昨日の夜も食べてないじゃないか。ダメだ、さすがに今日もは聞けないよ。というか、まさか先生の所でもそんな風だったなんてことはないだろうね…?」
「そ…っそれは大丈夫っ。コンビニで済ますことは多いけどちゃんと食べてはいるから…っ」
友里絵の口からまさかのご飯いらない宣言。昨日はやむを得ず許したが今回は到底聞き入れられない。しかも普段から友里絵が食べずに済ましている疑惑まで浮上し、オールマイトは鋭い目で友里絵を見た。怖い顔で睨まれたからか友里絵も少し焦った様子で全否定した。
「コンビニで済ますのもちょっとどうかと思うぞ…?まぁいい。とにかく朝食の準備をしてくるから出来たらちゃんと食べること。それまでは大人しくしてること。わかったかい?」
「は…はい…」
「それから……」
『(まだあるの!?(汗))』
「後で話がある」
「……?う…うんわかった……」
厳しく言い聞かせていると思ったら急に雰囲気が変わり、只事ではないと感じ取った友里絵。今じゃダメなのかとも思ったが、この際だから存分に言葉に甘えさせてもらうことにした。
───とはいえ、やることがなくなり友里絵はただボーッとして時間を持て余していた。
……よく考えたらこんな風に朝のんびりすることなんかほとんどなかったかも…。いつもならこの時間はご飯作ってすぐに学校行く準備して行ってたからなぁ…。
距離的に……。
こうやってたまにはゆっくりするのも良いんだろうけど私の場合、何にもしないと何か逆に落ち着かない……。
家事やりたいとかまるでもう主婦じゃん……。
「手伝いに行ったところで絶対追い返されそうだしなぁ……。これだけ何もしないでいると二度寝しちゃいそう……」
とか考えていたら本当に二度寝してしまったことは言うまでもない。
はい、25話はここまでになります。
前書きの補足をすると保須事件は友里絵が眠れずにいる間に解決し既に終わった後の状態ということになります。
次はまた緑谷と絡ませていくつもりです。
ご意見等ありましたらぜひお願いします。閲覧ありがとうございました。